愛しの君へ
ねえ、イギリス
君は僕のことどう思っているんだい
君にとって僕はいまだ可愛い弟なのか?
未だ独り立ちできないと思われている、一人では危なっかしいと思われている弟なのか?
君にとって大人になると言うのはどういうことなんだい
僕はもう大人になった
それが分からないのかい?
背が君を越したから・・
力が君より強くなったから・・
だから大人になったと言っているんじゃない
君に可愛がられるのはうれしかったよ
だって君が好きだから
君が料理を作ってくれるのはうれしかったよ
だって僕のために作ってくれたんだから…
君の料理はうまかったよ、本当さ
だって君と一緒に食べた料理だもの
本当はね、
あまりうまくないの知っていた
だから自分で何とか作って食べてみたんだ
でもおいしくない
君の料理よりおいしくない
だって一人ぼっちで食べる料理なんだ
向かいに君がいない
大好きな君がいない
イギリス、君は
君と会っている僕しか知らないだろう
君と会えてうれしくてはしゃいでいる僕しか知らないだろう
君と会えない時の僕がどんなにさみしかったか
辛かったか
苦しかったか
知らないだろう
でも寂しいとは思いたくなかった
辛いとは思いたくなかった
だって僕が寂しくて泣いたりしたら
君が傷つく
それでも
寒い夜は
窓がガタガタなって
ドアが殴られたような音を立てて
吠える獣の咆哮が家の周りを取り囲む
そんな夜は
一人では耐えられなくて
涙を流して君を思う
ここにいない君を
来てくれない君を
憎んだ
今頃、他の誰かと笑っている君を思うと
君が恨めしくて
そうして僕が君より憎んだのは
君がいないというそれだけで、寂しくて君を憎んでしまう弱い僕
君がいなくても大丈夫なくらい強くなりたい
君がいなくても一人でいられるくらい強くなりたい
君がいなくても寂しくないくらい強くなりたい
君のために・・
大人になるってこういうことなんだよ
自分の中にいろんな感情が生まれるんだ
淋しさや悲しさや
それと共に嬉しさや楽しさや喜びや
そして人を憎むことも
自分を厭うことも
そしてそこから意志が生まれる
僕は今はっきりと分かることができるよ
何故僕が生まれてきたか
何の為に生まれてきたか
僕は君を守るために生まれてきたんだ
大人になって君が連れて行ってくれた世界は新鮮だったよ
今まで見たこともないような世界
見上げるようなバカでかい柱が信じられないような高さでそびえたつ宮殿
何のためにそこまで大きくしたのか分からないシャンデリア
そこに集うとまるで蟻のように思える人々の群れ
そこには草原も草をはむ羊もバッファローもそれを襲うオオカミもコヨーテも、鷹も鷲もいないけど・・・・
それよりも恐ろしいやつら(国)がいた
何のために着ているのか分からないゴテゴテした服や
何のためにするのか分からない毒をはく愛想笑いや
腹の中を隠した会話
ここは君のいる世界じゃないよ、イギリス
君はこんなところにいちゃいけないんだ
君は僕と一緒にいるべきだ
そうだろう
君には想像もつかないだろうね
あの時僕が考えていたことを
君は僕が守る
君は僕のものなんだよ
あの時に初めて知った
自分の気持ちを・・
どれだけ君が愛しいか
他のやつら(国)を知って
君がほかのやつら(国)と話すのを見て初めて芽生える気持ちがある
君を絶対にほかのやつらに渡したりしない
そして僕はいつか、
いや・・近いうちに必ず
君の処女地に上陸する
from America
千年処女
千年女王ならぬ、千年処女は今もおれにかみついてくる
どんなに毒を吐いても、どんな皮肉を言っても、どんなに悪態をついても、人を見下したところで・・・
お前まだ処女なんだろう?
それが分かるだけでおれは優越感に浸れるんだよ
ちょっと手を出して、ベッドまで連れて行けば、すぐに落とせるのは分かっているんだ
誰とも寝たことがないくせに…
お前を横たえて、耳元の囁いているだけで、真っ赤になることも分かっている
だって以前からかったら、それだけで真っ赤な顔をした
もっともその後の強烈パンチには死にそうになったけどな
そうなんだ、ベッドまで連れて行けば落とせるのは分かっている
ただベッドへ連れて行くことができないんだ
ケンカだけは強いんだからな
子供のくせにハリネズミみたいに・・
触れるだけで命がけ
そんなのに命を掛ける気もないけどさ
考えてみればお前だけが落ちないんだ
他の全部おれのものになったっていうのに…
昔のお前が可愛かったって言うのは俺の幻想なんだろうな
あの頃からお前は生意気だった
でもあの頃はまだ今のような力を持っていなかった
いくらオレでもな
まだよちよち歩きのお前まで手を出すのは酷いと思ってできなかったさ
そのことを後悔してはいないけど…
考えてみればあの時、おれもまだ15かそこらだったはず
それで、お前を狙っていたというのはある意味おれもすごいけど…
ずっと長い間、お前に会いに、ドーバー越えてブリテンまで行っていた
その頃を懐かしいなんて思うのは俺も年をとったのかな?
単にからかいに行っていただけじゃない
お前の成長を見に行っていたんだ
だけど成長したお前はもう俺の手に負えるような奴じゃなくなっていた
いつ見逃したのだろう
ずっとまだ子供だと思っていたのに…
おれのからだの半分までとられそうになるなんて・・
どんな悪党なんだ、お前は・・
その定期通いが、まだ続いていることをお前は知っている?
もう千年になるんだけど…
千年経ってもお前は全く変わらない
あいも変わらず、軍事力だけはある大国になっただけ
お前さ、
そんなことしていて楽しい?
世界中で暴れまくり、悪逆非道の限りを尽くして
そうして分捕った富で何をするでもなく・・
結局また軍事力に使うんじゃないか?
世界制覇でも目論んでるの?
ああそうか、だからおれが邪魔なわけね
美味を楽しむこともなく、目で美しいものを見ることもなく、当然誰と寝るわけでもない
分捕った領地を楽しむこともしないわけ?
そこの横にいる美女も目に入らないわけ?
お前の思い通りになる美女や美少女や美少年までいても・・
全く目に入らないわけ?
もう少し人生を楽しんだらどうなの?
ゆったりとした部屋でくつろいでさ
ワインでも飲みながら、美味しい料理を食べようじゃないか
とろけるようなデザートも用意できている
後、そうだな。
オレだったら、すけるようなプラチナブロンドの髪の腰は折れそうに細いけど、豊満な美女がいてくれれば、問題ない
お前はどんなのがいい
言ってくれれば用意だってできるんだ
いや本当はそうじゃない
ああ、そうだな、
おれも素直になる時が来たようだ
もう今となってはお前を
だれにも渡したくない
お前を見るだけで、たぎるんだよ
どんなに平静を保っていても
お前がまだ処女だと思うそれだけで・・
どう考えてもおかしいと思うんだけど…
なんで(ベッドでは)百戦錬磨のこの俺が・・
何故、何も知らないお前に振り回されなければならないんだ
そんなこと他のやつらに気づかれたら、あきれるよりも驚かれるじゃないか?
オレがまだこんなに純情だったなんて・・
一度しか言わないから聞いておけよ
本当はね、愛しているんだ
I Love You
これが俺の精一杯の気持ち
(英語で言ってやった気持ちを分かれよな!!!)
by France
そろそろ時間だ。
おれは電話台の横の椅子に座る
だいたいこの時間なのは分かっている
かかってこない日もあるが、掛ってくるならこの時間
この時間から2時間の間
一体なぜこの時間なのだろうか?
夕飯を取った後なのか?
くそったれめ!
今夜は鳴るのか?
