27号
2003年6月27日 発行
全港湾神戸支部
本四海峡バス分会
大阪高裁控訴審
海員組合は使用者!?
「海員組合は労組法上の使用者にあたる」
神 戸 地 裁 
 5月16日大阪高裁において、「海員組合の使用者性」を争う裁判の控訴審が開かれました。この裁判は、兵庫地労委命令(2001年8月21日付)で、海員組合の使用者性について「会社の経営面に対してかなりの影響力を有していることは否定できない」としながらも、「会社従業員の労働関係上の諸利益に対する影響力を示す事実とは認め難い」として、「海員組合が労働組合法上の使用者であると認めることはできない」と、全港湾側の申立を却下した命令部分の取消しを求めた行政命令取消訴訟である。
 この事件で2002年12月26日、神戸地裁は「海員組合は、雇用主ではないが、会社に対する実質的な影響力にかんがみると、労組法7条の『使用者』にあたる」として、兵庫地労委命令を取り消す判決(詳細:「かけはし」号外2003年1月6日発行)を下した。兵庫地労委と海員組合及び会社は、この判決を不服として大阪高裁へ控訴した。その第1回の控訴審である。
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 海員組合は、神戸地裁において「海員組合は労組法上の『使用者』にあたる」と認定された。この裁判は前述したように、大阪高裁で控訴審が行われている。この判決が地裁判決どおり確定すると、海員組合は本四海峡バス(株)で行われた数々の「不当労働行為の当事者」になるということである。海員組合は、組織の意地や面子に固執するあまり、労働組合が何たるかを見失っているのではなかろうか。そして、それは労働者を守る労働組合としての信頼や労働運動の正当性を失うことにつながりはしないだろうか。漂流を続ける巨大船「全日海」、座礁は回避できるのか。
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控 訴 審
 いつもの通り、提出書面などの確認から始まりましたが、会社と海員組合の書面が混同し、分からなくなる事態に「自分でも会社か組合か分からんみたいやな」との声に、裁判官も苦笑する場面があり、傍聴席からも笑いが起こりました。控訴人の地労委と会社及び海員組合は、坪根専務と平野常務への証人尋問を申請していましたが、裁判所は原審(神戸地裁)で審理は尽くされているとして、尋問の必要性を認めませんでした。さらに控訴人側に「和解はできませんか」と促しましたが「組合の使用者性の問題なので無理」とする旨の返答をしました。全港湾側も「最高裁判決以降の相手の対応を見る限り和解は難しいのでは」とする考えを示しました。これを受けて裁判所は「労働委員会や地裁で審理は充分尽くされている」旨を告げ、第1回をもって結審しようとしましたが「使用者性などの最高裁判例や解釈などについて、もっと突っ込んだ主張をする」との控訴人側からの申出に、主張に対する全港湾側の反論などを考慮して6月末を書面提出期限とし、第2回期日が7月23日10:00ということになりました。この控訴審は次回での結審の可能性が高く、年内の判決が十分に予想されるところです。
【追伸】
 不当解雇以降の3名のB/UPや一時金などの未払賃金請求裁判は5月8日に結審しました。7月10日10:00に神戸地裁において判決が言い渡されます。

【エクソン・バルディーズ号原油流出事故】
 1989年3月24日、石油タンカーエクソン・バルディーズ号が、アラスカ州プリンス・ウイリアム湾のブライリーフに座礁し、258,000バレルを超える大量の原油が流出した。流出油は約1,800kmにおよぶ海岸線に悪影響を及ぼし、生態系にも甚大な被害をもたらした。今日までに起こった米国水域最大の原油流出事故である。

被災地メーデー

「アトムの涙」
被災地から訴えよう!戦争反対!
No war ! Yes flower !
 2003年4月7日はアトムの誕生日です。戦争の絶えない世界をアトムはどう感じているのか?「アトムの涙」と題し戦争反対と労基法改悪反対を訴え、5月1日、JR兵庫駅のキャナルタウンにおいて、第8回の被災地メーデーが催されました。
 好天に恵まれた会場には、労働組合や障害者団体などが出店する屋台やフリーマーケットなどが立ち並び、舞台ではオープニングの歌のあと、震災とイラク戦争の犠牲者への黙祷が行われました。恒例の寸劇は、オオクラ神戸フローリスト分会の不当解雇撤回の闘いを労基法の改悪を織り込んで演じました。会場から声援と大きな拍手が沸きあがりました。メーデーの実行委員長や地元自治会、障害者団体の代表者の方々から挨拶と反戦の訴があり、メーデーアピール「被災地から訴えよう!戦争反対」を採択して、第1部が終わりました。
 第2部は、歌あり落語ありで楽しく盛り上がる中、豪華賞品の抽選会などが行われました。労働組合の仲間はもちろんのこと、地元の人たちや近くの職場などから大勢の人たちが訪れ、お酒を飲んだり、買い物をしたり、お祭りのような人と人との人間らしいつながりを感じるメーデーでした。春の強い日差しのせいか?真っ赤に日焼けした本四海峡バスの仲間は、ビールがことのほかすすみ本当に楽しいメーデーとなりました。
 宇宙に旅立って行けば、地球という運命共同体の中で生き物と人間との温かい触れあい、助け合いの運動は大きく進むだろう。
 それは、ナスカの地上絵を作った人間の英知が、次にやるべき大きな仕事だ。 
                      
