1 防疫をめぐる情勢について
2 防疫対策の基本的な推進方向について
3 防疫推進体制の整備について
4 防疫対策の具体的推進について
5 自衛防疫について
6 海外悪性伝染病等の防疫について
U 個別疾病対策
1 流行性脳炎
2 炭 疽
3 ブルセラ病
4 結核病
5 ヨーネ病
6 ピロプラズマ病及びアナプラズマ病
7 伝染性海綿状脳症
8 馬伝染性貧血
9 豚コレラ
10 ニューカッスル病
11 家きんサルモネラ感染症
12 腐蛆病
牛カンピロバクター症13 ブルータング
14 アカバネ病
15 悪性カタル熱
16 チュウザン病
17 牛ウイルス性下痢・粘膜病
18 牛伝染性鼻気管炎
19 牛白血病
20 アイノウイルス感染症
21 イバラキ病
22 牛丘疹性口炎
23 牛流行熱
24 破傷風
25 気腫疽
26 レプトスピラ症
27 サルモネラ症
28
V その他
1 災害対策
別記1 監視伝染病のサーベイランス対策指針
2 乳用雄子牛飼養施設における衛生対策指針
3 放牧地における衛生対策指針
4 種豚場等養豚施設における衛生対策指針
5 ふ卵場等養鶏施設における衛生対策指針
6 競馬場等馬の集団飼育施設における衛生対策指針
7 輸入家畜の着地検査指針
8 牛のブルセラ病又は結核病の検査に関する農林水産大臣が定める区域等の指定について
別記様式1 発生報告等
(平成11年4月12日付け11畜A第467号農林水産省畜産局長通知 )
改正履歴:
平成12年10月1日付け12畜A第2761号農林水産省畜産局長通知
平成12年12月1日付け12畜A第3316号農林水産省畜産局長通知
平成13年4月1日付け13生畜第1777号農林水産省生産局長通知
1 防疫をめぐる情勢について
我が国の畜産は、近年、急速に経営規模の拡大が進展し、家畜・畜産物の流通量が増大し、広域的に流通するようになっている。このため、ひとたび伝染性疾病が発生した場合、急速かつ広範囲にまん延し、その被害が甚大となるおそれがある。また、貿易の自由化が進展し、海外の家畜・畜産物の流通が増大している中で、口蹄疫等の悪性伝染病の侵入の危険性も高まってきている。
更に、国内外において伝染性海綿状脳症等の新たな疾病の発生(新興感染症)、豚流行性下痢等のようなしばらく問題となっていなかった疾病(再興感染症)が見られるほか、動物由来で人に感染を起こすサルモネラ感染症等(動物由来感染症)が問題となっている。
このような状況に対処するため、危機管理の観点からの事前対応型の防疫体制を構築し、より効果的かつ効率的な防疫措置が講じられるよう防疫推進体制を整備することが重要となっている。本要綱は、このような情勢を踏まえ家畜伝染病予防法の監視伝染病について基本的な防疫対策の推進方向を示すものである。
2 防疫対策の基本的な推進方向について
(1) 事前対応型の防疫体制の構築
最近の国内外における家畜の伝染性疾病による発生状況からみると、家畜の伝染性疾病が発生してから防疫措置を講ずるというこれまでの対応では、被害拡大の防止が十分ではないと考えられる。このため、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号、以下「法」という。)第5条に規定する発生の動向を把握するための検査体制の整備、家畜伝染病予防事業(以下「予防事業」という。)の計画的な実施、自衛防疫の積極的な推進等の取組みを通じて、家畜の伝染性疾病発生の未然防止に重点を置いた事前対応型の防疫体制の構築に努めることが重要である。
(2) 危機管理の観点に立った迅速かつ的確な対応
(3) 国及び都道府県の果たすべき役割
国及び都道府県(以下「県」という。)は、家畜防疫の実施に当たり、相互に連携を図りつつ、家畜の伝染性疾病の発生の予防及びまん延の防止のための施策を講ずるとともに、正しい知識の普及、情報の収集及び分析並びに公表、研究の推進、人材の養成及び資質の向上並びに確保、迅速かつ正確な検査体制の整備等の伝染性疾病対策に努める必要がある。
(4) 家畜の飼養者等の果たすべき役割
家畜の伝染性疾病による損耗防止の徹底を期するためには、家畜飼養者自らが自衛防疫として日常の衛生管理の徹底、的確な予防接種、検査等を実施することが重要であり、自衛防疫は、家畜防疫の基礎をなすものとして位置付けられる。
自衛防疫には、家畜防疫措置の効果的かつ効率的な実施という観点から、全国又は地域で組織的・統一的に実施する必要があるものとして社団法人家畜畜産物衛生指導協会等(以下「協会等」という。)の団体が主導して行うものと家畜飼養者が個別に実施するものとがある。
また、協会等の団体が主導して行う組織的な自衛防疫においては、自衛防疫の実施プログラムの策定、家畜飼養者等に対する自衛防疫の重要性に関する普及・啓発活動、家畜の伝染性疾病の清浄化を図るため実施する予防接種、サーベイランス結果に基づき家畜の伝染性疾病の発生防止のため一定の地域において組織的に行う予防接種、組織的に行うことが効果的・効率的な自主的検査等を実施する。
更に、これらの団体は、国及び県との密接な連携の下、家畜飼養者が個別に実施する自衛防疫の円滑な実施のための指導を行う必要がある。
(5) 家畜の伝染性疾病対策における国際協力
家畜の伝染性疾病は、もはや一つの国で解決できるものではなく、世界各国が互いに協力しながら対策を進めていかなければならない。特に、家畜の伝染性疾病に関して海外の政府機関、研究機関、国際獣疫事務局(0IE)等の国際機関との情報交換や国際的取組への協力を進めるとともに、家畜の伝染性疾病に関する研究や人材養成の面においても国際的な協力を行う必要がある。
3 防疫推進体制の整備について
(1)情報伝達体制の強化
ア 防疫措置を円滑に推進していくためには、地域の衛生状況を的確に把握することが極めて重要である。このため、法に基づく届出、法第5条の検査、法第51条の立入検査、巡回指導等により情報の収集に努める必要がある。特に、飼養規模の大型化、畜産経営の企業化及び民間検査機関の整備の進展の中で重要な衛生情報が埋没することのないよう、関係者との連携を保ち情報の迅速な収集に努める必要がある。
イ また、と畜場又は食鳥処理場においては、と畜検査成績、食鳥検査成績等の有用な家畜衛生情報が得られることから、これら機関とより緊密な連絡体制を整備して情報の交換を積極的に行い衛生状況の把握に努める必要がある。
ウ 更に、収集した衛生情報が効果的に活用されるためには、情報が関係者に迅速かつ的確に伝達される必要がある。このため、国と県との間の家畜衛生情報システムを活用しつつ、県間、県と関係団体あるいは家畜飼養者との間の情報交換の促進を図り、有用な情報の迅速な伝達に努めることが必要である。
(2) 病性鑑定実施体制の強化
家畜保健衛生所に要求される病性鑑定等の検査業務の正確性及び迅速性を確保するため、国は、最新の科学的知見等に即した病性鑑定指針の策定を行う。各県は、この指針に基づき的確な病性鑑定が実施ができるよう病性鑑定機能の向上に努めるとともに、家畜飼養者、民間獣医師、関係機関等に対する普及・啓発を図り、国が開催する家畜衛生講習会を有効活用するなどにより家畜保健衛生所の技術水準の維持・向上に努める必要がある。
(3) 民間獣医師の活用体制の強化
監視伝染病の防疫を推進するに当たっては、民間獣医師の果たす役割は重要であることから、民間獣医師の技能のレベル向上を図るとともに、家畜衛生関係法規、家畜防疫対策要綱等についての周知徹底が重要である。このため、家畜保健衛生所においては、講習会、研究会等を開催するほか、民間獣医師に施設利用の便宜を図るなど獣医技術の向上と高位平準化を推進して家畜防疫の実施体制の充実・強化に努める必要がある。
4 防疫対策の具体的推進について
(1) 発生予防について
畜産経営形態の集団化・企業化が進展し、複数県に及ぶ経営も出現するなど、家畜・畜産物の流通の高速化・広域化・大量化が進展する中で、発生予防・予察事業の的確な実施を図るため、別記1「監視伝染病のサーベイランス対策指針」により、全国的又は地域的な監視伝染病の発生の状況及び動向を的確に把握するとともに、法第六条の規定に基づく予防接種等を効果的に実施することが必要である。
また、最近の飼養家畜の多様化の中で特用家畜に対する衛生対策の要請の増大もあり、法の対象として追加されたしか、いのしし等を含め、その他の特用家畜についても特用家畜飼養者に対して、監視伝染病の発生予防のための指導に努めることが必要である。
ア 伝染性疾病の発生の届出
法第四条に基づく届出伝染病の発生の届出は、当該疾病の発生を早期に把握して、新たな発生を防止する上で極めて重要である。このため、防疫の円滑な実施の前提条件となるものであること及び法改正により届出伝染病が大幅に増加したことについて、獣医師に対して十分に周知することが必要であり、これら届出伝染病の早期届出の徹底に努めることが重要である。
イ 新疾病の発生の届出等
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は疾病名が確定する以前は、原因不明の異常産を引き起こし、その症状から「ヘコヘコ病」として知られていた。このように既に知られている家畜の伝染性疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なる疾病として、獣医師より法第4条の2の規定に基づき届出があった場合、家畜保健衛生所は検査を実施し、新疾病、既知疾病あるいは非伝染性疾病かの判定を行うことが必要である。
新疾病と判定した場合、必要な防疫措置を講じた上で速やかに国に報告するとともに発生予防が必要と判断した場合は、同条第5項に基づき特定疾病として検査を実施する。
報告を受けた国は、試験研究機関、県等と密接な連携をとりながら、新疾病の原因究明等に努める。新たな伝染性疾病については、調査結果に基づき家畜伝染病又は届出伝染病とするかを検討の上、法令の改正等必要な措置をとる。
ウ 検査及び注射
監視伝染病の防疫に当たっては、検査による浸潤状況の把握に努めるとともに当該結果を踏まえ、予防接種等の必要な防疫措置の的確な実施が重要である。
エ 報告及び通報
法第12条の2の規定に基づく報告又は通報については、以下により行う。(ア) 法第12条の2の関係県知事の範囲は、当該県と隣接する県の知事及び当該県から関係家畜を継続的に移入している県の知事とする。
(イ) 法第12条の2の規定に基づく家畜伝染病予防法施行規則(以下「規則」という。)第21条第3項の規定による関係県知事への通報は、毎月10日までに、その前月中にとった措置について、規則別記様式第14号に準ずる様式により行う。
(2) まん延防止について
家畜伝染病のまん延防止の成否は、初動防疫がいかに迅速かつ的確に実施されるかに左右される。このため、当該措置の的確な実施に努めることに重点を置き、以下の事項に留意して法に規定されているまん延防止措置を的確に実施する必要がある。
ア 患畜等の届出、報告等
初動防疫を的確に実施するためには、法第13条の規定に基づく患畜又は疑似患畜の届出及び関連する病性鑑定が、迅速かつ的確に行われることが前提となることから、以下の事項に留意する必要がある。(ア) 家畜飼養者に対して、家畜伝染病の病性についての周知徹底に努め、異常を呈する家畜を発見した場合は速やかに家畜保健衛生所、家畜診療所、民間獣医師等の関係機関・関係者に連絡するよう指導することが必要である。
(イ) 獣医師に対して、法の趣旨についての周知徹底に努めるとともに、法の規定に基づき速やかに届け出るよう指導することが必要である。
(ウ) 家畜伝染病の疑いがある場合には、「病性鑑定指針」(平成10年10月22日付け10畜A第1937号農林水産省畜産局長通達)に基づき迅速に病性を決定する。
(エ) 発生が認められた場合は、予防接種の実施状況、家畜の移動状況等発生予防のために常日頃から収集している情報を十分活用して、まん延防止措置に万全を期するとともに、広報誌等も活用しつつ、当該措置の効果的な実施に努めることが必要である。この際、市町村、県及び国は、それぞれの段階で関係機関等との通報あるいは連絡を密に行うことが必要である。イ 患畜等の隔離
家畜伝染病の病原体のまん延を防止するためには、患畜又は疑似患畜を速やかに隔離することが重要である。このため、法第14条の規定に基づく隔離が迅速に実施されるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
ウ 殺処分
法第17条の規定に基づく患畜等の殺処分については、地域における患畜の発生の様相、家畜の飼養状況、予防接種状況等まん延防止に係る各種要因を総合的に勘案して的確に実施する必要がある。
エ 病性鑑定のための殺処分
法第20条の規定に基づく病性鑑定のための殺処分については、家畜伝染病の迅速かつ的確な診断のために行うものであることから、措置に当たってはその趣旨を十分踏まえつつ、できる限り効率的に実施する必要がある。
オ 死体、汚染物品の焼却等
家畜伝染病の集団発生等により多数の死体が生じる場合を想定して、速やかに措置が講じられるよう、関係機関とも十分連携しつつ、あらかじめ死体等の処理要領について検討・作成し、処理する場所の選定、処理方法、死体運搬要領などを定めておく必要がある。
カ 検査、注射、薬浴又は投薬
法第31条の規定に基づく検査、注射、薬浴又は投薬は、患畜又は疑似患畜が発見された場合に、発生場所の周辺地域における家畜の飼養状況、予防接種状況等を勘案して実施するべきである。その実施対象区域は、原則として法第32条の規定に基づく移動制限区域内の範囲とする。なお、その実施に当たっては、アの(エ)に準じて効果的にまん延防止措置が講じられるよう留意する。
キ 移動制限
法第32条の規定に基づく家畜等の移動制限は、家畜伝染病の種類、病性、発見後の経過状況、地域の家畜飼養状況、交通事情、家畜・畜産物の流通事情等を総合的に勘案し、まん延防止効果が最大限に発揮しうる最小限の制限すべき範囲、期間、対象物等を定めて行う必要がある。このため、主要な疾病については、あらかじめ発生時の対応を検討しておくことが重要である。この際、防疫上支障がない限り、消毒等所要の防疫措置を講じた上で、と畜場に直行する場合に限っての家畜の区域外への移動及び鶏卵等の生産物の出荷が行えるよう配慮する必要がある。なお、移動制限を発動した場合は、発生状況及び防疫状況について関係県間で連絡を密にし、県間において移動制限を効果的に措置されるよう努めるものとする。
ク 家畜集合施設の開催等の制限及び放牧等の制限
法第33条及び法第34条に基づく家畜集合施設の開催等の制限及び放牧等の制限については、所要の規則を整備し、その的確な運用を図ることが重要であり、当該家畜集合施設の開催等及び放牧等の関係者に対し、あらかじめ衛生措置に係る要領を定め、当該要領に基づき運営を図るよう指導することが必要である。
ケ 報告・通報
法第13条第4項及び法第35条の規定に基づく報告又は通報については、以下により行う。(ア) 法第13条第4項及び法第35条の関係県知事の範囲は、当該県と隣接する県の知事及び当該県から関係家畜を継続的に移入している県の知事とする。
(イ) 法第13条第4項に基づく規則第25条第2項の規定による関係県知事への電信・電話又はこれに準ずる方法による通報及び規則第25条第3項の規定による農林水産大臣への報告は、別記様式1による。コ その他
(ア) 家畜伝染病の発生時には、家畜の導入状況、関係者の出入り、飼料の入手先、畜舎別家畜収容状況、患畜及び疑似患畜以外の異常家畜の発生の状況、予防接種の実施の有無等の疫学調査を徹底して行い、感染経路を解明するとともに、関連事項を詳細に記録しておくことが必要である。この際、発生農場と疫学的に関連のある農場については、発生県及び関係県が相互に連絡を取りつつ、法第51条の規定に基づいて積極的に立入検査を行い、まん延防止の徹底に努めることが必要である。
(イ) 監視伝染病がと畜場等で発生したとの情報を得た場合についても、(3)の場合と同様に出荷農場及び疫学的に関連のある農場への立入検査等を実施し、発生予防及びまん延防止の徹底に努める必要がある。
(3) 予防事業の実施に当たっての計画策定
県における予防事業を円滑に推進するため、地域の実情に即した監視伝染病の発生予防及びまん延防止のための家畜防疫計画を策定する必要がある。計画の策定に当たっては、計画策定の考え方、地域における監視伝染病の発生状況等を考慮し、別記様式2により策定する。
また、当該事業実施年度中において、家畜伝染病の発生等に伴い家畜防疫上新たな対応が必要となった場合は、別記様式3により予防事業の計画変更を行う必要がある。
5 自衛防疫について
家畜の伝染性疾病の発生予防のためには、日常の衛生管理の徹底が基本であり、これに加えて予防接種、検査等を的確に実施していくことが重要である。また、監視伝染病のほか、それ以外の家畜の伝染性疾病についても的確な自主的措置の徹底が必要なものがある。このため、以下に留意して、地域の家畜衛生事情等を踏まえた、効果的・効率的な自衛防疫が実施されるよう関係者への指導に努めることが必要である。
(1) 伝染性疾病の発生予防に当たっては、立入制限、清掃・消毒の励行、衛生害虫の駆除、個体観察の徹底とその記録の実施、導入家畜の一時的隔離飼育、換気・保温の確保、密飼い等によるストレスの防止等日常の衛生的な飼養管理の徹底のほか、地域における予防接種を含めた衛生飼養管理プログラムの策定等について家畜飼養者及び関係団体を指導することが必要である。 特に、一般的飼養管理の失宜に伴う損耗の防止が重要である乳用雄子牛の飼養施設、肉用牛等の放牧地、種豚場等の養豚施設、ふ卵場等の養鶏施設及び競馬場等の馬の集団飼養施設に対しては、別記2〜6の衛生対策指針を参考として衛生対策の指導が必要である。
(2) 協会等が行う予防接種等の自衛防疫事業(以下「協会事業」という。)については、以下に留意して協会等に対する指導・助言が必要であり、家畜飼養者と家畜保健衛生所等が一体となった地域ぐるみの自衛防疫体制のより一層の充実・強化を図ることが重要である。