そう思って手で顔を覆う
無事でいてくれ、せめて…
リリリン・・
鳴った
すぐに飛びつこうとして自分を制する
飛びついても相手を利するだけだ。
落ち着こう
カチリと電話が音を立てる
ゆっくりと耳に当てる
向こうからいまいましい声が聞こえる
「やあ、元気だったかい、君はいつも三回で取るんだね。律義なのはお国柄かな?」
「兄さんはどうしているんだ、無事なんだろうな」
無駄な時間を費やす気はない、単刀直入に聞く。
「もちろんさ、いつも言っているだろう。ちゃんといるよ。無事だって。僕の言うことが信じられないのかな?」
お前の言うことが一番信じられないんだ。
「お前は無事だ、無事だと言うが、おれはまだその確認をもらっていない。せめて声くらい聞かせたらどうなんだ。」
「え〜、そんなことしなくても分かると思うんだけどな〜。大丈夫だよ、元気だって。君の兄さんは本当に優秀だよ。アトミック・ボムまで造るんだから・・・」
こいつ言うにことかいて・・はらわたが煮えくりかえった。
「その上宇宙船まで造ってくれたよ、あともう少しだから…」
「大気圏外までは成功していたんだ、今更…」
「だからもう少しなんだよね、ロケットが完成するまでは君の兄さんを返すわけにはいかないんだ。分かってくれるだろ。」
「完成したら返すと言うのか?」
「う〜ん、まあね。」
こいつなら完成した後に殺しかねない
「大丈夫だよ、完成するまでは必要なんだから・・何もしないって・・」
くらりと目眩がして椅子に腰かけた。
「待遇はどうなんだ。」
「え〜なに…」
「待遇はどうだと聞いているんだ!」
「もちろん特別待遇だよ。」
どう言う意味の特別だ。
もう言葉遊びをしていられない。
「ちゃんと食べているのか?睡眠は?生活環境は?言っては何だが、お前のところは悪い噂しか聞かないぞ」
「まあ、君がそこまで言うなら、声くらい聞かせてやってもいいけど…」
その言葉に心臓が止まるかと思った。
「ねえ、電話出る?」
その電話のそばに兄さんがいるのか?本当に…
それとも単にからかっているだけか!
右手がぶれて受話器が踊る
「残念だね、出たくないんだって、君の兄さん」
「貴様!」
「それでね、君の兄さんの世話もあって、こちらも経済状況苦しいんだよね、というわけでいつもの通り500くらい振り込んでおいてよ。」
「この誘拐犯」
「人聞きの悪い事言わないでよね、国が負けたんだから国土を取られるのは当然でしょ。」
「金まで要求するのは誘拐以外の何なんだ。金くらい自分で稼げ」
「無茶言わないでよね、僕んところは君んちみたいにできないんだよ。金稼いだり、開発したり、発展させたり、才能のある奴はいいよね。何でも出来て、自分のできることを人も易々と出来ると思ってんの?」
「じゃあとにかくそういうことで…」
そのまま電話は切れた
思いもかけない奴の秘めた怒りに何も言えなかった。
奴を怒らせたら兄さんが、と思うと…
どのくらいそうしていただろうか…
気がつくと柱のそばに人が立っていた
「ごめんね、ルイス。脅かすつもりじゃなかったんだけど、とても声を掛けられなくて…」
「ああ、俺も悪かった。こんなところではなんだから客間へ行こう」
「いや、僕はここでいいよ。君こそ休んだ方がいい。ベッドにでも行くかい?お茶とか僕が持ってきてあげるから…」
「客人にそんな・・」
そう言って笑ってみると、手を握られた。
「そんな他人行儀な仲じゃないだろ」
困ったような顔、手にぬくもりが伝わる
「ルイス」
そう言って腰に手をまわされて、抱き寄せられる
それは嫌じゃない、でも…
口づけようとするその顔に横を向く
「すまない、今はそんな気には…」
「そんな気ってどういう気だい、君の嫌がることをする気はないよ」
ほほに口づけられる
イヤじゃない、むしろイヤじゃないから困るんだ
「今は兄の事で頭がいっぱいで…」
ほほから耳の下へ、そして首筋へと移動する感触
このままおれは…
しかし感触は途絶えた。
「あいつは…何だって・・」
「いつもの事だ、兄さんは無事だと言っていた。だが本当かどうか・・」
「そうか、」
ふいに離されるこの感覚
おれは愛されているのか、それともこの男は単にあの男の情報が欲しいだけなのか?
愛なんて考えるおれは甘いのか?愛されていると思いたいが…
もしかして、お互い利用する関係?
「とにかく休んだ方がいい、つらそうだよ」
「いや、そんな・・・」
思わず顔を赤らめてしまう。
辛いのはそのことじゃない
それにこのまま強引にでもいいと思った自分を恥じた。
そう思った途端に抱き寄せられ、口づけられる
「言うことを聞かないなら襲っちゃうぞ」
明るくそう言われて、どう答えたらいいのか?
それでもいいなんて言えるわけがない
「ベッドまで行かなくてもいい、とりあえず向こうへ行こう」
それで手を打った。
「それであいつは何だって」
「ああ、いつもの通り元気だと、しかし何を言っても真実かどうか分からないのだからどうしたら…」
「そうか」
「なあ、アル」
「何だい」
お前はあちら側の情報が欲しいためにおれに接近したのか?
そう聞こうとして口ごもる
そう言ってしまったら怒って去るかもしれない
本当の事が暴露されたら、もうかりそめの関係もなくなるかもしれない
おれは口をつぐんだ。
もし、かりそめの関係でも、アルに愛がなくても、それでも・・・
アルを切ることは兄さんの情報も切ることだ
なんて複雑な関係
イヤ、なんて優柔不断なオレ。
こんなにも他人の愛を求めている
優しくしてくれる手があればそれにすがってしまう
兄さんがいなくなってから・・
(一人でやっていけるよな)
そう言った兄の声
振り返ってそう言った兄はそのまま連れられて行った。
兄さん、おれは兄さんがいる時よりもずっと弱くなった
どんなに強くなっても心だけは弱くなった
淋しくてしょうがないんだ。
「兄さんの情報かい?」
それも欲しい、でもお前の本心も聞きたい
でも怖くて聞けないよ
「はい、出来上がり。まずはコーヒーでも飲もうよ。」
いつも入れてくれる温かいコーヒー、これがなくなってしまったらおれは…
「実際こちらの情報も取りたてて何もないよ。ただ生きている、それだけは確かだ。」
「そうか、それならいいんだ。お前の言葉が一番安心できる。」
「いつもすまない」
「いいんだよ。」
たったそれだけの情報のためにどれだけの諜報活動が必要か知っている。
「少しは落ち着いた?」
コーヒーを飲んで背もたれに体を預けると、前に迫ってきたアルに言われる
「ああ、そうだな。本当だ、疲れていたんだ。今になって分かるんだな。緊張していた。」
「眉間に皺の君なんていやだからね。頂くならおいしく頂きたいよ。」
「あの…アル・・」
「ん・・」
「お、おまえは本当にこんなおれを・・その好いてくれているのか?こんな可愛げのないおれなのに…」
そううつむいて聞いた
答えが返ってこないのは図星だからか?
「お…俺はちっとも可愛くないし、み・・みんなからそう言われるし・・」
「そのみんなっていうのはよっぽど目がないね、こんなに可愛い君なのに…」
そう言って片目をつむる。
「あ…あのアル、言っておきたいことが…」
「ん・・」
「さ…さっきの情報でほかの事も言っていた、それで・・・」
まるで今日のセックス代だ。
それが分かっているからこそ目から火が出る
ごめんなさい、兄さん。あなたの弟はこんなにふしだらになってしまったんです。
「ああ、そんなことは後にしようよ。楽しい時間を邪魔させないで、それともルイス、君は僕に気をそらせたいの。」
「そんな・・・」
素直じゃないのは分かっている
好きだなんて言った事がない
抱いてくれって言えばいいのか?
とても言えない、そんな勇気はない
意気地無しなのか、おれは?