         手塚 治虫 語録より
明日に残すな!「解雇自由法」
 私達は、1999年の夏に、現場不在の組合運営を続ける海員組合を全員で脱退、全港湾に加入しました。ところが、会社は海員組合とのユニオン・ショップ協定を理由に、私を含む分会の3役3名を解雇しました。その後、海員組合が55%所有の筆頭株主になり、会社と一体になって、卑劣な脅しによる徹底的な全港湾潰しを繰り広げました。しかし、私たち全港湾本四海峡バス分会は「団結」を守り抜き、3年半という時間をかけて、今年の2月27日に「解雇は違法無効」とする最高裁決定を勝ち取りました。
この最高裁決定をうけて、会社は、私達の社員の地位は認めましたが「出社に及ばず」と、職場に戻しません。これは、裁判所は、解雇の違法無効は言い渡すが、労働者の就労までは言及しないというところから来ています。現状でも、私達のように最高裁決定を勝ち取っても、職場復帰の闘いを強いられるという事例は、少なくありません。
 その上に、今回のような「基本的に解雇は自由」という、解雇ルール法案が制定されるとどうなるのでしょう。今の裁判では会社側に「解雇の正当性」の立証が課せられていますが、この法案だと「解雇の違法性」を、労働者の側が立証しなければならなくなると言われています。何の資料も、証拠も持たない労働者が、解雇の違法性を立証するのは、困難極まりないことです。さらに、大金と何年という歳月を費やして最高裁で勝ったとしても、「ビラ配布や抗議などで経営者を攻撃し人だから雇用継続が困難である」と、会社が判断すれば、会社の側から金銭解決(一説には賃金の約2年分)を申し出ると、それが罷り通るという内容まで盛り込まれているというのです。そうなると「雇用継続が困難か否か」また裁判ということになり、お金のない労働者にとって致命的です。これは、会社が「この人はいらない」と思えば、わずかなお金で会社から放り出せるという法律なのではないでしょうか。
 この「解雇ルール」のような法律だと、私達の場合ように、会社が「不当解雇」を百も承知で行い、最高裁で解雇の「違法無効」が確定したとしても、会社や経営者への法的罰則は一切なく、違法な不当解雇を働いた経営者へ抗議を行ったから「雇用継続が困難で雇わない」ということが罷り通るというのです。これでは、苦労して最高裁で確定判決を勝ち取ったとしても、職場復帰は完全に絶たれ、社員の地位も、わずかなお金と引き換えに奪われてしまいます。原因が会社の「違法不当行為」にあってもです。
 こうなると労働者は、経営者の意のままに、されるがまま絶対服従を強いられ、服従しない労働者は次々と首を切られていきます。まさに労働者の「生きるすべ」は、経営者の気分次第ということになります。これは、労働者の奴隷化に等しいのではないでしょうか。
 現在この法案に盛り込まれていた「金銭解決」の部分は、労組や弁護団体などの反対に遭い法案から消えていますが、「今後の検討課題」ということなので安心はできません。
 さらに、今回の労基法改定法案には「解雇ルール」以外に、「有期雇用の期間延長」「裁量労働の適用拡大」と「派遣法の改定」が含まれています。この原案通り労基法の改定がおこなわれると、常用雇用の正社員から、会社が必要な時だけ使える「都合のよい労働力」、いわゆる不安定低賃金労働者への移行が簡単におこなえるようになります。「都合のよい労働力」が増えるということは、正社員の賃金や労働条件の低下へと波及するのは必至です。そして、ほんの一握りの大金持ちと、大多数の貧民を作り出します。このような格差は、今の私達ではなく子供や孫、さらにその子供の時代に顕著に表れ、お金による階級制のようなものが、社会常識として定着してしまう時代を創り出してしまうのではないでしょうか。
 このような労基法改悪法案は、廃案に追い込んでいかなければなりません。そのためにも、みんなが、わたしが、一緒になって声を上げ、大きな世論で労基法改悪を阻止しよう。
明日に残すな!解雇自由法!労基法改悪 NO!
債務不履行裁判!神戸地裁

