平成5年9月10日付 5-65
各都道府県畜産主務部長、家畜衛生試験場長、動物検疫所長、動物医薬品検査所長、(社)全国家畜畜産物衛生指導協会会長、(社)日本養鶏協会会長、(社)日本種鶏孵卵協会会長
農林水産省畜産局衛生課長
鶏卵のサルモネラ衛生対策については、これまでにも家畜保健衛生所のサルモネラ診断機能の向上を図るため検査機器の整備を推進するとともに、同衛生所による種鶏場、採卵鶏農場等に対する衛生指導の徹底を図る一方、輸入初生ひなについては、輸出国の輸出検査及び輸入時の輸入検査においてサルモネラの分離培養を実施し、サルモネラ陽性鶏群を摘発・淘汰すること等により海外からのサルモネラ保菌鶏の侵入防止を図っているところでありますが、鶏卵の衛生的な生産体制の整備に資するため、別添のとおり「採卵鶏農場におけるサルモネラ衛生対策指針」を定めたので、御了知の上、関係者に対する周知徹底を図るとともに、貴都道府県下の採卵鶏農場に対する衛生指導を推進されたい。
なお、畜産食品に起因する食中毒発生情報の的確な把握等貴都道府県公衆衛生部局との連携を一層強化することにより、生産段階におけるサルモネラ衛生対策の効果的な実施に配慮されたい。
別添
採卵鶏農場におけるサルモネラ衛生対策指針
第1 目的
本指針は、採卵鶏農場(以下「農場」という。)における鶏卵のサルモネラ汚染防止のための衛生管理対策の基本的事項を示すことを目的とする。
第2 農場の衛生対策
農場は、家畜保健衛生所の指導の下、鶏卵のサルモネラ汚染防止のため、農場の実態を踏まえ、効果的な衛生対策の推進に努めるものとする。
第3 侵入防止等の衛生管理対策
サルモネラは、ひな、人、媒介動物、管理器材、飼料等様々なものを介して農場に侵入し、自然環境下における抵抗性が強く、一旦農場が汚染された場合、清浄化が困難となることから、次により農場へのサルモネラ侵入防止を図るとともに日常の衛生管理を徹底する。
1 農場への侵入防止
(1)施設・設備
ア 農場には、関係者以外の出入り及び犬、猫等の侵入を防止するための囲障を設置する。
イ 農場の出入口には、更衣室を設置することとし、更衣室内の配置は、@外着の脱衣場所、Aシャワー室、B内着の着衣場所の順とする。
ウ 農場内への業務上必要な車両以外の車両の乗入れを禁止するため、外来車両専用の駐車場を設置する。
エ 農場の出入口には、車両消毒施設を設置する。
オ 農場内の鶏舎の入口には、手指の消毒設備、外履きを鶏舎内専用の内履きに履きかえるための設備及び内履き用の踏込消毒槽を設置する。
カ 農場の各鶏舎の開口部には、ネズミ等媒介動物の侵入を防止するため網等を設置する。
(2)外来者等の立入り
ア 外来者の農場への立入りは原則として禁止し、やむを得ず外来者が農場に立入る場合には、(1)のイの更衣室で内着に着替えさせる。
イ 農場内への資材の搬入に際しては、消毒を実施する。
(3)導入ひな
ア ひなは、家畜防疫対策要綱(平成4年6月19日付け4畜A第1067号)別記4によるふ卵場等養鶏施設における衛生対策指針に基づく衛生対策を実施する等適切な衛生管理を行っている種鶏場から導入する。また、ひなの導入に当たっては、導入前に収容鶏舎を消毒するとともに、導入ひな及びその輸送箱についてサルモネラの分離培養(以下「検査」という。)を行う。
イ ひなの輸送車両は、使用の都度、洗浄・消毒し、使用した輸送箱、教科等は消毒又は焼却する。
(4)飼料及び飲水
飼料及び飲水は、定期的にサルモネラの検査を行い、飼料からサルモネラが分離された場合は、当該飼料の使用を中止し、飼料の保管施設を消毒する。
また、飲水からサルモネラが分離された場合は、給水施設の清掃及び消毒を行う。
2 農場の衛生管理
(1)飼養管理
ア 鶏群は、導入ひなのロットごとに適切な衛生管理の下で飼育し、他の鶏群との隔離飼育に留意する。特に強制換羽、暑熱等のストレスは、サルモネラに対する鶏の感受性を高めるので注意する。
イ 鶏舎単位でオールイン・オールアウト方式で飼育する。
ウ 鶏舎ごとにそれぞれ専用の衣服等(頻繁に洗濯及び消毒を行う。)を使用する。
エ 管理器材は、各鶏舎ごとに専用のものを備えることとするが、やむを得ず他の鶏舎で使用するときは、使用前後に十分消毒する。
オ 鶏舎への出入りに当たっては、手指等の消毒を行うとともに、消毒した専用の靴への履きかえを行う。
(2)媒介動物の駆除
ネズミ等媒介動物は、鶏舎に出入りし、サルモネラの鶏舎内伝播に重要な役割を果たすことから、その駆除を徹底する。また、鶏群のオールアウトに当たっては、鶏、飼料等を移動する 前に媒介動物を駆除する。
(3)鶏舎の消毒等
ア 鶏群をオールアウトした鶏舎は、鶏糞、敷料等の搬出後、清掃、水洗及び消毒を十分に実施する。
イ 消毒後は、サルモネラの検査を行い、陽性ならば再消毒する。再消毒後、2週間以上期間をおいて更に消毒を行った後、新たな鶏群を導入する。
ウ 管理棟、飼料庫等農場内に設置されている飼養管理施設については、定期的に清掃・消毒を行う。
(4)集卵時の衛生対策
ア 作業者は集卵前後に手指の消毒を行うか、使い捨て手袋を使用する。
イ 鶏舎内に長時間卵を放置しないように集卵は頻繁に実施する。
ウ 卵殻の汚れた汚卵、卵殻のひび割れた破卵等は、正常卵と区分する。
エ 出荷予定卵は、出荷するまで直射日光の当たらない涼しい場所に保管する。
オ 卵用トレイ及びコンテナは、消毒したものを使用する。
カ 死亡鶏は、毎日、集卵ベルトを作動する前に排除する。
キ 集卵ベルトを清潔に保つよう清掃等を行う。
第4 モニタリング衛生検査
サルモネラは、汚染の機会が多く、また成鶏が感染した場合、不顕性に推移し保薗鶏となることから、第3の1の(3)、第3の1の(4)及び第3の2の(3)の検査に加え、鶏舎内塵挨及び廃鶏について、定期的にサルモネラのモニタリング衛生検査を実施し、衛生管理対策の効果と農場・鶏群の清浄度を確認する。
第5 清浄化対策
1 第4のモニタリング衛生検査において陽性例が検出された場合は、鶏群についてサルモネラの検査を行う一方、汚染原因を究明し排除対策を講じるとともに、第3から第5の衛生管理対策を徹底する。
2 鶏群についてのサルモネラ検査の結果、陽性例が検出された場合、当該鶏群は早期に更新する。
3 陽性鶏群のオールアウト後、鶏舎の清掃・消毒を実施し、鶏舎が清浄となったことを確認した後、清浄ひなの導入を行う。