ア 協会等の予防接種事業については、地域的に一定の予防接種率を確保することが必要な伝染性疾病を中心として実施されてきているものである。予防接種には、家畜の飼養者が自主的に行うワクチンと協会等が計画的に実施する牛伝染性鼻気管炎等のワクチンに区分することができる。
協会等の予防接種事業の計画策定に当たっては、法第5条に規定されている監視伝染病の発生の状況等についての情報を積極的に活用し、また、予防事業等との調整を図りつつ、予防接種プログラムの作成、協会事業に従事する民間獣医師(以下「指定獣医師」という。)の巡回計画等について積極的に助言を行い、計画的な予防接種の的確な実施を推進する必要がある。
イ 協会等のその他の事業については、家畜生産農場の清浄化支援、また安全な畜産物の生産のための支援等の事業がある。地域の円滑な事業の推進を図る観点から、計画の策定、調整に当たっては十分に留意する必要がある。
ウ 協会事業は、特に指定獣医師として民間獣医師の関与を必要とするものであることから、事業実施に必要な民間獣医師の配置及びその活用について助言することが必要である。獣医師の指定に当たっては、獣医師会とも調整の上、家畜飼養者と通常の診療関係を有する獣医師の指定を優先することとし、特に、指定獣医師の確保が困難な地域においては、市町村、各種農業団体、民間会社等の協力を得て、これらに所属する獣医師等の一層の活用を図ることが必要である。
エ 以上のような協会事業について協会等は、家畜飼養者の要望も踏まえ円滑な推進を図ることとし、他の協会等との情報の交換により事業運営の合理化と効率化を図る必要がある。今後、協会等は、自衛防疫計画の策定・調整業務の充実とともに事業内容の多元化等により運営基盤の整備・強化を検討する必要がある。
6 海外悪性伝染病等の防疫について
口蹄疫等の海外悪性伝染病がなお世界の広範囲の地域に存在している一方、国際的な貿易の自由化の進展から動物・畜産物についても、多様な国から多様な品目が輸入されており、海外からの監視伝染病の侵入機会は更に増加している状況にある。このため、これら動物及び畜産物の輸入に伴う海外悪性伝染病をはじめとする監視伝染病の侵入防止について、今後、なお一層の注意を払い、防疫に万全を期することが必要である。
(1) 着地検査体制の確立
輸入家畜による監視伝染病の侵入防止に万全を期すためには、動物検疫所における輸入検疫と輸入検疫後の輸入家畜の飼養地における隔離飼養等の防疫措置(以下「着地検査」という。)を一体的かつ効果的に推進することが重要である。このため、動物検疫所及び県においては別記7「輸入家畜の着地検査指針」に基づき、関係者の指導に努める必要がある。
(2) 海外悪性伝染病等防疫体制の強化
U 個別疾病対策ア 県においては、海外悪性伝染病防疫要領(昭和50年9月16日付け50畜A第3483号農林水産省畜産局長通知)を基本として具体的な防疫措置要領を検討・作成し、緊急防疫体制を確立するとともに関係技術者や家畜飼養者に対する普及・啓発運動を強化するよう措置することが必要である。
イ 家畜の伝染性疾病と思われる不明疾病が発生した場合は法第4条の2の規定に基づく対応を、また、発生疾病が我が国における初発例と思われる場合には、速やかに国に連絡するとともに、その指示により必要な場合には海外悪性伝染病防疫要領及び病性鑑定指針に基づいて材料を採取し、独立行政法人農業技術研究機構動物衛生研究所(以下「動物衛生研究所」という。)へ持参又は送付する。また、病性の最終決定は、畜産局衛生課及び動物衛生研究所等の研究機関と検討の上行う。この際、当該疾病により畜産に重大な影響を及ぼすと考えられる場合は、病性が決定するまでの期間におけるまん延防止の措置について、とりあえず周辺への拡大を防止するための指導を行った上で速やかな対応を図る必要がある。
ウ 国及び県は、海外悪性伝染病等の防疫措置方法について防疫演習の実施に努め、発生時の効率的防疫活動に資する。また、国においては、口蹄疫予防液及び牛疫予防液を備蓄し、不測の事態に備える。
エ 国は、海外における疾病の発生動向に関する情報収集に努めるとともに、海外悪性伝染病等の侵入防止とまん延防止に必要な技術開発並びに診断体制の整備等に万全を期する。
1 流行性脳炎
法第2条に掲げる流行性脳炎とは、日本脳炎、西部馬脳炎、ベネズエラ馬脳炎等脳炎を起こすアルボウイルスによる感染症をいう。現在、我が国で発生をみているのは日本脳炎のみである。日本脳炎の主な被害は、馬における発症時の死亡及び予後不良並びに繁殖豚における死流産、無精子症等の発現にあることから、馬及び繁殖豚を中心とした発生予察措置の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防対策)
(1) 日本脳炎は、予防接種の励行を基本として発生予防を図ることが重要である。特に豚にあっては未越夏の子取り用雌豚及び繁殖用雄豚を中心として、地域における抗体上昇期の少なくとも6週間前に接種が完了するよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、分娩回数の少ない経産豚についても必要に応じて予防接種を実施するよう併せて指導することが必要である。
(2) 日本脳炎の流行の予測、予防接種の実施の検討等本病の防疫に資するため、公衆衛生当局との連携を図りつつ、と畜場における本病の抗体動態調査結果を有効に活用するとともに、必要に応じて法第5条の規定に基づく抗体の動態調査を実施することが必要である。
(まん延防止対策)
(3) 日本脳炎については、原則として法第17条の規定に基づく患畜の殺処分及び法第20条第1項の規定に基づく病性鑑定のための疑似患畜の処分は実施しない。
(4) 発生農場及び周辺農場の家畜飼養者に対しては、必要に応じて殺虫剤の散布等吸血昆虫の防除の実施について指導する必要がある。
2 炭 疽
本病は、突然のへい死例として発見されることが多く、その後の患畜又は疑似患畜の死体及び汚染物品の適切な処置を誤ると、本病の病原菌の特性から常在化し、清浄化に大きな支障を生ずるのみならず、特に酪農家で発生した場合は、生乳流通が広域化・大規模化している中で、生乳の廃棄等に伴う被害が莫大なものになりかねない状況にある。このため、本病については、本病を疑う症例を発見した場合の迅速かつ的確な病性鑑定の重要性についての関係者に対する啓発・指導と、早期発見及び迅速な防疫措置の実施の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防対策)
(1)
本病の病原体の常在地においては、予防接種の励行を基本として発生の予防に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(まん延防止対策)
(2)
家畜が突然へい死した場合は、直ちに家畜保健衛生所に届け出るとともに、当該家畜飼養施設において生産された生乳については、当該家畜の病性鑑定結果が判明するまで、他の家畜飼養施設から出荷された生乳と合乳しないよう関係者を指導する必要がある。
(3)
本病を疑った症例を発見した場合は、天然孔からの血液等の漏出防止を図り、速やかに病性鑑定を実施する必要がある。また、家畜、生乳等の本病の病原体を伝播するおそれのある物品についての移動を自粛するよう関係者を指導する必要がある。なお、病性鑑定用の材料の採取に当たっては、できる限り切開部位を少なくし、切開部位からの血液、体液の漏出による周囲への汚染防止を図ることが重要である。
(4)
病性鑑定により、アスコリー反応が陽性で有莢膜桿菌の検出を見た場合は、本病の疑似患畜として適切なまん延防止措置を迅速に実施するとともに、引き続きその後の病性鑑定を速やかに行う必要がある。
(5) 本病の発生が確認された場合は、法第32条第1項の規定に基づき、直ちに家畜、生乳等本病の病原体を伝播するおそれのある物品の移動制限措置を講ずる必要がある。また、この移動制限期間中に、法の規定に基づく検査を実施し、生乳の処理等についての生産者に対する指導が必要である。
(6) 法第20条及び法第23条の規定に基づく死体及び汚染物品の焼却等並びに法第25条の規定に基づく畜舎等の消毒の実施に当たっては、次のことに留意の上措置する必要がある。
ア 患畜及び疑似患畜の死体は原則として焼却する。
イ 患畜及び疑似患畜が飼養されていた畜舎の消毒の困難なもの、不用の汚染物品及び床板等の木製品並びに価値の少ない汚染物品等は焼却する。
ウ 消毒は、発生畜舎のみならず関係運動場等の施設全般にわたって実施する。
(7) 法第23条の規定に基づく焼却等の対象となる生乳は、原則として畜舎に所在する生乳及び集乳所等への輸送段階のものとし、以下により処置する必要がある。
ア 炭疽菌に汚染した生乳として処置するもの。
(ア) 培養その他の方法により乳汁中に炭疽菌を証明したもの。
(イ) 炭疽にかかり泌乳量が著しく減少した牛から搾乳されたもの。
(ウ) 炭疽にかかり40℃以上の発熱を示す牛から搾乳されたもの。イ 炭疽菌に汚染したおそれのある生乳として処理することができるもの。
(ア) 炭疽にかかった牛から搾乳されたものであって、発症の前日以降搾乳したもの((イ)に掲げるものを除く。)及びこれらの生乳と合乳されたもの。
(イ) 炭疽にかかった牛と同居する牛であって、40℃以上の発熱を示す牛から搾乳されたもの及びこれらの乳と合乳されたもの。ウ 患畜の発見の遅延等により、飼養場所が炭疽菌により汚染されているおそれがあると考えられる場所で飼養されている搾乳牛から搾乳されたもの(発生の場所、発生時の状態及びその後の処置いかんにより異なるが、患畜の処分後おおむね一週間を基準とする。)。
(8) 発生畜舎の同居牛については、法第31条の規定に基づき抗菌性物質等による措置を迅速に行い、継続発生の防止に努める必要がある。なお、まん延防止のための予防接種は、発生畜舎の同居牛及び汚染畜舎の飼育牛を対象として、患畜の最終発生後10日間を経過してから実施する必要がある。
3 ブルセラ病
本病については、非清浄地域において飼育されている搾乳牛、種雄牛及びそれら同居牛の他、県知事が必要と認めた牛について法第5条の規定に基づく検査並びに当該検査により摘発した患畜についての法第17条の規定に基づく殺処分を基本とした発生予防及びまん延防止の徹底により清浄度の維持・清浄化の達成を図ることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防及びまん延防止対策)
(1) 本病の患畜は、速やかに法第14条第1項の規定に基づく隔離の徹底を図り、法第17条の規定に基づき発生後2週間以内に殺処分を行うよう命ずる必要がある。なお、殺処分に際しては、剖検記録を作成し、病性鑑定材料を採取して菌分離等の検査を行う必要がある。また、動物衛生研究所と連絡をとり、発生記録、殺処分時血清(10ml)及び病性鑑定材料を動物衛生研究所に送付する。
(2) 法第20条第1項の規定に基づく病性鑑定のための殺処分は、原則として実施しない。
(3) 本病の非清浄地域の指定については、別記8による。
4 結核病
本病については、非清浄地域において飼育されている搾乳牛、種雄牛及びそれら同居牛の他、県知事が必要と認めた牛について法第5条の規定に基づく検査並びに当該検査により摘発した患畜についての法第17条の規定に基づく殺処分を基本とした発生予防及びまん延防止の徹底により清浄度の維持・清浄化の達成を図ることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防及びまん延防止対策)
(1) 本病の患畜は、速やかに法第14条第1項の規定に基づく隔離の徹底を図り、法第17条の規定に基づき発生後2週間以内に殺処分を行うよう命ずる必要がある。なお、殺処分に際しては、剖検記録を作成し、病性鑑定材料を採取して菌分離等の検査を行う必要がある。また、動物衛生研究所と連絡をとり、発生記録、殺処分時血清(10ml)及び病性鑑定材料を動物衛生研究所に送付する。
(2) 乳用牛以外の牛については、主としてと畜場において本病が摘発されていることから、今後とも食肉検査機関との連携を強化して、と畜場における患畜の的確な把握に努めるとともに、当該患畜の出荷元のすべての飼養牛についての検査を実施して、清浄化の一層の推進を図る必要がある。
(3) 法第20条第1項の規定に基づく病性鑑定のための殺処分は、原則として実施しない。
(4) 本病の非清浄地域の指定については、別記8による。
5 ヨーネ病
本病の発生は、従来主に輸入牛で見られていたが、近年は、国内生産牛や特用家畜でも見られ、その発生頭数は急増しており、全国的なまん延が危惧されている。本病については、発生地域における飼養牛及び導入牛について法第5条の規定に基づく検査並びに当該検査により摘発した患畜についての法第17条の規定に基づく殺処分により、早期の清浄化を図ることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防及びまん延防止対策)
(1) 本病の患畜は、速やかに法第14条第1項の規定に基づく隔離の徹底を図り、法第17条の規定に基づき発生後2週間以内に殺処分を行うよう命ずる必要がある。なお、殺処分に際しては、剖検記録を作成し、病性鑑定材料を採取して菌分離等の検査を行う必要がある。また、原則的には動物衛生研究所と連絡をとり、発生記録、殺処分時血清(10ml)及び病性鑑定材料を動物衛生研究所に送付する。
(2) 法第20条第1項の規定に基づく病性鑑定のための殺処分は、原則として実施しない。
(3) 過去に本病の発生のあった農場については、定期的な検査、畜舎の消毒、ふん便の衛生的処理等の日常の衛生的管理の徹底に努め、病原体による環境汚染の低減・防止を図るとともに、本病の病原体を排出する可能性のある成牛と本病の病原体に感受性の高い哺乳牛等幼若牛を分離して飼育し、衛生的な初乳を給与する等により農場内での水平伝播を防止するよう指導する必要がある。また、患畜の摘発が連続する等汚染が高度で成牛と哺乳牛等を分離して飼育することでは清浄化の進展が困難な場合には、患畜の同居牛の自主的とう汰も視野に入れ、防疫対策を講ずることが重要である。
(4)
発生農場の堆肥については、草地への直接還元は避け、切り返し等を十分行い熟成堆肥として処理するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(5)
過去に発生のない農場において本病の発生地域から家畜を移入する場合には、本病について清浄である旨の証明書の確認を行って移入するよう家畜飼養者を指導することが重要であり、必要に応じた導入時の検査を実施し、清浄度の維持を図る必要がある。
6 ピロプラズマ病及びアナプラズマ病
バベシア・ビゲミナ及びバベシア・ボビスによるピロプラズマ病並びにアナプラズマ・マージナーレによるアナプラズマ病については、近年発生もなく清浄化が進展してきている。今後、本病については必要に応じて法第5条の規定に基づく検査を実施して清浄度を確認することが重要であり、清浄化の一層の進展を図ることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防対策)
(1)
過去に本病の発生が認められた地域にあっては、必要に応じ定期的な投薬等を実施することにより、牛体付着マダニの駆除に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) (1)以外の地域については、法第5条又は法第51条の規定に基づく検査を実施することによりオウシマダニ及び当該病原体についての地域の清浄度を確認する必要がある。
(まん延防止対策)
(3) 本病が発生した場合には、発生状況、牛の移動状況等を勘案して、必要に応じ法第32条第1項の規定に基づき、移動制限を実施する必要がある。更に患畜又は疑似患畜の同居牛の検査及びマダニ調査を実施し、当該結果に基づく防疫措置を取るとともに速やかに関係県へ連絡する必要がある。
7 伝染性海綿状脳症
法第2条及び家畜伝染病予防法施行令第1条に掲げる伝染性海綿状脳症とは、牛海綿状脳症、スクレイピー等プリオンが原因となるものをいう。我が国で発生をみているのもはスクレイピーのみである。
スクレイピーについては、生前診断方法、予防法及び治療法は、現在までのところ十分確立されているとはいえない状況にある。このため、疫学的に本病の発生と関係のある農場及び輸入めん羊を飼養する農場の家畜飼養者を中心として、本病の早期発見のための病原体の特性についての啓発と立入検査による本病の清浄度の検査を中心とした伝播の防止に重点を置いて防疫措置を講ずる必要がある。
(発生予防及びまん延防止対策)
(1)
本病は、激しい掻痒及び脱毛(掻痒感から体を壁や立木等に擦りつけるために、腹背部や腎部を中心に顕著な脱毛が見られる。)、無気力化、麻痺、運動失調、発育不良等の臨床症状を呈する。このため、日常の飼養管理に当たっては、これらの症状の有無を十分観察し、当該症状又は類似症状を認めた場合は速やかに最寄りの家畜保健衛生所へ通報するよう家畜飼養者を指導することが必要である。
(2) 本病の伝播経路については、未だ十分解明されていないが、一般的に垂直感染及び水平感染の両者が起こり得るとされている。特に、感染めん羊の胎盤を食することが未感染めん羊への重要な伝播経路になると言われている。このため、分娩房の設置及び分娩時の胎盤や血液汚染物の焼却等による後産の衛生的な処理に努めるよう家畜飼養者を指導することが必要である。
(3) 本病の既発生農場及びそれらと疫学的に関連のある農場並びに輸入めん羊の飼養農場について、法第5条若しくは法第51条の規定に基づく立入検査を定期的に実施し、清浄度を確認していく必要がある。
(4) 本病については、進行性、致死性の疾病で、治療方法もないことから、症状、親子若しくは兄弟等疫学的関連等から本病の罹患が疑われるめん羊が発見された場合は、法第14条第1項の規定に基づく隔離の徹底を図るとともに、法第17条の規定に基づく殺処分を実施する必要がある。当該めん羊を飼養していた畜舎等については、2%次亜塩素酸液等で消毒するよう家畜飼養者を指導することが必要である。また、速やかに発生めん羊についての疫学調査を実施し、関係県に連絡することが重要である。
