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豚コレラ防疫対策要領

(平成8年5月10日付け 8畜A第1243号農林水産省畜産局長通知)
改正履歴:
平成12年10月1日付け12畜A第2762号農林水産省畜産局長通知
平成12年12月1日付け12畜A第3316号農林水産省畜産局長通知

1 基本方針
2 豚コレラ撲滅の推進方策
3 発生予防のための防疫措置等
(1) 清浄性維持確認調査
(2) 発生予防のための指導等
4 まん延防止のための防疫措置
(1) 発生に備えた防疫体制の整備
(2) 異常豚の通報
(3) 通報を受けた場合の措置
(4) 病性決定のまん延防止措置
5 その他
(1) 豚コレラ発生農場における豚の再導入
(2) 法第50条の規定に基づく豚コレラワクチンの使用に係る都道府県知事の許可を受けている農場等での清浄性の確認

1 基本方針

 豚コレラの防疫については,近年の発生状況,平成8年度以降実施してきた豚コレラ撲滅対策の成果等を踏まえ,平成12年10月1日以降原則として全国的にワクチン接種を中止するとともに,防疫上の混乱を回避するため,同ワクチンを、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「法」という。)第50条の規定によりその使用につき都道府県知事の許可を要する動物用生物学的製剤として指定した。今後,国及び都道府県は,家畜衛生関係団体,養豚関係団体及び養豚経営者(以下「養豚経営者等」という。)の協力の下,早期に全面的なワクチン接種の中止がなされ,国内における豚コレラの撲滅が達成されるよう次の対策を実施する。

(1)農場への立入検査,異常豚の摘発と当該豚の病性鑑定及び定期的な抗体保有状況調査を実施するとともに,市町村及び養豚経営者等からの異常豚の早期通報体制を確立する。

(2)豚コレラの発生時には,豚(いのししを含む。以下同じ。)のと殺又は殺処分(以下「殺処分等」という。)によるまん延防止を基本とし,緊急ワクチン接種は,豚コレラの潜在化の防止に十分配慮したうえ,まん延防止に有効であると判断される場合に速やかに実施する。

(3)撲滅へ向けた具体的な推進方策を検討するとともに,養豚経営者等への防疫対策の周知徹底を図るため,全国段階に学識経験者,養豚関係団体,家畜衛生関係団体,都道府県,国関係者等を構成員とする豚コレラ撲滅全国検討委員会(以下「全国委員会」という。)を設置し,都道府県段階に同様の構成員からなる豚コレラ撲滅都道府県検討委員会を設置する。また,円滑な防疫の推進について,技術的な観点から検討を行うため,全国委員会に学識経験者,国関係者,その他全国委員会が必要と認めた者を構成員とする技術検討会を設置する。

2 豚コレラ撲滅の推進方策

 都道府県は,本要領に基づいて都道府県豚コレラ防疫対策要領を定めるものとし,当該要領は,以下の事項を内容とする豚コレラの発生予防措置及びまん延防止措置を定めるものとする。

3 発生予防のための防疫措置等

(1)清浄性維持確認調査

 都道府県は,次の検査及び調査を実施することとする。

ア 臨床検査による異常豚の摘発と病性鑑定
 原則として毎年度1回,全ての養豚農場において臨床検査による異常豚の摘発及び当該豚の病性鑑定を実施する。

イ 抗体保有状況調査

(ア)一貫経営農場及び肥育経営農場に係る調査
 毎日,任意抽出した別に定める頭数のと畜場搬入前後の豚について抗体保有状況調査を実施する。その結果,ワクチンの接種状況が不明な抗体陽性豚を確認した場合には,当該豚のワクチン接種歴を確認するとともに,必要に応じて同居豚の臨床検査,抗体検査及び病性鑑定を実施する。
(イ)繁殖経営農場及び種豚農場に係る調査
 少なくとも6ケ月に1回,任意抽出した10頭の豚について抗体保有状況調査を実施する。また,家畜改良増殖法(昭和25年法律第209号)第4条第1項に基づく種畜検査が実施される豚については,検査のために採材される血液を用いた抗体保有状況調査を実施する。
(ウ)野生いのししに係る調査関係機関,関係団体等の協力も得て,可能な限り抗体保有状況調査を実施する。

(2)発生予防のための指導等

 都道府県は,次の指導及び確認を行うこととする。

ア 農場における衛生管理の徹底等

(ア)養豚経営者に対し,家畜防疫対策要綱(平成11年4月12日付け11畜A第467号農林水産省畜産局長通知)の別記4の種豚場等養豚施設における衛生対策指針に基づく衛生管理の徹底を図り,豚の出荷及び導入,農場への人及び車両の入退出等を記録した衛生管理簿を整備し,保存するよう指導する。
(イ)法第51条に基づく立入検査,巡回指導
診療獣医師からの報告等により衛生管理状況を定期的に確認する。