「緊張を解いてゆっくりして・・」
そう言ってベッドに寝かされる
緊張していたんだろうか?おれは・・
そうだ緊張している
だんだんとわかってきた。
これは・・そう、恋だ。
とても素直でいられない。
とても平静でいられない
とても普通でいられない
あなたの前では・・
「僕のことだけ考えて」
そういってほほを撫でられる
どうしたら、嫌われずに済むのだろう
まるでおびえた子供のようになって
自分に自信がなくなって
どうしたらいいのか、分からない。
せめて言いなりになるから、言うことを聞くから嫌わないで…
それなのに優しいあなたは何も要求しない
せめて愛されていると思わせて
迷惑じゃないと思わせて
好きで抱いてくれると思わせて・・
おれよりほんの少しだけ年上なだけなのに
どうしてこうも如才がないのだろう
どうしてこんなに…
「足を開いて、怖がらないで、ゆっくりでいいから・・・」
こんなに・・
「あっ・・」
「いやかい?」
「あなたは嫌じゃないんですか?こんなことして・・・」
「ふふっ、君ってベッドの中では敬語になるね」
「すみません。」
耳に口づけされる
下半身にあなたの舌を感じながら一体俺はいつまで平静でいられるだろう
もうどうしようもないくらい、火照ってくる身体に耐えきれずに涙を流す
可愛いよ
そんなあなたの声が耳に届く
おれがかわいいわけがあるものか
でも・・・
初めて勢いに任せて抱きついてみる
もうどうなったって構わない
「やめないで・・・」
天国の陶酔と地獄の降下が来る
何故あなたにこんな姿を見せなければならないのだろう
何故一番好いている人に一番みっともない姿を見せなければいけないようにできているんだろう
そういう理不尽なものなのだろうか
「もう一回した方がいいよね」
あなたが絡めてくるその指が嬉しいのか恥ずかしいのかさえ分からない
痛みを伴う拷問の方がどれほど気楽だろう
(して)
そう言った方がいいんだろうか?
もう俺にはどっちだってかまわない
嫌われないなら何だっていい
でもそんなことはとても言えなくて・・
(あなたの好きにして下さい、嫌われないならどっちでもいいんです)
そんなこと…
せめてあなたに好きだと知られるよりも、淫乱だと思われた方がまし?
ずるいおれはどこまでも防御を張る
一体どうやって答えたらいい
口づけられる時が一番好きだ
初めて自分から舌を出してみる
あなたを欲しいとはまだ思えないけど
拒めないおれがいる
もっとキスしてください
その心が溶けるまで…
迷惑じゃないと信じられるまで・・
あなたにとって俺は少なくともセックスをするのに面倒な相手ではないと信じられるまで
おれが本気で好きだって信じられるまで…
そのメガネの奥の瞳が・・
冷たく光るのが辛い
こんなおれを笑っているのですか?
「好きです」
それしか言える言葉はない
大きく開いたブルーの瞳
その眼の奥にあるのは何?
(by ルードヴィッヒ)
君の事は好きだよ、ルイス。
本当さ
だって君はとっても謙虚なんだもの
それだけ有能なのに謙虚って珍しいよね
君はほかの愛人と違って僕にごねることもない
愛してくれとせがむこともない
僕を独占しようともしない
嫉妬に喚くこともない
だから好きだよ、ルイス
嘘じゃない
僕が一番いやなのはね
僕の事を愛してもいないくせに、独占しようとわめきたてる奴らや援助が欲しいだけのために媚を売るやつら
援助が欲しいなら大人しくして待っていればいいのに…
そういうのに限って強欲なんだから・・
手を出しただけで恋人づらする奴らも困るけどね
それが僕の前ならまだいいけど、他のやつらにまで僕の威光を借りるのはいい加減僕だって困るんだよ
そういう思い上がった奴らに僕がどんなことをしているかなんて・・
とても君には言えないな…
だって君の前では善人でいたいもの
でもね、ルイス
もしかして君はまさか本気で僕が好きなのかい
それはまずいよ、僕たちの間で本気なんて…
国っていうのはそんな感情になっても、所詮上司には逆らえないのだから、後で辛い思いをするだけだよ
おかしなものだね
上司から、今のうちに君を抑えておけと言われた時は
いい加減うんざりしていた
だってはっきり言って君には係わりたくなかった
当然僕の中の君への印象は最悪だったし、
でもね、
僕は実は君の事をまるで知らないのだと思い知らされたよ
君の歴史すらあの時は知らなかった
会ってみてこんなにも御しやすい、相手だったなんて…
これほど君が単純で扱いやすかったなんて…
どう考えても不思議なんだけど…
君がヨーロッパ全土を恐怖に陥れたなんて…
君たちって本当に不思議だよ
君と同じく、あの国もね
だからね、
君が悪いんだよ
そんなかわいい事を言うから・・
僕が止まらなくなるんだ
君の前では紳士でいようと思ったのに・・
「ごめん、痛かった?」
「す・・少し・・」
「ごめんね、君があんまり可愛いから止まらなくなったんだよ。」
そう言って君の首にキスする
恥ずかしそうにうつむく君は・・やっぱり本気なのだろうか?
それを僕は喜べばいいのか?
上司ならなんて言うだろうね
「それでさっきは何だって?」
「ああ、確か今、宇宙船を作っていると言っていた」
「まあ、それはこっちでもある程度は予測をしていたけど、V2ロケットの事?」
「V2ロケットは兵器名で、もともとはA4というんだが、それを兵器転用したんだ。このロケットは大気圏外までは成功している」
なんだって・・・
そんな話は聞いていないぞ
大気圏外はすでに成功している
つまり宇宙船としてすでに出来上がっていたということか!!!
「大気圏外までは成功している?」
「あっ、いやあの・・・」
よほど僕は怖い顔をしていたのだろうか?
君がおびえている
「隠すつもりはなかったんだが…その・・・」
「イヤいいんだよ、それで成功したのはいつ?」
「1942年の10月には大気圏外に出ている。ただそれをしてしまっては兵器として使えないだろう?だからそれを転用したのがV2なんだ。すまない、知らないとは思わなくて…」
じゃあなんだ、ソ連が成功したのではなくてすでにドイツの段階で成功していたと言うのか!
そんなことあの男、一言も言っていないぞ!!!
「アル、あの・・・」
「イヤいいんだよ、別に君のせいじゃないんだから・・そこまでいっていると思わなかった僕の責任だ。」
「担当者が言っていなかったのか?フォン ブラウン技術部長は君の所へ行ったのだろう?」
そいつが言わないから僕が知らないんじゃないか!
その怒りをこらえながら不安そうに見ているルイスにはなるべき優しく言った
「ああ、大丈夫だよ、今更。君が言ってくれさえそれば、それ以上はないって、きっと彼はそんなことよりも月へ行きたかったんだろうから・・」
そうだ、きっとあの男はそれを優先してドイツ時代と同じものを作る気はなかったんだ。
時間の無駄だと思ったのだろう
「彼はね、こう言ったよ。最初僕らの前に来た時に、「月へ行きたくないですか?人類の足跡を月に残すんです。そのために僕はここへ行きました。それができないなら死んだも同然です」って」
動じもせずにそう言った
自分を殺すかもしれない僕らの前で…
それをさせてくれなければ殺されてもかまわないとでもいうふうに…・
「だからね、分かるだろ、ルイス。君が今言ってくれさえすれば、彼には何もしないさ。むしろ早くに分かってよかった」
うつむいているのは流石に、気が咎めるのか?
君のその僕に向けた目は何を意味するのだろう
「今更何も隠す気なんか・・おれにとっては別に価値のある情報ではないし・・」
「うん・・」
「ロンドンへの着弾はすでに大戦中にしていた」
それは知っている。いきなり襲ってくるロケットにロンドン市民は恐怖と混乱に陥った
「更に今で言う大陸間弾道ミサイルのさきがけも作ろうとしていたが、その時にはすでに戦局の悪化とか予算の関係もあるし、そもそも兵器としては命中率が悪くて研究が中断したんだ」
それってアメリカ大陸にまで届くロケットだろう?