(5) 本病に羅患しためん羊の殺処分は、焼却施設のある家畜保健衛生所の病性鑑定施設で実施し、病性鑑定用材料を採取する必要がある。また、本病の病性鑑定は、動物衛生研究所で実施するため、病性鑑定用材料の採取、処理、送付等の方法について動物衛生研究所とあらかじめ連絡をとる必要がある。
なお、剖検に当たっては、血液、体液、骨粉、悪露等の飛散に注意するとともに、病性鑑定用材料の採取に用いた器具等は2%次亜塩素酸液等で十分に消毒し、死体は確実に焼却する必要がある。
8 馬伝染性貧血
本病は、近年発生もなく清浄化が進展してきている。今後、本病については、法第5条の規定に基づき種牝馬、種牡馬、競走馬等の全頭を検査対象として清浄度の維持に努める必要がある。
(発生予防対策)
(1) 本病については、法第五条の規定に基づく検査を実施するとともに、競技用馬、乗用馬、農耕馬、愛玩用ポニー等規則第9条第2項の規定に基づく検査の対象としていない馬についても積極的に検査対象として指定し、必要に応じ法第5条の規定に基づく検査を関係団体等と十分連絡をとりつつ効果的かつ効率的に実施し、県下全域における清浄度の把握に努める必要がある。
(まん延防止対策)
(2) 本病の患畜については、速やかに法第14条第1項の規定に基づき隔離の徹底を図り、法第17条の規定に基づき、発生後二週間以内に殺処分を命ずる必要がある。
(3) 法第20条第1項の規定に基づく病性鑑定のための殺処分は、原則として実施しない。
(4) 競馬場等馬が集合する施設で本病が発生した場合には、発生状況、発生厩舎の配置状況及び馬の移動状況等を勘案して、必要な場合は時期を失することなく法第32条第1項の規定に基づき移動制限を実施するとともに、患畜又は疑似患畜との同居馬の調査を実施し、速やかに関係県へ連絡する必要がある。
9 豚コレラ
本病については、原則として全国的に豚コレラ予防液の接種を中止したことから、「豚コレラ防疫対策要領」(平成12年10月1日付け12畜A第2769号農林水産省畜産局長通知)に基づき清浄性の維持、確認のための検査及び調査並びに万一の発生に備えた防疫体制の一層の整備に努める必要がある。
10 ニューカッスル病
本病については、自衛防疫事業を中心とした予防接種の徹底により全国的な大流行はみていないが、これまでの疫学知見を踏まえると、本病のウイルスはなお野外に広く存在していると考えることが相当であり、飼養規模の大型化及び集約化の進展している状況の下では、ひとたび発生した場合、その被害は極めて大きなものともなりかねない状況である。このため、本病については、引き続き協会事業を中心とした自主的な予防接種の効率的実施の推進による発生予防に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防対策)
(1) 本病については、必要に応じて法第51条の規定に基づく立入検査を積極的に行う等により、日頃から地域における予防接種状況を的確に把握するとともに、適切な接種の実施を家畜飼養者に指導し、発生予防措置の徹底に努めることが必要である。なお、予防接種に当たっては、予防液の種類による特徴、地域における発生状況等を踏まえ効果的な接種プログラムの作成について関係者に対し積極的に助言・指導する必要がある。
(2) 本病の伝播に関与すると思われる野鳥・ペット鳥類による本病の侵入の防止についても関係者への啓発・指導に努めることが重要である。
(まん延防止対策)
(3) 本病の発生のなかった地域で、本病発生の疑いが生じた場合は、速やかな病性鑑定の実施に併せ、殺処分以外のまん延防止の措置を適切に講ずるよう指導する必要がある。
(4) 法第17条の規定に基づく患畜の殺処分については、発生の経過、発生状況、症状の有無、予防接種状況等を十分勘案して効果的に実施する必要がある。特に、発生初期の段階では、速やかに鶏群単位で殺処分を行い、効果的に防疫対策を講ずることが必要であるが、本病発見の際、既に広範囲にまん延している場合又は汚染地域で発生した場合には、病性、予防注射実施状況等を調査の上、隔離観察及び物品、畜舎の消毒等殺処分以外の措置により防疫対策を講ずることが必要である。
(5) 疑似患畜については、本病ウイルスがなお広範囲に存在すると考えられる状況下においては、殺処分が必ずしも最も合理的な防疫手段とは認めがたいので、原則として法第17条の規定に基づく殺処分は実施しないことも有り得る。ただし、当該疑似患畜の免疫付与状況の把握が困難な場合等であり、まん延防止上必要かつ効果的と認められる場合に、殺処分を行うことが必要となることも有り得る。
(6) 発生施設内の鶏で、まだ症状を呈していないものは、法第14条第1項の規定により速やかに隔離する必要がある。
(7) 緊急予防接種は、発生施設内の鶏でまだ症状を示していない鶏及び発生地域を中心とする周辺地域の鶏について、飼養状況、予防接種状況、異常鶏の有無等を考慮して、必要と認められた場合に、法第31条の規定に基づいて実施する必要がある。その際の実施範囲は、原則として法第32条第1項の規定に基づいて設定された移動制限区域内とする必要がある。
(8) 法第32条の規定に基づく移動の制限は、発生農場を中心として、地理的条件、飼養状況等を考慮して、時期を失することなく実施する必要がある。また、当該期間中に当該地域内鶏について、法第31条又は法第51条の規定に基づく検査を実施し、鶏の健康状態を確認する必要がある。当該移動制限は、最終発生例についての措置後、原則として3週間の観察期間を置き、新たな発生を認めない場合には、予防注射の実施状況を勘案した上で解除することができる。
なお、当該移動制限期間中であり、消毒、用途の限定等の所要の措置を講ずることにより、防疫上支障がないと認められる場合は、鶏卵出荷、肉用鶏の最寄りの食鳥処理場への出荷に限り制限区域外への移動を行うことができる。
11 家きんサルモネラ感染症
規則第1条に規定される病原体のうち我が国で発生をみているのは、サルモネラ・プローラムによるひな白痢である。ひな白痢は、主として介卵感染により伝播するため、これまで家畜飼養者の自主的検査及び予防事 業における検査による感染種鶏の摘発を基本として防疫を実施してきた結果、現在では、散発するに過ぎない状況となっている。このため、本病については、引き続き種鶏場における感染鶏の摘発及びとう汰による清浄度の維持に努めることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(発生予防対策)
(1)
種鶏及び種鶏候補鶏については、中すう期及び産卵開始前における自衛検査の実施について家畜飼養者を積極的に指導することが重要である。種鶏については、毎年少なくとも一回、法第五条の規定に基づく検査(おおむね飼養羽数の10%、最少100羽。ただし、陽性鶏が摘発された場合は全羽数。)を実施する必要がある。
(2)
清浄化が進展している状況の下で、今後とも本病の発生予防の徹底を図って行くため、引き続き本病の主たる発生場所となる育すう場を中心として、本病の病性の啓発及び情報の収集に努めることが重要であり、必要に応じて法第51条の規定に基づく立入検査を実施し、本病の実態把握と指導に努める必要がある。
(3)
サルモネラ・エンテリティディスのワクチン接種鶏は、ひな白痢の検査で抗体陽性と診断されることから、標識を付したワクチン未接種鶏群を対象とした類症鑑別(全羽)を実施する必要がある。
(まん延防止対策)
(4) 患畜は、原則として法第17条の規定に基づき、早期かつ確実な殺処分を命ずる必要がある。
(5)
患畜及び疑似患畜(自主検査により摘発された抗体陽性鶏を含む。)から生産された卵等については、速やかに処理するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(6)
種鶏場以外の養鶏場で本病が発生した場合は、関係種鶏場までさかのぼり、速やかに法第50条の規定に基づく立入検査を実施する必要がある。また、その結果、汚染が確認された場合には、清浄化のための措置を十分に講ずるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
12 腐蛆病
本病については、以下の防疫措置を講ずる必要がある。
(発生予防対策)
(1) 腐蛆病の防疫効果を高めるためには、その病性にかんがみ、家畜飼養者によるみつばち及び巣箱内外の観察等日常の飼養管理における自主的な検査体制の確立が必要である。このため、家畜飼養者、関係団体による自主検査が効率的に行われるよう検査実施計画の策定等について関係者に対して必要な助言・指導を行う必要がある。
(2) 日頃から定飼及び転飼家畜飼養者のほか、施設園芸業者、趣味等を目的とした養蜂者も含めたみつばちの飼養・流通実態の把握が重要であり、みつばちが放置されることがないよう指導し、必要に応じて、法第5条又は法第51条の規定に基づく検査を実施して発生の予防に努める必要がある。
(まん延防止対策)
(3) みつばちは、法第17条の殺処分の対象となっていないが、汚染物品である巣箱中に生存しているみつばちは、本病の病原体を保有している可能性が極めて高いことから、汚染物品の焼却時に併せて焼却するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) 法第23条の規定に基づく汚染物品の焼却等は、原則として本病に羅患した蜂蛆が飼養されている巣箱、当該巣箱中の巣脾等のみを対象とし、他の残存巣箱等については、法第31条又は法第51条の規定に基づき、反復検査を実施し、その結果、感染が確認された場合は、慎重にその範囲を検討の上焼却等を行う必要がある。
(5)
みつばち及び腐蛆病の病原体を広げるおそれのある物品の県の範囲を越える移出入は、原則として法第32条第1項の規定に基づき制限する必要がある。この場合、移入直前の飼育地の県知事、家畜保健衛生所長又は家畜防疫員により本病について異常がない旨の証明がなされているものの移動については許可する。
また、当該証明の有効期間は原則として30日間とする。ただし有効期間内にあって、移入直前の飼育地の在留採蜜期間及び転飼地の衛生状況を勘案し、防疫上問題がないと認められる場合は、移動制限を解除できることとし、当該証明にあたっては、証明書の様式を別記様式4のとおり統一し、本病の防疫の効率的推進を図ることが必要である。
13 ブルータング
本病は、めん羊に対し重篤な症状を示すが、牛では症状を示さないのが一般的である。しかし、近年、我が国の牛において燕下障害を伴った本病が認められたことから、今後は次により発生予察及び伝播の防止のための防疫措置を講ずる必要がある。
(1)
本病は、発熱、呼吸促迫、流涎等の臨床症状を呈し、その後飲水の逆流、燕下困難等の燕下障害を伴う場合がある。これらの症状は、イバラキ病に酷似し臨床症状からは類症鑑別は困難であることから、当該症状又は類似症状を認めた場合は速やかに家畜保健衛生所へ通報するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2)
的確な発生予察を図るため、本病の発生農家、疫学関連農家について抗体調査を中心とした検査を実施して、抗体保有状況を把握することが重要である。
(3)
本病の流行は初秋から初冬であり、吸血昆虫により媒介されることから、抗体検査により抗体陽性牛が認められる地域では、牛舎の衛生環境の整備による吸血昆虫の防除等について家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) 本病の発生が確認又は疑われた場合には、発生状況、防疫措置等について畜産局衛生課に報告する必要がある。
14 アカバネ病
本病は、飼養牛の更新等に伴う抗体保有率の変化等を背景として、周期的な流行様相を呈する。このため、本病については、抗体保有状況を踏まえて本病の流行徴候の早期把握とこれに基づく適期の予防接種の励行により、発生予防に努めることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 予防接種は、地域における過去の発生状況及び抗体の動態を勘案して、実施の要否を決定するとともに、実施する場合は、特に種付け予定牛を中心に流行期前までに接種を完了するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 本病の伝播は、気流や吸血昆虫と深く関係していると考えられることから、過去の発生経路等を検討し、免疫付与が必要な地域においては早急に予防接種を徹底するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
15 悪性カタル熱
本病には、アフリカ型(Wildbeast-associated type
MCF:WA-MCF)とアメリカ型(Sheep-associated type MCF:SA-MCF)の2型がある。WA-MCFは東アフリカで発生しており、これまで我が国での発生例はない。また、SA-MCFは世界的に発生があり、我が国でも発生報告がある。WA-MCFでは病原ウイルスが確定されているため病原診断が可能であるが、SA-MCFでは病原体は未だ確定されていない。
両型とも周産期の不顕性感染動物(WA-MCF・・ヌー、SA-MCF・・めん羊)との接触によって、牛科及びしか科の動物が感染し、発症することから、めん羊及び牛等の複合飼養者に対して、それぞれの家畜を隔離して飼養するよう指導する必要がある。特に出産前後のめん羊、牛及びしかとの接触を避けるよう指導する必要がある。
16 チュウザン病
本病は、1985年から86年にかけて九州、中国・四国地方を中心として流行をみたが、その後も、本病ウイルスの存在が確認されていることから、再流行の可能性を念頭に置きつつ、引き続き抗体保有状況の把握に努めるとともに、必要な場合には種付け予定牛を中心とした予防接種の実施等により発生予防に努めることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
17 牛ウイルス性下痢・粘膜病
本病は、集団的に飼養されている育成牛群や放牧牛中で発生が多く、妊娠牛では胎子感染を起こすことがあることから、発生地域にあっては、計画的な予防接種の実施により発生予防に努めることが重要である。また、既発生牛群において持続感染牛を認めた場合には、その自主的とう汰に努めることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の発生地域の飼養牛又は牛の導入が頻繁に行われている農場の飼養牛については、予防接種により発生予防を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。なお、繁殖牛に対する予防接種の実施に当たっては、妊娠前期から中期の胎子がウイルスの感染を受けた場合に免疫寛容、流死産あるいは先天性異常を引き起こすことがあることから、種付け前までに接種を終了させるよう関係者を指導する必要がある。
(2) 既発生牛群においては、必要に応じて抗体検査を実施するとともに、持続感染が疑われる場合には、ウイルス分離試験を実施して、持続感染の有無を確認する必要がある。
(3) 本病が発生した場合は、予防接種状況を速やかに把握し、未接種牛については、予防接種の実施を指導するとともに、持続感染牛については、胎盤感染又は精液を介した伝播も起こり得ることから、直ちに隔離飼養して、種畜としての供用を停止し、できる限り早期に自主的とう汰を実施するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
18 牛伝染性鼻気管炎
本病の病原ウイルスは、なお野外に広く存在しているものと思われ、特に牛の集団飼育施設で発生した場合は大きな被害をもたらしている。このため、本病については、当該施設での損耗防止に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病は、本病ウイルス保有牛が寒冷、妊娠、輸送等によるストレスの感作を受けて発症することが多いことから、これらのストレス感作を受ける前までに十分な免疫が付与されるよう効果的な予防接種(種付け前、輸送のおおむね2〜3週間前等)について家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 導入に当たっては、本病の予防接種を受けた牛を選定するよう指導し、導入農場の牛群についてもあらかじめ本病の予防接種を行うよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 本病による死亡率は、通常1〜3%と低いものの、細菌や他のウイルスとの混合感染を起こした場合は死亡率が高くなるため、本病の発症牛に対しては、飼養環境の改善、必要に応じた抗菌性物質の投与等を関係者に指導し、集団飼育施設で飼養された牛を中心とした損耗の防止に努める必要がある。
19 牛白血病
本病は、主に吸血昆虫が媒介し、また、放牧経験牛の抗体保有状況が未経験牛に比べ高くなっていることから、放牧牛間での伝播防止に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 牛白血病が継続的に発生している地域及び牛白血病ウイルス抗体陽性牛が多数確認されている地域にあっては、共同牧野等に放牧する牛(6カ月未満の牛を除く。)について、入牧時に検査を実施するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 定期的に検査を実施し、確認された抗体陽性牛は放牧を取りやめ、舎飼いすることが必要である。やむを得ず放牧する場合は、牧区の区分や時間を区分けした放牧等による抗体陰性牛との分離放牧等により伝播の防止を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。この際、抗体陽性牛を舎飼いする場合は、特に吸血昆虫の活動時期は、抗体陰性牛と異なる畜舎で飼育するか、ネット等吸血昆虫の往来を防止し得る仕切りを設置することにより抗体陰性牛と区分して飼育するほか、吸血昆虫の防除に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。なお、導入牛については、導入時に検査を実施して、陰性を確認した後に飼養牛群に加えるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 抗体陽性牛の搾乳は、陰性牛の搾乳の後に行い、搾乳した生乳は、哺育に使用しないよう指導するとともに、抗体陽性牛から生産された子牛については、早期に母牛から離して飼育するよう家畜桐養者を指導する必要がある。