イ 関係場所での衛生管理の徹底等

(ア)飼料関係施設
飼料供給関係者に対し,飼料製造施設,飼料中継基地等飼料関係施設での入退出時の車両等の消毒に努めるとともに,車両運行記録を整備し,保存するよう指導する。
(イ)と畜場及び家畜市場
と畜場関係者及び家畜市場関係者に対し,当該施設での入退出時の車両等の消毒,出荷豚積降し場所及び係留場所の消毒に努めるとともに,出荷又は上場豚の記録を整備し,保存するよう指導する。

ウ 厨芥残さ等の加熱処理
  厨芥残さ等を給与している養豚経営者に対し,給与前に加熱処理(70℃,30分以上又は80℃,3分以上)を行うよう指導する。

4 まん延防止のための防疫措置

 都道府県は,次のまん延防止措置を実施することとする。

(1)発生に備えた防疫体制の整備
発生時のまん延防止措置の実施体制の事前点検並びに緊急連絡網の整備及び本連絡網の養豚経営者等への周知徹底を図る。

(2)異常豚の通報
養豚経営者等に対し,飼養豚に発熱,食欲不振,下痢,異常産等の異常を認めた場合には,まず豚コレラを疑い,直ちに家畜保健衛生所(以下「家保」という。)に通報するよう指導を徹底する。

(3)通報を受けた場合の措置
直ちに通報のあった農場に立入り,飼養頭数の確認及び病性鑑定指針(平成10年10月22日付け10畜A第1937号農林水産省畜産局長通知)に基づく検査を実施する。また,病性決定までの間,当該農場の飼養豚全頭の隔離,消毒並びに人及び車両の入退出の自粛を指導するともに,3の(2)のアの(ア)の衛生管理簿に基づく疫学調査を行い,豚コレラの発生に備えた初動防疫措置の実施について検討する。

(4)病性決定のまん延防止措置
発生都道府県に豚コレラ中央対策本部(県庁)及び豚コレラ発生現地対策本部(家保)を設置し,都道府県関係機関及び市町村に連絡する。また,次に掲げるまん延防止措置の実施に当たっては,関係者及び関係機関と密に連携を取って行うこと。

ア 患畜,疑似患畜等の範囲  

(ア)患畜
 法第2条第2項に規定する患畜は,次の豚とする。
a病性鑑定指針に基づき豚コレラにかかっていると診断された豚
baの豚と同居し,豚コレラの臨床症状を呈している豚

(イ)疑似患畜
法第2条第2項に規定する疑似患畜は,次の豚とする。
a患畜と同一農場(飼養管理形態等により,家畜防疫員が豚コレラの患畜又は疑似患畜が飼養されている豚舎と防疫上区別することが可能と判断した豚舎を除く。以下同じ。)で飼養されている豚
b過去(患畜が異常を呈した日を起算日とする。以下同じ。)14日間に発生農場で飼養されていた豚
c患畜より過去14日間に採精された精液を用いて,人工授精を行った豚

(ウ)患畜となるおそれがある豚
法第14条第3項に規定する患畜となるおそれがある家畜(疑似患畜を除く。)は,次の豚とする。
a飼養管理形態等により,家畜防疫員が豚コレラの患畜が飼養されている豚舎と防疫上区別することが可能と判断した豚舎で飼養されている豚
b疑似患畜と同一農場で飼養されている豚及び過去14日間に疑似患畜と同一農場で飼養されていた豚
c過去14日間に疑似患畜と同一農場で飼養されていた豚と同居している豚
d疑似患畜より過去14日間に採精された精液を用いて,人工授精を行った豚
e過去14日間に発生農場に豚を出荷した農場の豚及び過去14日間に患畜に人工授精を行った精液を採精した豚fその他,家畜防疫員が豚コレラのまん延を防止するため必要と認めた豚

イ 公示,報告又は通報
 法第13条の規定に基づき,公示,報告及び通報を行うとともに,家畜衛生関係団体,養豚関係団体等と連携を図りつつ,豚コレラ発生に係る情報を周知する.なお,病性の決定までに時間を要し,かつ,豚コレラの疑いが強い場合には,法第13条の規定に基づく公示及び通報に先立って国への報告を行い,その取扱いを協議する。

ウ 疫学関連農場等への立入検査
 家畜衛生関係団体,養豚関係団体,関係都道府県等と連携を図りつつ,疫学関連農場,移動制限区域内の農場,関係場所等の立入検査を実施する。

エ 移動制限
 法第32条第1項の規定に基づき,豚コレラ発生農場を中心とした概ね半径3kmの区域及び10Kmの区域を防疫区域及び監視区域(防疫区域に接する区域で防疫区域を除く区域。)として時期を失することなく移動制限を行い,区域の設定に当たっては地理的条件,豚の飼養状況等を考慮する。また,移動制限の期間は,最終発生例についての措置後,防疫区域については40日問,監視区域については15日間とし,当該期間中に新たな発生を認めない場合には,移動制限を解除するものとする。なお,所要の措置を講ずる等により家畜防疫員が防疫上支障がないと認める豚は,最終発生例についての措置後,防疫区域については21日日以降,監視区域については7日日以降と畜場への出荷を許可することができることとし,許可の際にはと畜場出荷許可書を交付する。

