<私たち家族の巡礼の歩み>

1.巡礼の動機

 あれは十年前、
   ・・・ちあきなおみの歌ではないですよ。知っている人は中高年??

 昭和62年(1987年)3月21日土曜日、お彼岸の天気の良い休日、小学生の子供たちは春休み、家族でどこかに、そうそう、近くのお寺「一乗寺」に行ってみようと言うことになりました。それが、西国33ヶ所巡りの第一歩になるとは思っても見ませんでした。掛け軸・観音様

 晴天でしたが、早春の少し肌寒い空気の中、閑散とした駐車場に車を止め、美しい国宝の三重の塔を見ながら寺にはいると、何人かの参拝者がお参りをし御朱印を頂いている姿が見受けられ、初めてその寺が西国33ヶ所巡りのお寺の一つであることを知りました。

 また、その年が花山法皇による西国巡礼中興一千年に当たり、記念行事中とのことでした。さらに巡礼の印として蓮の花びらの形をした札に霊場のイメージを描いた「散華」を授与してくださるとのこと。その散華は、とても美しくまた珍しいものでとても気に入りました。

 一方、私の家族は、妻と一男一女の4人、その当時、息子は小学生6年生、娘は4年生でしたが、
   ・目標を持って色々なところに家族旅行ができる
   ・子供が中学生になると一緒に旅行できる機会も少なくなる
   ・一千年記念の「散華」を全部蒐集したい
という動機で一千年記念期間中(昭和62年3月17日〜11月18日)に西国33ヶ所巡りをすることにしました。

 思い立ったが吉日ということで、早速西国巡礼の案内書、御朱印用の掛け軸を購入し、巡礼の第一歩が始まったというわけです。

ライン

2.西国巡礼の道程

巡礼地図 花山法皇中興一千年記念供養の期間、春の彼岸(3月17日)から秋の彼岸(11月18日)までの8ヶ月間で西国33ヶ所を巡礼するためには、毎週日曜日があるというもののサラリーマンの私と小学生の子供たちにとってスケジュール的に大変でした。

 巡礼の方法は、費用を安くあげるためマイカーで、日帰り、おにぎりと飲み物を持参して行きました。近いところから順に行ったので、初めの頃は良かったのですが、徐々に遠くに行かなければならなくなり、また後半ともなると期間内に回りきるために強行軍の巡礼になりました。

 振り返ってると、計10回、延べ3泊13日の巡礼の旅になりました。
 その大半は良い天気に恵まれ、巡礼も目的でしたが、数多くの家族旅行が出来たことはとても有意義なことでした。

 下表に、巡礼のみちのりを記録しました。

月日

霊 場

所在地

ひとこと

1

3月21日
(土)

第26番・一乗寺

加西市

物見遊山で行った近くのお寺だが、記念すべき西国巡礼の第一歩となった。良い天気なるも早春の故「春は花」というわけにはいかなかった。

第27番・円教寺

姫路市

一乗寺で西国巡礼を決心、思い立ったが吉日、次の霊場へと車を走らせた。西の比叡山。ロープウエイが印象的な霊場だった。

2

3月22日
(日)

番 外・
 花山院菩提寺

三田市

ひなびた良いお寺。中興の祖「花山法皇」の菩提寺。巡礼姿の修行大師像が印象的。

第25番・清水寺

京都市

地元周辺では、京都の清水寺と区別するため「播州・清水寺」という。この寺の自動車用の安全祈願ステッカーが多く見受けられる。お寺への道は有料道路。

3

4月 4日
(土)

第24番・中山寺

宝塚市

天気が良く、桜がとてもきれいだった。写真貼付。
「安産の腹帯」が有名。

第23番・勝尾寺

箕面市

とてもきれいなお寺でびっくり。近くの箕面公園で、滝を見て猿に驚かされ、珍味の紅葉の天ぷらを食べる。写真貼付。

第22番・総持寺

茨木市

町のど真ん中のお寺、道がちょっと分かりにくかった。朱塗りの仁王門がきれい。

第21番・穴太寺

亀岡市

総持寺とは一変、田んぼの中の一軒家といった佇まい。とても優しい尼さんに御朱印をいただいた。多宝塔が美しい。

4

5月 3日
(日)

