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その13.固定残業代」の正しい運用方法について(2)

こんにちは、社会保険労務士の吉田です。

前回は、固定残業代を運用するには、従業員とのトラブルにならないように細心の注意が必要だということについてお話ししました。

さて、今回は、残業が少なかった月の固定残業代の過払い分を、翌月以降に繰り越すことは可能か?についてお話ししたいと思います。
これはどういうことかというと、例えば毎月3万円の固定残業代を支払っている場合で、ある月の残業時間が短く、実際に支払うべき残業代は2万円程度であったとき、その差額の1万円を翌月以降の固定残業代として繰り越すことは可能か否かと言うことです。

「え、そんなこと出来るんやったらめっちゃええやん!」
と思われた経営者の方は沢山おられると思います。

結論から申し上げますと、「出来なくなくもない」。

という、今夜はブギーバックの歌詞のような、なんとも微妙な結論になります。
「SFコーポレーション事件」という平成21年の判例があり、それによると
・就業規則等により、その旨を定めていること。
・労働条件通知書等で社員に通達し、同意を得ていたこと。
という要件を満たしていれば、定額残業代の未消化時間分の翌月以降への繰り越しは違法ではない。という判決が出ているのです。
「そういう判例があるのなら、繰り越し出来ると言いきれるんじゃないの?」
とお思いかと思いますが、あくまでも地裁レベルの判決であり、今後、この件や類似案件についての訴訟が起きた際に、最終的にどのような判決が下されるのか、まだ微妙な所です。また労働基準監督署などでも定額残業代の繰り越しは認めないとして指導しているところが多いのが現状です。

しかし、経営者としては「転ばぬ先の杖」で、今後もし従業員から未払い残業代などの訴訟を起こされた場合に備えて(もちろん、そういうことがないように、月々の固定残業代の額を超える残業代が発生した月は、きちんと不足分の残業代を支払っておくべきですが、残業時間の双方の意見の食い違いなどで、思いもよらぬところから訴えられる場合もありますので)、就業規則等に、固定残業代の翌月以降への繰り越しの項目の追加と、労働条件通知書等による従業員への通達と、同意を得たことの証明として、署名、捺印等をもらっておくのが最善の方法と言えるでしょう。