平成17年夏合宿 南八ヶ岳



 昨年秋の鳳凰三山山行で、一部隊員の高齢化+運動不足による体力低下が顕在化したため、今年の合宿は少しレベルダウンしようということで、南八ヶ岳(赤岳〜横岳〜硫黄岳)ルートを選んだ。とはいえ、体力低下で辛い目をした上、隊長ことミズHに鼻先で笑われたカンボ隊員としては、3週間前からの体力強化トレーニング及び装備の見直しによる重量軽減など対策に怠りなく、準備万端整えての参加であった。
 昨年と同様今年も、出発を前にして「非常に強い」台風11号がぐんぐんと近畿地方に近づいてきて、出発の金曜日に集合場所のJR石山駅は台風の目の中心、という様相になって、日延べか中止かとやきもきする状況になった。幸い、紀伊半島の手前で急カーブとともに加速して関東に向かい、出発当日は晴れてくれた。
 メンバーは、例によって隊長、いっちゃん、そしてカンボの3人。昨年同様、遠ざかる台風の尻尾を追いかけていざ信州へ!ということになった。



(昭文社「山と高原地図・八ヶ岳」より引用)

8/26(金)

美濃戸山荘

美濃戸山荘の夕食

 午前9時半、いつものJR石山駅前にていっちゃん、隊長を待つ。やがていつもの軍用色の人民解放軍号がやってきて、まもなく隊長も現れた。
 ザックを積み込み出発。前方は雲は多いが晴れており、台風が秋雨前線を撹乱したであろうことから、3,4日は好天に恵まれることが期待される。
 快晴となった中央道・駒ヶ岳SAで「ひれソースかつ丼」を食べ、諏訪南ICで下りる。いっちゃんがクルマに積んでいた15年くらい前の全日本道路地図では情報が古い上に、縮尺もSAでもらえる高速道路エリアガイドと大差ないので、給油の後、エリアガイドの大雑把な地図と勘で、買い出しポイントと目をつけていた原村のAコープを目指す。
 Aコープで、定番のフルーツゼリー・ミックスのカップ、チーかま、水のペットボトル、缶ビール…等々、山行中の食糧やおやつ、酒を仕込む。
 原村のペンション村や八ヶ岳中央高原の別荘地の中を抜け、美濃戸口より悪路の林道に入って、午後4時前に、一般車の入れる上限である今夜の宿の美濃戸山荘に到着した。
 美濃戸山荘は、個室を予約してあったのだが、台風のせいで我々以外はキャンセルしたらしく、大部屋を個室料金無しで貸し切りということにしてくれた。表から見た感じよりは大きな宿で、お風呂もウォシュレット付きのトイレもある。トイレは100円のチップ制だが、宿泊客は無料。我々3人だけのために食事を作ってくれている間に、記念写真を撮ったり入浴したりで時間をつぶす。
 素朴ではあるものの心づくしの感じられる夕食は写真のとおり。美味しくいただいた。
 クルマに残して行く荷物と携行する物とを分け、明日のために寝ることにする。大部屋に布団が1ダースくらい延べてあり、どこで寝てくれてもかまわないということだったが、隊長はいっちゃんのイビキを警戒してだいぶ離れたところに床を定める。「友情よりまず自分」のアメニティ志向の強い女とみた。 いっちゃんはAコープで仕入れた「紫蘇焼酎」というのを黙々と飲んでいたが、飲みきれずやがて寝る。意外にもこの晩、いっちゃんのイビキ聞こえず。

8/27(土)

美濃戸山荘 6:45 ― 8:50 行者小屋 9:05 ― 10:05 地蔵尾根分岐 ― 10:15 赤岳天望荘(昼食) 12:05 ― 12:35 赤岳 14:35 ― 15:00 赤岳天望荘