第20番・善峰寺

京都市

日本一の松、横に長く両枝を延ばす五葉の松は「遊龍松」といい、別名「松の寺」。何故か知らねど「神経痛・腰痛の祈願所」

第18番・六角堂

京都市

母が池坊の先生をしているので、豪華な池坊ビルには入ったことがあるが、その隣に長い歴史を持つ六角堂があったことに驚いた。子供は鳩に豆をあげて楽しんだ

第19番・革堂

京都市

六角堂から一方通行の狭い道をくねくねしながらたどり着いた。鹿の皮が革堂の由来とか。

第17番・
 六波羅蜜寺

京都市

朱色のお寺という印象。ガイドには拝観料が書かれていたが無料であった。

第16番・清水寺

兵庫県
 社町

六波羅密寺から坂道を歩いて参拝した。途中の土産物屋は、昔修学旅行に来て清水焼の湯飲みを買ったときと同じ印象だった。音羽の滝と清水の舞台が有名。

5

7月12日
(日)

第10番・
 三室戸寺

宇治市

小ぶりの三重の塔が印象的。

第11番・
 上醍醐寺

京都市

時折小雨の降る蒸し暑い日に、西国巡礼最大の難所に巡り合わせ、大変だった。下ってくる人に後どれくらいと聞きつつもう少し、もう少しと登った。。

番 外・元慶寺

京都市

西国巡礼中興の祖「花山法皇」が落飾された寺。

第15番・観音寺

京都市

泉涌寺の塔頭寺院である。今熊野観音寺として熊野詣の京都版。

その他・泉涌寺

京都市

皇室の菩提寺として「御寺」と呼ばれている。楊貴妃観音が印象的。

第14番・三井寺

大津市

ハードスケジュールの一日、入場時間ぎりぎりにたどり着き、裏から直接階段を駆け上がり御朱印をいただいた。背景の琵琶湖が美しい。帰宅は遅くなった。

6

8月 7日
(金)

第 2番・
 紀三井寺

和歌山市

朝5時に出発。寺の名前の三井水が日本百名水に選ばれている。本堂に通じる長い階段がしんどい。

宿泊

※荒船海岸

和歌山県
 古座町

夏休みを利用、2泊3日の家族旅行。串本と那智勝浦の中間にある「荒磯キャンプランド」に宿泊。近くの海岸での海水浴はとても楽しかった。

8月 8日
(土)

第 1番・
 青岸渡寺

和歌山県
 那智勝浦町

小雨混じりの天気で那智の滝も霞んでいた。写真貼付。那智大社と青岸渡寺とが隣り合わせ「神仏混淆」そのもの。

宿泊

※龍神温泉

和歌山県
 龍神村

那智勝浦から龍神温泉へ狭く険しい道をドライブ。川沿いの露天風呂にはいる。宿の夕食が鮎尽くしで子供たちのために無理いって唐揚げを作ってもらった。

8月 9日
(日)

その他
 高野山・奥の院

和歌山県
 高野町

天気回復。龍神高野スカイラインはとてもすばらしい。購入した掛け軸に「奥の院」の御朱印欄があったため立ち寄った。弘法大師はまだ生きておわしますという印象。将来、四国八十八カ所巡りをしよう。

7

8月15日
(土)

第29番・松尾寺 舞鶴市 ご本尊が馬頭観音の故か、本堂前の馬の像が印象的
第28番・成相寺

宮津市

日本三景の一つ「天橋立」のそばにある霊場。子供たちは、ちょっとだけ海水浴。

8

9月13日
(日)

第13番・石山寺

大津市

紫式部ゆかりのお寺。石山での写真貼付。

第12番・岩間寺

大津市

正式には、正法寺。縁起から雷よけの寺として有名。

第31番・長命寺

近江八幡市

朱色の三重の塔が印象的。

第32番・観音正寺

滋賀県
 安土町

上醍醐寺と並んで歩き疲れたお寺。1km余りの登山道、杖を借りて登り切った。写真貼付。

9

10月24日
(土)

