日本海から薬師岳日帰り

【日時】平成26年7月26日
【使用自転車】BASSO REEF 2007
【コースタイム】
常願寺川河口発(0:56)→最終コンビニ(1:53)→有峰林道ゲート(2:38)→折立(4:26-4:46)→1870m三角点(5:43)→太郎平小屋(7:24-7:31)→薬師峠(7:51)→薬師岳山荘(8:40)→山頂(9:17-9:33)→薬師岳山荘(9:58)→太郎平小屋(10:58)→折立(13:20-13:44)→最終コンビニ(14:38)→常願寺川河口(15:31)


 2003年の剱岳を皮切りに白馬岳、富士山、白山、妙高山と続けてきた海抜0mからの山登りシリーズ。やり残した課題として立山と薬師岳が残っていた。このコースは2007年に白山を登って以来、7年前から課題となっていたのだが、諸事情により満足に山に行くことができなくなったため、ずっと実行できなかった。ところが今年の春に12年ぶりに金沢へ転勤になったことでようやくチャンスが巡ってきた。42歳の夏、体力が毎年低下していくのを実感している。このチャンス、逃すわけには行かないだろう。そう思って少しずつ準備を続けてきた。

 金沢では単身赴任だったが、基本的に週末は帰らなければならないのでとにかくトレーニングができなかった。ただし自転車に関しては週末に地元滋賀で早朝ライドを行っていたし、金沢でも夕霧峠を3回ほど登ることができた。山の方は地元で標高300〜500mほどの低山に3回ほど登った他は、6月に金沢から自転車利用で白山まで登ったきりだった。それを補うため、3回ほど職場から寮まで15kmの道を歩いて帰宅したりした。しかし、直前が梅雨時期で色々忙しかったので直前はあまりトレーニングできなかった。ただ良かったのは糖質制限ダイエットに出会ってプチ糖質制限を行い、3kgほど体重を落とせたこと。しかし、白山に登って体力の低下を実感したので少し不安は残っている。

 なかなか梅雨が明けなかったが、7/26(土)にようやく北陸も晴れそうな予報となった。このチャンスを逃すわけにはいかない。できれば平日で仕事の行事がない日に有給を取って行きたかったが今しかない。妻に電話して土曜日は帰らなくてよいことになり、レンタカーを予約した。木曜日の夜に装備の点検を行い、少し早寝早起きして体を慣らし、金曜日は定時退社。吉野家ですばやく夕食を済ませ、シャワーを浴びてレンタカーを借り、自転車と荷物を積んで19時半ごろいざ出発。

 暮れゆく北陸道を東進し、立山インターで下りる。コンビ二で買出ししてナビに導かれて21時ごろ水橋の常願寺川河口にある駐車場に到着。早々に寝る準備をする。しかし若者がスケボーの練習を始めたり、蚊がクルマに入り込んだりしてなかなか眠れなかった。2時間ほど浅い眠りの後、0:15頃起床。ヘッドランプをつけてだるい体で出発準備をする。出発に手間どり、海で写真撮影をして出発したのは0:56。いよいよ長い1日が始まる。

  
霧の常願寺川河口

有峰ゲート


 まずは常願寺川沿いを北上する。服装はミズノのジッパー付半袖+レーパン。使用バイクはBASSO Reef 2007モデル。トピークのリアキャリアを取付けてトレランシューズをザックに入れてキャリアにゴムロープでくくりつける。一部の荷物はスタッフバッグに入れてボトルゲージに入れて面ファスナーで固定した。トレッキングポールはダウンチューブ左側にくくりつけ、エアポンプは右側に取付けた。ボトルは900mlタイプ。トップチューブ上にも小さなバッグを取付けた。ライトはキャットアイのVOLT300を使用。初めて使ったが明るさには十分だった。そしてヘッドランプを首から提げてサイコンが見えるようにした。

 今日の猛暑の熱がまだ残っており、湿度も高くて川には霧が出ていた。暗い道を淡々と進んでいく。岩峅寺を過ぎて最終コンビ二(コース上、唯一のコンビ二)で小休止。長丁場なので食料をたっぷり買い込んだ(結果的にたくさん余ったが)。さらに川沿いを進んでゆき、川を渡って亀谷温泉へ。ここから本格的な登りが始まる。長丁場なので、集落の自販機でボトルを満タンにした。