全く君たちって・・
例の彼も終戦間際にはアメリカ本土まで細菌兵器を飛ばしてくるし…
「でもその大陸弾道弾ロケットのA9・A10は完成していた。更にこれを下段に使い、切り離すことによって、さらに遠くまでつまり月へ行くことができるロケットを作ろうとしていたんじゃないかな?今の話を聞いてみると・・」
なるほど、でも大気圏をすでに成功させていたということは非常にまずい
つまり君たちの技術だけでそれができるのならソ連としてはそれをなぞるだけですでに宇宙ロケットは作れるということになってしまう
月なんかへ行くことにかまけていた僕は後れを取ってしまうじゃないか!!
これを知れば上司がなんていうか…
「彼自身は命令違反ということでゲシュタポに逮捕された。それ以後の事は…」
「僕も知っているけどね」
「一度は釈放されて元に戻されたが、戦局の悪化と共に、彼らを殺すように軍部が命令を下していた。俺もそれに従っていたのだが…」
おそらく、軍事機密を他国に取られるよりはと思ったのだろう
やることが徹底している
各国がドイツになだれ込んだあの時期
もうドイツの敗戦は決定的だった
そのため、熾烈を極めたのはドイツへの攻撃ではなくて、ドイツの研究者を自国へ連れ去るための争奪戦だった
彼らは各国と自国から狙われていた
「アル、おれは本当に何も隠す気なんかないんだ。ただ知っていると思ったから…」
「もちろん君を疑ってなんかいないよ。それとも僕がそんなに怖い人間に見える?」
そう言ってみると抱きつかれた
震えている?そんなに・・・
「本当は怖いんだ。嫌われるのが…どうしようと思って」
その言葉に僕は思わず君を抱きしめた
バカだね、君は・・
僕に本気になるなんて…
ずっと好きだと思っていたけど
胸がせつなくなるくらい、君が愛しいと思ったのはその時からだった
(by アルフレッド)
邂逅
会議室に入るとあなたの細い声がどこからか聞こえてくる
(えっ、そんなの決まっているだろ?)
(君だけだって)
(やだなあ〜そんなことないよ、だって僕・・)
その細い声に全身の注意を向けどこから聞こえてくるかを探してみる
すぐに見つかった。
こちらの方を向いているあなたとあなたの前にいるそれは…
かっての同盟国、黒い髪の…
すぐに目をそらして、横を向いた
別に何でもない自分の席へ行くだけだ
「ルイス!」*1
そんな大きな声で呼ばれたらおれはどうしたらいいんだ
ちらりと視線をずらすと、背中向きだった元同盟国は少しだけ振り返り少し会釈する
「来てたのかい?」
そう言っておれに駆け寄り、おれの肩をたたき、腕を組もうとする
「君が来てくれて助かったよ」
ずるい言い方だと思いつつもおれは安堵する
「話の途中じゃなかったのか?」
「くだらない話だよ」
その言葉におれの心はズキリと痛む
おれの事もいつか、いい加減うるさいと思う時が来るのだろうか?
何故今頃こんなことに気づく
愛人はおれだけじゃない、他にいくらでもいたのに…
考えてみれば当たり前の事なのに・・
一時でも独占するのが難しい事に今更気づく
「ねえ、こっちへ来て」
腕をとって連れて行かれる
あなたと一緒にいるだけで他人(各国)の注目を浴びると言うのに・・
結局隣の席に座らされてしまった
何も言わずに下を向いているおれにあなたは遠慮がちに話しかける
「ルイス、あの・・」
「まさか怒っているわけじゃないよね、あんなことくらいで・・」
そんなあなたの戸惑いがちな言葉にも、ただ首を振ることしかできない。
どう言えばいい?本当の事を言えばいいのか?
でもそうしたら困るんだろう?
それとも今までささやいてくれた愛の言葉は本当なのか?
本心を言えばいいのか?
愛している。あなただけが欲しいと・・
そんな恥ずかしい事とても言えない
分かっている、こうして隣にいること自体が…
他のやつらの威嚇になることくらい
今(敗戦国)のおれには国としての確立が大事なことくらい
でも、もうそんなことどうでもいい
あなただけが欲しい
そう思っているとあなたは座席の横においたおれの手に自分の手を重ねてきた
「ごめんよ、君には何もしてあげてないよね。」
そう言って、手の甲をなぞられる
「でも何もしていないわけじゃないんだよ。君の兄さんの事だって、ただ成果が上がってこないだけで・・」
そして指の間にあなたの指が入り込み、一本一本なぞられる
もう我慢が出来なくなって体が反応する
せめてこの後のあなたが欲しい
(I love You)
そう言ってみた、あなたの母国語
「もちろん、僕もだよ。」
(Plese express with your Body)*2
「ここでは無理だよ」
分かっている
こんなやり取りはほかのやつらにはどう見えるのだろう
おれにしてみればまるで羞恥プレイだ
これ以上何も言えない
(君がこんなに積極的だったなんてとてもうれしいよ。でもごめんよ、もう行かなくちゃ。後で必ず連絡する。)
そうささやかれた
分かっている、物欲しそうなやつらが見ていて、全部に声をかけなければいけないことくらい
でも俺は本当に…
あなたの愛だけが欲しいんだ
後で知ったのだが、他のやつらはアメリカの俺への働きかけが失敗したと噂したらしい
おれが終始笑いもせず、困った顔しかしなかったからだと・・
かっての敵国とそう簡単に友好関係にはなれないものだとささやかれたそうだが…
事実はまるで違うんだが…
アメリカひどい(>_<)
*1 ルイス=ドイツの事、何故かニコ動ではこう呼ばれているので…
*2 「体で示して」を英語にしてみました、辞書片手に…
(合っているかどうかは知りません)
あ〜アメリカひどいな
ドイツがこんなに純情だったとは書いてみるまで私も知りませんでした
でもドイツって戦前・戦中まではプロイセン+ドイツで「ドイツ」だったけど、東が切り取られて西だけになったドイツってちょっと今までのドイツと性格違うんじゃないのって思いました
どっちかっていうと育ちのいいおぼっちゃまタイプのオーストリアの血を継いでいるでしょう?
人がよすぎて純情じゃないかとか←妄想
そもそもドイツがSだったのはプロイセンの影響だよ、きっと
その兄と引き離され、さらに敗戦後は周りから白い目で見られ、そんなときにアメリカだけが優しい言葉を掛けてきたとしたら・・
コロッといっても不思議はない←妄想
実はこれは番外編のようなもので、本編長いので書くの大変だと思う、今から…
安堵(メリカ×イギ)
君にひっぱたかれて、安堵する僕はいったい何なのだろう?
大人になったと思っていた
事実、僕は大人だったはずだ
それなのに・・・
君を手に入れるまで大人だったのに・・
手に入れた今となっては君が怖い
怖くて仕方がない
君がその体をベッドに横たえた時、
僕はどうしていいのか分からなかった
夢見た狂喜の瞬間であったはずなのに・・
ごくりと喉を鳴らして、ベットに入った
昨日の事のように覚えている
終わった時、君が耳元で言った言葉を
君はまだ覚えているか?
僕はその口調から息づかいまで
全て覚えている
「へたくそ・・」
そりゃあ僕だって初めてだったんだから
仕方ないとは思うけど
それはないんじゃないかって正直思ったよ
もっと甘い夜になるはずだったのに
夢はしぼんで消えた
いつの間にか君が怖くなった
怖くて仕方がない
その後の僕の事は
君に言い訳もできないことは分かっている
でも僕にだって立場があることは
少しは分かってくれると思うんだ
そりゃあ僕だって世界平和のためにそうしたなんて言わないけど
そういう側面も少しはあるんだし…
どんどん君から離れていく
君が一番愛しいはずなのに・・
君から足が遠ざかってゆく
会うのさえ怖くなる
そのことを最初は時間がないとか、
他の恋人の事を君が勘付いたかもしれないから怖いのだとか、
自分で理由を付けたけど
本当は君そのものが怖いだけ・・
でも何故怖いのかさっぱり分からない
あんな一言で僕が怖がることなんかないはずだし…
他の恋人の方が安堵するんだ
安心していられる、優しい言葉も掛けられる
ある意味で言えば楽しめる
もちろん絶対に君には言えない言葉だけど…
愛しているのは君だけのはずなのに…
君の前では全ての自信がなくなるけど
他の恋人の前では自信を取り戻せる
自分を取り戻せる
そんな気がして…
でも今日ばかりは怖いなんて言っていられない
イギリス、君に会いに行かずにおれない
他の恋人にはどうしても外せない重要な用があるんだとか言って・・
自分で呆れる
どの辺が重要な用なのか?