第 5番・葛井寺

藤井寺市

街の中のお寺、近くにプロ野球の藤井寺球場も。

第 4番・槙尾寺

和泉市

正式には、施福寺。ちょっと小雨、傘をさして1km程歩いて登る。多くの観音像が一堂に並んでいた。

第 3番・粉河寺

和歌山県
 粉河町

霊験談が有名な大きなお寺。門前の食堂で有名な?「よもぎうどん」を食べた。味は好きずき。

第 6番・壺阪寺

奈良県
 高取町

正式には、南法華寺。盲人の沢市とお里の壺坂霊験記は有名、現在でも目の不自由な人たちのために福祉活動をしている。小雨混じりの霧深い巡礼となった。

第 7番・岡寺

奈良県
 明日香村

正式は、龍蓋寺、今昔物語にも出てくる。ここも霧雨。「飛鳥の里」は古代文化発祥の地、石舞台も訪ねた。

宿泊

※明日香村民宿

奈良県
 明日香村

観光案内所で紹介された民宿に宿泊。一千年記念期観終了までに一月足らずまとめて巡礼。夕食は「飛鳥鍋」、何かと聞けば、鶏肉の鍋物で牛乳仕立て。古代の人も食べていたのかな?? 味は良かった。

10月25日
(日)

第 8番・長谷寺

桜井市

今日は晴れた。
ボタンと長い登廊で有名なお寺、今までに何度も参詣していたが西国33カ所巡礼地とは知らなかった。

番 外・法起院

桜井市

長谷寺の道すがらにある、西国巡礼の開祖「徳道上人」の御廟所。番外ではここだけ散華があった。

第 9番・南円堂

奈良市

奈良で有名な興福寺の中にあるお堂。興福寺には幾度となく参詣したが南円堂は知らなかった。奈良といえば鹿が印象的。「わらび餅」も絶品。

10

11月15日
(日)

第30番・宝厳寺

滋賀県
 びわ町

船で渡る唯一の霊場。琵琶湖竹生島へ高速船「わかあゆ」で。早く着いたため彦根港で長いこと待たされた。

第33番・華厳寺

岐阜県
 谷汲村

満願の霊場、最後に参拝しようと計画、実施。一千年記念期間終了まで後三日、快晴、参道の紅葉がとてもきれいだった。
<家族写真の一部>
家族写真・青岸渡寺家族写真・石山寺
     第 1番・青岸渡寺          |     第13番・石山寺
家族写真・中山寺 家族写真・勝尾寺 家族写真・観音正寺
第24番・中山寺 第23番勝尾寺近傍・箕面の滝 第32番・観音正寺

ライン

3.満願達成の感想

 約8ヶ月間の巡礼、いや巡礼という厳粛なイメージではなく、ちょっと計画的な家族旅行と言った方が正しいかもしれませんが、とても楽しい巡礼でした。
 桜がまだつぼみの春の彼岸に巡礼を始めて、途中満開の桜見物、キャンプ・海水浴もして、満願を迎えた華厳寺では美しい紅葉の季節でした。

・歩くのが大変だったお寺
・雨降りだった日
・道が分からなくなったところ
・朝早い出発、夜遅い帰宅等々

高野山ご詠歌

 しかし、旅の楽しさ、霊場の美しさ、厳粛さ、満願成就したときの達成感など、何物にも代え難い充実感を与えてくれました。二人の子供の成長にどのような影響を与えたかは、よく分かりませんがきっと良ったことでしょう。

 この次は、妻と二人で四国88ヶ所巡りをしたいものですが、家から遠くかつ広範囲なため、西国巡礼のように日帰り旅行の積み重ねでは達成できないので、定年後時間をかけてゆっくりと巡りたいものです。
 西国33箇所の掛け軸に、番外で「高野山・奥の院」のスペースがあったので参拝して右のご詠歌を書いていただきました。

 <追記>
 私自身、昔から神社仏閣を見て回るのが好きで、学生時代には、会津八一が書いたという看板を掲げ、考古学などに興味を持つ貧乏学生を安く泊めてくれたかの有名な奈良公園そばの「日吉館」に泊まり、和辻哲郎著の「古寺巡礼」を携え古きを訪ねたものでした・・・・残念なことに、「日吉館」はなくなりましたが。

霊場巡りへ