ポツダム宣言と憲法制定

2005年11月9日



ポツダム宣言受託をよく「無条件降伏」と言いますね、これは正解でもあって

間違いでもあるのです。

今の日本国憲法は連合国総司令部に押し付けられた「憲法」であるというのは

結構知られている事ですが、こういった戦勝国が敗戦国の政治形態や国家体制を

作り変える事が国際法に違反しているという事を知ってる人は少ないようです。

「内政干渉」が国際法に違反している事は結構知られている事ですが、要するに

「内政干渉」は戦争で勝った国でも国際法に違反するという事なのです。

敗戦国に賠償金の要求などは出来ますが、何でもかんでも好き放題に出来るという訳ではありません

昔なら相手の国の利権や領土、場合によっては「主権」までも奪い取る事もありましたが。


で、ここで、「ポツダム宣言と日本国憲法」について触れていこうと思いますが、

結構落としどころと言いますか、日本人的と言いますか、

「憲法を押し付けられたけど、無条件降伏 した以上文句は言えない」

みたいな感じの理屈で納得している人が非常に多いですね。

では、「無条件降伏」だったのでしょうか?

また「無条件降伏」だったなら、「憲法」の押し付けに「文句」は言えないのでしょうか?


冒頭で「無条件降伏」を「正解」であり「間違い」であると書きましたが、単語の定義では

「相手の差し出した条件に納得して、受け入れた降伏」であれば「無条件降伏」としてます。

日本はポツダム宣言の「条件」を「受託」したのですから「無条件降伏」したのです。

たまに、「日本は有条件降伏だった」と言う人がいてますが、「無条件降伏」とは

「条件」の有・無に関わらず、上記の定義に従って使われる「用語」なのです。

よって、「無条件降伏」は「条件の無い降伏」ではないのです。

だったら、何故「有条件降伏」という言葉を造って「無条件降伏」と分かり易く区別しないのか

と思うかもしれませんが、実は私もそう思う一人です。

だから、「日本は無条件降伏したけど、ポツダム宣言は条件付の降伏勧告だったので

日本は無条件の降伏をしたのではなくて、きちんと条件の付いている有条件の

降伏をした」と長ったらしい文にしないときちんと分かり易い説明が出来ないのです。

「無条件降伏」の対義語は「有条件降伏」ではないのです。

「有条件降伏」という言葉自体、公用語としては存在しないみたいです。

という事で、「無条件降伏したから文句言えない」はこの説明から

誤った認識である事がお判り頂けると思います。


ついで、ポツダム宣言の条件ですが、まぁ、分かり易くいいますと

  1. 俺たちで考えたけど、日本に戦争を止める機会を与えてやるぞ
  2. 俺たちは日本を叩き潰す準備を終わってるんだ
  3. ドイツをやっつけたけど、それ以上の戦力を用意してるから、おまえらの国がなくなるまでやっちゃうぞ
  4. ま、その辺よーく考えて答えを出すよーに
  5. 俺たちの出す条件は次の通りだ
  6. 世界制服をたくらんだ奴らをいなくする、
  7. その事が確認できるまで日本の幾つかの都市に居座るぞ
  8. カイロ宣言の通りに行動するからな、で、おまえたちの領土は本州・北海道・九州・四国(など)だぞ
  9. 軍人は、おとなしく手を上げたら家に帰してやろう
  10. ま、何も奴隷にしてやるというつもりはない、しかし、世界制服を企んだ奴や、仲間を虐待した奴らはお仕置きだな、それと民主主義強化への妨害はしたらいけんよ
  11. お金を取り上げてやるつもりだから、その金を稼ぐ企業は維持させるけど、軍隊関係はそうじゃないからな、ま、世界の貿易の仲間へは入れてやる
  12. 以上の事が達成できたら、俺たちは日本から出て行ってやるよ
  13. いいか、日本政府が責任もって軍隊の無条件降伏を宣言しなさい、さもなくば、死あるのみだよ


と、いう感じですかね。いや、本当にこんな事が書いてあるから驚きますね。

ちなみに、カイロ宣言は

「三大国はおまえらが侵略なんてするから懲罰戦争をしてるんだ、自分たちの利益の為に

戦ってるんじゃないんだ。とにかく、日本は人の領土を奪いまくったけど、それを全部返せ。

そういった目的があって、俺たちは日本をやっつけようとしてるんだ」

というものです、いや、本当に書いてあるんですよ、これも!

で、カイロ宣言は置いておいて、ポツダム宣言では「民主化強化は妨害するな」と「諸地点を占領」

が書いてありますが、アメリカの属国や植民地になれとは要求しておりません。

勿論「主権」を「天皇」から「国民」へ移行する要求もしておりません。

又、日本国の「主権」を剥奪するとも書いてません。

あくまで、日本国政府が機能している中で、諸地点を占領しながら条件に従って

世界制服を企てた奴の処罰と、そういった連中の勢力の永久の除去、ならびに

捕虜の虐待とかの犯罪者の処罰をしていって、それが終わったら帰っていく

と書いてあるだけです。

少なくとも私の語学力では、そのようになります。

が、ここで「バーンズ回答」というものが出てくるんです。

分りやすくというと

  1. ポツダム宣言(降伏勧告文書)が送られて来たけど、どうするよ?
  2. 陸「天皇が主権の国体は維持してもいいのか?」
  3. 外務省「聞いてみよう」
  4. アメリカ「それは日本人の自由に表明される意思で決めなさい、が主権はとりあえず連合国司令部が握る」「日本国政府は隷属・従属(subject to)しなさい」←これがバーンズ回答
  5. 外務省「げ、subject to(隷属・従属)なんかじゃ陸軍は納得しないな・・・、よわったな・・・・」
  6. 外務省「subject to を制限下に置かれると訳しちゃえ!(誤訳だけど)」←と、言われている。
  7. 陸「俺たちで決めてもいいんだったら、その条件を飲もう。天皇主権を侵害されないのならな、制限を受けるくらいの事は我慢するしかない。俺たちが処刑されても陛下が健在なら、それはすなわち日本が健在であるという事である


という風な感じですかね・・・。

ま、バーンズ回答によって、ポツダム宣言受託が連合国の統治を了承する事になったのです。

つまり、「主権」は連合国総司令部(GHQ)に移る事になりました。

ポツダム宣言には無かった「主権の剥奪」が何故か成されてしまいました。

こういった経緯が存在して、日本国の「主権」は一応納得(形式上は)の上で連合国へ移りました。

つまり、「バーンズ回答」なくしては、連合国総司令部が日本国の統治をする事自体がポツダム宣言

の条件違反になる行為だったのです。

しかし、敗戦国の主権を奪い、その国を占領しながら主権を握るには、どうしても必要な場合に限って

しか許されないのが国際法(ハーグ陸戦条規)に明記されていて、必要な場合であっても、占領地の

現行法律を最大限尊重しなければならない事も合わせて明記されているのです。


以上、長い文章に成りましたが、導き出される結果は

「新憲法制定は条件違反だ、国際法にも違反している」

にしかなりません。