「 It’s Okay !」 「feel good !」 楽しい言葉です
皮肉にも、人権デーの始まりが、衆議院選挙公示の2日後。弱者切り捨ての政治へ、パンチをしてくれる政治家はいるでしょうか。株高なんて関係ない私は、保険料やもろもろの値上げに腹立たしく。それでも、後輩の方たちより年金は多くもらえ、まあいいかと思うものの、この歳の行く末を考えるとしんどいですね。衆院選の公示を伝えるマスコミも、人権週間についての言及はなし。ひょっとして忘れているの?そこのところに、人権意識のありようが浮かび上がります。こんなことには、「It's okay」とは言えません。 全人教の機関誌を読んでいて、久しぶりに亡くなった高知県の谷口先生の言葉に接しました。「人権教育の実践は、人のためにやるのじゃない、自分のためにやるのだ」と。「誰かのための人権教育ではない、やってあげる人権教育ではない」という谷口先生の言葉が、あらためて心に響きます。 絵本でも、一緒に楽しむことを大事にしてきました。上から目線の「読んであげる」読み聞かせではなく、一緒に楽しむことが、子どもの人権を大事にすること。そう思ってきました。読み手自らが学ぶものとして、大人の読みも深めていきたいと思います。紹介する三冊の絵本を、子どもへの大人目線を問いながら、大人自身の振り返りとしても、受け止めたいと思います。 |
なかなか言えない、「ええやん、そのままで」―――「これ、あかん。それ、あかん」とすぐに言ってしまう親です。
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『ええやん そのままで』―――トッド・パール作 つだ ゆうこ・訳 エルくらぶ 歯が抜けることはだれにでもある。「歯抜け」なんてからかわないで。歯が抜けてる顔も、またかわいいよ。だから、気にせんとき。そのままでいいやん。「It’s okay」や。目が見えなくても、盲導犬がいてる。大事な友達やねん。鼻が長くてもいいやん。色々あるねん、鼻の形。肌の色も模様も、色々あっていいねん。毛がなくても、リボンはつけられる。背も、高い人から、低い人までいろいろや。ええやん、それで。そう思わなかったら、自分のことも好きになれませんよね。 とってもカラフルなこの絵本です。小さな子には、絵の面白さ、色彩の豊かさを味あわせたい。年長さんには、一つ一つのページ毎に話し合い、意見を出し合わせたい。そして、自分を認め、好きにさせたい。小学生以上児には、ちょっと気どって英語を教えてみたい。「It’s okay」の言葉だけでも、使えたらいいなあと思います。 そして、大人たちは―――。いろんなことが、皆認められる世の中になったら、違いをほじくり出して、いじめるなんてこともないですよね。この絵本を読んで、つくづく思うのです。人権を大事にしている国と言われるけれど、アメリカで起こっている「黒人差別」への怒り。当然ですよね。ちがいを認めない白人社会です。社会的にも厳しい黒人社会の差別の実態を、「そのままでええやん」と言うのではありません。差別する側の意識を変えたいのです。ヘイトスピーチする人にも「この絵本よんで」と言いたいです。この絵本には、「普通」とか、「当たり前」とか言って、「おかしい、へんや」と排除してきた固定観念をたたきつぶそうとする事象があり、自分の価値観といっぱいぶつかりますよ。 |
日々、ええ感じにさせて、育てたいと思います―――大人もええ感じでいたいと思いますが
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『ええきもち ええかんじ』―――トッド・パール作 つだ ゆうこ・訳 エルくらぶ どんなときが、いい気持なんでしょうね。この絵本には、いい気持がテンコ盛りです。表紙の踊る子どもの顔も、ええ感じです。裏表紙の4コマは、「新しい友だちができたとき」「好きって、言葉で伝えたとき」「テントウ虫が、手に止まってくれた時」などが、ええ感じだと。虫嫌いには、「ええ感じと違う」って声が聞こえそう。「ええ感じ」にも、いろいろうありますよね。自分の「ええ感じ」を見つけるために、絵本を開いてみましょう。 