陽だまり絵本通信 
NO,184  2015・8・1















  
                                

 
 毎日国会中継を見て、何かしら違和感を感じています。戦争を知らない世代が、物知り顔に戦争を語るのは、ダメでしょう。ホルムズ海峡の機雷掃射は、その自衛艦に乗って、実際の作業に携わったものでないと、恐ろしさはわからない。私たちの電力の7%のためにです。本当は、そこを通らなくてもいいんだそうで、あえて掃海をしているのは、他国のためだそうです。日本の総理や自衛隊の偉い人が感謝されるため。
 私たちの電力の7%といいますが、93%はどこで賄っているのでしょう。自然エネルギーに感謝です。
 


 
『ちいさなへいたい』―――パウル・ヴェルレフト・作 野坂悦子・訳 朔北社

 ある日、戦争がはじまった。どうしてそうなったのか、わからないうちに。恐ろしいことですね。誰も知らないとはいうもの、進めている人はちゃんと居るのです。この本の小さなへいたいさんも、なぜかわからないうちに、駆り出されているのです。手に、可愛いぬいぐるみのクマさんを持ちながら。家を離れ、銃を背負い、クマのぬいぐるみです。僕と大勢の仲間は、闘うために出発しました。何日も駆けて戦場に向かい、闘い仲間たちは死んだ。生き残った僕は、恐ろしいことを沢山みたのです。
 町では、戦争に勝ったと喜んでいる人もいるが、悲しんでいる人はいっぱいいる。家をなくし、肉親を亡くし、ぼくの家もなくなっていた。でも、お父さんやお母さん、妹、みんな待っていてくれた。クマのぬいぐるみを手に、駆けていく少年の姿。死んだ友だちの墓石の行列が。僕はこれからも生きて行きたい。戦争のことを考えたくない。僕は家の塀を直しながら、考えるのです。眠れなくなるたびにかんがえるのです。あれは何だったのか。何が起こっていたのか。
 人は、小さな存在です。一人が声をあげても、為政者には勝てません。みんなが声を上げなければ、国会という議席数の決まっているところでは、勝てません。自民党の議員さんたちは、何をどう考えているのでしょうか。また、戦争という悲劇を繰り返したいと思っているのでしょうか。どうして、そうなったかはわからないと絵本は言いますが、わからないのではなく、わかろうとしない人が多すぎるのです。
 この絵本の小さな兵隊は、孫のように思えます。
 


 『なぜ戦争をするのか?六にんの男たち』
ーーーマッキー・作 中村こうぞう・訳 偕成社

 今、戦争はこの絵本のように、単純なものではありません。昔、植民地を求める人たちは、侵略と虐殺を繰り返し、この地球上に戦争というおぞましい出来事をもたらしました。その延長線上、今の現実があるのですから、どうにも致し方がありません。この絵本は、戦争がなぜ起こるのかというものを、きわめて単純に描いて、私たちに考えさせようとしています。どんなに格好をつけても、元はと言えば領土の拡張と富の独り占めなのです。今は、それに宗教や民族問題が絡んで、よけいに難しくしています。アフリカの内戦も、元はと言えば植民地にされたことに端を発しているのですし、この地球上の貧富の差がもたらした格差をどうにかしなければ、解決のつかないことなのでしょう。それが一番難しいのです。
 シンプルな絵で、最後のページからまた初めに返るようにと、絵本は暗示しています。繰り返す罪深さ、人間の愚かさをこの絵本は知っているのです。6人の男たちは、平和に働いて暮らすことのできる土地を求めて、長い間歩き続けていました。永住にふさわしい土地を見つけた男たちは、今度はそれが奪われないかと心配になり、兵隊を雇いました。兵隊を雇うと、近くの農場を侵略しました。農民たちも、兵を持つようになりました。もっともっと金持ちになりたいと言う欲望がわき、軍隊を持つようになった6人の男たちは、川岸で鳥の羽ばたきにおびえ、双方の兵が弓矢を放ったのです。闘いが終わったあとは、生き残ったものと言うと、あの6人の男たちでした。雇った兵隊は?殺されるものは何時もきまっています。そして、初めにもどるのです。
 同じ作者の、『世界で一番つよい国』では、歌や踊、食べ物が戦いをやめさせるのに、一番の方法だと教えてくれます。

 戦争が起きなければ、戦争に負けるものも、勝つものもいない。負けるのは、国の場合戦争責任を負うものがいる。国民の命を守ると言いながら、戦争の責任云々になると、口を閉ざして語ろうとしない。責任は誰がとるのか、原発も、国体も、健康保険も、みんなみんな得をした人がいるだろうに、責任をあいまいにして黙っている。日本の国は、そうした国だ。わかっているんだけど。

                           
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