 いよいよ山行初日。6時から朝食。これも素朴なものであったが、温泉玉子がおいしかった。
 6時45分に出発。まだ陽射しの届かない南沢ルートを辿る。樹林帯の中の気持ちいい山歩き。ポピュラーなルートの割に、ガムの包み紙やナイロン袋、空き缶などが見当たらない。そこここに美しい苔がある。美しい沢を右に左に何度か横切って、涸れ谷の河原を歩く頃には陽射しが強く射してきた。短い距離だが変化に富んでいて飽きさせない。
 8時50分、行者小屋に着く。すぐ手の届きそうな上に稜線のパノラマが広がる絶景であるがガス模様で、赤岳のあたりは完全に雲に隠れていた。
 今回の山行は、一部メンバーの高齢化を直視した「のんびり・ゆったりプラン」なので、赤岳天望荘泊まりのため時間はたっぷりある。しかしここでじっとしていてもすることがないため、小休止の後、腰を上げる。ここまでは沢沿いのなだらかな登りであったが、これよりどのルートをとるにせよ、稜線に向けて急な登りとなる。我々は当初の予定通り、急だが一気に高度を稼げる地蔵尾根ルートを辿ることにした。 行者小屋裏手から樹林帯の道をぐんぐんと登って行くと、行者小屋が足下に小さくなって行く。北には赤岳鉱泉の小屋も見える。ハシゴや鎖場もあるが、とくにどうということはない。雲のせいで日が翳って肌寒い。行者小屋から1時間の登りで、稜線の地蔵尾根分岐に到着。ガス模様の中を10分歩いて、今夜の宿、赤岳天望荘に着いた。普通、山小屋に近づくと聞こえる発電機の音や臭いがしないのがいつもと違うなと感じていたのだが、コルを吹き抜ける風に勢いよく回る風力発電機の列を見て謎が解けた。ブーンブーンと風力発電機の風切音はなかなか大きいことも知る。
 小屋のチェック・インは午後から、ということだったので、食堂でお湯をもらって持参のカップ麺の昼食とする。せっかくのお湯だが、いつ沸かしたものかお風呂くらいの温度だったので、腰の強いラーメンとなってしまった。外はガスと強風で展望が無いため、食後も所在なく食堂で時間つぶしをしていたが、やがて少し早めにチェック・イン手続きをしてくれたため、予約していた個室に荷物を運ぶ。食堂のある本館は大部屋で、個室棟は先ほどの風力発電機が取り付けられている建物であった。本館と個室棟は地下トンネル状の通路でつながっていて、中間にトイレと名物の五右衛門風呂の棟がある。
 12時過ぎにサブ・ザック1つで小屋を出て、30分の登りで赤岳山頂(2,988m)に着く。次から次へと押し寄せる雲のせいで周囲の眺望は権現岳方面を除いてはさっぱりであった。今日の行程はもう完了なので、時間つぶしのため頂上に2時間滞在したが、肌寒く、たまに雲の切れ間から陽が覗くとポカポカして心地よいという具合であった。人気ルートらしく、ひっきりなしに登ってくる人達が山頂の標識をバックに記念写真を撮っている。
 赤岳山頂のすぐ横に赤岳頂上小屋がある。下から見るとロープウェイの山頂駅みたいな感じだ。同様にほぼ頂上に小屋がある例としては北アルプスの北穂高小屋などがあるが、ちょっと興醒めという感じがしないでもない、せいぜい「肩の小屋」にとどめてほしいところ。

