哀しみ

            
手のひらにあなたの頬骨の感触があり
     
唇に目のくぼみが残る
     
抱きしめた胸の厚みを脳裏に焼き付けて
     
病み細った記憶を消している
     
亡くなる前の優しさは思い出を良いことだけに変えて
     
哀しみは涙に溶けた

     
死後どうしてほしいか
     
話し合えず
     
骨になったあなたを墓の下に収める
     
風習の中で哀しみは風化できようか

     
いま私は手のひらに土の感触
     
樹木のざらつき
     
目を瞑って雨や風の音を聞きたい