 2:38に有峰林道ゲートを通過。ゲートは5時開通だが、すでに1台クルマが待っていた。自転車はゲート脇を通って中に入れる。有峰林道は十数年ぶりに通ったが、道が立派になっていて驚いた。以前はほとんど1.5車線の隘路だったのに、ほとんど2車線となっているし、トンネルが増えた。2つ目のトンネルまでは照明が点っており、快適に登っていくことができた。トンネルを出ると満点の星空。天の川を見たのは久しぶりのことだった。

 しかし、以降のトンネルは真っ暗だった。閉鎖時間中なので当たり前だが、それより困ったのはトンネル内が向かい風だったこと。10%弱の急坂を向かい風の中にひたすら耐えて登るのはなかなか辛かった。ゲートから1時間半くらい登ってようやく有峰ダムの展望台に到着。有峰ダムは霧に包まれていた。このあたりからようやく薄明るくなってきた。ここからはアップダウンを繰り返し、そして最後の九十九折れへ。ここがもっとも斜度がきつく12〜15%くらいだった。終盤の急坂は疲れる。車が来ないことをいいことに、ジグザグに登って足を労わった。やがて斜度が緩み、トンネルを抜けると折立に到着(4:26)。ちょうど4時間半かかった。

 トイレでレーパンからCW-Xに履き替え、シューズもトレランシューズに変更した。ザックのパッキングを行い、自転車に2つ鍵をかけて出発準備完了。登山口横の水道には「生水は飲まないでください」と貼紙がしてあったので、トイレ前の自販機でいろはす500mlを3本購入した。

 
霧の有峰湖  

折立登山口

 4:46に折立を出発。木の根っこが多い登山道を淡々と登っていく。道は結構ぬかるんでいた。先は長いので歩幅を小さくしてリズミカルに登ることを心がける。日帰り組では当然先頭だが、先行している前泊組の方を何人か抜いた。

 5:43、1870m三角点に到着。ようやく山頂が見えた。まだまだ遠そうだ。ここで朝日が昇り出す。いったん下ってからダラダラとした登りが続く。振り返ると有峰湖が霧の中に沈んでいた。そしてその奥に白山が見えている。緩やかな登りは比較的得意なので、順調に登っていけた。しかし太郎平小屋は見えてから到着するまでかなり時間がかかる。左前方には今から目指す薬師岳が大きく見えている。朝陽を背にトンボが乱舞していた。

 
三角点で薬師とご対面   

白山遠望

 
太郎平への遥かな道のり 

チングルマ

 
太郎平  

黒部五郎岳


 7:24、太郎平に到着。いきなり黒部五郎岳や水晶岳がドドーンと現れた。おおっ!久々に見る北アルプスの眺め。うれしくてボルテージが上がってしまう。絶景を見ながら腹ごしらえした。涼しかったので、ここまで500mlのペットボトル1本しか消費しなかった。

続いて薬師峠へ向かう。やがて右手に槍ヶ岳が見えてきた。いったん下って薬師峠で給水。ここからが大変だった。石がごろごろした沢の急登は一番しんどかった。でも登りきると平坦になり、薬師平では緑の草原の向こうに槍ヶ岳が見え、とてもいい雰囲気の場所だった。その後、やや長い雪渓登りとなるが、雪面からの反射が半端ではなく、サングラスを持ってこなかったことを後悔した。雪渓を過ぎると淡々とした登りが続く。山の上のほうに小屋らしきものが見えていたのであれが薬師岳山荘かと思っていたら、実はそれは避難小屋であり、唐突に薬師岳山荘が現れた。ここで最後の小休止を取り、あとは砂礫の道をジグザグに登っていく。

