サムライ達は何処へ行くのか

H17.01.20

行政書士 宮原賢一

(さむらい)」たちは何処へ行くのか

 

 

この混沌とした時代の間にある士業といわれている「サムライ」達の未来と今何をなすべきかについて、独断と偏見をもって少しお話をしてみたいと思います。司法制度改革に関することは皆さんご存知と思いますので、今回は少し視点を変え、違った観点から推論してみようと思います。そして、話は凡そ15年前に遡ります。

 

 

(1)                       DOSからWINDOWSへ

私が最初にパソコンという代物を買ったのが、1986年でMacPlusというAppleのパソコンでした。「このパソコンは医者とデザイナーに人気のあるパソコンです。」とのセールストークに騙されたのが発端でしたが、今では考えられない程貧弱な性能(1MBのRAM、1FDD HD無し)でした。

しかし、このPCは当時としては最先端のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)を備え、IBMやNECとは一味も二味も違う世界を堪能させてくれました。2代目もAppleのMacintoshPerfomaという代物で、これは既に10年経ちましたが、幸いHDが0,8GB程あるため、今でも顧客管理と業務処理のFile Makerを使用したデーターベース機として事務所に鎮座し、業務処理に活躍しています

さて本題に入りますが、1995年、PCの世界に新たなOSであるWindows95が登場し、DOSを意識させない優れたGUI(Macを真似たと言われています。)で、瞬く間に世界標準のOSとなったことはご承知の通りです。

当時のわが国においては、文書作成のみに特化したワープロ機器の円熟期であったのですが、WINDOWSの持つGUIが多数のユーザーに受け入れられ、インターネットの普及と共に、その後1年程度で確固たる地位を築き上げました。そして、一般人にも受け入れられる操作性の良さと、双方向で電子的に文書をやり取りする事を可能にしたという二点において、以下の各項目に深く係わってくるようになってきたのです。

 

(2)                       印章文化への挑戦

わが国で一番有名な印章は、天明四年に勘兵衛という百姓が発見したとされる、「漢委奴国王」と彫られている、例の「金印」です

その後明治時代になって、諸制度の改正や整備が整うと共に印章制度が設けられ、実印の押印なき公文書は、裁判上の証拠にならないという布告(明治六年7月5日太政官布告)がなされ、日本における印鑑制度が定着してきました。 以来、130年に亘って、印鑑(印影)の果たす役割は益々大きくなり、印鑑を押す人の意思表示を担保(民事訴訟法§228C−真正推定)し、「書いてあることは私の意思に間違いありませんよ」といったことを、押印することにより自分の意思として明確にさせてきていたという長い歴史があります。この長い印章文化の歴史の流れにストップをかけたのがWINDOWSとインターネット、そして、「申請負担軽減対策」(平成9年(1997年)2月10日閣議決定)です。

 

平成9年2月10日の閣議決定によると、「規制緩和を推進するに当たって、行政庁に対する申請等に係る国民の負担を軽減することがきわめて重要である。今日、簡素で効率的な行政、国民の主体性が生かされる行政及び質の高い行政サービスを実現するため、情報通信技術の飛躍的な発展をも踏まえ、許認可や補助金等に係る申請、届出又は諸種の統計調査等に際しての国民負担の大幅な軽減を図る必要がある。このため、申請等に伴う手続の簡素化、電子化、ペーパーレス化、ネットワーク化などを迅速かつ強力に推し進め、今世紀中に申請等に伴う国民の負担感を半減することを目標として本対策の実施に取り組む。」とされ、それを受けた、平成9年7月3日の各省庁事務次官等会議の申合せによって、「申請・届出に伴う行政手続を簡素化し国民負担を軽減するとともに、地方公共団体における押印見直しの取り組みを支援するため、「申請負担軽減対策」に基づき、下記のとおり押印見直しガイドラインを定め、これに沿って各省庁が国民(法人を含む。以下同じ。)に求めている押印の在り方を見直し、廃止を含めた合理化を行う。その際、押印の廃止が、申請・届出の電子化・ペーパーレス化に資する点にも留意するものとする。」と決定したのです。(アンダーラインは筆者)

 

押印の廃止は、申請者の負担軽減と官公署への(電子)申請そして受理という一連の処理を迅速化・画一化するのに寄与しますが、ここでネックとなるのが行政書士制度の存在でした。何せ、一万件以上と言われる許認可届出書類の全てが押印を要する書類であり、それを他人の依頼を受け報酬を得て取り扱えるのは、行政書士等の限られたサムライ達だけであったから尚更です。

