平成14年夏合宿 白山



 そもそも萬代山岳会発足のきっかけとなった白山山行のプラン。なんやかんやで後回しになっていた。今年こそと、梅雨明け直後の晴天を期待して、7月初めの山行を計画するが、梅雨明けどころか、台風接近の情報が入る。Oさんが日々刻々と変わる天気図をにらみながら、台風が東にそれたことを確認し、当初の予定通り、平成14年7月11日(木)〜13日(土)にかけて行われた。
 メンバーは、いつものOさんとIさんにHの3人。去年の夏以来、皆ほぼ1年ぶりの山行となる(Iさんは秋に日帰り登山ありかも)。
 1日目は移動日として白山山麓の白峰温泉に泊まり、2日目に白山に登って白山室堂に宿泊し、3日目に下山して大阪まで帰るという日程での山行である。

7/11(木)
 朝8時30分にJR石山駅に集合。天気は晴れ。Iさんの運転で1日目の宿泊先、白峰温泉に向かう。名神高速道路から北陸自動車道に入り、途中、賤ヶ岳のサービスエリアで休憩を取って、福井北インターチェンジで降り、福井市街に入る。 まずここで、地元のスーパーマーケットを探し、山行のための食料を購入する。ちょうど昼食時で空腹だったこともあり、少し買い込み過ぎたよう。 永平寺そばでお腹を膨らませたあと、永平寺に参拝する。道元によって開かれた曹洞宗の大本山である永平寺では、七堂伽藍を順番にまわり、厳粛な雰囲気に触れる。Oさんは「心が洗われた」と言う。 次に福井県立恐竜博物館に向かう。復元された恐竜や化石など、見ごたえたっぷりの展示を満喫する。若い女性係員から展示の説明を受けるIさんはうれしそうに質問し、宝石の原石のコーナーで自分の誕生石を見つけてHはため息をつく。Oさんは葉っぱや貝の化石を目に焼き付ける。
 夕方5時に白峰温泉の「ホテル八鵬」に到着。台風の影響でキャンセルが相次いだようで、宿泊客は私たちだけという様子。夕食は和風山菜炭火焼きということで、囲炉裏端で山女や岩魚、白峰名物の堅豆腐やトチもちや野菜などを女将つきっきりで焼いてもらって食べる。満腹になった後、貸切状態の温泉につかり、翌日の山行に備える。

7/12(金)

I氏の愛車「人民解放軍号」(別当出合)
 7時30分に朝食を取り、8時過ぎにホテルを出発。この日も晴天。台風による雨で増水していた川も、前日に比べ少し落ち着いている。
 別当出合の駐車場まで車で入る。ここから7〜8分ほど登った別当出合の登山口から、8時45分にいざ出発。登る順番はいつもと同じで、先頭のIさんと最後尾のOさん、その間にはさまれてHとなっている。いつものように登り始めはきつく、あまりの天気のよさに、少しぐらい曇ってくれればと、贅沢なことを願いながら足を進める。途中30数名のグループを追い越し、自分たちののペースになってほっとする。
 9時30分に中飯場に到着し、ここで小休憩を取る。10分ほどで出発するが、相変わらずの晴天に、皆、黙々と頂上を目指す。10時15分、見晴らしのよい別当覗に到着。写真を撮ってすぐに出発。立ち止まるたびに、Iさんのザックの後ろに入れてあるお茶をHが飲み、一息つく。 甚之助避難小屋の少し手前の休憩所で小休憩。ここでIさんはフルーツゼリーを食べる。5分ほど登って甚之助避難小屋に到着し、ここでもトイレや水分補給(もちろんIさんは煙草も)など、20分ほど休憩を取る。Oさんはここまで水分摂取を我慢しており、ここで一気に山の水で喉を潤す。
 11時45分、南竜分岐に到着。この辺が森林限界。ここからエコーラインへ向かうため、南竜道に入る。15分ほど歩いてちょうど12時に南竜・エコーライン分岐に着いたため、ここで前日購入したソーセージやカップ麺で昼食にする。ここからは山の南斜面が眼下に広がり、すぐ東には南竜山荘の赤い屋根も見える。

甚之助小屋にて

南竜山荘を望む(エコーライン分岐付近)

エコーライン分岐で昼食

 40分ほど昼食休憩を取ってお腹を膨らませた3人は、ここからエコーラインに入る。途中、うぐいすやひばりの鳴き声を聞きながら、高山植物が咲く山腹を弥蛇ヶ原へと登っていく。13時20分、弥蛇ヶ原少し手前で、小休憩。OさんとHはここでフルーツゼリーを食べ、皆、高山植物の広がるお花畑を眺めながら一息つく。 弥蛇ヶ原の木道を進み、ハイマツ帯の五葉坂を登ると、今夜の宿泊先、白山室堂ビジターセンターにちょうど14時に到着。Hがチェックインしている間に、あとの2人は冷たいビールやウーロン茶を飲んで一服している。 今シーズン、改修工事を終え再開されたビジターセンターは、トイレと食堂、水場が離れているという難点はあるものの、宿泊棟の建物や布団も新しく、部屋に通された私たちは2階の5人分のスペースに3人ということで、去年のことを思えばとても幸運な状況である。