(4) 本病の抗体陽性牛は、早期にとう汰するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
20 アイノウイルス感染症
本病は、1995年末から南九州を中心として抗体の動きが確認されるとともに、本病原因ウイルスによる異常産が認められた。本病の防疫対策については、同属のウイルスによるアカバネ病と同様に実施する必要がある。
21 イバラキ病
本病は、吸血昆虫によって媒介され伝播し、これまで発生地域は関東以南に限定されている。近年では九州地域を中心として発生しており、発生予察に基づく予防接種の実施の指導に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 予防接種は、地域における過去の発生状況及び抗体保有状況等の抗体動向を勘案し、実施の要否を決定する必要がある。また、6月末までに当該接種が完了するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2)本ウイルスは広域で早急に伝播し、かつ肉用牛及び乳用牛を問わず感染し、発病(発病率1〜2%)することから、予防接種の徹底を家畜飼養者に指導する必要がある。
22 牛丘疹性口炎
本病は、1969年に輸入肉用牛に初めて発生した。発生は放牧牛でみられ、主要症状は丘疹及び発痘、病変は口、乳房、乳頭に形成される。特に初期病変は水胞形成等、口蹄疫に類似するため類症鑑別が重要であることから、疫学的状況も考慮しつつ、基本的には海外悪性伝染病防疫要領に沿った防疫対応を図る必要がある。
23 牛流行熱
本病は、吸血昆虫によって媒介され伝播し、発生地域は関東以南に限定されている。近年では九州地域を中心として発生しており、発生予察に基づく予防接種の実施の指導に重点をおいて防疫対策を講ずる必要がある。
本病の伝播は、気流や吸血昆虫に深く関係し、その発生状況は地域的に異なる。しかしながら、不顕性感染はほとんどなく、感染した場合はほとんどが発症する。したがって、過去の発生状況及び抗体保有状況等を勘案して予防接種を行うこととし、特に搾乳牛及び肉用繁殖牛を中心として、6月末までに当該接種が完了するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
24 破傷風
本病は、常在地において散発的に発生する傾向があり、また、創傷部位から感染することから、分娩に伴う産道感染、去勢術及び断尾術に伴う術後感染、新生子の臍帯汚染等により発生する等の疫学的特徴を有する。このため、常在地において、感受性家畜の分娩、去勢、断尾等の好感染機会に併せて予防接種あるいは抗菌性物質の予防的投与に重点を置いた防疫対策を講ずる必要がある。また、本病の原因菌の特性から常在化する傾向があるので、病原菌に汚染している死体等の処理に際しては、汚染の拡大と常在化の防止に努める必要がある。
25 気腫疽
本病は、肥育牛の集団飼育施設で発生が多くみられる傾向があり、防疫措置が遅延あるいは不適切であった場合は、集団的な発生により被害が極めて大きくなることが懸念される。このため、本病については、これらの施設を中心として異常牛の早期発見と発生時の損耗防止及び常在地における予防接種の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病による被害を最小限に抑えるため、異常牛が発生した場合の迅速な通報等についての関係者に対する指導を徹底し、迅速な診断・病性決定に至るまでの適切な防疫体制の整備が重要である。
(2) 本病を疑う急性死症例を発見した場合は、炭疽等との類症鑑別を念頭に置き、速やかに病性鑑定を実施する必要がある。この際、病性鑑定用の材料採取に当たっては、死体の切開は最小限にとどめる等病原体による環境汚染・常在化の防止を図る必要がある。
(3) 本病の病原菌に汚染した死体及び物品の適切な処理を誤ると、病原菌の特性から常在化する傾向があるので、病原菌に汚染している死体等の処理に際しては、汚染の拡大と常在化の防止に努める必要がある。
(4) 本病を疑う異常家畜を発見した場合は、可能な限り皮下滲出液等の病性鑑定材料を採取し、速やかに抗菌性物質の投与等により損耗の防止を図ることが重要である。また、同居家畜及び汚染畜舎の飼育牛については予防接種を行うよう家畜飼養者を指導する必要がある。しかしながら、本病が牛群全体に急速に拡がるおそれがある場合には、この予防接種に先立ち、抗菌性物質の投与を指導する必要がある。
26 レプトスピラ症
本病は、血清型(レプトスピラ・ポモナ、レプトスピラ・カニコーラ、レプトスピラ・イクテロヘモリジア、レプトスピラ・グリポティフオーサ、レプトスピラ・ハージョ、レプトスピラ・オータムナーリス及びレプトスピラ・オーストラーリスによるものに限る。)により家畜への感染性が異なる。野ねずみ等の尿中に排泄されたレプトスピラ菌が、地表水や土壌を介して牛や犬等に感染する。保菌期間についても、数週間以内(牛)から数年(犬)と畜種により異なる。更には不顕性感染が多く、尿中にレプトスピラ菌を排泄するため新たな感染源となり、家畜衛生上のみならず、公衆衛生上も問題となることから以下のことに重点を置き防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 畜舎の消毒、ふん尿の適切な処理等の日常の衛生管理の徹底と、媒介動物である野ネズミ等の動物の駆除により、環境からの本病の伝播の予防と発生時の早期清浄化に重点を置いて家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 本病と診断された牛については、抗生物質による治療等必要な措置を講ずる必要がある。
(3) 犬のレプトスピラ症は、レプトスピラ・カニコーラ及びレプトスピラ・イクテロヘモリジアによるものをいうが、特に家畜衛生に重大な影響を及ぼすと考えられる場合には、日常的な衛生管理及び定期的な予防接種により、本病の発生の予防を図るよう指導する必要がある。また、犬における診断については、臨床症状、疫学的状況等から総合的に判断して行う。
27 サルモネラ症
本病は、サルモネラ・ダブリン、サルモネラ・エンテリティディス、サルモネラ・ティフィムリウム及びサルモネラ・コレラエスイスによるものをいい、牛、豚、家きん等で発生が見られる。
(1) 牛
牛における本病は全国的に発生が見られ、主に、6カ月齢以下の集団飼育・育成施設で多発するが、乳用成牛の集団発生も増加している。また、ひとたび発生すると、保菌牛の出現・環境の汚染等により、当該発生農場は本病の重要な汚染源となり、畜産経営上の損耗をもたらすばかりでなく、公衆衛生上も問題となることから、発生時には汚染の拡大の防止に努めるとともに飼養環境の清浄化、飼養管理の徹底、伝播経路のしゃ断に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
ア 畜舎の清掃・消毒、ねずみ等の衛生動物の駆除、野鳥の侵入防止、ふん尿の適切な処理等の日常の衛生的な飼養管理により、発生の予防を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、既発生牛群については、法に基づく検査を実施することにより保菌牛の摘発に努め、その後の清浄化の措置を行う必要がある。
イ 本病の発生時には、飼養牛全頭について定期的にふん便検査を実施して、保菌牛の摘発に努めるほか、当該保菌牛については発病牛とともに隔離飼養するよう家畜飼養者を指導する必要がある。その後の措置については、子牛は長期間保菌牛となり、抗菌性物質によっても体内からサルモネラ菌を完全に排除することは困難な場合もあるので、抗菌性物質の使用に当たっては、できる限り分離菌の薬剤感受性等を検査の上で行うこととし、長期間の連続投与は避け、薬剤耐性菌の発現の抑制について積極的に関係者への啓発・指導に努めるほか、自主的なとう汰についても指導する必要がある。
(2) 豚
豚における本病は、発生頻度は低いものの、多くの場合離乳後2〜4カ月程度の若齢豚において集団発生が見られ、しばしば多大な経済的損失をもたらす。また、公衆衛生上食中毒の原因菌としても重要である。これらのことから、発生時には汚染の拡大の防止に努めるとともに、飼養環境の清浄化、飼養管理の徹底、伝播経路のしゃ断に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
ア 本病の伝播経路の主体は汚染ふん便の経口摂取によるものであることから、本病の発生時には羅患豚の隔離及び治療又は自主的とう汰、可能であればオールイン・オールアウトにより汚染源の排除に努める必要がある。また、同時に豚舎の消毒等による清浄化を徹底し、飼料、飲水等の汚染にも十分に注意を払うことが重要である。また、雁患豚、同居豚のふん便・環境材料について定期的な検査を実施し、清浄化を確認する必要がある。さらに摘発された保菌豚については、投薬、隔離、自主的とう汰等状況に応じた対応をとる必要がある。
イ 豚における発生予防措置としては、畜舎等の消毒に加え、導入先の衛生状態を常に把握し、清浄豚を導入するように努め、犬、猫、野鳥等の媒介動物の排除、ねずみ等の衛生動物の駆除の徹底に努める必要がある。また、本菌は保菌化する傾向が強く外見的には健康な保菌豚が、暑熱、寒冷、密飼い、栄養障害、輸送等のストレスにより排菌を再開することもあり、新たな汚染源となることから、新たな排菌予防のため、室温、湿度、空調等の飼養管理への配慮も行うよう家畜飼養者を指導する必要がある。
ウ 抗菌性物質の投与については、同居豚に対する予防的効果は期待できるが、多用の結果、多剤耐性化、保菌化を助長しかねないことから、抗菌性物質の使用に当たっては十分留意するよう関係者に啓発・指導する必要がある。
(3) 家きん
家きんにおける本病は、感染を受けても発症しない保菌鶏が出現するほか、環境を汚染する等により清浄化が困難になるのみならず、公衆衛生上からも的確な対応が必要である。このため、本病については、「採卵鶏農場におけるサルモネラ衛生対策指針」及び「ふ卵場等養鶏施設における衛生対策指針」に則り、日常の衛生管理に最大限の努力を払い、病原体を農場に持ち込まないこと及び施設の定期的な消毒等により、農場の清浄化を図ることを基本に防疫対策を講ずる必要がある。
ア 肉用鶏農場では、常に導入先のふ化場における衛生状況を把握し、清浄ひなのみを導入するよう努め、導入後7日以内に死亡又はとう汰されたひなについて、サルモネラの検査を受けるよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、飼料及び養鶏施設の環境材料等についても検査を実施し、養鶏場の汚染状況を基にした適切な衛生対策を講ずるよう指導する必要がある。
イ 本病による死亡鶏や異常鶏を速やかに処分するとともに、排菌を助長するストレス等を排除するような飼育管理に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
ウ 採卵鶏農場では、ひなのみならず、肉用鶏農場と同様に定期的に検査を受けるよう家畜飼養者を指導するとともに、当該検査結果を基に適切な衛生対策を講ずるよう指導する必要がある。
エ 種鶏群については、ひな白痢の検査を活用し、陽性反応例については菌の分離・同定を実施する必要がある。また、鶏舎内の環境材料についても検査を行うほか、必要に応じて種卵をふ化した段階の死ごもり卵やふ卵器内の綿毛あるいはひなの胎便についても検査を行う必要がある。
オ 特にサルモネラ・エンテリティディス等の介卵感染を起こす血清型による感染が認められた場合は、同居鶏の検査を実施し、原則として感染が確認された群について自主的なとう汰により清浄化を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。
カ サルモネラ・エンテリティディスのワクチン接種鶏は、ひな白痢の検査で抗体陽性と診断されることから、本ワクチンを接種する場合は、あらかじめ家畜保健衛生所に連絡するとともに、ひな白痢との類症鑑別のため一群単位で1%程度の鶏群をワクチン未接種のままとし、当該鶏群に標識を付すよう家畜飼養者を指導する必要がある。
28 牛カンピロバクター症
本病は、種畜及びその同居牛を中心として、家畜改良増殖法の規定に基づく検査と併せて検査を行い、清浄の維持を図ることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病と診断された種雄牛については、種畜としての供用を直ちに中止し、治療等必要な防疫措置を講じ、その後の検査で陰性と診断された場合も、陰性継続の確認のため、適宜当該牛の追跡調査等を実施する必要がある。なお、包皮腔からの本菌の完全な除去は困難であることが多いので、治療効果のないものは自主的なとう汰を指導する必要がある。
(2) 本病と診断された雌牛については、隔離飼養あるいは治療等必要な措置を講ずるよう指導し、交配記録等に基づき疫学調査を実施する必要がある。
29 ネオスポラ症
本病は、牛に流産を引き起こす疾病の一つであり、異常産の発生状況と抗体保有状況を考慮に入れ、流産母牛及び抗体陽性牛の自主的なとう汰又は隔離飼育に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 流死産胎子は確定診断のため病理学的検査に供するとともに、流死産胎子、胎盤等の感染源となるものは速やかに処分するよう指導する必要がある。
(2) ペット及び野生動物の畜舎及び付帯施設への侵入を防止するとともに、本病発生の畜舎及び付帯施設については熱湯消毒等の消毒を行うよう指導する必要がある。
(3) 抗体陰性牛の導入に努め、胚移植は抗体陰性牛にのみ実施するよう指導する必要がある。
30 牛バエ幼虫症
本病は、北米からの輸入牛及びその同居牛に発生していることから、汚染地域からの輸入牛についての着地検査の徹底による本病の摘発・防除に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の汚染地域からの輸入牛については、背中線の両側皮下を中心に頸部あるいは背部も含めた体表についてクルミ大から鳩卵大の腫留の有無を観察し、当該腫瘍を発見した場合は、虫体を確認し、病性を決定する。また、当該観察は、着地検査期間中及び着地検査終了後に初めて迎える冬から初夏の間に定期的に行うよう指導し、本病の早期発見及び牛バエの羽化に伴う本病の伝播の防止に努めることが重要である。
(2) 本病を確認した場合は、外科的処置又は指頭による圧迫等により幼虫の摘出を行い、当該病畜を含む飼養牛群全頭について、発見後初めて迎える8月まではおおむね毎月一回法第51条の規定に基づき立入検査を行い続発の予防に努め、必要に応じて当該飼養牛群に対する幼虫の駆除について指導を行う必要がある。
(3) 発見時、既に牛バエ幼虫が羽化していると疑われる場合は、発生農場及び関連農場を中心とするおおむね5kmの範囲内の周辺農場を対象として検査を実施し、その発生予防に努める必要がある。
(4) 発生農場からの移動牛のうち、感染している疑いがあると思われるものについては、速やかに関係県へ連絡を行い、当該連絡を受けた県は、(1)の規定に準じて必要な措置を講ずる必要がある。
31 馬インフルエンザ
本病は、ひとたび発生すると急速に伝播し、大きな被害をもたらすため、予防接種による発生予防に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) すべての馬を対象とした予防接種の励行について、関係者に対する啓発・指導を積極的に行う必要がある。
(2) 馬に集団的に呼吸器症状が認められる旨の報告を受けた場合は、まず本病を疑い、速やかに立入検査を実施の上、必要な検査を行い、当該馬群は検査結果が判明するまでは他の馬群との接触をできる限り避けて飼養するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 本病を疑い検査するに至った場合及びその検査の結果が判明した場合は、速やかに畜産局衛生課に報告し、本病と決定した場合は、感染馬の隔離、厩舎の消毒の徹底等の措置を講ずる必要がある。この際、感染馬は、解熱後も相当期間ウイルスを排出し、感染源となることから、発咳、鼻汁漏出等の呼吸器症状が完全に回復するまでの間は隔離を継続して行うよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) 本病ウイルスは抗原性が変異しやすく、新たな変異株による流行があった場合は既存の予防液では十分な効果が見られない場合も想定されることから、今後の効果的な発生予防に資するため、病性鑑定に当たってはウイルス分離に努め、分離したウイルス株の抗原性を明らかにするため、速やかに動物衛生研究所へ病性鑑定材料を送付又は持参する必要がある。
32 馬鼻肺炎
本病は、発生時の流産によって生産地での被害を大きくすること、その病原体そのものが我が国の馬産地に広く分布していること、及び感染馬が長くウイルス保有馬となって、その後のストレス等により再び発病することがあることから、生産地域においては、一般的衛生管理の徹底及び必要に応じて実施する予防接種により流産を予防することに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 早期妊娠診断を励行し、妊娠馬については、常に健康の保持と体力の増強を図り、諸種の感作に対する抵抗力をつけるとともに、妊娠後期は他の馬との接触を極力避ける等の措置の徹底により本病ウイルスの感染の予防に努めるよう家畜飼養者を指導する。また、必要な場合は予防接種を実施するよう併せて指導する必要がある。