 

(3)                       規制緩和小委員会の目論見

 そして、ネックとなっている行政書士制度を有名無実化するための方策として登場してくるのが、かの規制緩和小委員会でした

日本行政書士会連合会は毎年6月下旬に総会を開催しますが、組織対応ができないその時期を狙ったかのように、第6次論点公開(平成9年6月26日)がなされ、行政書士制度の廃止が論点としてその俎上に上がりました。

規制緩和小委員会の鈴木良男(旭リサーチセンター社長)参与は、「本音を語り始めた業界団体」、「行政書士の業務独占は必要か」と題し、弁護士を頂点としたサムライ族の排他性、参入規制、部族保存本能を強く批判しました。そして、行政手続の簡素化が言われている時代には、原則、国民の自己責任とし競争原理を導入して参入規制を撤廃すべきであるとして、行政書士の業務独占の必要性に疑問を投げかけ、行政書士制度は廃止すべきであるとしたのでした。

 

実は、鈴木参与は行政書士だけをターゲットにしたのではなく、サムライ族全体を問題にし、特に弁護士に対しては痛烈な批判を展開していました。「日本の司法ここが問題」の著書の中で、―もう弁護士法72条の歴史的役割は終わったのだから、範囲を検討して外国弁護士や隣接職種に広く法律事務の門戸を開放すべきだ。それを拒む理由はない。あるのは、責任も果たさない(ゼロワン地域の存在、小額事件への不関与)のに、仕事だけは独占したいという弁護士のギルド精神に基づくエゴだけなのだ。それはもう認められない。―という当時としては卓越した論陣を張っていました。(カッコ内は筆者)

その矛先が何故か行政書士制度に向けられたのでしたが、側聞するところによると、当初、行政書士と社会保険労務士をターゲットにしていましたが、大同団結されると困るので、今回は行政に最も関連のある資格者=行政書士に的を絞ったと言われています。

 

(4)                       e‐JAPAN戦略の裏側

規制緩和小委員会の名を借りた行政書士制度の廃止論は、行政書士側から予想外の大反撃を受けたため、その後方針転換し、司法制度改革における隣接法律専門職種をどのように活用していくか検討していくという方向に向かい始めました。こうした最中に登場したのがe‐JAPAN戦略です。

「我が国は、すべての国民が情報通信技術(IT)を積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向け、早急に革命的かつ現実的な対応を行わなければならない。市場原理に基づき民間が最大限に活力を発揮できる環境を整備し、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す。」

 

申請・届出等手続の電子化(総務省、財務省及び全府省新たなアクション・プランに基づき、次に掲げる事項を推進する

1.    認証システム、汎用受付等システムの整備

2.    手数料納付の電子化に必要とされるシステムの整備

3.    個別手続毎に必要なシステムの順次整備

4.    内部事務処理の効率化に資する審査支援データベース、りん議・決裁、文書管理システム等の整備・機能高度化

公的個人認証基盤の構築(総務省

住民基本台帳のデータを活用した地方公共団体による公的個人認証システムの平成15年度からの運用開始に備え、実証実験の実施とともに、法制面を含め必要な制度の整備及びシステム構築を行う。」

 

ところで、政府がe−Japan戦略を推進していく上で、これらのシステムを順調に稼働させ、その広範な適用を国民全体に推し進め、徴収や個人情報の一元管理体制を構築するためには、民間の業界団体の協力(このような種々のシステム構築に伴う新たな法人の設立は、公務員OBの天下り先として機能する。)が不可欠であり、そして、その参入規制となっている行政書士法の改正がどうしても必要でした。

(参考―自治行第83号昭和62年―報酬とは役務に対する対価であり、実費弁償の範囲内にとどまる限りは報酬に該当しないが、報酬に該当する部分が全体としての料金に含まれていると認定できるのであれば、行政書士法第19条第1項に違反する。)

こうした戦いの結果が、平成13年に改正された「行政書士法第19条の但し書き」であり、ここに行政書士の業務独占は崩れ去り、一部分とはいえ民間に開放することを余儀なくされたのでした。

 

