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その16.ホワイトカラー・エグゼンプション制度について

こんにちは、社会保険労務士の吉田です。

本日の朝刊一面で、政府が働く時間ではなく成果で賃金を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度案をまとめたというニュースが報道されました。
内容は、年収1075万円以上の専門職に限り、週40時間といった労働時間の規制を外し、労働時間ではなく成果に応じて給料を支払えるようにするという内容で、いわゆる「残業代ゼロ制度」として話題になったものです。

しかしながら、実は現在でも既に、「裁量労働制」といって、デザイナーや士業、コンサルタント、ソフトウェア開発者、教授などの専門職に従事するものや、事業の運営に関する企画、立案等の業務を自らの裁量で遂行するホワイトカラー労働者に対して、実際の労働時間が何時間であろうと、労使協定で定めた時間労働したものとみなす制度は存在します。

では、この二つの制度の違いは何かというと、「裁量労働制」では、休日や深夜労働に対する残業代の支払い義務は免れませんが、「ホワイトカラー・エグゼンプション」ではこの支払い義務も生じません。つまり、乱暴に言うと、休みであろうが真夜中であろうが、どれだけ働かせても割り増し賃金の支払い義務が生じないということです。

政府がこのような、一見労働者にとって不利に見えるような制度の導入に踏み切るのは、ダラダラ残業をしている人の方が、定時内できっちり仕事を終わらせる人よりも評価されることが多い日本特有の働き方を変えるため、少子高齢化で労働力人口が減るなか、生産性を高める政策面の後押しが必要と判断したからです。

確かにこの制度が目的通りにうまく運用されれば、労働者にとっても必要なときはバリバリ仕事をし、余裕があるときは余暇をたっぷりとってリフレッシュするという、理想的な働き方が可能になります。

一方、今回の「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度案の対象となる年収1075万円以上の専門職についてはこういったデータがあります。
転職サイト「Vorkers」が約6万8000人のビジネスパーソンに残業時間について調査した結果、年収と残業時間の関係において、「年収300万〜500万」の月間平均残業時間は45時間強、「年収500万〜750万」が50時間と年収とともに残業時間が増え、「年収1500万〜2000万」の人は60時間に達していました。
また35歳〜39歳の年収1250万〜3000万円の人は残業時間が75時間にも達しています。
これを残業代に換算すると、年間で250万円程度にもなります。
つまり「ホワイトカラー・エグゼンプション」が導入されると、これらの対象者は年収が250万円も少なくなる可能性があるということです。

今回の制度が、労働者の自由な働き方を後押しするという正しい名目ではなく、残業代削減のうまい口実に利用されないことを願うばかりです。