南沢上部の涸れ谷にて

行者小屋より横岳を望む

地蔵尾根上部からの赤岳

地蔵尾根から行者小屋を望む

赤岳山頂にて

赤岳頂上小屋

赤岳からの下り
 15時に小屋に戻り、宿泊客は無料でおかわり自由の(薄味)コーヒーを飲んでくつろぐ。外はあいかわらずガスっている。最近は山の上で携帯電話を使うのがありふれた光景であるが、今回も、山頂で小屋で携帯を手にメールしている人をそこここで見た。隊長も、今回参加できなかったモモちゃんにせっせとメールを送っている。 おおかた、おじさん2人へのグチでも報告しているのだろう。いっちゃん、ここのところ禁煙に努めているとのことで、そういえば、休憩の一服の姿が見られない、代わりにニコレットを口に入れている。煙草を止めていることと関係はないだろうが、今回はいっちゃんがやや不調で、いつもなら嬉々として持ち歩くウイスキー なども重いからクルマに残してきたと言う。そしてタフな彼にしては珍しく「2リットルのペットボトルの水が重いから…」とグチを言い続けていた。この水は、ラーメンとコーヒーのために持ってきたいわば共同装備であるが、赤岳天望荘でお湯もコーヒーももらえたため、ほとんど使われず持って下りることになった。 隊長は、登りの速いいっちゃんによい重しになっていると喜んでいた。
 赤岳展望荘は山の上の天水五右衛門風呂をウリにしている。そこでいっちゃんが挑戦してみたが、湯上がりのすすぎ用にくれるという「上がり水」は無く、温度もぬるかったと言う。
 17時15分からの夕食は、これまたこの小屋の名物?のバイキング形式であった。食堂入口のカウンターで食券を渡すと発泡スチロール製皿の載ったお盆をくれ、トレーに入ったいろんな惣菜を好きなだけ取って、最後に御飯と味噌汁をもらって食べるというものである。惣菜にとくに豪華なものは無かったが、いずれも味付けは美味しく、御飯、味噌汁も美味しかった。御飯と味噌汁はおかわり自由という小屋が殆ど だが、おかずもおかわり自由というのが太っ腹で良い。

赤岳天望荘の食堂

4人用個室

 我々の部屋は4人用個室(個室料金\4,000)であるが、これまで泊まった山小屋の個室と比較してかなり狭かった。上の段に身長の低い人1名、下の段に3人 というあんばいなのだろうが、下の段に2人の今回のケースでも、上段に上がるための梯子をかけるスペースが無いのであった。おかげで隊長は一晩、トイレに行かずに過ごすこととなった。夜8時に消灯であるが、風力発電のおかげか、廊下は少し照明が点いていた。ただ、トイレは入口に豆電球があるだけで中は真っ暗となる。ここのトイレも洋式で、 一番奥にはウォシュレットもあったのでビックリ。それにしても、しばしば見受けることながら、洋式トイレで便座の上に用を足す人がいるのは困りものだ。
 ちょっと湿気た布団が重く、狭い室内が暑かったので毛布だけかけて寝る。この夜も、いっちゃんはイビキかかず。深夜にトイレから戻ってひっそりと「紫蘇焼酎」を飲んでいたようだった。

8/28(日)

赤岳天望荘 6:35 ― 7:35 横岳 8:00 ― 8:30 硫黄岳山荘 8:45 ― 9:00 硫黄岳 10:25 ― 11:15 赤岳鉱泉 11:50 ― 12:50 美濃戸山荘