自分の気持ちを最優先にしただけ
我ながらなんてやつだろうと思いながら
君に会いに行く
会ったらどうしようと考えていた
威嚇して怒ればいいのか?
君を責めればいいのか?
僕以外のものに身を任せた君を・・
でも僕だってその辺に関しては何も言えない
そんな思惑がくるくると頭の中を回って
君に会った時は最悪
最低の男になっていた
何も動ぜず、冷静に出迎えた君は
返って僕を刺激する
差し出された紅茶の入ったカップを
たまらず振りはらう
紅茶は零れ、コップは絨毯の上に落ちた
「フランスと寝たんだろう」
君は眉さえ微動だにしない
「いいから座れ」
「ごまかさないでくれ、もう分かっている君は…」
そうしてたまらずその場で泣き崩れた
「そりゃあ僕だって悪いのは分かっている。でもあんまりだよ。身勝手かもしれないけど、あんまりだ。」
「お前、何言ってんだ。」
そういう君に何一つ答えられずに、膝を折って泣いた
「入ってきていきなりそれか!だからガキは嫌なんだよ。とりあえず座れ」
「君のEU入りがそうじゃないって言えるのか?何故今頃になってフランスが承知した。おかしいじゃないか、ずっと君を拒んできたのに…」
「お前の頭の中はセックスで、できてるのか?おれがEUに入ったらフランスとやったことになるのか、人を侮辱するのもたいがいにしろよ。」
「イギリス、お願いだよ。何でもする。赦してくれるならどんなことでもするから、だからお願い。もう一度僕のものになって、僕だけのものに…」
そうやってすがりつく僕に君がしたことは僕に強烈な平手打ちを喰らわせたことだった。
その時になって初めて自分のみっともなさが分かった
そしてそれに安堵する自分がいることも…
「人の言うことも聞かないで喚き立てて、侮辱しやがって。おれが?ああ、その気になれば別にお前に遠慮なんかしないけどな。お前も別にいいんじゃねえの?最近おれよりもいいの見つけたみたいだし・・」
そんな皮肉に答えるすべを僕は知らない
「お前、昔と変わんねえな。追い詰められたら泣き落しだもんな。俺から独立しないほうがよかったんじゃねえの?」
流石にそれは思わなかったけど、確かに大戦後、無理はしてきたことは事実だ。
第一国になることの重圧がここまでのものだとは思わなかった
そう、ここに来て初めて知った
自分が重圧に耐えてきたことも、その重圧の存在も・・
「イギリス」
あきれたように溜息をつかれる
その次ぎに続く言葉は何なのか?
死刑宣告に等しいのか・・
「人に愛を乞うときはちゃんと礼儀をわきまえろ。これだからヤンキーは嫌なんだ。ひざまずいて乞うのが当たり前だろうが、終わってからもちゃんと感謝を述べること、これ最低限な!本来なら愛を語るのが本当だが、お前には賞賛の言葉もないのか!お前はやっただけじゃねえか!このへたくそが…」
そんなことを言われても初めて聞いたし…
どうすればいいんだ?
「あの、じゃあどうすれば…」
「跪け」
「えっ」
「片膝をつくんだよ、したこともないのか!」
い、いやそれは・・・
した事もないけど…
ああ、そうか。いつか見た君が女王に膝を折っているあれか。
ああいうのは君主だけにするのかと思っていたけど、女性に愛を乞う時にもするものなのか。
なんとなくイメージがつかめてきた。
中世の騎士が跪いている様子が…
つばの広い帽子、袖がぴらぴらした服。
あんな格好でどうやって戦えたのかと思うけど、女性に愛を乞うなら効果があったのだろうか?
僕は膝を折って手をとった
その手に口づける。
手首より上のキスは情欲のあかしとか・・
掌までは尊敬で済むとか…
昔はそこまでしかできなかったのかな?
なんだか恥ずかしいけど…
「ん」
満足した君の声が上から聞こえてくる
「それで・・・」
それでって?
「お前言うことがあってきたんじゃないのか?何しに来たんだ。用件を言えよ。」
それは君への愛を言えって事?
何しに来たのかってそれは・・
それも言葉で言えって事・・
胸の奥から恥ずかしさがこみあげてきて、身体が火照ってゆく。
そんなこと・・・
でも昔はそうだったのかな?
礼儀を通して愛を乞うて、承知してくれてからって事?
それって関係を持っていても毎回なの?
そんなことよくできたよね。
どうやって言葉でその気にさせることが出来るの?
僕には信じられないんだけど…
「出直してこい。」
スッと握っていた手さえ、抜き取られる
「何も言えないんじゃ、ガキと同じじゃないか。自分の意思も気持ちも言えないのか?」
「イギリス、僕は・・その、僕がしたことは…」
「そんなのは全部後回しだ。まずは俺に受け入れられるかどうかだろう?会いの言葉も言えないのか?」
確かにその通りだから何も言えないけど・・
君が怒っていないだけ良しとするか。
浮気も勘違い見たいだったし…
そう思って僕はその場は引き下がった。
君に今すぐ会いに行く
自身のものの先にある舌の感触
それを見降ろすと君のつむじが目に入るけど、僕には何の感慨もない
いずれは立ってくるだろう、生理現象だから…
君の口からプルンと出てきた僕のものはすでにそそり立っていて、僕はそれで君の頬を触って聞いてみる
「入れられたい?」
随分意地悪な質問を僕もするようになったよね
断れないのを分かっていて・・
すると君は口ごもり、下を向いてほほを赤らめた
へえ〜、少しは恥じらいがあるんだ。
そのほうが僕好みなんだけどね
「ええ・・」
及第点だね、型どおりだけど…
「飲むのと入れるのとどっちがいい?選ばせてあげるよ。」
うつむきながらも見開いた目は悔しさを物語り、悔しくて噛んだ唇がその屈辱に震える
いいね、いっそのこと反抗してくれれば、なお僕好みなんだけど…
それはできないよね、分かっている
ついでに僕なんかとしたくないことも分かっている。
されたくないことも、愛していないことも・・
当たり前か!
だからもうこのまま顔面にかけてやったよ。
「ああ、ごめん。君が迷っている間に我慢できなくなったよ。だからもう一度してね。一度じゃ満足できないから。」
びっくりして、それでも震えながらでもそうしようとする君は、哀れとは思うけど、何の興味も引かないよ
結局触れる気にもならなかった
口の中に数回出しただけ
「今日はどうもありがとう。でももう君には用がないみたいだよ。それじゃあね。」
そう言い残してドアを閉じて出てゆく
ケースから煙草を一本取り出して吸ってみる
アヘンだけは吸うなよ―なんて誰かさんの言葉を思い出す
君が言うセリフじゃないよね
虚しい
欲望を放出して空っぽになった心には何も残っていない
ルイス、君に会いたい
僕を愛してくれる君に会いたい
なんだって僕はこんなところであんな奴を相手にしたんだろう
それが最初から決まっていたスケジュールであることも、仕事である事も分かっていたけど、それでも思う
こんなところであんな奴の相手をするのなら君に会いに行きたかった
もちろんそんな指令は出ていないのだが…
そうだ、せめて電話してみよう
君の声が聞きたい
そう思って僕は大急ぎで家まで車を走らせる*1
それでも君との時間をゆっくりと過ごしたくて、シャワーを浴びてから、支度を整えて、ソファーに座りながら、受話器を取る
君の声が聞きたい
受話器から聞こえる君の声
「ごめんね、こんな遅くに電話して。どうしても君の声が聞きたくて・・」
君のうろたえる声が聞こえてくる
「うん、分かっているよ。会いに行けないなら、せめて声だけ聞きたかったんだ」
そう言ってみてから僕は気づく、話すことなどないのだと…
君に何を話させればいいのか?