加速する暴走!
   本四海峡バス・海員組合

 この裁判は、本年2月27日付の最高裁上告不受理決定で「解雇の違法無効」が確定した3名に対し、社員の地位は認めるが「出勤に及ばず」としたうえで、働かないのだから基準給のみになると、決定翌日より4年前の解雇時の基準給のみを支払い、さらに、同決定において「全港湾が団体交渉の地位にある」ことも確定したが「全港湾とは労使関係にない」と、全港湾を団体交渉の相手と認めず、会社と海員組合(筆頭株主)は団交拒否の姿勢を変えていない。この最高裁決定をも事実上無視し、対決姿勢をより鮮明に打ち出した悪質極まりない対応に、3名への本来支払われるべき賃金差額と慰謝料、及び団交拒否による全港湾関西地本と神戸支部に対する損害賠償を求め、会社と海員組合に対し2003年4月16日神戸地裁へ提訴した事件である。
 6月5日10:15から始まった裁判は、双方の提出書面の確認を終えた後、裁判官が「被告(会社・海員組合)はどういう主張をなさるんですか」と質したところ、この質問に海員組合の代理人が「労働者の就労権は認められていない」「就労権が認められなければ不当労働行為とはならない」とする旨の主張を書面で提出するとしました。その後、提出期限などのやり取りが少しあり、次回期日が8月4日13:15と決まりました。
 今回の裁判では、「解雇の違法無効」確定後、「出勤に及ばず」とする会社対応が争いの一つとなっている。これは「解雇無効」が確定した被解雇者の社員の地位は認めるが、会社の一方的な裁量で「仕事はさせない」「賃金も大幅減額(約11万〜15万減)する」という行為である。
 会社の違法行為によって、生活を守る裁判を余儀なくされた労働者が、長い年月と多大な労力を費やし「確定判決」(会社の行為は違法無効)を勝ち取ったにもかかわらず、事実上会社から放逐され生活できない状態に置かれるという道義上許されない行為であり、労働組合として絶対に看過し得ないことである。
 そして、この会社の筆頭株主(55%所有)は海員組合という労働組合である。その海員組合が、正当に権利を行使した労働者の「解雇」を正当と主張し、会社と一体になって不当労働行為を行って来たことは、周知の事実である。これは裁判所も認めるところである。
 【「近藤・古川、懲戒処分無効確認裁判」神戸地裁判決より「一連の会社の不当労働行為の態様は全日海と一体になってかなり執拗になされてきたものである」『最高裁確定済』】
 海員組合は、いったい何に固執し、何を争い、何をしよう、としているのであろうか。この裁判で会社は、この「出勤に及ばず」という傍若無人の行為が正当であると主張すると考えられるが、労働組合である海員組合はどのような主張を展開するのであろうか。
労組の社会的使命とは!?
 これまで何度か東京船舶の問題は、船員新聞で目にしてきた。これは2001年5月25日に、東京船舶(株)の海員組合員16人全員が脱退し別労組に加入したものである。東京船舶は「海員組合員が居ないので交渉には応じない」と、交渉を拒否していた。記事からは、脱退に至る経緯やその後の経過は不明だが、関東船地労が申立から3ヶ月というスピードで、本年5月7日に「団体交渉を命じる」命令(記事参照)を下している。この命令を受けて、船員新聞 第2386号 2003年5月25日「家庭直送版」に5月15日付で、組合長談話として「受け入れが社会的要請に応える道」とする井出本組合長の訓話を掲載している。
 しかし、海員組合が筆頭株主(55%所有)である本四海峡バスにおいては、「解雇は違法無効」「全港湾は団体交渉の地位にある」とする最高裁決定や「団体交渉を命じる」労働委員会命令の無視や不履行が繰り返されている。事実、2003年4月3日付の海員組合ニュース(本四海峡バス版)では「この決定(最高裁決定)を厳粛に受け止めつつも、これまでの既定方針を堅持し、粛々と闘いを続けていく所存」と、“全港湾は認めない” “3名は戻さない” “金銭解決はない”とする既定の3原則を堅持することで、最高裁決定の事実上無視を海員組合は表明している。さらに、玉城常務をはじめとする会社役員も争議解決について「中央で解決しなければ何を言っても現場ではどうにもならないよ」などと、会社対応が海員組合の意向である旨の発言に終始している。これまでも今もそうであるが、本四海峡バス争議での海員組合の対応を見ていると、何を言っても空疎な美辞麗句としかならないのではなかろうか。
本四海峡バスと海員組合は
   労働委員会命令を
       受け入れよ!

正義が正義であるために
 本四海峡バス闘争はこの8月で5年目に入ります。現場不在の組合運営を正そうとしない海員組合を全員で脱退「自分達の組合を創ろう」と全港湾神戸支部に加入しました。ところが会社は全港湾を否認し分会の3役3名を解雇しました。この全港湾否認と解雇に端を発した闘争は、神戸支部をはじめとする全港湾全国の仲間と地域の働く仲間に支えられ、会社と海員組合の卑劣な恫喝を跳ね返し、本四海峡バス分会の仲間42名は団結を守って闘っています。最高裁決定が下され団交を命じる緊急命令(命令不履行は最高1日10万円の罰金)が発せられた今も、会社と海員組合は不当な姿勢を変えていません。
 この法律や人権をも蹂躙する会社と海員組合を、労働組合として、労働者として、そして人として、看過するわけにはいきません。正しいことが正義として実現するまで闘い続けます。最後までのご支援をよろしくお願いします。
                                              全港湾 本四海峡バス分会