(2) 未発生場所の種牝馬を発生場所内の種牡馬と交配した場合は、当該地域の分娩季節が終了するまでの間は極力隔離飼養するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 原因不明の流産が起こった場合は、本病を想定して速やかに病性鑑定を行い、家畜飼養者に対し、流産馬の隔離と消毒の徹底を指導する。なお、病性鑑定用材料採取後の流産胎子・胎盤等については、適切に処分する必要がある。
(4) 感染しているか又はその疑いがある馬については、極力当該地域の分娩季節が終了するまで隔離し、これらの馬との同居馬については、当該地域の分娩季節が終了するまでは、場外への移動を控え、見学者等本病ウイルスを伝播する可能性のある者の発生場所への立入りを禁止するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
33 野兎病
本病は、人畜共通伝染病の一つであり、人では主に東北、関東、北海道等で発生が確認されている。本病の原因菌は疫学的及び生化学的にA型とB型に区別されるが、人に対して強い病原性を持つA型は北アメリカに限局しており、我が国ではB型の株が人から分離されている。我が国での動物における分布や本病の発生状況は明確ではないが、人での発生が確認されていることから、公衆衛生部局等との連携を密にして、その存在を把握しておく必要がある。家畜に本病の発生が確認された場合は、当該地域における節足動物(ダニ、アブ等)、宿主動物(特に野兎)及び環境(特に水)を対象とした調査により感染源の特定に努め、家畜飼養者に対して、本病の侵入、拡大の防止のため、感染経路をしゃ断する等の対策を講ずるよう指導する必要がある。
34 馬伝染性子宮炎
本病は、馬に不妊症を起こし、交配等によりひとたび流行した場合には、清浄化が困難で生産上多大な被害をもたらすため、引き続き定期的な検査及び当該検査により摘発した感染馬及び保菌馬の治療等による清浄化の推進に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 種牡馬又は種牝馬について、交配前に異常の有無の確認を行い、その結果、以下の所見が認められる等本病の感染が疑われる場合は、交配を控え、家畜保健衛生所に速やかに連絡し、病性鑑定を受けるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
ア 種牡馬
交配した種牝馬の受胎率が、例年に比べ、又は他の種牡馬に比べて異常に低い場合
イ 種牝馬
(ア) 陰門部から灰白色の粘液を排出し、又は外陰部や尾部を汚している場合
(イ) 発情周期が異常に短い等発情に異常を認める場合
(2) 種牡馬又は種牝馬の外部生殖器及びその周囲並びにそれらに触れる者の手指の消毒は、交配前後に一頭ごとに徹底して実施するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 本病については、下記ア〜ウの馬を対象として、臨床検査、細菌検査等の検査を実施する必要がある。
ア 本病の発生地域で飼養されている種牡馬及び種牝馬(繁殖シーズン前に実施)
イ 交配のために本病の発生地域から移送されてきた種牡馬又は種牝馬のうち、当該交配における本病の検査結果が不明であるもの(交配前に実施)
ウ 本病の保菌馬と疫学的に関係があるとして、本病の発生県からの報告があった馬(その都度実施)
(4) 上記(3)の検査の他、発生地域の種牡馬及び種牝馬にあっては、繁殖シーズン開始後は、臨床観察に努めるとともに異常が認められた場合は、速やかに検査を実施するよう家畜飼養者を指導する必要がある。特に、種牡馬については、本病に感染している場合は、重要な伝播源となることから、定期的に検査を実施するよう家畜飼養者を啓発・指導する必要がある。
(5) 保菌馬については、摘発後直ちに隔離するとともに、当該摘発が交配期間中である場合は直ちに交配を中止し、定期的な検査と有効な薬剤を使用した治療により完治するまで処置を徹底するよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、保菌馬を飼養する厩舎については、当該馬の担当者の手指の消毒、専用の用具・器具の設置、馬房、敷わら及びその他汚染物品の反復消毒を徹底して、伝播の防止に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
35 馬パラチフス
本病は、近年全国的には減少傾向にあるものの、生産地を中心として依然として発生し、また、発症馬は、症状消失後も局所や骨髄に菌が潜在し、保菌馬となる可能性がある。このため、本病については、感染馬の早期摘発と当該馬の自主的隔離及び治療の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 生産地においては、法に基づく検査により感染馬の早期摘発を図る必要がある。なお、検査に当たっては、できる限り馬伝染性貧血の検査の余剰血清の使用等により効率的な実施を図る必要がある。
(2) 発症馬は、速やかに隔離の上、免疫血清の投与等による対症療法及び消毒の徹底により伝播防止を図り、完全な回復が困難であると見込まれる場合は、自主的なとう汰について家畜飼養者を指導する必要がある。また、同居馬についても検査を実施して感染の有無を確認し、発生予防に努めることが重要である。
(3) 発症馬は、保菌馬となる可能性があることから、症状の消失後も当分の間、定期的に検査を実施し、状況の把握に努める必要がある。この間は、当該発症馬及び未発症感染馬の隔離、及び消毒の励行等衛生的な飼養管理の徹底に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
36 伝染性膿疱性皮膚炎
本病は、鼻、口周辺及び口腔内、時に顔面、四肢及び乳頭に、丘疹、膿瘍、潰瘍、痴皮等の皮膚あるいは粘膜病変を形成し、めん羊、山羊、カモシカのほか、人にも感染する人畜共通伝染病で、我が国をはじめ世界各国に発生している。本病は、晩夏から冬にかけて若齢めん羊に好発し、発病率は100%と高いものの、致死率は数%以内で一般に予後は良好である。しかしながら、重症例では発熱、衰弱、体重減少、採食困難、二次感染等を起こし、経済的な被害は少なくない場合もある。
また、本病は、臨床的に口蹄疫と類似した症状を示すことがあることから、口蹄疫との類症鑑別が重要である。本病の疑いのある症状を示す家畜が発見された場合には、臨床症状と疫学的なまん延状況を的確に把握した上で口蹄疫等との鑑別を行うが、臨床疫学的な鑑別が困難な場合には、速やかに畜産局衛生課に通報し、海外悪性伝染病防疫要領に基づく措置を取る必要がある。
(1) 本病を疑う疾病が発生した場合には、病性鑑定指針に基づき類症鑑別を含めて確定診断を行う必要がある。
(2) 本病は、直接及び間接接触感染、創傷感染あるいは経口感染で伝播することから、放牧時、搾乳時及び採食時等に、発病個体や汚染器具資材との接触を避けるよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、人は発病動物との接触で感染することから、臨床検査や診断材料の採取に際しては、人の感染を防止するように適切な措置をとる必要がある。
(3) 原因ウイルスは、乾燥に抵抗性を示すことから汚染された飼養施設の消毒を徹底し、発病個体は、健康個体から隔離し、二次感染防止と一般衛生状態の改善を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) 死体の処理は迅速かつ的確に行い、土壌及び環境の汚染並びに同居家畜への二次感染の防止に努めることが重要である。
37 トキソプラズマ病
本病は、集団発生した場合に被害が大きいことから、畜産経営上、また、公衆衛生上からもその防疫対策が重要視されている。本病については、衛生動物が重要な感染源となっているため、衛生動物の駆除を中心とした衛生管理に努め、感染源の排除及び必要な場合の抗菌性物質の投与による発生予防に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) オーシストの排せつ源としては猫が、また、その運搬にはその他の衛生動物が深くかかわっていることから、日常の衛生管理に当たっては、農場内での猫の飼育を避けるとともに、その他の衛生動物の駆除の徹底に努めるよう生産者を指導する必要がある。
(2) 一般的な感染源であるオーシストは、通常使用される消毒薬や化学薬品に対して強い抵抗力を有するものの、熱に対しては抵抗力を欠くことから、特に被害の多い地域では、スチームクリーナー等による加熱消毒の実施を家畜飼養者に指導することが重要である。
(3) 本病による被害が多発している地域の繁殖豚飼育養豚場を中心として、抗体調査を実施する必要がある。また、抗体陽性豚については、過去における当該養豚場の被害状況、当該豚の病歴等を総合的に勘案して自主的にとう汰するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
38 オーエスキー病
本病の発生は、関東地域並びに東北及び九州の一部地域に限局しているが、これら発生地域では浸潤度が高まっている等、地域によりその浸潤状況に著しい差異を生じている。このため、本病については、「オーエスキー病の防疫対策要領について」(平成3年3月22日付け3畜A第431号農林水産省畜産局長通知)に基づき、清浄化を図ることを基本方針として地域ごとの浸潤状況に応じた防疫措置を的確に講ずるよう関係者を指導する必要がある。
39 伝染性胃腸炎
本病は、ひとたび発生した場合は、同一豚舎内の全頭に急速に伝播し、特に、幼齢豚が感染した場合はその発病率及び死亡率は極めて高い。このため、本病については、幼齢豚における被害の防止に重点を置いて、一般的な衛生管理の徹底、必要に応じた予防接種の実施、発生時の迅速な措置等の防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病は、一般的に急性に進行するため、的確な防疫及び損耗防止のため、本病の症状等についての啓発が重要であり、また、法第4条の規定に基づく本病の早期届出を徹底し、その後の措置を迅速に講ずるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 発症豚については、速やかに健康豚から隔離し、大腸菌症等の細菌感染症の併発による症状の悪化を防ぐため、抗菌性物質の投与等を家畜飼養者に対して指導するとともに、発生豚舎及び飼養管理器具については、反復消毒に努めるよう指導する必要がある。また、症状が消失した豚であっても長期間にわたりふん便中にウイルスを排せつするので、伝播防止の観点から、当該豚の移動を自粛するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 本病が常在化した場合の清浄化の指導に当たっては、予防接種、清掃、消毒及び日常の衛生的な飼養管理によるストレス軽減措置等に留意するとともに、できる限りオールイン・オールアウト方式による飼養管理に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
40 豚繁殖・呼吸障害症候群
本症候群は、これまでの発生事例からみて、呼吸器症状、異常産がみられることがあるが、不顕性感染が多いこと、個体及び群で感染が持続すること等防疫対策を困難にする要因が多い。このことから、本症候群については、必要に応じワクチンの有効利用を図るとともに、家畜飼養者に対して飼養衛生管理対策の徹底による損耗の防止について以下による措置を講ずるよう指導する必要がある。
(1) 本病ウイルスは、導入豚のほか、資機材、車両、人等により持ち込まれることがあることから、これらの導入に当たってはウイルスの侵入防止に十分留意する。
(2) 呼吸器症状の発生は、飼養状況、衛生環境、管理状態及びストレス等の影響が大きいので、畜舎の換気、温度、湿度等の環境の改善、過密飼育の防止に努めるとともに、呼吸器症状は細菌等の二次感染により悪化することが多いため、飼養衛生管理に留意し二次感染の防止に努める必要がある。発生を認めた場合には、薬剤感受性を検査し、的確な抗菌性物質の使用等により損耗の防止に努める必要がある。
(3) 本病ウイルスは常在化する可能性が高いので、その存在が認められた場合には、畜舎等の消毒の徹底等により飼育環境の改善を図ることが重要である。また、ウイルスは離乳後の育成・肥育豚に依存して存続する可能性が高いことから、早期離乳と離乳豚の分離飼育、育成・肥育豚のオールイン・オールアウト、空き豚舎の徹底した消毒等に努める必要がある。
41 豚流行性下痢
本病は、これまで散発的な発生が認められてきたが、1996年になって哺乳豚を中心に集団的な発生により大きな被害を生じた。このことから、本病対策については、侵入防止に重点を置いて発生予防に努め、また、必要に応じてワクチンの有効利用を図るとともに、発生した場合には発症豚と健康豚との隔離等を基本とし、以下による対策を講ずる必要がある。
(1) 家畜保健衛生所は、発生予防のため養豚農家への衛生管理の徹底指導、立入検査、病性鑑定等を実施する必要がある。
(2) 発生予防に関する養豚農家への指導については、「種豚場等養豚施設における衛生対策」の徹底が重要である。
(3) 発生時には、発生豚の隔離、発生豚舎等の消毒、豚の移動の自粛等の措置の徹底について指導する必要がある。
42 萎縮性鼻炎
本病は、日常の衛生管理の徹底のほか、的確な予防接種、必要に応じた抗菌性物質の投与等により、特に、初生豚の感染防止及び発症予防を図ることに重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病は、哺乳期に保菌母豚から感染すると強い症状を発現することから、汚染農場では、特に分娩豚舎の清掃・消毒を徹底するとともに、少なくともこの時期には十分な免疫を獲得しているよう予防接種を行うほか、必要な場合は、抗菌性物質の投与を併用して措置するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 本病の顕著な症状を呈する豚を確認した場合は、当該豚は、重要な感染源となることから、速やかな自主的とう汰が重要であり、同居豚についても浸潤を受けていると考えられることから、できる限りオールイン・オールアウト方式により清浄化を推進するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
43 豚丹毒
本病の発生は、予防接種の普及により急性例は減少したものの心内膜炎型、関節炎型等の慢性例がと畜検査を中心として報告されている。これらの慢性例の多くは、子豚期において移行抗体価が一定以下になる前に予防接種を受けたため十分な免疫が得られなかったことが原因と考えられることから、特に子豚期の的確な予防接種の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の常在地においては、子豚の移行抗体の消失時期を把握した上で、的確かつ効果的な予防接種の実施を基本として発生予防に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 本病が発生した場合は、抗菌性物質等による早期治療により、損耗防止を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 急性の経過で死亡した症例については、特に豚コレラ等との類症鑑別を念頭において病性鑑定を実施する必要がある。
(4) 死体の処理は迅速かつ的確に行い、土壌及び環境の汚染並びに同居豚への二次的な感染の防止に努めることが重要である。
44 豚赤痢
本病は、ひとたび発生した場合、常在化する傾向にあるほか、発育遅延、飼料効率の悪化等により生産性を著しく低下させる原因となりやすい。また、ワクチンも開発されていないことから、本病の病原体の農場内への侵入防止及び消毒に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の病原体の侵入を防止するため、汚染地域からの保菌が疑われる豚の導入、汚染している可能性の高い車両・物品の乗り入れ・搬入の防止及び消毒措置に万全を期すよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 発症豚については抗菌性物質の投与も有効であるが、清浄化を図る上で最も確実な方法はオールイン・オールアウト方式と消毒との組合せによる防疫対策の実施にあることから、家畜飼養者に対してこの点の周知徹底を図ることが重要である。特に本病による被害の大きな養豚場に対しては、自主的とう汰を基本とした清浄化対策を講ずるよう指導する必要がある。
45 鳥インフルエンザ
規則第2条に規定される鳥インフルエンザは、家畜伝染病である「家きんペスト」(トリインフルエンザA型ウイルスのうち血清型H5、H7及び高病原性のもの)以外のものをいう。本病そのものによる発生と発生に伴う被害の増大の防止を図るため、衛生的な飼養管理の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病については、飼養鶏の健康観察、野鳥等の鶏舎への侵入及び給水源への接近の防止、農場への出入りの制限、消毒の徹底、類似疾病であるニューカッスル病の予防接種の徹底等について、家畜飼養者に対し助言・指導する必要がある。