オ 緊急ワクチン接種
 防疫区域内の農場(発生農場を含む。)及び疫学関連農場を対象として,畜産局衛生課(以下「衛生課」という。)と協議の上,原則として*法第31条の規定に基づき飼養豚全頭に接種し,接種した豚には耳標等で標識する。接種豚については他の農場への移動自粛を指導するとともに,接種豚から産出された豚(と畜場へ直接出荷する豚を除く。)には耳標等で標識する。なお,所要の措置を講ずる等により家畜防疫員が防疫上支障がないと認める豚は,緊急予防接種後21日日以降と畜場への出荷を許可することができることとし,許可の際にはと畜場出荷許可書を交付する。

カ 殺処分等
 患畜及び疑似患畜の殺処分等は,まん延防止の観点から,発生時の病勢,疫学的考察等に基づいて,迅速かつ効果的に実施するものとし,この際には,患畜及び疑似患畜の所有者に対して,*法第18条の規定に基づくと殺の届出を直ちに行うよう指導し,当該届出が直ちに行われない場合にあっては,*法第17条の規定に基づく殺処分を実施する。死亡豚及び殺処分等された豚については,豚の飼養されていた農場敷地内で*家畜伝染病予防法施行規則(昭和26年農林省令第35号。以下「規則」という。)第29条の基準に従って埋却処分するとととする。これが困難な場合には,密閉式車両又はこれに準ずる方法で他の場所に運搬し,同基準により焼却又は埋却するか,又は,*規則第17条の基準に適合する施設及び方法により化製する。

キ 隔離等
 移動制限区域以外で飼養されている患畜となるおそれがある豚(アの(ウ)のb及びcに限る。)は,*法第14条第3項の規定に基づき農場外へ移動させてはならない旨を指示する。なお,隔離の課せられた農場に飼養されている豚のうち,その飼養管理形態等により疑似患畜が飼養されている豚舎と防疫上区分することが可能と家畜防疫員が判断した豚舎で飼養されている豚及びアの(ウ)のcの豚にあっては,と畜場へ出荷を許可することができることとする。その他の患畜となるおそれがある豚は,自主的な隔離を指導することとし,必要に応じて隔離を指示する。

ク 飼養豚のとう汰等の指導
  家畜防疫員又は家畜防疫官(以下「家畜防疫員等」という。)は,(ア),(イ)及び(ウ)の豚にあってはとう汰の上,焼却,埋却等するよう,また,何の物品にあっては焼却,埋却又は消毒するよう指導する。なお,その実施に当たっては,あらかじめ衛生課と協議するものとする。

(ア)防疫区域に所在し,家畜防疫員等が豚コレラのまん延を防止するためにとう汰する必要があると判断した豚

(イ)防疫区域及び監視区域内に所在し,家畜防疫員等が出荷等ができないためにとう汰する必要があると判断した豚

(ウ)(ア)及び(イ)以外の豚で,家畜防疫員等が豚コレラ発生農場と疫学的に関連がある等豚コレラのまん延を防止するためにとう汰する必要があると判断した豚

(エ)家畜防疫員等が豚コレラのまん延を防止するために焼却等の必要があると判断した物品

ケ 移動制限区域内の農場,疫学関連農場,関係場所における防疫措置

(ア)移動制限区域内の農場,疫学関連農場に対し,農場への人及び車両の入退出の制限の徹底,入退出車両の消毒の徹底を指導する。

(イ)移動制限区域内の農場,疫学関連農場に飼料を配送する飼料供給関係者に対し,配送車両の消毒の徹底(車体消毒を含む。),豚コレラのまん延を防止するための配送ルートの見直しを指導する。

(ウ)移動制限区域内のと畜場においては,入退出車両の消毒(車体消毒を含む。)の徹底を指導する。

(エ)法第33条の規定に基づき,防疫区域内での家畜市場(豚を対象とするものに限る。)の開催を中止する。また,監視区域内で家畜市場を開催する場合は,入退出車両の消毒の徹底を指導する。

5 その他

(1)豚コレラ発生農場における豚の再導入
 都道府県は,移動制限解除後,豚コレラ発生農場に豚が導入された場合は,当該豚の導入後概ね40日目に抗体検査等を実施し,清浄性を確認する。

(2)法第50条の規定に基づく豚コレラワクチンの使用に係る都道府県知事の許可を受けている農場等での清浄性の確認

ア 都道府県は,原則として許可期間中少なくとも1回,許可を受けている農場の立入検査を実施し,ワクチンの使用状況の聴取,異常を示す豚の発生状況の聴取,血液の採材等を行い,農場の清浄性を確認する。

イ 都道府県は,養豚経営者等に対し,豚の導入時には導入元農場の豚コレラワクチンの使用の有無を確認し,ワクチン接種豚を導入する場合には,ワクチンを使用した旨の耳標による標識が装着されていることを確認するとともに,管轄家保に連絡するよう指導することとし,ワクチン接種豚を導入する農場については,立入検査を実施し,(1)と同様に農場の清浄性を確認する。

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