(5)                       縄張り争いの終焉

いま社会全体が規制改革や民間への開放と言う流れの中に定着しつつありますが、4年前の規制改革推進3か年計画(平成13年3月30日閣議決定)では、「業務範囲が余りに細分化されている資格については、業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れを検討する。また、業務独占資格者の業務のうち隣接職種の資格者にも取り扱わせることが適当なものについては、資格制度の垣根を低くするため、他の職種の参入を認めることを検討する。」とされていました。

 

日本行政書士会連合会は、昨年、規制改革に対する要望として「商業・法人登記の行政書士への開放」を要望しました。それに対する法務省の回答は「商業・法人登記は,国民の権利に多大な影響を及ぼすものであり,この登記手続を代理するためには,高度な法律知識及び専門的能力が要求されるので,資格者以外の者が当該業務を行うことは,国民の権利の保全及び登記事務等の適正な運営の観点から認められない。と回答をしました

この回答に対する再検討要請が内閣府規制改革・民間開放推進室から公表されました。注目すべき再要請文書ですので、以下にその全文を掲載します。

平成17年1月7日
内閣府規制改革・民間開放推進室

昨年1018日から1117日にかけて実施した集中受付月間において寄せられました「全国規模の規制改革・民間開放要望」について、関係省庁に対して検討要請を行い、第1次の回答を得ておりましたが、これに対する当室からの再検討要請を取り纏めましたので公表致します。

回答では商業・法人登記には高度な法律知識及び専門的能力が求められることから司法書士以外に行わせることはできないとされているが、規制改革による活力ある社会の実現、国民の利便性及び負担軽減の観点から、要望にあるとおり、商業登記申請手続について、行政書士等の取り扱いを認めることが重要と考えられる。

この点を踏まえ、@改めて要望の実現に向けた具体的対応策を検討され、示されたい。なお、登記事項は法定されており、定款作成時のように絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があるものとは異なり、登記すべき事項のみ登記申請すればよいこととされている。当然、業務として行うからには専門的能力を有していることが前提であり、行政書士等は定款作成・認証などに携わっていること等から、法的知識及び専門的能力が十分備わっているものと考えられる。この点も踏まえ、積極的な検討をお願いしたい。

A上記@を踏まえた実施時期について、その時期となる理由を含め具体的に示されたい。」(行政書士等とは行政書士、税理士、中小企業診断士。アンダーラインは筆者)

 

この再検討要請に対して、法務省は120日付で以下の通り反論しています。

「商業・法人登記手続を代理して行うには,商法等の民事実体法はもとより,商業登記法や商業登記規則等に関する高度な法律知識及び専門的能力が要求される。司法書士は,その資格の取得に幅広い法律分野における試験が課されており,高度な法律知識及び専門的能力が要求される登記業務を扱う十分な適格性を有するといえが,行政書士については,定款作成や認証に携わっていること等をもって,これが満たされているとはいえないことから,商業・法人登記の申請代理を資格者以外の者に行わせるのは相当でない。」

 

一部の司法書士は、司法制度改革の成果として、弁護士の牙城であった訴訟代理人としての地位を獲得しました。その見返りではないでしょうが、他の士業の業務(弁護士の独占業務分野)は欲しいが、自分たちの領域(登記業務)には一歩も入れさせないという、法務省の庇護にストップをかけた画期的な再検討要請であるということができます。これに対する法務省の再回答には、その慌てぶりだけが目につきます。

 振り返ってみれば、帰化申請の業務は行政書士と司法書士の共管業務とされ、特に争いは生じていない分野が存在する一方で、「埼玉訴訟」や「福島訴訟」にみられたような国民の利便性等を無視したサムライ同士の縄張り争いは、国民の眼にはどのように映っていたのでしょうか。規制緩和・規制改革・司法制度改革の根底をなすのは「国民が自己の責任において、その利便性や負担軽減に適したサービス方法を選択することができる社会を実現する。」ことにあることは論を待ちません。

 

*埼玉訴訟―登記業務は司法書士の専管業務であり、弁護士が業としてはできないとして訴訟となった事件。

*福島訴訟―行政書士が2年間に業として17件の登記を行ったとして、司法書士法違反で訴訟となった事件。

 

(6)                       ADRと司法ネット

総合法律支援法
「この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、法による紛争の解決が一層重要になることにかんがみ、裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者(弁護士及び弁護士法人以外の者であって、法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者をいう。以下同じ。)のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援(以下「総合法律支援」という。)の実施及び体制の整備に関し、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、その中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とする。」
 