(2) 一般養鶏場で発生があった場合は、発生鶏群の隔離及び発症鶏の早期の自主的とう汰のほか、鶏群ごとの消毒の徹底、管理者や用具類の区分の徹底を図るものとし、原則として3週間の空舎期間を置くよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 種鶏場(ふ化場を含む)で発生があった場合には、ふ化業務を一時停止し、発症鶏の早期の自主的とう汰のほか、鶏群ごとの消毒の徹底、管理者や用具類の区分の徹底を図るとともに、原則として3週間の空舎期間をおくことが必要であり、また、保管中の卵及び生産された卵を利用する場合には、本病の病原体を広げるおそれのない方法により処理した後とするよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) 本病が発生し、ふ化業務を一時停止した場合には、産卵回復後に採取した種卵から生産されたひなを3〜4週間飼養観察し、再発のないことを確認した上で、販売を再開するよう指導する必要がある。
46 鶏 痘
本病は、吸血昆虫による媒介あるいは鶏群間で接触、飛沫により伝播する。本病の予防対策はワクチンの応用が基本であることから、媒介昆虫類が出現する夏までに鶏が十分な免疫を獲得するよう適切なワクチンプログラムに基づきワクチン接種を実施するとともに、ワクチン接種1週後に発痘の有無により有効性を確認するよう家畜飼養者を指導する必要がある。更に、蚊、ハジラミ、ダニ等の吸血昆虫の駆除、ほこり、ふん等の飛散防止、消毒の励行等の衛生管理に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
47 マレック病
本病は、ひなに対する予防接種及び幼すう時の隔離飼育の指導に重点を置いて防疫対策を講ずるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(1) ふ化場では、ふ卵衛生に留意するとともに生産したひなに対し的確に予防接種するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 一般養鶏場では、予防接種済みのひなの導入に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) ひなは、若齢のものほど本病に対する感受性が高い。このため、幼すう時の隔離飼育又はオールイン・オールアウトの徹底に努め、この時期の感染を予防するよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) 発症鶏の早期発見に努め、発症鶏は早期に自主的とう汰を実施するよう家畜飼養者を指導する必要がある。特に予防接種鶏群において本病が発生した場合、移行抗体の影響、伝染性ファブリキウス嚢病等免疫不全を起こす疾病の介在、病原性が強い株の出現等に留意しつつ、その発生原因の究明に努めるとともに、飼養環境、接種方法等について必要な改善措置を講ずるよう併せて指導する必要がある。
48 伝染性気管支炎
本病は、一般的な衛生管理のほか、計画的な予防接種の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の防疫に当たっては、本病が全国的に浸潤していると思われること及び伝播力が強いことから、予防接種の励行により発生予防の徹底に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。この際、本病病原ウイルスの血清型は多様であるため、流行ウイルス株に応じた予防液が適切に選定されるよう助言・指導に努め、必要がある場合には、養鶏場の流行ウイルス株の血清型について、ウイルス分離などの検査を実施する必要がある。
(2) 発生鶏舎については、速やかに予防接種の実施の有無についての調査を行い、予防接種が実施されていた場合は、予防液のウイルス抗原と異なる血清型の野外ウイルスに起因した発生も疑われることから、分離ウイルス等の血清型の調査等を速やかに実施し、適切に予防液が選定されるよう助言・指導に努める必要がある。なお、従来の血清型と異なる株を分離し、又はその存在が疑われる場合は、速やかに報告する必要がある。
49 伝染性喉頭気管炎
本病は、ひとたび侵入すると常在化する傾向にあることから、清浄地域にあっては徹底したウイルスの侵入防止による清浄の維持を、また、汚染地域にあっては、予防接種による損耗防止とオールイン・オールアウト方式等による清浄化をそれぞれ図ることに重点を置いて防疫対策を講ずるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(1) ひとたび本病が農場内に侵入した場合は、オールイン・オールアウト方式による防疫対策を講じない限りウイルス保有鶏が残り、清浄化は困難となる。このため、本病の病原体の農場内への侵入を防止するため、汚染地域からのウイルスの保有が疑われる鶏の導入、汚染の可能性の高い車両・物品の乗り入れ・搬入の制限等の防止措置に万全を期すよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 本病が発生した場合の措置としては、オールイン・オールアウト方式が地域における常在化を防止する上で最も効果的な方法であるが、地域の汚染状況や飼養規模等からその実施による措置が困難な場合は、予防接種を活用して損耗の防止を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。なお、この予防接種については、本病が常在化しやすいことから、継続的な接種に努めることが重要であることも併せて啓発・指導することが重要である。
(3) 予防接種に当たっては、その用法を遵守するとともに、清浄地域において使用する場合には、周辺の発生状洗や飼養状況等を勘案して対処するよう関係者を指導する必要がある。
50 伝染性ファブリキウス嚢病
本病は、本病そのものによる発症と当該発症を誘因として続発する他の疾病による被害の増大の防止を図るため、的確な予防接種と衛生的な飼養管理の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の発症には、飼養環境の悪化等の一般的飼養管理の失宜が深く関与すると考えられることから、発生地域においては、鶏舎等の養鶏施設の洗浄、有効な薬剤による消毒、適当な空舎期間の設定等による飼養環境の整備について積極的に家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 本病の予防接種については、病原性の強い株の出現等に留意しっつ、種鶏及びひなに対する接種を徹底するとともに、ひなに対する接種に当たっては、移行抗体の影響に配慮して的確に実施するよう関係者に対して指導を行う必要がある。
(3) 発症鶏の早期発見に努め、発症鶏は早期の自主的とう汰を実施するとともに、ストレス等をできる限り除去するよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、予防接種が実施されているにもかかわらず本病の発生がみられる場合にあっては、当該農場における予防接種プログラムを見直すよう家畜飼養者を指導するとともに、従来の病性に対して差異が疑われる場合は、ウイルスの分離・同定に努め、病原性を明らかにすることが重要である。
51 鶏白血病
本病は、ワクチンがないことから、幼すう期の水平感染を防ぐため、消毒等の日常の衛生管理の徹底のほか、過去の白血病の発生状況を踏まえて、種鶏及び種卵の導入に努めるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
52 鶏結核病
本病は、かつてはほとんど全世界的に分布していたが、飼養管理の近代化に伴い減少している。更に我が国における家きんでの本病の発生は皆無に等しく、海外伝染病の観を呈している。しかしながら、近年展示動物や輸入鳥類での発生があり、有効な治療法がないこと、生前の的確な個体診断が困難なこと、一度発生すると養鶏業に甚大な被害を与えること等から、種鶏を中心に感染鶏群から鶏を導入しないよう家畜飼養者を指導する必要がある。また、発生した鶏群は全群を自主的にとう汰し、鶏舎内を消毒して長期の空白期間を置く等必要な防疫対策を取るよう家畜飼養者を指導する必要がある。
53 鶏マイコプラズマ病
本病は、日常の衛生的な飼養管理の徹底及び必要な場合の予防接種による発生予防に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 一般的な衛生的飼養管理を徹底するよう家畜飼養者を指導することが重要であり、本病については、保菌鶏群の自主的とう汰に努めるよう指導を行う必要がある。なお、介卵感染による伝播もあることから、種鶏場において発生があった場合は、清浄化が確認されるまでの間、当該保菌鶏群の種卵を利用しないよう家畜飼養者を指導する必要がある。
(2) 法第51条の規定に基づく立入検査を必要に応じて実施し、発生状況の把握に努め、本病が疑われた場合は、発症鶏の隔離、自主的とう汰、治療、鶏舎の消毒等適切な措置の実施について家畜飼養者を指導するとともに、迅速に病性鑑定を行い、その結果に基づき必要な措置を的確に指導する必要がある。
(3) 本痛が種鶏場で発生した場合は、少なくとも群単位(最少ゲージ単位)に全羽を検査して、陽性鶏群を自主的にとう汰するとともに、二次感染等の予防上必要な場合は抗菌性物質の投与等を行い、清浄化を図るよう家畜飼養者を指導する必要がある。
54 ロイコチトゾーン病
本病は、流行期前からの媒介昆虫対策及び必要な場合の抗菌性物質の投与等による発生予防に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病のベクターであるニワトリヌカカの駆除を図るため、計画的に殺虫剤及び忌避剤(以下「殺虫剤等」という。)を鶏体及び鶏舎に散布するとともに、必要に応じてライトトラップ、蚊取り器等による捕虫の実施についても家畜飼養者を指導する必要がある。この際、鶏舎周辺の通風の悪い場所にある草むらや物置等は、ニワトリヌカカの休息場所になりうることから、特にこれらについては、その除去及び殺虫剤等の散布による駆除の徹底を併せて指導することが重要である。また、新たに鶏舎を設置する場合には、窓や通風口を高所に設置して鶏舎内へのニワトリヌカカの侵入防止を図るよう指導する必要がある。
(2) 殺虫剤等の散布等に当たっては、鶏舎の柱・壁等には展着性のよい水剤又は油剤を、また、物置・草むら・物陰等には状況に応じて粉剤又は水剤を利用する等の効果的な実施について家畜飼養者を指導する必要がある。
(3) 発生の危険性が特に高いと認められる場合は、休薬期間等の使用上の規制を含め適切な抗菌性物質の投与について家畜飼養者を指導する必要がある。
(4) (1)〜(3)の防疫に当たっては、地域における初期の小流行を的確に把握することがその後の本病の防圧に極めて有効であることから、必要に応じて水田地帯の養鶏農家あるいは過去本病の発生が認められた地域の養鶏農家のうち必要な農家について、ニワトリヌカカが多発する以前から検査を行い、未越夏鶏からの抗体検出又はニワトリヌカカの体内のスポロゾイト等の検出等により本病の発生予防を行うことが重要である。
55 バロア病
本病は、ミツバチヘギイタダニが幼蜂、蛹、成蜂の体表に寄生して起こる疾病であり、一端発生し、定着した場合にはその被害が大きくなることから、清浄群からの導入に努めるとともに、本病を疑う事例がある場合には、病因の特定、ダニ駆除、二次的感染予防等の衛生管理の改善に重点を置いて防疫対策を講ずるよう家畜飼養者を指導する必要がある。
56 チョーク病
本病は、幼虫を感染死させることから蜂群の活力を低下せしめ、重度の場合には蜂群の全滅にもつながる疾病である。また、1980年以降、我が国の蜂群に広く分布していると考えられることから、清浄群からの導入に努めるとともに、臨床検査による早期発見と有効築剤による頻回消毒に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。
(1) 本病の発生予防には、家畜飼養者による巣箱内外の観察、器具等の消毒等日常的な衛生管理の徹底に加え、原因真菌の増殖を助長するような、湿った通気の悪い場所に蜂場を設置することのないよう家畜飼養者に対して、助言・指導する必要がある。
(2) 本病は春から初夏、及び中秋が好発生時期であることから、このような時期に蜂群を強勢に維持できる飼養管理に努めるよう家畜飼養者を啓発することが重要である。
(3) 感染蜂児(ミイラ) がみられた場合、巣脾、巣箱内外及び蜂場全体の消毒等を実施し、蜂場内でのまん延の防止に努め、また、必要に応じてとう汰を行う必要がある。
1 災害対策
(1) 風水害及び震災発生時における家畜伝染病対策は、過去における伝染病発生状況を考慮の上、消毒薬、ワクチンの確保体制及び死亡家畜の処理体制等について適切な計画を事前に作成し、災害の実態に応じ機敏に対処する必要がある。
(2) 家畜に係る被害状況については、「農林水産業被害報告取りまとめ要領について」(昭和48年5月21日付け48総第382号農林事務次官通知)により所定の報告様式により速やかに報告することとされているので、この報告を励行する必要がある。
別記 1
監視伝染病のサーベイランス対策指針
主要な急性の家畜伝染性疾病については、従来に比べ発生数は減少しているものの、近年の畜産経営の大規模化・集約化及びモータリゼーションの発達により、一旦、発生があった場合には被害の大型化・広域化が予想される。このため、疾病ごとにその浸潤状況の地理的分布及び時間的分布を十分に把握し、危険度が高まった場合の早期警告、的確な発生予防、まん延防止措置の実施、清浄化のための防疫措置等を講じる必要がある。また、さらなる疫学的調査を実施して発生源を突き止め、的確な防疫対策に資する必要がある。
したがって、本指針を定め、疾病ごとに発生状況、病原体の検索結果等から流行実態を迅速かつ的確に把握し、必要な情報を速やかに還元することにより、事前対応型の防疫対策の構築を図り、これら疾病に対する有効かつ的確な防疫に資するものとする。
1 定義
この指針において「サーベイランス」とは、監視伝染病の発生を予防し、又はその発生を予察するため必要があるときに、発生の状況及び動向を把握するための検査に基づき特定の期間及び地域における監視伝染病の発生状況、抗体の保有状況、病原体の検索、地理的分布等についての情報を継続的に収集、分析及び評価する手段をいう。
2 サーベイランス実施地域及びその対象疾病
サーベイランスは、その対象とする監視伝染病の病性、発生状況、地理的分布、この疾病に対する防疫措置の必要度等を総合的に勘案し、地理的領域を全国的あるいは地域的の二つに分類して行うものとする。
なお、これらの実施に当たり検査法等の詳細な事項については、動物衛生研究所等の関係機関及び関係する分野の専門家と相互に連携を図り畜産局衛生課が策定し、畜産局衛生課長より別途通知し、徹底する。
(1) 全国的サーベイランス
ア 全国的サーベイランスは、県域を越えて広範囲にまん延し畜産経営に被害を与える可能性があり、全国的、広域的に把握が必要な情報を国が集中して把握することにより、全国的な防疫体制の確立に資することを目的として実施する。
イ 全国的サーベイランス対象疾病は、@撲滅を目的とする疾病、A国内で発生報告のない監視伝染病(規則第10条第1項表第1号の上欄に掲げる監視伝染病とする。以下「海外伝染病」という。)、B国内で発生報告のある監視伝染病のうち節足動物媒介性ウイルス感染症(規則第10条第1項表第2号の上欄に掲げる監視伝染病とする。以下「アルボウイルス感染症」という。)、C国内で発生報告のある監視伝染病(規則第10条第1項の表の上欄に掲げる以外の監視伝染病。以下「国内伝染病」という。)のうち特に伝播力が強く流行型の発生様相を示すなど家畜衛生に重大な影響を及ぼす疾病について、全国的な清浄度確認や広域的な流行予測等全国的・統一的基準で実施する必要があるものを国が選定する。
(2) 地域的サーベイランス
ア 地域的サーベイランスは、県内における監視伝染病の発生状況、抗体保有状況等を県が把握することにより、地域における防疫体制の確立に資することを目的として実施する。
イ 地域的サーベイランス対象疾病は、@国内伝染病のうち地域的な流行を繰り返す疾病、A国内伝染病のうち特定区域内で常在化傾向にある疾病について、監視伝染病の病性、地理的状況を踏まえ県が地域の実情に応じて実施する必要があるものを選定する。
3 サーベイランス実施の手順
サーベイランスの実施に当たっては、@サーベイランス実施目的の設定、Aサーベイランス実施計画の策定、B検査の実施、C検査結果の報告、D検査結果の集計、E集計された結果の分析及び評価、F情報の還元の手順に従い、以下の基本的事項に留意して、円滑な推進を図るものとする。
(1) サーベイランス実施目的の設定
ア サーベイランス実施に当たっては、どのような目的で監視伝染病の発生状況及び動向を把握するか等について家畜の所有者、家畜保健衛生所、県畜産主務課及び畜産局衛生課等サーべイランス実施に係わる各関係者に対し明確に示す必要がある。
イ また、法第5条の規定により検査命令を行う場合には、規則で定める手続きに従い、実施の目的、実施する地域等法に定められた事項について公示する必要がある。
(2) サーベイランス実施計画の策定及び実施に当たっての留意点
サーベイランス計画の策定及び実施に当たっては、以下の点に留意して行うことが重要である。
ア サーベイランス全体並びに各構成部分(手順)をできるだけ単純にし、容易に実施できるようにすること。
イ サーベイランス実施に柔軟性をもたせ、サーベイランス実施機関からの意見をフィードバックする等により改善を行うこと。
ウ サーベイランス実施に係わる関係者の理解が得られやすく、データの収集、情報の提供に当たり関係者や組織の役割の重要性が明確に認識されていること。
エ 収集するデータの種類及び診断基準の定義等を明確にすること。
オ サーべイランス実施で得られた結果が、母集団を代表するものとなるような標本抽出方法を選択し、検査の実施に当たる家畜保健衛生所等によって誤差が生じないようにすること。
カ データの収集から対策の実施までの各段階の措置が迅速に行えること。
