完全ネタバレ編「テラビシアにかける橋」
2009/02/08 Up


  前回あらすじ程度で紹介した「テラビ」を、完全ネタバレで感想をまとめます。重要なストーリーのネタバレが含まれますので、これから観ようと思っている方はスルーして下さい。これを読んでからだと面白さは激減すると思われます。










  ↓念のため(笑)










  2回に渡ってレポをまとめるって、よっぽど推薦していると思われがちですが、実は人によって評価はマチマチかもしれない。
  ネタバレを宣言しているので先に触れますが、この話の一番重要なポイントはレスリーが死んでしまうところ。そこからジェスがどう立ち直っていくか、というのがテーマになっていてそれが丁寧に描かれています。そこを評価出来るかどうかだと思います。

  最近の映画や本にしてもそうだけど、簡単に人が死に過ぎる。マンガも好きなんだけど、バトルものが多くて簡単に死んでまた生き返って・・というのはどうなのか。流行りの「不死の病」系もそうだけど、「死」ということを軽く扱い過ぎていて、最初から「さあ泣け」みたいな感じに作られているのが抵抗感を生む。

  「テラビ」では、まさかそんな展開になると予想してなかったというのもあるけど、レスリーがあっさりと死んでしまう。それまでが空想の世界を全面に押し出していたので、簡単に生き返ってしまうのかなあ、と思わせるくらいあっけなかった。話が進むにつれ、本当に死んだんだという実感がじわじわと押し寄せて来て、もうお約束でもいいから生き返らせてって思ってしまいました。このあたり、涙なしでは見られませんでした。

  レスリーが死んだ後、映像では彼女の死に顔を見せていません。ジェスが葬式に出席した時、後ろ姿の幻影をちらっと見るだけです。それが「テラビシアに行けば彼女に会える」というふうな期待感を持たせてくれるのです。

  レスリーが死んでしまう展開も切ない。ジェスにはほのかに恋心を寄せる音楽教師がいて、レスリーもそれを知っていてちょっとだけ応援したりもしていた。彼女の助けで先生と仲良くなったジェスは、先生から美術館に誘われます。喜んで応じるジェスは、一瞬だけレスリーも誘うべきか迷います。けれど、二人だけで出掛けたいという気持ちが勝り、レスリーを誘いません。美術館では夢のような時間を過ごしたジェスですが、帰って来るとレスリーが死んだと聞かされます。彼女は一人で遊びに行き、テラビシアに渡ろうとしてロープが切れ、川に落ちて頭を打って死んでしまうのです。
  ジェスは彼女の死を自分のせいだと思い込みます。自分が美術館に誘ってさえいれば彼女は死ななかったのにと。落ち込むジェスは自分の殻に閉じ篭ります。ある日、ふらふらと森の奥に出掛けてみると無残にも切れたロープが・・。しかし、その横には倒木があり何とか川の向こうには渡ることが出来ます。しばらく思い出に浸っていたジェスの耳に聞こえてきたのは自分を呼ぶ声。まさかと思って駆けつけると、そこにいたのは勿論レスリーではなく、彼のことを心配した妹のメイベル。ジェスはどうしようもない気持ちを抑えられず、メイベルを突き飛ばしてしまいます。

  その後、担任の先生や父親、いじめっこのジャニスらに温かく慰められ、自分を取り戻したジェスはメイベルと仲直りするため、また自分が立ち直るためにテラビシアへと続く倒木を「橋」に作り変えます。最初、川向こうに渡るのはロープだったので、タイトルの「橋」というのは心の持ちようなんだと勝手に解釈していましたが、実はそのままの橋だったんですね。メイベルがジェスを慕う気持ちも序盤から丁寧に描かれているし、無愛想ながらも息子を見守っていた父親も然り。全てが最後につながります。
  ジェスに誘われて教会に行った帰り、レスリーは「聖書なんて信じない。信じなくたって神様が地獄に落としたりしないよ」と奔放に言い放ちます。ジェスは彼女が死んでしまった時、それを心配していました。だけど、父親が「あんないい娘が地獄に落ちるわけない」と言って慰め、ようやくジェスは気持ちを落ち着けることが出来るのです。

  序盤の空想の世界で遊ぶジェスとレスリーの心の交流もしっかりしている。「心の眼を開けば世界は開ける」という心は、きちんとジェスが受け継ぎ、そしてメイベルへと継承されていくでしょう。久々に心に残る映画となりました。テラビシアへかける橋は、誰でも持てるものなんだと思います。