ADRと司法ネットによる国民に対する総合的な法律支援は、2年後からスタートします。ADR分野で先行しているサムライ達に追いつくためには、国民のもっとも身近なところにいる専門家としての責任を果たし、広く認知されるような施策を早急に実行に移していかなければなりません。

そのためには、行政書士にしかできない業務に関しての、ポイントを絞った攻め方(例えば、建設業に関する紛争処理)が必要であり、広く浅く方式はピントがずれてしまったという経験を、今後の教訓としなければなりません。

倫理規定―専門家としての職業倫理の確立と人格の陶冶

法律研修―法的な担保能力の更なる向上への努力

「無料相談会の定例開催―実績の積み重ねと認知度のアップ」更には、調停技法や対面折衝能力の涵養を通した確かな足跡が求められています。(但し、読売新聞17年1月16日裁判外紛争処理の著作権分野に関し、弁理士が代理人になれるよう今国会に弁理士法改正案を提出予定。とされ、ここでもADRに代理人として参画できなかったつけが回ってきてしまいました。)

 

(7)                       諸悪の根源−法第3条の改正を−

前述したこと以外にも、今なすべき根本の問題が存在していますので、我々行政書士が、今なんとしてもやらなければならないことについて考えてみたいと思います。一昨年の合格率が2.8%、昨年の合格率が5.3%と難関になっている一方で、公務員歴による者や他資格者が無試験で行政書士になれるという事実が存在しています。(法第2条各項)

弁護士は別格扱いにするとしても、公認会計士、税理士、弁理士、公務員歴による者に無条件で行政書士資格を与えるという大盤振る舞いの資格は、他の業法を見ても何処にも見つかりません。これは単純代書といわれた30年以上前の遺物(役所に提出する書類の単純代書なのだから、それを審査し受理する公務員は当然行政書士となる能力があるだろう。公認会計士、税理士、弁理士は公務員より難しい試験に合格したのだから公務員と同等以上の能力があるだろうという程度からの発想)にほかなりません。

単純代書時代においては、今述べたような理由付けもできたのでしょうが、合格率が2.8%、5.3%という時代にあっては、行政書士制度に対する弊害の方が目立ちます。しかしながら、この条項を削除するためには、数十万の公務員や他資格者を敵に回しての戦いですから勝つ(法第2条の三,四,五,六を削除する改正)見込みは殆どありません。では、戦略は本当に無いのでしょうか。

 

戦略は存在します。まずは最初に、法第3条を改正して試験科目を行政書士法に定めることというのが私の辿り着いた結論です。他の士業では司法書士法第6条、税理士法第6条、社会保険労務士法第9条等にみられるように試験科目が法定されているために=社会的にもその分野(法)の専門家と認知されています。

一方、現在の行政書士法では、行政書士業務に関して必要な知識及び能力(法第3条)とだけ定められ試験科目が法定されていない(大臣告示)ため、単純代書時代の遺物ともいえる「公務員試験的な一般教養問題」が相も変わらず出題され、法律の専門職ではないとする根拠にさえされてしまっています。

一般教養問題は士業の頂点に立ち、基本的人権を擁護し社会正義を実現するという、崇高な使命を帯びた弁護士法の目的からすると、司法試験にとってこそ必須科目とすべきではないのでしょうか。

さて、他の士業法によって、自ずと業務範囲が制限されている行政書士には、その業務範囲内において科目を設定する必要があります。他の士業は全てこの見地から科目を法定しています。官公署に提出する書類・・の意味からすると、民法、商法、行政手続法、行政不服審査法等が挙げられます。権利義務・事実証明書類・・の意味では、憲法、民法、商法、刑法等を挙げることができます。業務に関しては・・行政書士法、国籍法、戸籍法、建設業法、道路運送車両法、出入国管理及び難民認定法、著作権法…等結構な数になりますが、現行業務分野の大枠の中から4科目程度を考えれば足りるでしょう。

 これらの科目を必須科目(5科目)と選択科目(5科目の内2科目)に分け国民の信頼に耐えうるような試験科目を法に取り込むことが「この科目(法律)に関しては5.3%の狭き門を通り抜けた専門家ですよ。」と言える行政書士にするということであり、また喫緊の課題克服の第一歩として挙げることができます。この基礎部分の改正を放置したままでは、何が専門家だ。何が代理権だ。ということになってしまい、真の意味での代理権は今後も与えられないであろうことに、我々は一刻も早く気づかなければなりません。