「大好きやって、大きなハグ。ええ気持ち」同感です。「feels good」です。上の絵本は、「It’s okay」が合言葉でした。 「大好物が食卓に」「アワアワのお風呂」「スキンシップが」「泣きたいとき、泣ける」「大声で笑って、すっきり」「へんしーんして、勇気百倍」「大好きな友だちとお昼寝」などなど。最後には、「ずーっといっしょにええかんじ」です。「みんなのええ気持は、どんなこと?」って、トッドさんが尋ねてくれているけど、子どもたちだったらいっぱいでてくるでしょうね。自分だけのええ気持」もあるでしょう。それを友だちやみんなに認めてもらったら、もっとええ気持になるでしょう。「feels good」って、みんなが言えたらいいですね。友だちの「feels good」をいっしょに感じ合うことができたら、ほんとに素敵な友だちになれるでしょうね。 大人たちは、ついつい忘れている、いい気持を思い起こしましょう。嫌なことや愚痴なんかは、たまりにたまっているんで、ついはけ口を求めて、弱い所にツケを持っていってしまいがち。当り前のことを、いいなあと感じる。これが幸せというものでしょう。 |
失敗も、ちょっと見方を変えてみればいいのかも―――やっぱり叱ってしまう心の狭さがあって
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『しっぱい!とおもったけど』―――トッド・パール作 つだ ゆうこ・訳 エルくらぶ この絵本の合言葉も、「It’s okay」です。靴下を、手袋代わりにしても、パンツを帽子にしても、可愛いね。「It’s okay」です。裏表紙には、「ぼくだけちがう」って、穴にさかさまに入っていくペンギンさん。「ミルクこぼした!」と失敗しても、友達がぺろぺろなめてお掃除してくれる。みんな並んで泳いでいるのに、一人だけ後ろ向いて泳いでいる魚さん。でも、反対に行って、宝ものを発見したりして。失敗は誰でもする。そこから出発したらええねん、「It’s okay」やと、トッドさんは言います。 失敗を、なかなか許してもらえない雰囲気が、保育の場にも、家庭にもありますね。まあ、時には、同じ失敗でも、相手によったり、虫の居所がわるかったりしたら、おおごとです。「この間は、怒れへんかったやん」と言ったら、よけいに怒られます。この絵本には、失敗だと思ったけれど、逆に助かった、うまくいった、よかった!と思える例が満載です。ミルクこぼしても、すぐに片付くし、反対行ったら、宝ものの箱見つけたし。見つけるまでに叱られて、連れ戻されるのが保育園?じゃないですよね。答えが分からなかったら、友だちに聞いたらいいし、サッカーボールも、失敗してももう一回蹴りなおし。なんでも、挑戦するたびにうまくなるのですが、それができない、許されないこともありますよね。ファッションでも、子どもと大人の感覚の違いはよくあること。結局は大人になびく子も多いけれど。大きい声で歌うのは苦手でも、じっくり聞くのが得意な子もいる。それをどうみるかにかかっていますよ。 大人も失敗すること多いです。ごまかすことも多いですが、子どもも同じですよね。それをいい方につないでいけたらいいじゃないですか。「It’s okay」ですよ。「失敗は、失敗のままで終わることないよ」と、この絵本の訳者、つだゆうこさんは言ってくれました。ゆとりをもって、ゆっくりと、心のアンテナをゆっくりと全開にして、子どもに向き合わないと、子どもをダメにしてしまうよと思ったことでした。 |
次につないで
三冊とも、英語の楽しさを味わうものですが、知らない単語も多々ありそう。でも、つだゆうこさんの訳があるので、なんとかわかります。しかし、子どもの前で読むには、発音が難しそう。ばあちゃんじいちゃんの時代は、英語の教科書での日本語的英語発音でしたから、あらためて読み方を学ばなくっちゃね、と思いました。幼児期からの英語学習が言われていますが、この絵本なんか、いい教材になるんじゃないですか。ぜひご活用をお願いと、呼びかけたいです。 トッドさんの絵本には、『ちきゅう』『ピースブック』などたくさんあります。ネットで、「トッド・パールさんの絵本」と、検索してみて。 |