〜全編を振り返って〜
GNG:『廃線と廃駅の調査』いかがでしたでしょうか。武田尾調査の1998年(平成10年)5月からはじめて尾道鉄道調査の執筆終了が2006年(平成18年)7月、そこまでに足掛け9年ちょっと。
ゑゐぢ:尾道鉄道の調査自体は2001年(平成13年)1月に終えていたのですが、「兼高かおる世界の旅」を意識した2人の対話形式(ダイアログ)に起こすのに莫大な時間を費やしてしまいました。
そして、2012年(平成24年)2月にウェブサーバーをGNGからゑゐぢに移管して、ある程度まとめてアップデートしたのが同年4月、さらに尾道鉄道全編をウェブ上に公開したのが同年5月と丸14年です。世紀を完全に跨いでしまいました。
おかげで現状とここに書いた内容とはかなりの相違が出て来ているところや、その後の調査での新しい発見もあります。その辺は、あらためて個人的に書いて行きます。もっとインタラクティブなかたちでコンテンツを提供できたらと思います。
GNG:ぜひそうしてください。本企画には残念ながら続編はありません。これで本当のおしまいです。
追記:2019年(令和元年)にGNG氏による再訪調査があり、武田尾調査の1998年(平成10年)5月から丸25年の2023年(令和5年)8月にレポートが公開されました。もう四半世紀ですよ。
ゑゐぢ:私としては、尾道から帰って来てもしばらくかじかんだ手のしびれがとれないにも関わらず、次回の誰も調査していないようなレアな路線の調査を色々と考えて情報収集していました。
その頃にはウェブ上でも廃線サイトが増えて来ており、たいていの路線は誰かが調べているか、それ以外はたいして調査するまでもないような路線(工場専用線や痕跡が全く残ってないような線)なので、ダイアログ形式で書き進めると言う独自路線を除いては、これ以上の調査に疑問を感じていたのは確かです。
GNG:どちらかというと、このようなコンテンツに対するニーズの有無はまったく考えずにただ思いつきで始めたことですから。そのような意義は心配しなくてよいです。
ゑゐぢ:あるときGNG氏に「何故廃線調査をしているのか」といじわるな質問をしたことがありました。その質問は大いに自分自身に対するものでもあったのです。
武田尾以降の調査は、なにであれ遠出することや知らない街を歩くことの楽しみがありましたが。ある意味惰性で鍛冶屋線や加悦鉄道の調査を決行したのです。
GNG:なんですか。ここで反省されても困ります。
ゑゐぢ:本企画『廃線と廃駅の調査』に対する私の動機が何だったのかお話しします。まず武田尾に関しては、廃線調査以前から何度も訪れており、生瀬より先の車窓に時折見える廃線跡や、武田尾に存在する複数の廃線遺構の全容を解明したかったと言うことがあります。気にすると眠れないたちなので、調査のおかげですっきりしました。
GNG:最初は「勢い」でしたから、そういう密かな動機があったとは知りませんでした。
ゑゐぢ:そして不意に尾道鉄道を訪れることになって、自分でも忘れていた本当の動機にたどりついたのでした。まさに尾道鉄道を訪れていなければ、疑問を感じながらの不本意な調査に取り憑かれていたかもしれません。とにかく尾道鉄道だけに関しては、幼い頃から身内に色々と話を聞かされていたのです。幼心に想像力が掻き立てられていました。しかし、そんなことはいつのまにやら心の奥底に沈んでいたのです。ただ武田尾の廃線については潜在的に意識したりしていたのでしょう。
GNG:それって、ほとんどトラウマじゃないですか……。
ゑゐぢ:もっとも本企画では近畿圏を出ることがなかったので、意外にも個人的に一番身近な尾道鉄道なんて全く意識してなかったのです。それがひょんなことで突然調査する機会が訪れて、何故廃線を調査していたかと言う真の動機をついに解明してしまったわけです。この動機の解明の過程こそが、まさに「ゑゐぢ哲学(鐵學)」だったと思います。
GNG:あ、それが言いたかったわけですね。ずいぶん回り道しましたが読者の方々にはテツガクなんてムズカシイ話はどうでもよいことですよ。
ゑゐぢ:ただこれですっぱり「もう廃線なんて全く興味ありません」というわけではなく、むしろ産業遺構の一つとして相変わらず興味引かれるものです。
GNG:やっぱり自分の足で現地を見ると良い意味で裏切られます。「あなたの見た現地はほんの一部で実際はこんなに素晴らしいところですよ」という声も聞こえてきそうです。結局この企画を通して、現実の切り取り方が違うと、こうも違って見えるということが示せたとしたら、それで私の目的は達せられます。
タイトル:あとがき〜全編を振り返って〜
文書番号:RH HEPJ
文書完成日:2006年 7月16日(text)
文書公開日:2012年 5月 4日
文書改訂日:2023年 8月 4日
制作:GWWERKS
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