キ 時間的分布の把握のため、疾病の特性に応じ、定期的にデータを収集すること。
(3) 検査の実施に当たっての考え方
監視伝染病の発生状況等を把握するための検査は、監視伝染病のサーベイランスの根幹であるので、その適否はサーベイランスの成否に直接つながる。したがって、疾病ごとに以下の基本的事項に留意して最も適切な方法により検査を実施することが重要である。
ア 国内伝染病の検査に関する基本的考え方
(ア) 実施区域の設定に当たっては、疾病の伝播力、疾病の発生状況、家畜の飼養状況等について十分配慮するとともに、検査目的に適合した区域を選び、可能な限り対象とする母集団全体の状況等を把握できるよう考慮すること。
(イ) 検査に当たっては、サーベイランスの目的に応じて適切な標本(と畜場等を含む。)の抽出方法及び検査方法を選択して実施するものとする。
なお、母集団の特徴を推測できるような精度の高い標本の抽出をする場合には、乱数表等を用いた方法で行うことが求められることとなる。
(ウ) 検査を実施する期日の設定は、年間を通じて発生がある疾病については、隣接区域の衛生状況、家畜の移動状況等を考慮して家畜が病原体に暴露する可能性が最も高い時期を中心とすること。なお、発生に季節変動性がある疾病については、発生時期を中心とした期日とすること。イ 海外伝染病の検査に閑する基本的考え方
(ア) 海外伝染病の検査は、我が国に発生のない疾病を対象とし、我が国で海外伝染病発生の危険度が高まったと判断される場合に立入検査や聞き取り調査等を実施し、海外伝染病の摘発及び清浄度の確認を行うものである。
(イ) 畜産局衛生課は、関係部局等と緊密な連絡を保ち、海外伝染病に関する情報を積極的に収集することとする。
(ウ) 我が国で海外伝染病の発生の危険度が高まりサーベイランスが必要と判断される場合には、サーベイランスの実施方法等の詳細な事項について、畜産局衛生課長より通知することとする。ウ アルボウイルス感染症の検査に関する基本的考え方
(ア) アルボウイルス感染症の検査は、主に血中の抗体価の変動により病原体の動きを把握し、早期に流行をとらえるために行うものである。
(イ) アルボウイルス感染症は節足動物により媒介され、これらの発生は一般的に県を越えて広域的なものとなることから、全国的・統一的基準により検査を実施することとする。
(4) 結果の報告、集計及び情報の還元
ア 検査の結果は、文書により報告、収集するほか、電子媒体の活用等により効率的に報告、収集を行うものとする。
イ 疫学的特徴、感染源、感染経路、病原体の性状等についての情報についても必要に応じて収集するとともに、気温、湿度等環境要因と流行の間に関連がある疾病については、地域の環境要因等の情報についても積極的に収集することとする。
ウ また、情報の還元に当たっては、個人情報が流出することがないようプライバシーに十分配慮して行うことが必要である。
エ 結果の報告、情報の収集及び集計に関する家畜保健衛生所、県畜産主務課及び畜産局衛生課の役割は以下のとおりとする。
(ア) 家畜保健衛生所
家畜保健衛生所は、検査等により得られた情報を、調査期間単位に応じて県畜産主務課あて文書、ファックス、電子メール等により送付又は伝送することとする。また、家畜保健衛生所は、県畜産主務課及び畜産局衛生課から還元されたサーベイランス情報を受けたときは、家畜の所有者又はその組織する団体に対し、必要な助言及び指導を行う必要がある。
(イ) 県畜産主務課
県畜産主務課は、全国的サーベイランスにあっては、家畜保健衛生所から得られた情報を集計し、調査期間単位に応じて畜産局衛生課あて文書、ファックス、電子メール等により送付又は伝送することとする。
また、地域的サーベイランスにあっては、家畜保健衛生所から得られた情報を県畜産主務課が集計し、解析・評価を加えた情報を、調査単位等の区分に応じ、週報、月報又は年報等として作成し、文書、ファックス、電子メール、インターネット等により家畜の所有者、家畜保健衛生所、関係都道府県等へ広く還元するとともに、畜産局衛生課に連絡することとする。
(ウ) 畜産局衛生課
畜産局衛生課は、県畜産主務課から得られた全国的サーベイランス情報を速やかに集計し、解析・評価を加えた情報を、調査単位等の区分に応じ、週報、月報又は年報等として作成し、文書、ファックス、電子メール、インターネット等により県及び関係機関等へ広く還元することとする。また、地域的サーベイランス情報にあっては、必要に応じ集計し、解析・評価を加え還元することとする。
(5) 結果の分析及び評価
ア 全国的に集計された情報については、畜産局衛生課が動物衛生研究所等の関係機関及び関係する分野の専門家と相互に連携を図りつつ、科学的・客観的に分析・評価を行うこととする。
イ また、地域的に集計された情報については、県が関係機関等と相互に連携を図るとともに、国との連携を図り、地域に特徴的な疾病の発生状況及び動向、地域的な気候風土や疾病の特性に応じた科学的・客観的な分析・評価を行うこととする。
ウ 科学的・客観的な分析・評価は、表、グラフ、地図等を積極的に利用し、ベクターの発生状況、気象情報、環境要因等についても留意して総合的に行い、疾病に関する疫学的考察、今後の防疫措置の選定あるいは現在の防疫措置の評価、さらには、事前対応型の防疫体制を強化するための発生予察手法の確立等に活用するものとする。
別記 2
乳用雄子牛飼養施設における衛生対策指針
乳用雄子牛の哺育・育成及び肥育経営並びに乳肉複合経営の安定化を図るためには、疾病に対する抵抗性が弱く、各種ストレスの影響を受けやすい哺乳及び哺育期(おおむね生後3カ月齢まで)における疾病の発症を予防し、損耗率の低下を図ることが重要である。このため、乳用雄子牛飼養施設では、以下により各種の効果的衛生対策を講じるよう指導を徹底し、損耗の防止を図る必要がある。
1 分娩時の衛生対策
分娩時は、子牛の感染防止、移行抗体の十分な付与等を図るため、以下の点に留意して衛生対策を講ずる。
(1) 事前に分娩場所の周囲をよく清掃、消毒し、乾燥した敷料を入れるとともに、分娩直前には消毒液で乳房や外陰部をよく消毒する。
(2) 初乳は、生後15〜30分以内に500g以上、生後4時間以内及び8時間以内の2回はおおむね体重の5%を給与し、その後少なくとも4日間は体重の8〜10%程度を1日2〜3回に分けて給与する。
(3) 臍帯の消毒を怠ると、病原体が直接子牛体内に侵入するおそれがあるため、分娩後直ちに臍帯を希ヨードチンキ(2〜3%)等に浸漬し、翌日再度浸漬する。
(4) カーフハッチヘ移動させるか、カーフハッチを使用しない場合には、専用の哺育牛舎に収容し、病原菌の感染を避けるために育成牛や成牛からできるだけ離れた場所に移動させる。
2 導入子牛の衛生対策
子牛を生産農家から導入する際には、子牛の導入に伴う疾病の侵入を防止するとともに、輸送のストレスを最小限に抑えるため、以下の点に留意して衛生対策を講ずる必要がある。
(1) 子牛の導入に当たっては、輸送に伴う体力の消耗や各種ストレスを考慮し、短時間で輸送できる近距離の生産農家から購入するよう努める。
(2) 子牛の輸送は、換気の徹底、直射日光を避ける等できるだけストレスを与えない方法で行う。
(3) 子牛の選定に当たっては、初乳を十分摂取していることを確認する。
(4) 子牛の導入前には、カーフハッチあるいは哺育牛舎の内外をよく消毒・乾燥させるとともに、牛房内には十分敷料を入れておく。
また、車両の出入口には車両用の消毒槽、哺育・育成牛舎の出入口には作業用長靴の踏込消毒槽、隔離牛舎には手指消毒架を設置するとともに、消毒槽内の汚れに十分注意し、少なくとも週に1〜2回は消毒液を交換する。
(5) 子牛を哺育牛舎又はカーフハッチに収容する前に個体識別のためのネックタック又は耳標を装着するとともに、臨床観察、検温及び牛体・四肢に対する消毒を実施する。この際、異常の認められたものは、隔離牛舎に移動させて精密検査を行うとともに、病状に応じた処置及び管理を行う。
(6) 導入直後の子牛は、十分休息させ、輸送や環境の急激な変化による疲労や消耗の回復を早期に図るよう努める。
(7) 初乳の摂取が不十分と思われる子牛に対しては、下痢の発生を減少させるため、凍結初乳又は発酵初乳を給与する。また、当該牛を含め導入牛は2〜3週齢に達するまでは全乳を給与することが望ましい。
3 哺乳期の衛生対策
哺乳期には、下痢の発生予防を主体として、以下の点に留意して衛生対策を講ずる必要がある。
(1) 個体観察を励行すること。
(2) 哺乳期にはカーフハッチを利用することが望ましい。やむを得ず牛舎で飼養する場合は、
ア 換気が良好であること。ただし、すきま風が入らないこと。
イ 清掃・消毒を励行し、舎内を乾燥状態に保つこと。
ウ 子牛同士の口及び顔面の接触、臍のなめ合いを防止するとともに、異常牛は個別に飼育すること。に留意する。
(3) 飼育器具(専用の哺乳バケツ等)は、使用前には必ず消毒し、使用後は、洗浄した後、清潔な場所で乾燥、保管するなど、衛生管理を徹底する。
なお、この他、少なくとも週1回(夏期は2回)は代用乳溶解用の飼育器具を逆性石鹸又は次亜塩素酸ソーダの希釈液を用いて消毒する。
4 哺育期の衛生対策
哺育期には、哺乳期の下痢に代わって肺炎等の呼吸器病の発生が多くなるため、呼吸器病の発生予防を主体として、以下の点に留意して衛生対策を講ずる必要がある。
(1) 個体観察を容易にするとともに、発育の斉一化を図るため、一定の飼育面積を確保するとともに、群飼する前には必ず健康診断を行い、異常が認められた子牛は群飼を避ける。
(2) 哺育・育成期の衛生管理プログラム、とりわけ予防接種のプログラムを作成する際は、当該施設だけでなく、その地域における過去の伝染性疾病の発生状況を考慮し、できれば当該施設の飼養牛群の一部について血清学的検査を実施し、その成績を参考として行う。
5 育成期・肥育期の衛生管理
3カ月齢以降の育成期・肥育期には、以下の点に留意して衛生対策を講ずる必要がある。
(1) 肥育素牛の導入に当たっては、必要な予防接種が行われているものを購入することが基本であるが、行われていない場合には、導入から2〜3週間後に必要な予防接種を必ず実施する。
(2) 導入した肥育素牛は月齢及び体重ができるだけ近いもので群構成を行い、換気、採光がよく、清潔な敷料を十分敷いた広い牛房に収容し、耳標及び鼻環を装着する。
(3) 内部寄生虫(肝蛭、牛肺虫、胃腸内線虫等)の駆虫及び真菌症や尿石症の予防に努める。
6 疾病の発生予防
疾病の発生予防のためには衛生管理を徹底して実施することが重要である。また、疾病の種類によっては、発症牛の一部が外見上症状が回復した後もキャリアーとして感染源となることがあるので、特に哺育・育成施設においてひとたび疾病が侵入した場合は、所定の防疫措置を徹底するとともに、予後及びとう汰の適期の判定を的確に行うことが重要である。予防液がある疾病については、必要に応じて計画的な予防接種により効果的な防疫の推進を図る必要がある。
別記 3
放牧地における衛生対策指針
肉用牛等の生産に当たっては、その生産コストの低減を図る上から放牧飼養を推進していくことが重要であるが、小型ピロプラズマ病をはじめとする各種の放牧病が大きな生産阻害要因であることから、これらへの対応が不可欠となっている。
このため、以下により各種の効果的な衛生対策を講じるよう指導を徹底し、放牧病による損耗の防止を図る必要がある。
1 基本的推進方向
一般に家畜の衛生管理は、衛生プログラムに基づいた防疫対策と、十分な個体観察による異常牛の早期発見・早期治療が基本となる。しかしながら、放牧地では十分な個体観察が困難な場合が多いことから、
@ 入牧前、放牧中の計画的な衛生検査による放牧不適牛や異常牛の早期発見とその後の被害の抑制
A 草地及び牛体ダニ駆除の確実な実施を基本とした管理プログラムを作成の上、以下に留意して衛生対策を実施する必要がある。
(1) 衛生検査の実施
ア 家畜飼養者は、入牧2カ月から3カ月前に放牧希望牛についての申請書を放牧管理者に提出するとともに、入牧1カ月位前に放牧希望牛を対象とした衛生検査を受け、その成績をもとに個別に放牧の適不適を決定する。
イ このほか、予防接種、除角、削蹄の実施等放牧に際して必要な措置の徹底に努める。このうち予防接種については、地域や放牧地内での過去における疾病発生状況を考慮の上、牛パラインフルエンザ、牛伝染性鼻気管炎、牛ウイルス性下痢・粘膜病、気腫疽等に対するワクチン接種の必要な疾病を検討する。
(2) 馴致放牧の指導
放牧ストレスの重大性についての認識を深め、気象や給与飼料に対する馴致に努めるとともに、特に初放牧の育成牛については入牧1カ月前から、また、再放牧牛では2週間前から馴致を開始する。
(3) 放牧衛生施設・器具等の点検整備
放牧管理者は、入牧に備えて連続枠場、薬浴槽、病畜舎、庇蔭林等の各種放牧衛生施設について入念に点検整備し、放牧に伴う事故、特に入牧初期の事故防止に努める。
2 入牧時の衛生対策
輸送ストレス、他の牛群との接触に伴うストレス等により、舎飼い時には異常の認められなかった牛であっても発病する場合があるため、入牧時には全牛を対象とした衛生検査を実施し、放牧の適否を再度判定する。この場合、放牧中の疾病発生時に備えて、全頭の採血と当該血清の一定の期間の保存に努める。
更に、当該衛生検査の結果等に基づき、牛のグループ分けを行うとともに、放牧管理者と管理委託者との間で、異常事態発生時の具体的な対応について検討しておく。
3 放牧中の衛生対策
(1) 初放牧の育成牛については、入牧直後は環境への適応が不十分なことが多いので、放牧環境への順応を図るために2〜3週間の予備放牧を行うことが望ましい。
(2) 放牧草が不足している場合には、補助的に配合飼料、乾草等を給与する等の処置を講ずる。(3) 放牧監視については、予備放牧期には1日2回、その後は少なくとも1日1回は行い、異常牛を発見した場合は、十分観察し、異常や注意すべき点及び講じた措置を日誌等に記録しておく。
(4) 放牧開始後の衛生検査については、体重測定等に併せ、少なくとも月一回は定期的に実施するものとし、この際に、牛体のダニ駆除も行うよう指導する。さらに、過去の発症状況から病牛が多発すると予想される時期及び伝染性疾病に罹患したことが疑われる牛を発見した場合には臨時検査を実施する。
(5) 放牧中に病牛を確認した場合であって、同様の症状を示す牛が多いなど、急性伝染病を疑う場合には、隔離の実施等必要な措置を行う。また、放牧牛がへい死した場合は、獣医師に依頼して死亡原因を究明する。
4 退牧時の衛生対策
中途退牧を含めて牛が退牧する際には、退牧牛の健康状況の十分な確認とダニ・病原微生物等の農家への持込みを防止する観点から、全牛を対象として臨床検査、ふん便検査及び外部寄生虫検査を実施する。特に、ダニ・牛肺虫及び皮膚真菌症に注意し、これらの駆除あるいは治療を実施してから退牧させることが望ましい。治療の途中で退牧させる場合には、農家に対して他の牛と隔離の上治療を継続するよう指示する。
この退牧時の検査については、その検査の結果に基づいて、処置が必要となった場合に、当該措置ができる限り牧場内で行い得るよう、その実施時期の設定に配慮する。
別記 4
種豚場等養豚施設における衛生対策指針
養豚経営の安定化を図るためには、近年の集約的な生産方式の普及等を背景として生じている健康阻害要因を取り除き、疾病の発生を予防して、生産性の低下を防止することが重要である。特に、種豚場に疾病が発生又は潜在化している場合は、種豚の流通によりその疾病が一般養豚場の肥育豚群へ伝播する危険性が極めて高くなることから、種豚場を中心とした養豚施設では、以下により各種の効果的な衛生対策を講じるよう指導を徹底し、疾病の清浄化を図る必要がある。
1 施設の配置及び立入制限等
農場における疾病の清浄化に当たっては、農場への病原体の侵入を防止するとともに農場内における病原体の拡散防止のため、以下の点に留意して、施設の配置及び立ち入り制限の実施に努めるものとする。
(1) 農場の周囲には囲障(ネット、フェンス等)を設け、外部との区分を明確にし、出入口を限定して農場への立入りを規制するとともに、犬や猫の侵入を防止する。
(2) 豚舎は、できる限り発育・飼育段階で区分するとともに、導入豚を隔離する豚舎(以下「検疫豚舎」という。)及び病豚を隔離する豚舎(以下「隔離豚舎」という。) を設置する。その際、防疫、環境及び作業の観点から、管理作業を一方向(ワンウェイ)で行うこと等を考慮し、合理的な配置に努める。
(3) 豚舎は原則として断熱構造とし、換気にも十分配慮する。更に、床、天井、壁は水洗・消毒が容易にでき、かつ耐水性に富む構造にする等の工夫をする。
(4) 外来者の入場に際しては、衣服、履物及び手指の消毒を励行するとともに、帽子、上衣、ズボン、履物等はできる限り場内専用のものに取り替える。また、検疫豚舎及び病豚隔離豚舎への出入の際は、再度衣服及び手指の消毒を行うとともに、衣服、ゴム長靴等は専用のものに取り替える。
(5) 一般車両の乗入れは、原則として禁止するが、入場させる場合は、出入口で消毒を行う。また、資材の搬入に際しては、必要に応じて噴霧消毒を行う。
2 施設内における衛生管理
疾病の防除に当たっては、外部との隔離、施設の適正配置等に留意するとともに施設内における病原体の飛散防止と良好な飼育環境の経持を図るための日常の衛生管理を徹底することが重要である。したがって、農場関係者は、当該施設が外界と隔離状態におかれた場合にあっても施設内が完全に清浄化されたわけではないことを念頭において、日常から以下のような事項に留意の上、施設内における衛生管理に万全を期す必要がある。
(1) 施設等の汚染防止対策の徹底
ア 各々の豚舎の入口には、手指の消毒施設、踏込消毒槽、器具の洗浄・消毒器具等を設置するとともに、管理棟、豚舎、飼料庫等構内に配置されている施設については定期的に清掃、消毒を行う。
イ 豚舎はできる限りオールイン・オールアウト方式で運営することとし、オールアウト後の豚舎は、ふん、飼料等を搬出した後、十分清掃、水洗及び消毒し、一定の間隔をおいて、導入直前に再度消毒を実施した上で次の豚群を導入する。