「好きだよ」
返答はない
何も言えないくらい、真っ赤になっているのだろうか?
「ねえ、聞かせてくれないかな?君の声を。誰もいないんでしょ。だったら聞かせてよ。自分で、してみて・・」
意味を測りかねて、混乱する君の声が聞こえてくる
「うん・・」
その声に笑みがこぼれる
「いやかい?」
でも君は結局断れないんだよ
あいつらとは全く違う理由でね
僕を愛しているから…
こうして君の声を聞いているだけで空っぽだった心が一瞬にして、水に満たされていく、不思議だよ。
「耳元に受話器を置けばいい。そう、ベッドにいるんだろ?横たえて・・そして右手で…」
ハッとした
「ごめん僕が悪かった。君にそんな真似をさせられないよ。今すぐ行くから待っていて・・」
そう言って電話を切る
そうだ、今すぐ君に会いに行こう
注*1 携帯電話はまだないので…
落ちつけよ、という感じですね
今からアメリカ(ニューヨークか?多分東海岸だろうけどね)からドイツまで行く気か?
もう夜中だぞ…
もし続きを書けたら・・ギャグになるかもしれない
愛の奴隷
窓によって外を見ているイギリスにおれは声をかける
「そんなとことに立っていないでこっちへ来いよ」
返事はない、一体何を考えているのか?
「いつまでそうしているつもり」
「おれの勝手だろ、ここは俺の部屋だ。」
「素っ裸でさ、恥ずかしくないの?」
「別に・・男同士だろ」
(いや、そういう意味じゃなくてさ。お前、俺とお前の関係分かっている?)
おれはベッドから立ち上がって、お前の方へ行った
首筋に指を滑らせ、髪をもてあそぶ
「何を考えているんだよ」
「お前に関係ない」
そう言って手を払われた
(いや、だから・・)
「まあ、でもアメリカは知らないんだろうなあ〜。おれとおまえがこんな関係にあるなんて・・」
「言ったら殺すぞ」
「ハイハイ・・」
肩に手をまわして、抱きしめてみる
「やっぱり知られたくない?」
「誰にも知られたくない。っていうかお前と関係を持っていること自体がいやだ」
「じゃあ切る?」
「お前が一方的にしていることだろうが、今日だっていきなり押しかけてきて・・」
「そりゃお前がフランスにいるなら会いにくるよ、第一お前拒まないじゃん」
「チッ」
(舌打ちされた!)
「おい、お前もういい加減帰れ、用ないだろ。俺はシャワーでも浴びて寝ることにする。」
そう言って寝室から出て行こうとする
「ごめん、オレが悪かった。何でも言うことを聞きます。何でもするからもう少しここに居させて」
(だって愛っていうのはそういうんじゃないんだよ。やればいいってもんじゃない、もっとこう何と言うか・・)
「お前他の恋人にもそういうこと言ってんのか?」
振り返って言われる
「あ・・・いや」
(他の人とはもっとうまくいってるよ。甘い言葉をささやいて・・愛を交わして・・お兄さん、お前の前以外はもっといい男のはずなんだけど…)
「まあいいけど・・」
もう一度に戻ってベッドに座ってくれたのはいいけど、ため息つかれた
ねえ、おれの気持ち分かってる?
おれが一番愛しているのは、最愛の恋人はイギリスお前なんだよ。
「今頃あいつは誰と過ごしているんだろうな」
ワイングラスを二つ用意して、赤ワインを注ぎ、一つをイギリスに渡す
おれも隣に座って肩に手をかけてみる
「さあ。」
「興味ないの?」
「知らないだけだ。」
「あいつ最近ドイツにご執心みたいだぜ。」
「そうなのか?」
「少しは興味ある?」
結局はアメリカで引くしかないのか?
「一応は育ての親だからな。」
親ね
「ドイツってどんな奴なんだ。」
「どんなって。お前、知ってんじゃん。」
「おれが言ってんのはベッドの中でってことだ。」
「いや、オレ寝たことないし・・」
「何だよ、お前。ヨーロッパは制覇したとか大口たたいてたんじゃないのかよ」
「あいつはまだ若いんだよ。お兄さんだってそんなに手早くないんだよ。」
「使えない奴」
「つか・・」
(酷い言いぐさ、なにそれ?っていうかお前俺とドイツが関係持ってた方がよかったわけ、お兄さん泣いちゃうよ)
そう思っておれはワインを舐めながら、さっきイギリスが立っていた窓辺へ向かう。
(やっぱりパリの夜景はきれいだなあ〜)
凱旋門の灯りは俺を和ませる
(少しは俺の事、慰めて)
えっ、今
何、今まさか・・
「おい、イギリス」
「何だよ」
「今、今アメリカが通って行った。車に乗って」
「なんだと」
イギリスが立ちあがってこちらに来る
「今、凱旋門のところを周って、まさかと思ったんだが、二度。」
ドカッ
(殴られた)
「何だ、お前何かの言い訳か?それともジョークか?ドーバーに沈められたいのか?」
「ご、ごめんなさい。でも嘘じゃないんだ、本当に…」
(あの、おれは何故こんなふうになっているのですか?何か関係を持ってからおれ、お前の奴隷みたいなんだけど、おかしいな。あっ、でも愛の奴隷っていうのもいいかも・・)
そんなことを思っているとイギリスは腕を組みながら何か考え込んでいる。
「ふう〜ん」
(よかった、DV止まった)
「おい、調べられるか?」
「へっ?」
「検問しろ、今すぐにだ。とっ捕まえろ。いや、捕まえるんじゃない、調べるんだ。どこへ行ったか、行き先をつきとめろ。」
「そんな無茶な。」
「おい、お前。たった今おれのためになら何でもするって言ったんじゃないのか?言ったよな。ベッドでも何度も」
そう言って胸倉をつかまれる
(あっ、あれ、おかしいな。愛の言葉って後で形に取られて強迫されるものだったっけ?)
「で、でもイギリス。もし外交官特権とか持っていたら、その・・・」
「その時はその時だ、いいからやれ。」
(ひい〜、なんでこうなるの?)
その後おれは何とかホテルから指令を送って、上司を説き伏せ、検問させた。
もちろんアメリカが引っ掛かるかどうかなんて分からなかったけど・・
(引っかからないならまたDVが始まりそうだな)なんて思いながら、イギリスと二人で結果を待っていた
何故かイギリスは上機嫌だった
何を考えているか分からなかったけれど・・
「あいつもしかしたらドイツのところへ行ったのかもしれないな?面白い事になってきたぜ。お前もそう思うだろ」
そう言って笑うイギリスを見た時おれはこれ以上ないくらいに厭な予感がした
そしてのちにDVの方がましだったと知ることになる
「ここだな」
そう言ってイギリスは今まさにアメリカがいるであろうドイツの家の前に立っている
おれはというとまるで小姓のようにその横にいるんだけど(小姓というよりこの場合間男かな?アメリカにとって)
「どうするんだ、盗撮でもするのか?」
浮気の現場を押さえておこうとでもいうのだろうか?
今後のために…
そのまま二人して家に入って行った
もちろん無断だ
そしてドアの前に立ったイギリスは…
最悪だ!
そのドアを蹴破った
えええええええ〜〜〜
お、おれもいるんですけど…
おれここにいていいの?
やばいんじゃないの?
(by フランス)
修羅場
(ヤバいヤバいヤバい・・
いくらヒーローのオレでもこの展開はヤバい
いくらなんでも妻VS最愛の愛人なんて…
今日は何かの厄日かい?13日の金曜日だった?