 
キヌガサソウ  

薬師平と黒部五郎岳
 
薬師平と槍ヶ岳  

槍ヶ岳アップ
 
高山らしい風景になってきた  

シナノキンバイ
 
雪渓登りは眩しくて目が開けられなかった  

薬師岳山荘
 
槍は見えるが穂高はガス  

ジグザグに登っていく
 
笠ヶ岳、乗鞍、黒部五郎  

山頂までもうすぐ
 
中央カールと赤牛岳  

カールと槍

 頂上が近づいたら右手に大きなカールがあらわれた。カール越しには赤牛岳が見えている。これぞ薬師岳という風景だった。小ピークをトラバースして登っていき、9:17、ついに山頂に到着。ヤッター!日本海から8時間21分、折立から4時間31分かかった。ここで初めて剱・立山とご対面。北カール、北薬師岳の向こうに見える剱・立山はカッコイイの一言だった。7年ぶりに見る北アルプスの絶景に酔いしれた。後立山の山々もたくさん見えているし、槍・穂高・笠・乗鞍・御岳もまもなくガスに隠れそうだがまだ見えていた。富士山も見えている。それにしても気持ちがいい。なんともいえない充実感だった。

 
ついに山頂へ!  

槍アップ再び

うっすらと富士山が   

金作谷カールと北薬師

剱岳遠望  

雄山遠望

山頂は風が冷たかったので長袖に着替えて腹ごしらえ。さあ今から長い長い下りが始まる。無事にたどり着けるのだろうか?
9:33、下山開始。下り始めてしばらくして早くも右ひざに違和感を感じた。やばいなぁと思いながら右ひざに負担をかけないように降りていく。今回は1本ストックにしたが、やはりダブルストックにすべきだったか?薬師峠への沢の下りも右足で踏ん張り辛いので苦労した。薬師峠で再び給水する。熱中症予防のためスポーツ飲料の粉末を入れた。


黒五を眺めながら雪渓を下る  

ハクサンイチゲ

いったん登って太郎平へ。小屋前は昼飯休憩の人で賑わっていた。小休止して折立への長い下りに入る(10:58)。下り始めて右ひざの違和感が痛みに変わってきた。やっぱりなぁ。ここからは我慢の下りだった。ストックを使って右ひざをかばって歩いたので、スピードはますますダウンした。太郎平からの距離標識の数字がなかなか減っていかない。それにしても登ってくる人が途切れないのには驚いた。1870m三角点から坂がきつくなるので不安だったが、路面が土に変わったせいか、意外と足に優しい感じがする。もちろん慣れてきたのもあるが、スピードは遅くても一歩一歩進んでいけばいつか必ず登山口まで降りられるはずだと思い、地道に歩いていく。途中で暑くなったので半袖に着替えた。


太郎平から振り返る  

ニッコウキスゲ


それにしても薬師はでかい  

鍬崎山を眺めながら下山

まだかまだかと思いながら下山してきたが、13:20、ついに折立に到着。やっと終わった・・・正直ホッとした。前に進んでいればいつか必ずたどり着くということを実感した。


折立出発  

有峰湖

ここで再び自転車姿へモードチェンジして13:44出発。下り坂はやはり気持ちいい〜。でも工事で何度も停められたのでスピードは上がらない。また、トンネル内は漏水でぬれていて、しかも泥水だったので、前輪が跳ね飛ばした泥が風圧で跳ね返ってきて全身泥だらけになってしまった。


服が泥だらけ  

自転車も泥だらけ

下界まで降りてくると一気に暑くなってきた。あるぺん村のコンビ二でアイスを食べて冷たいポカリを補充し、これからの灼熱地獄に備える。ここからはひたすら我慢の走りだった。後で知ったが、この日の富山市の最高気温は38℃だったそうだ。路面からの照り返しと浴び続ける熱風で確実に体力は奪われていった。
そして15:31、ついに日本海ゴール。ヤッター!!思わずガッツポーズ。出発から14時間35分の山旅だった。



ついに日本海ゴール!

さすがに暑さでヘロヘロだった。走っている時は気力でもっていたが、片付ける時が暑くてたまらない。おなかが痛くなったのでトイレに駆け込んだが、これまた灼熱のトイレだった。クルマのクーラーをがんがんにかけてようやく復活してきた。

右ひざの痛みに耐えながらの下山や灼熱の自転車漕ぎなど、大変だったが、無事にやりたいことをやり遂げることができて良かった。個人的には十分満足できる山行だった。42歳だけど、まだまだやれるかも、と思った。

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