なお、オールイン・オールアウト方式の採用が困難な豚舎については、一定期間使用後必ず空舎期間を設け、完全に清掃及び消毒を行う。
ウ 豚舎、管理舎、倉庫等については、定期的あるいは必要に応じてネズミ及び衛生害虫の駆除を実施する。
エ 作業用の衣服は清潔に保つほか、管理器材は豚舎の棟ごとに専用のものを備え、常に清潔に保ち、原則として使用後毎回水洗・消毒する。
(2) 個体の衛生管理の徹底
ア 母豚を分娩豚舎へ移動する際には、豚体をよく洗浄消毒し、必要に応じて殺虫剤の散布を実施する。
イ 豚舎については、舎内温度を適正に維持する。特に、幼齢豚が飼養されている豚舎については、十分な保温設備を備える。また、暑熱時には、送風及びワンマンスプレー、シャワー等による水の噴霧を行う等防暑対策を実施することが望ましい。
ウ 農場外から種豚等を導入する場合は、必ず検疫豚舎に収容し、少なくとも2週間は隔離観察して、異常のないことを確認し、異常豚を確認した場合は、その病性の解明に努め、必要な処置を実施する。
エ 検疫豚舎又は病豚隔離豚舎から一般豚舎への豚の移動は、畜体が清浄であることを確認するとともに、必ず畜体の洗浄・消毒を行う。
オ 伝染性疾病の疑われる死亡豚は、必ず家畜保健衛生所において病性鑑定を受ける。
3 予防及び治療等
疾病の予防に当たっては、日常の一般的な衛生管理のほか、計画的な予防接種の実施、疾病の清浄地域からの種豚の導入等所要の措置を講ずる必要がある。また、ひとたび疾病が侵入した場合、疾病の種類によっては、外見上症状が消失した後も、一部の豚が保菌豚として残り、感染源となることがあるので、特に種豚場においては、保菌豚の防疫措置の徹底に努めるべきである。
なお、既に予防液が開発されている疾病については、健康管理の一方法として予防接種の効果的な活用を図る必要がある。
4 衛生管理体制
種豚場の衛生状況を把握するためには、以下の点に留意しっつ、計画的に抗体検査等を実施することによって種豚集団における各種疾病の浸潤状況を明らかにしておく必要がある。このため、種豚候補以外の子豚をモニター豚として肥育出荷し、と畜検査における剖検所見の成績から衛生上の問題点を解明する等により、子豚の健康度及び種豚場の衛生状態の把握することが重要である。
(1) 慢性伝染病等の中には診断方法が開発されていない疾病もあり、生前においては被害状況との因果関係が明確にできない場合も多いことから、年間の分娩回数、受胎率、死流産回数やその状況、一腹当たりの子豚の離乳頭数、へい死・とう汰頭数及び育成状況等の繁殖育成に関する記録をとり、技術指標として役立てるのみならず、疾病の発見、疾病の漫潤状況の指標として活用する。
(2) 日常の飼養管理においては、異常豚の早期発見に努めるとともに、自らの衛生管理についてあらかじめ点検項目を定めておき、定期的なチェックを行いその改善を図る。
5 その他
種豚場以外の養豚場に対しても、本対策指針に準じた衛生管理に努めるよう指導すべきである。
別記 5
ふ卵場等養鶏施設における衛生対策指針
我が国の養鶏産業は、近年急速に規模拡大と集約化が進み、飛躍的に発展してきているが、鶏病についても種々の疾病が発生し、経営に及ぼす影響も大きくなっている。これらの疾病の中には衛生管理の不十分な施設における管理失宜に起因するものも少なくなく、特に、ふ化場におけるふ卵衛生対策が、鶏衛生上重要なものとなってきている。このため、特に種鶏場については、現在応用可能な各種の方法(定期検査、予防接種、飼養環境の改善等)を用いて、施設内の清浄度の保持に、また、ふ化場については種卵及びふ卵器の消毒の徹底及び施設内の衛生管理の向上等に努めることとし、以下により効果的な衛生対策を講じるよう指導を徹底し、ふ卵場等養鶏施設の衛生の向上を図る必要がある。
1 施設の配置及び立入制限等
ふ化場等養鶏施設における疾病の清浄化に当たっては、農場内への病原体の侵入を防止するとともに農場内における病原体の拡散防止のため、以下の点に留意して、施設の配置及び立ち入り制限の実施に努める必要がある。
(1) 種鶏場、ふ化場等は周囲に他の養鶏施設が少なく、通風及び排水の良好な場所に設置するよう努める。
(2) 種鶏場、ふ化場等については、施設内への不必要、不用意な人の出入り及び野犬の侵入を防止するため囲障を設けるとともに、施設内への出入口に更衣所を設けるものとし、当該更衣所は、外から順に@外着を脱ぐ部屋(又はロッカー)、Aシャワー室(又は風呂場)、B内着を着用する部屋(又はロッカー)となるように配置する。これら全てを設置することが不可能な場合には、少なくとも外着用と内着用に別々のロッカー又は部屋を設ける。また、入場に当たっては、帽子・上着・ズボン及び履物の交換を徹底する。
(3) 鶏舎及びふ卵舎はもちろんのこと、種鶏場、ふ化場等の施設内へも不要な外来者の立ち入りを原則として禁止するとともに、一般車両の施設内への乗入れについても原則として禁止する。なお、施設内への出入り口に車両用の消毒施設を設置し、やむを得ず行う車両の乗入れ及び資材の搬入に当たっては消毒を徹底する。
(4) 種鶏場、ふ化場等の関係者(経営者及び従業員)は、自宅での鶏、その他鳥類の飼育を避けるとともに、種鶏場及びふ化場等におけるねずみ等の衛生動物の駆除並びに野生鳥類等の侵入防止に努める。
2 施設内における衛生管理
一般に飼育されている鶏群の場合は、外界からの病原体の侵入を完全に阻止したとしても、常在微生物をすべて除去することは不可能である。これら常在微生物の大部分は、一般的に病原性が極めて低いか、感染してもまれに軽い症状を引き起こすに過ぎない場合が多いが、鶏舎及びふ卵舎の衛生管理が適切に行われていない場合には、集団的な発病の原因となることがあることから、施設内の清浄化と併せて鶏群やふ卵器を常に衛生的に取り扱っていくことが必要である。
(1) 種鶏場等における汚染防止対策の徹底
ア 鶏舎の入口には、手指の消毒施設、踏込消毒槽、器具の洗浄場所等を設置するとともに、管理棟、鶏舎及び飼料庫等構内に配置されている各種飼養管理施設について、定期的に清掃・消毒を行う。
イ 鶏舎については、できる限り棟ごとにオールイン・オールアウト方式で運営し、オールアウトした鶏舎はふん、飼料等を搬出した後に十分清掃、水洗及び消毒し、2週間以上の間隔をおいて次の鶏群を導入する。また、導入の直前にも再度消毒を行う。
ウ 作業用衣服は常に清潔に保つ。管理器材は鶏舎の棟ごとに専用のものを備え常に清潔に保ち、原則として使用後は毎回水洗・消毒する。
(2) 種卵の衛生管理の徹底
産卵箱は常に清潔に保つとともに、集卵はできる限り頻繁に実施する。集卵後は速やかに卵殻表面の消毒を実施する。また、消毒済みの種卵は、好適な条件下の貯卵室で保存し、温度変化により種卵表面に結露が生じないように注意する。なお、卵殻がひび割れしているもの、奇形のもの、巣外卵及び卵殻が汚れているものは種卵として使用しない。
(3) ふ化施設における汚染防止対策の徹底
ア ふ卵舎については、くん蒸室、貯卵室、ふ卵室、ひなの鑑別及び選別室、予防注射室、ひな荷作り発送室、ひな置き場等をそれぞれ衛生的にしゃ断した状態で設置し、作業行程をワンウェイ方式とするよう努めるとともに、(1)の種鶏場等における汚染防止の措置と同様の措置を講じるよう努める。なお、ふ卵室については、セッター室とハッチヤー室に区分し、オールイン・オールアウト方式を採用することが望ましい。
イ 鑑別に際し、ひなから排泄される胎便を受ける容器は、多数の細菌等によって汚染されているので、使用後は内容及び容器の消毒の徹底に努める。
ウ ひなの輸送に当たっては、輸送車を使用の都度洗浄消毒する。なお、輸送車には、温度、湿度を一定に保つことのできる空調設備のある被蓋車を用いることが望ましい。
エ ふ化場へ搬入した種卵は、ホルマリンくん蒸、42〜43℃の逆性石鹸液で浸漬等による消毒後、汚染を避けて速やかに貯卵室に保存するものとする。また、種卵をセッターからハッチヤーに移した後、器内の温度及び湿度が通常の設定条件に達した時点でホルマリンくん蒸を行う。
オ ふ卵舎及びふ卵器は、使用に先立って、清掃・水洗し、24時間以上ホルマリンくん蒸等を行うものとする。特に、ふ化後の残存物(卵殻、中止卵、死ごもり卵、綿毛等)は細菌を多く含んでいるため、使用後のふ卵舎の清掃・消毒に先立ち、これら残存物の飛散を防ぐための消毒液の予備噴霧又はホルマリンくん蒸を行うとともに、電気掃除機による清掃に努める。また、残存物は収集後焼却するかあるいは完全に消毒して廃棄する。
カ ホルマリンガスは人や動物に有害であることから、作業に当たっては必ずマスク、メガネ、手袋等の適切な保護をする。
競走馬の飼養の集団化と規模の大型化の傾向が強まるとともに、その移動も頻繁に行われるようになってきている。また、乗用馬等においても飼養の集団化が進展し、相互間の交流の機会も増加してきている。このような環境の中で、競走馬等の健康を保持し、資質能力を向上させることが競馬運営上並びに乗用馬等の生産振興上の不可欠な要件となっている。このため、今後とも競馬場等の衛生管理の一層の充実を図る必要があることから、引き続き、以下により、全国的に調和された水準で各種の効果的な衛生措置を講ずるよう指導を徹底する必要がある。
1 衛生管理体制の整備
(1) 防疫担当職員の配置
管理事務局に少なくとも一名の防疫担当職員(獣医師)を任命し、防疫計画の立案、衛生管理指導及び情報連絡等を担当させる。
(2) 診療獣医師の掌握
施設内における競走馬等の診療の適正を図るため、必要な設備を有する診療所を整備するとともに、専任獣医師の雇用あるいは開業獣医師への診療の嘱託等により診療獣医師を確保し、その活動状況を掌握する。
2 防疫・衛生管理の実施基準
(1) 入厩時の防疫
ア 入厩承認申請書の提出と入厩日時の指定
入厩を奇望する者(馬主又は調教師等)は、あらかじめ管理事務局に入厩承認申請書を提出し、入厩日時の指定を受ける。
イ 入厩検疫
(ア) 書類の点検
馬の証明手帳、予防接種に係る証明書等を管理事務局に提出し、その点検を受ける。
(イ) 検査
入厩馬は、検疫厩舎に収容した上で、臨床検査等の入厩時の検査を実施する。
(ウ) 入厩
検査の結果、異常が認められない場合、一般厩舎への入厩を認める。
(2) 退厩届の提出
退厩させようとする者(馬主又は調教師等)は、当該馬の退厩に先立ち管理事務局に退厩届を提出する。
(3) 検査及び予防接種
ア 馬伝染性貧血
法第5条の規定に基づく検査を実施する。検査は、家畜保健衛生所と協議の上、地域ブロック毎に同一時期に実施するよう努める。
イ 予防接種
馬インフルエンザ、流行性脳炎等の予防接種は、県当局と協議して計画的に実施し、注射証明書を整備しておく。
(4) 日常の衛生管理
ア 在厩馬の検温
各馬ごとに体温表を配布し、飼養管理責任者(調教師等)の監督のもとに朝夕検温し記入させる。
イ 厩舎の消毒等
汚物だめ、馬ふん置場及び汚水溝等は定期的に消毒する。また、夏期を中心として昆虫が発生し又は発生するおそれのある場所その他の施設について、ライトトラップやアブトラップの設置と併せて、適切な時期に殺虫剤の散布により昆虫防除に努める。また、毎年1回以上殺そ剤の応用を図り、厩舎内外のねずみ駆除に努める。
ウ 異常馬の届出と隔離
(ア) 熱発馬をはじめ、診療対象馬等で伝染性疾病を疑う場合は、診断又は発見した獣医師及び飼養管理責任者(調教師等)は速やかに管理事務局に届け出る。
(イ) 当該届出に基づいて実施した検査の結果、伝染性疾病であるか又はその疑いのあることが判明し、隔離の必要があると認めた場合は、当該馬を隔離厩舎に移動させ、必要な期間隔離する。
(ウ) 上記(イ)の場合、競馬場等の各施設の防疫担当職員は、家畜保健衛生所に必要な届出を行うとともに、速やかに軽種馬防疫協議会事務局に発生経緯及び措置等について通報する。
3 衛生施設の整備
競馬場等の各施設は、診療所(検査に必要な器材を含む。)、検疫厩舎、隔離厩舎、汚水だめ(屋根付き)、汚水処理施設等の衛生施設の整備を図り、防疫措置の徹底に努める。
別記 7
輸入家畜の着地検査指針
1 着地検査期間
着地検査は、着地検査を実施する場所(以下「仕向先」という。)に家畜(牛、水牛、馬、豚、緬羊、山羊、鶏等の初生ひな)が到着した後原則として3カ月間実施する必要がある。ただし、競走馬及び乗馬のうち遠征を実施したものに対して行う着地検査については「海外遠征馬の帰国時における輸入検疫及び着地検査について」(平成2年8月10日付け2畜A第1654号農林水産省畜産局長通達)の記の3に定めるところにより、その期間を3週間にまで短縮することができる。また、その他の偶蹄類、兎、犬、みつばち及び動物園で展示に供せられる牛等の着地検査については、原則として実施しない。
2 動物検疫所の行う措置
(1) 輸入業者に対する指導
動物検疫所は輸入業者に対して以下の事項について指導を行う。
ア 興行用の輸入家畜で着地検査期間中に移動を行う予定を有するものについては、興行計画を当該期間中の移動先となる県の畜産主務課に届け出ること。
イ 輸入業者は、海外で家畜の購入を行うに際しては、事前に輸出国の家畜衛生担当機関と連絡をとり、当該輸出国の家畜衛生状況を十分把握した上、家畜の伝染性疾病の清浄地域内の農場から購入を行うこと。
(2) 仕向予定の通知
動物検疫所は、輸入家畜が仕向先に到着するに先立ち、規則第49条に基づく様式第23号の事項等の着地検査に必要な事項を当該輸入家畜が所在する県の畜産主務課に通知する。
(3) 検疫結果の通知
ア 動物検疫所は、輸入検疫中に監視伝染病を摘発した場合は、当該家畜及び当該家畜と同一ロットの家畜(当該家畜と同一船舶、航空機で輸入されたすべての家畜及び当該家畜と同一の畜舎に収容されていたすべての家畜)の仕向先の県畜産主務課及び畜産局衛生課に速やかに通知する。
イ 動物検疫所は、輸入家畜の解放後速やかに、輸出国における検査結果及び動物検疫所における検査結果を別記様式5により仕向先の県畜産主務課に通知する。
3 県の行う調査指導等
県は、動物検疫所からの通知に基づき輸入家畜飼養者に対して以下の事項について指導を行う必要がある。
(1) 着地検査場所
ア 輸入家畜は他の家畜から十分隔離できる場所又は施設(以下「隔離施設」という。)で飼養すること。
イ 隔離施設で使用する器材等は専用のものとし、出入口には消毒槽を設けること。
ウ ふん尿及び廃棄物は衛生的に処理すること。
エ ねずみ等の衛生動物の侵入を防止すること。
(2) 着地検査期間中の家畜の移動制限等について
着地検査期間中の輸入家畜の移動は原則として行わない。ただし、
ア 輸入馬については、競馬出走のための馬名登録に必要な検査を行うためやむを得ない場合であって、他の動物から隔離した状況の下で当該検査を実施する場合にあっては、当該輸入馬の移動を行うことができる。
イ 興行用の輸入家畜については、興行計画上やむを得ない場合、その移動日時、着地検査中の衛生状況等について関係畜産主務課との間で緊密な連絡をとり、他の動物から隔離した状況の下で当該輸入家畜の移動を行うことができる。
ウ ア又はイ以外の馬であって、家畜衛生対策を勘案の上、家畜防疫員が認めた場合は、当該輸入馬の移動を行うことができる。
(3) 飼養管理
ア 隔離施設にはできる限り専任の飼養管理者を置くこと。
イ 隔離施設には関係者以外の立入りを禁止すること。
ウ 隔離施設への出入時には、帽子・上衣・ズボン・ゴム長靴等を専用のものに取り替え、手指と併せて帽子・上衣・ズボン・ゴム長靴等の消毒を行うこと。
エ 隔離施設での作業は、隔離施設以外での作業が終了した後に行うこと。
オ 隔離飼養中の家畜の健康状況については、その把握に努め、記録を行い、異常を認めた場合には、家畜保健衛生所に速やかに連絡すること。また、隔離施設、飼槽等の清掃、洗浄及び消毒を行うこと。
カ 着地検査場所での家畜衛生状況等を勘案し、必要に応じワクチン接種を実施すること。
キ 隔離施設には、衛生措置が容易に行えるようできる限り枠場の設置に努めること。
4 県の行う着地検査
(1) 県は、輸入家畜飼養者と密接な連絡を保ち、着地検査期間中は、臨床観察を中心として行い、健康状況の把握に努めることが重要である。
なお、検査は、導入時に実施した後は、月に1回程度実施するべきである。また、異常を認めた場合は血清学的検査等の精密検査を実施する必要がある。
(2) 県は、原則として、輸入検疫中に監視伝染病が摘発された家畜と同一の畜舎に収容されていたすべての家畜について、着地検査期間中に少なくとも一回当該疾病の精密検査を実施する必要がある。この場合、第1回目の精密検査は当該家畜が着地検査場所に到着した後、おおむね2週間〜1カ月の間に行う。ただし、当該疾病がアナプラズマ病、ピロプラズマ病又は馬ウイルス性動脈炎である場合の精密検査については、次により行う。
ア アナプラズマ病(規則第1条で定める病原体によるもの)
血液塗抹標本の顕微鏡検査(毎月1回)、CF検査
イ ピロプラズマ病(規則第1条で定める病原体によるもの)
血液塗抹標本の顕微鏡検査(毎月1回)
ウ 馬ウイルス性動脈炎
当該輸入馬から血清を採取し、動物検疫所に送付する。動物検疫所は、この血清について中和試験を実施し、その結果を県畜産主務課及び畜産局衛生課に通知する。
5 着地検査の検査結果の報告
県は、4の(1)の精密検査を実施し、監視伝染病を摘発した場合並びに4の(2)により検査を実施した場合には、その結果を速やかに畜産局衛生課あて報告する。
別記 8
牛のブルセラ病又は結核病の検査に関する農林水産大臣が定める区域等の指定について
規則第9条第2項の農林水産大臣が定める区域とは、区域が指定された日から起算して過去5年以内にブルセラ病又は結核病の発生があった区域及び発生区域と疫学的に関連のある区域とし、市町村を単位とする。また、当該区域は、毎年度末に告示する。
ただし、以下に掲げる条件を満たす区域にあっては、農林水産大臣が定める区域から除くことができる。
1 過去3年の間に定期的な検査が少なくとも一回行われており、ブルセラ病又は結核病の発生のおそれがないことが確認されていること。
2 当該区域の家畜防疫指導を担当できる獣医師がいること。
3 当該区域外から導入される牛についての導入状況、衛生状況が十分に把握できる体制にあること。
別記様式1〜5(略)