しかも何故か妻は間男連れじゃないか?
何故?何故なんだ?
っていうかやっぱり関係があったのか?
酷い…酷いよ・・
イヤ僕も言えないけど…
イヤそんなこと思っている場合じゃない
ルイスになんて言えば…
かわいそうに…)
「おい、アメリカ!」
(ひいいいい〜〜〜)
「おれは狭量な男じゃないぜ。お前が何しようがいちいちその行動に文句はつけねえよ。」
(ありがたい事でございます。後で如何様なりともさせていただきますので、この場は引き下がっていただけますか?)
(そう全力で言いたいけど、言えないよ。ルイスの前じゃあ・・)
「だがな、お前ばっかり、いい思いをするっていうのはどうなんだ。なあフランス!」
(ええ〜〜おれに振るの?っていうかおれここにいていいの?どう考えても間男なんだけど、あっちにとっては・・そうだよ、やっぱり知られるのはまずいんだよ。あいつミサイル持ってんじゃん。俺いやだよ、打ちこまれるの・・原爆打ちこまれたらどうしたらいいの・・)
双方が涙目だった
「お前だってドイツとやりたいだろう!」
(えええええ〜〜〜それってどういう?っていうか、確かに少しはやりたい・・け・・ど…)
ベッドに裸のままでどうしたらいいのか分からないドイツはかろうじて、シーツを自分にかぶせているだけだ
それをちらっと見てフランスはそう思う
(っていうかそれ、お前の前で言うの?)
「俺たちにもやらせろ!」
(ちょ、ちょっと待てよ、イギリス。お前攻めだったの?てっきり抱かれる方かと…イヤきめつけたおれが悪かったのか?イヤ何考えているんだ。こいつはそんなことしたことないはずじゃないか?おかしいな?いくらなんでもおれの勘に狂いはないなずだ。イギリスがしていたらすぐにわかるよ、ベッドで…)
(ああ〜〜でもなんだか自信がなくなってきたあ〜)
「分捕り品は三等分すべきだろう!お前だけっていうのはどうなんだ!」
(駄目だ、こいつ根が海賊なんだ。何百年経っても・・)
「あのね、イギリス。三等分ってそんな、ケーキじゃないんだよ?」
俺はそう言って一応押さえた。
「あ、あのとりこんでいるようだから、俺はこれで…」
「い、いや、いいんだよ、ルイス。君はそんなこと気にしなくて・・」
(ああ〜僕はバカだ。なんでこんなこと言ってしまったんだろう。そうしてもらえばよかったのに、つい…。神様お願い、一秒前に時間を戻して・・)
(ごめん、ルイス。君の事は雨が降ろうが槍が降ろうが、例え戦車がこようが、ロシアが攻めてこようが、守ってあげるよ。どんなことをしても僕が・・でも・・イギリスだけは無理なんだ、だって・・)
(なんて情けないヒーロー、愛する人も守れないとは・・身から出たさびとはいえ)
「うるせえ!」
片手を抑えたフランスをイギリスが振り払う
その時フランスの鼻にアルコールの匂いがついた
「お前、酔ってるんだろう?」
「おれは酔ってねえ!!」
「あのな、これ何本に見える?」
フランスはそう言ってVサインをして見せた
「3本だ」
(やっぱり酔ってる)
「あ・・あのこいつ悪酔いしているみたいだ。邪魔したな。じゃあ俺たちはこれで…」
「あ・・あのフランス。」
「えっ」
「き・・君がなぜここにいるのかな?」
双方とも顔が引きつっていた
「お、オレがここにいちゃおかしい?ここフランスだし、俺フランスだし・・」
(いやちがう、ここはもうドイツだった。どうしよう・・)
「いやその・・イギリスがフランスに来たんだよ。それで会いに行ったんだが、こいつがここに押し掛けて・・ごめん、こいつおれが来る前にもうすでに酒が入っていたみたいだ。」
(僕が言っているのは何故君がイギリスと一緒にいるかということなんだけどね、でもこの場は何も言わないほうがいいか、そのままイギリスを連れて行ってくれるなら・・)
「ははは・・」
「ははは・・」
「じゃあそういうことで…」
デジャブーもしくはシンクロ(←タイトル)
「おれは酔ってねえ!」
そう叫ぶイギリスの声が庭から聞こえてくる
(とりあえずよかった。でも一難去ってまた一難だ。この状況、ルイスにどう説明すればいいの?こんなことになって・・)
「ごめん、本当にごめん。こんな迷惑をかけることになるなんて・・どう詫びていいか・・」
(君と素敵な夜を過ごすつもりだったのに…)
「あ、ああ」
ああ、なんだかがっかりした。今更君となんて・・
そりゃしたいけど、どう言えばいいの?
君が失望しているかが心配なだけ
君の前ではかっこいい男でいたかったのに…
本当・・どうしたらいいか
「お・・おれは別に、少しびっくりしたけど…」
とりあえずガウンを出してきてルイスにかける。
寒いだろうから…
「イ・・イギリスって酒癖悪いんだね。僕も初めて知ったけど・・」
そんなことを言うことが何になるのか?でも他に言うこともないし・・
「アル・・あの?」
「何だい?」
「お前はいろんな奴と交友関係があるんだな、考えてみれば・・」
(それってどういう意味だい。他とも愛人関係があるってことかい・・ま、まあ承知の事実であえて言わなかったよね、今まで。えっ、まさか今気付いたとか・・)
「おれは今、どこともないから…」
「あ・・ああ・・」
(そうだったっけ)
「おれの家にこんなに人が来るのは久しぶりだ。なんだか、楽しかったよ。」
(そうかい、僕は地獄だったけどね)
「イギリスって面白いやつだったんだな。知らなかったよ。よく知らないで戦っていたんだな。出来たらまた来てくれるかな?」
(えっ?)
「もちろんあちらがよければだけど…」
「だ、だけど、彼が来たら・・ほら君に何をするか」
(さっき言ってたし・・)
「まさか、あれはジョークだろう。俺を抱きたいなんて酔狂な奴はアルくらいだろう」
(その変な自信はどこから来るんだい)
「まあ、僕としてはジョークであってほしいけどね。」
そうじゃないなら最悪だ。
愛人を妻に取られるなんて・・
何のジョークだ
そんなことになったらマジで死にたいよ
「ルイス」
僕はさっきの事などなかったように君の肩を抱く
「さみしいの?」
「いやアルがいてくれるなら・・」
そのまま抱きしめた
今更こんなことが分かるなんて、僕は恋人失格なのかな?
そうか、君には友好国もなかったんだね
あれ、日本は違ったっけ?
だから僕に落ちたのだろうか?
僕しかいないから?
そのままキスした
「いてくれる時はいいけど、いない時は少しさみしい。」
本当はすごくさみしいのだろう?
「兄さんもいないし・・」
そうだったね
「次はいつ来てくれるかなって?そんなことばかり考えて・・」
ズキッ
一瞬思い出した
昨日の事のように…
荒野で泣いていた頃を…
イギリスが来てくれることだけを願っていた僕を・・
僕は君を昔の僕のような目に合わせているのだろうか?
ごめんね、でも…
今になってイギリスの立場が分かるとは・・
彼も来れるような状況じゃなかったんだろう
当時、超大国だった彼には…
そんな暇はない
ましてや、昔は今のように交通網が発達していたわけではない
僕のように思い立ってすぐこれはしないのだ
睡眠時間を削って会いに来てやったのだと言っていたイギリスを思い出す
僕は・・
「ごめん、ごめんね。」
不覚にも泣いてしまった
それは昔の自分への同情だったのか?イギリスの愛への感動だったのか?それともやはり君へのすまなさだろうか?