 

前段で第3条改正の必要性を述べましたが、第2条は其のままにしておくのでしょうか。いいえ、第3条改正だけでは目的への第一歩にしかなりません。次の戦略は、科目の法定が前提となりますが、行政書士の試験科目内容と公認会計士法、税理士法、弁理士法、公務員試験内容、公務員経歴との異同・比較・検討・精査です。

この分析結果次第では、堂々と第2条各項の削除(合格者、弁護士以外)要求はできますし、たとえ削除が無理でも、他士業については一部試験科目免除、公務員については30年という妥協点を次の第二段階での法改正の着地点に据えることは可能であると思います。

そして、最終的な第三段階では公認会計士、税理士、弁理士、公務員歴による者は、業法や経歴内容によって試験科目の一部を免除行うが、法定された試験科目と試験内容、合格率、行政書士の専門性等を勘案すると、(試験科目の一部免除は認めるが)無試験での行政書士の資格付与については認められないという結論に辿り着くことは可能なはずです。

 

連合会の行政書士法改正項目によると、行政手続法における聴聞代理、行政不服審査法における不服申立、行政事件訴訟法における出廷陳述権、簡易裁判所や家庭裁判所における代理、ADRに関すること、公共嘱託に関すること、会員の処分権に関すること、両罰規定に関することが最重要課題とされており法第3条の改正については全く触れられていません。

先に述べたように、こういった現実の課題を克服するための第一歩が、法第3条の改正にあることを声を大にして言っておきたいと思います。

 

(8)「士」サムライたちは何処へ行くのか

さて、ここ数年間における、行政書士と他の各士業の係わりに関して拾い上げてみると、夫々が痛みを伴った改革に参画しつつ、一定の方向性や収斂する時期がおぼろげながら見通せる段階にきているように私は感じています。

 

1.弁護士法72条に但し書きがついたことによって、各士業は個別法の改正によって法律事務を取り扱うことができるようになりました。

2.司法書士は簡易裁判所管轄事案で、訴訟代理人となることができるようになった反面、一定の登記業務について開放が求められています

3.社会保険労務士は、社会保険や職業安定所関連業務において、民間への開放を求められ、賃金事務に関しては税理士会と争いがありました。

4.会計や記帳業務では行政書士・社会保険労務士・税理士・公認会計士等が複雑に入り込みながら業務を行っているという実態があります

5.行政書士は、総務省で定める一定の手続を民間に開放しましたが、入管関係業務では、一定の業務に関しては弁護士と行政書士が申請取次者という同等の立場で本人出頭免除という地位を確立しています。

6.著作権に関することは、行政書士と弁理士の共管分野ですし、行政書士は弁理士試験の一部科目免除対象になっています

7.2年後にスタートする司法ネットでは、国民誰もがアクセスしやすい拠点作りと資格者の協同という環境構築が求められています。

 

このような流れの中で見てくると、自ずと「サムライ」たちの未来・・・「資格制度の相互乗り入れと、その先に来るであろう資格の統廃合」・・・が見えてこないでしょうか。国民にとって判り易く利用しやすい法律や資格の制度とは、官僚型縦割り行政の弊害の下に生まれた十数個にも及ぶ業務独占資格ではなく、単純に区分された法律専門職や隣接法律専門職であると思います。

 

この単純に区分されたとは、訴訟全般は@弁護士へ、企業監査はA公認会計士へ、簡易裁判所事案はB簡裁弁護士(司法書士)へ、C知財分野は弁理士(知財弁護士)へ、それ以外の困り事はD法務士又は事務弁護士(行政書士、社会保険労務士、税理士、海事代理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士)へ頼めば何とかしてくれるという極めて簡単明瞭な資格区分のことであり、Dの分野は全資格者の競合分野となります。この単純さこそが国民が望んでいるわかり易い・利用しやすい・リーズナブルな資格制度であるということがいえると思います。

いま、我々資格者に求められているのは、官僚主導的な縄張りエゴからの脱却と、資格者夫々が、その得意分野において競争しながらサービスの質を高めつつ、国民の負託に応えていくことです。そして、そのための資格制度の再編成という近未来が、司法ネットの先に見えていると考えるのは私だけでしょうか。

最終更新日 : 17.01.20