朝の赤岳天望荘と赤岳
左が風力発電機

朝食もバイキング
 6時から朝食。これもバイキング形式。好きな物を選べるので、いつもより沢山食べることができた。6時35分に小屋を出発。昨日に比べると雲は少なく午前中は低いので眺望が良い。 北アルプスは白馬岳あたりから乗鞍にかけて、御岳、中央アルプス、南アルプス、そして富士山も時々雲の切れ目から頭を覗かせる。北東方面は雲が高く山は見えない。
 1時間の縦走で横岳に着く。今日も時間はたっぷりあるので半時間ほど大休止の後、再び腰を上げる。横岳から硫黄岳にかけては広いなだらかな尾根で、のんびりした気分になる。 登山路の両側にコマクサ保護のためのロープが張られている。時期遅れではあったが、まだしゃきっとしているコマクサもあって目を楽しませてくれる。硫黄岳山荘の前で小休止の後、今山行最後のピークである硫黄岳に向かう。
 9時に硫黄岳に着く。今日は上諏訪温泉の宿に泊まる日程となっているので、まだまだ時間が余る。台風一過のせっかくの晴天に恵まれているのに、早々と下界に下りてしまうのはもったいない。 いつもそわそわと落ち着きのない隊長を説き伏せて1時間半の大休止をとり、火口壁から本沢温泉を覗き込んだり、天狗岳など北八ヶ岳方面を眺めたりして過ごす。 まだまだ陽射しはきついが、ダイナミックに流れる夏の雲のずっと上層には秋の雲が静かに控えて、季節の交代を教えている。いつもは後の行程を考えて、ピークに着いてもせいぜい15分程度で腰を上げてしまうのだが、今回は 本当にゆったりとした時間を過ごすことができた。
 隊長が辛抱たまらんという様子になってきたので、もったいないと思いつつも下山にかかる。下り始めてまもなく樹林帯のジグザグ道に入る。今回、登りはやや不調だったいっちゃんも、下りにかかるといつものペースが出て、あっという間に 姿が見えなくなってしまった。パーティーとしてはどうなんだろうといつも思うのだが、隊長をお守りしながら下って行く。50分ほどで赤岳鉱泉に到着、小休止。いっちゃんは500円の缶ビールを買って、うまそうに飲み干していた。

北アルプス(槍穂)

朝の陽射しを受けて横岳へ

横岳

富士山も見えた

硫黄岳より縦走路を振り返る

硫黄岳火口壁

のんびり贅沢な時間つぶし

空には秋の気配が

天狗岳・北八ヶ岳方面を望む

 赤岳鉱泉からは北沢沿いの道で、南沢同様、美しい渓を眺めながら快適な下りである。水辺でゆっくりと時間つぶししてもよいところだが、いっちゃんがどんどんと加速して見えなくなってしまうため仕方なくついて行く。12時50分に美濃戸山荘に到着。 クルマを預かってもらっていたお礼を言って、山の格好から街の格好に着替え、山を後にする。途中、原村で土産を買い、一路諏訪へ向かう。今回のルートは、登高距離も移動距離も多くない割に変化に富み、とても楽しいものであった。
 午後2時過ぎに、今夜の宿である湖山荘に到着。湖山荘はいわゆる公共の宿である。チェック・インしてから近くのラーメン店に行き、ラーメンと餃子の遅い昼食を摂る。あととくに何もすることが無いので、湖岸を散歩し、諏訪間欠泉センターで4時半の間欠泉噴出を待つ。 時間通りに噴出が始まるのは不思議だと話していたところ、係員?のおじいさんが客に「バルブを時間になったら開いて、また切り替えて…」と説明しているのを聞いた。4時半のが最終で、それが終わったら噴出する熱湯は温泉用に回して、翌朝まで間欠泉の吹き上げショーはお休みなのだ。  なんかディズニーランドのアトラクションみたいな気がしてきたが、いざ始まってみるとなかなか豪快なものであった。
 夕食は4千円のコースを頼んだのだが、写真の内容にあとナスの味噌焼きと馬刺、茶碗蒸しなどが付くものの「えっ!これで4千円?」と思わずうなってしまう内容であった。もずくや枝豆、そしてチリソースをかけただけの一尾の海老にはがっかりした。昨年のヒルサイド富士見の料理が良かっただけに損した気分になった。 素泊まりにして、近くにいろいろあるお店で食べたほうがよかったような…。
 夜、部屋の窓から諏訪湖の花火を眺める。PLや淀川の花火とは比ぶべくもないが、まずまず楽しめるものであった。

赤岳鉱泉

諏訪湖にて

うむむ…の夕食


8/29(月)

 夕食と同じくしょぼい朝食を摂って出発。恵那峡SAで昼食の後、JR石山駅で15時に解散した。3週間の事前トレーニングの成果で、昨年の汚名を挽回でき、個人的には大満足な山行であった。


(カンボ)