出来れば毎日でも君に会いに来て、思いっきりだきしめて、君をめちゃくちゃにしたい。
君が満足するまで何度も…
そうしたらきっと怖いくらい幸せだろう
「何も泣かなくても、立場があるくらいちゃんと分かっているから・・」
(立場さえなければ…)
そう思うと切なくて悔しくて仕方がなかった。
(by アメリカ)
代償
ルイスのためにすることに、ルイスに対して罪悪感を感じなければいけないなんて、何と理不尽なことだろう
でももうこの方法しかない
僕がやるしかないんだ
もうこれ以上ルイスに慰めの言葉だけで放ってはおけない
(君の兄さんは無事だ)
それしか言えないなんて…
無事なのは分かっている
命はある。
しかしその後は?
体は五体満足なのか?
目は見えているのか?
耳は聞こえているのか?
分からないことだらけだ。
実際いくつかの情報は上がってきているんだ
その情報のほとんどが、悲惨なもので…
情報と言うのは収集以上に、それがどの程度真実なのかを見極める作業の方が難しい。
真実の可能性が30%まで上昇すれば、それは情報として取り扱われ上がってくるが、50%にも満たない、しかも悲惨な情報をルイスに言うことなどできない
だから君の兄さんは無事だとしか繰り返すしかない
だったら僕がやるしかない
ルイス、君の兄さんは僕が…
僕はそっと回線をオンにした
(やあ、久しぶりだね、しばらく。)
当たり障りのない話でも向こうから声をかけてくれたことに安堵する
「そう言えばしばらくだったかな?忙しくてね。」
(ますます発展しているようで羨ましいよ)
「忙しいのはそういう理由じゃないさ。各国の調整が大変なんだ」
(国の数が多すぎるからだよ。半分くらい僕に任せたら?)
「面白いジョークだね、でも多さの問題じゃないよ。君のところみたいに力で押さえつけるわけにはいかないんだ。」
いつもどおりの展開だ。
いつものように怒ってくれればいい
そうすれば、いつもと変わらないと思ってくれる
(甘いんだよね、君は。部下をつけ上がらせてどうするの?さっさと粛清しないからだよ。)
「部下じゃない、同盟国だ。」
(それ、ジョーク。まだ自由がどうとか甘いこと言ってんの?)
「利益より大事なこともあるさ。君だってそうだろう。いつまでそんな体制を続けているつもり。利益より体制の方が大事なんだろう?」
(え〜何のことかなあ〜。僕のところは至極うまくいってるよ。君さえ邪魔しなければ…)
「それこそジョークだろう」
今のところうまくいっている?のか・・・
いつも以上に敵意むき出しだ。
これでいい、相手に悟らせてはいけない。
僕に下心があることを…
(で、今日の用件は?)
(な〜に、君に忘れられないように、電話しただけさ。僕の存在を忘れてもらっては困るからね。)
(目の上のタンコブの君を忘れるわけないじゃないか。いつもいつもいつもいつもさ。)
「そりゃあ、ストレスたまるだろうな。同情するよ。」
(そう思うなら日本頂戴?)
無茶言うな・・
「そうだな、君がヨーロッパから出て行ったら考えるよ」
(面白いこと言うね、僕に本国捨てろって?)
「いいだろう、南下出来るんだから。日本は温かいよ。君の理想だ。そんな寒いところ捨ててしまえよ。ついでに東ヨーロッパ全部。」
(アハハハハ)
「まあ、君に忘れられていなくて一安心したよ。じゃあ今日はこれで・・」
(ちょっと待ってよ。)
かかった。
こちらに話があると思われては困るんだ。
こちらに思惑などないと思わせたい。
だからここで切るふりをした。
賭けだったのだが…
「ねえ君最近さ、ドイツにご執心みたいだね」
奇跡のようにうまくいく。
相手から話題を振ってくれるとは、これに乗るしかない。
「何だいそれ、そういう噂でもあるの。別に執心ってほどでもないさ」
(結構夢中だって話だけど…)
僕をからかうつもりなのか
ならばそれに乗るまでだ。うまくいっている、行きすぎているくらいだ。
「まあ、かわいいからね。何でも言うことを聞くし・・でも執心っていうのは残念ながらないなあ〜。だって執心っていうのは手に入らない者に対してするものだろう。もうそんな感情なんか持てないよ。虚しいくらいさ。」
(贅沢病だね)
「君の方こそ、いいの持っているみたいじゃないか?」
初めて自分から話題を振る。
気づかれなければいいが…
(え〜、何のこと)
「しらばっくれないでよ。君がご執心の子だよ。僕の情報も甘く見ないでほしいね」
実際そんな情報は入っていないのだが…
(ああ、あの子のことかなあ〜)
すぐに載ってくるところを見ると、まるでこっちの思惑をすでに知っているのかとさえ思う
それを承知で僕を試しているのだろうか?
「そんなにいいのかい?既に自分のものになっているのにそれだけ夢中になれるっていうのか」
(ふふっ・・)
満足した笑い。ほとんど憶測の域の賭けだったんだが、ピッタリとあたったらしい。
「閉じ込めて、他には見せないらしいね。ずっとそばにおいているのか?」
(まあ閉じ込めているのは本当なんだけどね。閉じ込めて側においているというわけじゃあないさ。通ってはいるけど…)
「ああ、じゃあそこが君の家って事じゃなかったのか?ずっと同居だと思っていた」
(ふふっ、まあね。)
警戒心もなくしゃべるのは軍事機密じゃないからなのか?
「一度貸す気にならない?」
(それジョーク?)
「まあ、無理か。残念だが仕方がない。」
(交換条件次第かな?)
「おい、他を貸せなんて無理だぜ。ぼくには…」
(君自身を交換条件にすればいい。)
「それジョーク?」
流石に顔が引きつる。
「君がここに来ればいい。一人でね。そうしたら抱かせてやってもいいんだよ。それとも怖い。」
これほどうまくいくと、こちらの思惑が分かっているのかとさえ思う。
だが例えそうであったとしても、この話に乗らないわけにはいかない
知っていたとしてもあちらにメリットはないのだから…
「別に怖くはないけど、まさか僕をそのまま返さない気かい。」
(それはしないよ。君も知っている通り僕たちはやりあうわけにはいかないだろう)
そう、やりあえば世界が終る。
核というものはそういうものだ。
多分僕が帰って来なければやるしかないからね。
「保証はあるというわけか。しかし行く価値があればいいが・・」
あくまでも行きたいわけではないと、行くのは欲望からであると思わせておかなければならない
(君自身が確かめてみればいいさ、退屈はさせないよ。)
ムキになっている。
それほど夢中なのか?他に見せて自慢したいほど・・
「そうか、じゃあ君の最上を拝めるわけだ。随分気前がいいね。」
(まあ、君が訪問して、友好をアピールしてくれればね。ついでに共産圏の素晴らしさも西側にアピールしてよ。いいニュースになる。)
なるほど、そういうわけか、チッ
「最上を拝めるならいいか。久々にいいニュースを配信しようか」
僕たちの友好のポーズなんて嘘だけど、それをすると世界的に好感度がいいんだよね、何故か
「じゃあ・・」
僕はむしろリラックスしてラインを切った。
やった、これほどうまくいくとは
あいつが行っていたのはルイスの兄だ。
それ以外考えられない
夢中になるならそれしかないと踏んだのだが間違っていなかった。
ポーランドやリトアニアではないはずだ。
もし、ルイスの兄ではなく他であったとしても、さぐりを入れればいいんだし・・
僕はルイスの兄と寝ることになるわけか
ごめんよ、ルイス。
この方法しかなかったんだ
奴は僕が情報を欲しがっていると分かれば、絶対にそれを只ではよこさない
必ず交換条件を出す
こちらが是が非でもほしいと分かれば、条件はもっとつり上げられる
だから下劣な欲を持っていると思わせるしかなかった
国益のためではないと思わせなるしかなかった。
僕は君の兄さんを抱くことになるだろう
でもそれは君のためだから・・
君を裏切ることになるだろう
そしてそれを君にさえ言えない
そんな僕を赦して
でも替りの代償となる情報は持って行くよ
平成23年1月11日