ところどころ雪渓も(エコーライン)

弥陀ヶ原

室堂ビジターセンター

 部屋でくつろいだあと、2時35分、標高2702.2mの御前峰に向かって室堂を出発。ハイマツ帯の斜面を抜け、15時15分、白山奥宮で手を合わせたあと、頂上に到着。残念ながらガスがかかっていたため、北アルプスや日本海を一望というわけにはいかないが、周辺の景色を眺めながら一休みする。この間、Oさんはハイマツ帯で、Iさんは頂上で、雉撃ちをする。 15時30分、お池巡りコースへと進む。御前峰から急坂を下り、途中、道を探しながら、紺屋池、油ヶ池、翠ヶ池、血ノ池とめぐり、17時の夕食に間に合うよう、室堂への最短コースを戻る。

白山頂上にて

大汝峰、池めぐりコースを望む

千蛇ヶ池

 このように夕食までは順調に行程をこなしたが、ここにきてアクシデント発生。夕食を乗せたお盆を持ったHは、自分の靴紐に足を取られ前につんのめって転ぶ。食事は見事に床にまき散らされるが、小屋の人たちの素早い対応で、ゴミとなった食事は片付けられ、新しい食事も用意される。膝の痛みどころではなく、呆然とするHは、小屋の人たちの配慮に感謝。恥ずかしさをよそに、山で転ばなくてよかったと自らを慰める。 食後は何事もなかったかのように、外で夕涼み。夕日を見るためしばらく外で山の景色を楽しむが、日が傾くにつれ吹いてくる風に寒さを感じるようになり、小屋に戻る。部屋ではIさんがうれしそうにウイスキーを水割りで楽しむ。消灯は20時だが、すでにいびきをかいて寝ている人がいた。 消灯後、ウイスキーでいい気持ちになったIさんは軽くいびきをかきながら、気持ちよさそうに眠る。Oさんも早くから横になっていたが、毛布のカビ臭さと汗臭さが気になって寝付けなかった様子。出入口近くにいたHは、ドアの開け閉めの音に、途中何度も目が覚める。夜中、トイレに起きて夜空を見上げると、無数の星が瞬いていた。

7/13(土)

 ご来光を拝むため、朝の4時頃から他の登山客は身支度を始め、次々と頂上へ向かっていく。私たち3人はその気配にもめげず寝ていたが、早寝をしていたIさんが5時前に起き出し、それにつられてあとの2人も目を覚ます。支度をして6時30分に朝食を取るが、外はガスがかかっており、天気は曇りのち雨の予報となっている。
 雨具を身に付け、7時15分にビジターセンターを出発。今日は展望歩道を下る予定で、東側の道を進む。歩き始めてすぐにガスが取れて太陽が顔をのぞかせたため、雨具を帽子に変え、再び出発。前方を歩く人に展望歩道への道を聞かれ、「この道が展望歩道」と、地図も見ずに答えるIさん。間違っているのではないかとの疑念を持ちつつ、歩くこと20分。初めて出合う道標を見ると「トンビ岩」とある。ここに来て初めて、トンビ岩コースを下っていたことを知る。「小屋の掲示板に、このコースは通行止めと書いてあった」とOさん。地図で現在地を確認すると、かなり下っていることがわかり、皆、引き返すことをあきらめ、そのままトンビ岩コースを下ることになる。地図に「急坂」とか「7月中旬まで残雪が多く危険」と書いてあるとおり、何度も雪渓を横切り、急な坂が続く。この間、登ってくる一組の登山者に出会うが、それ以外人影はない。

この後、天気は下り坂に…

トンビ岩コースを南竜ヶ馬場に下る

 8時10分、ようやく南竜山荘にたどり着き、ここで20分の休憩。雨がポツリポツリと降り出したため、再び雨具で身を固めての出発となる。登ってくるときに昼食を取った南竜・エコーライン分岐で、再び雨具をザックに入れる。南竜分岐を過ぎてからは、下山者と登山者で混み合う、数珠繋ぎの状態であった。
 甚之助避難小屋を過ぎたあたりから雨粒が大きさを増し、もう少し天気がもってくれたらという願いもむなしく、本格的な降りになってくる。前を歩いていた一団が雨具装着のため立ち止まるのを追い越してから、私たち3人も雨具を身に付ける。そこからは、今までとは打って変わってはやいスピードで下り始め、別当出合を目指す。雨で道が滑りやすいにもかかわらず、Iさんはどんどん下っていく。すでにトンビ岩コースの下りで足にきているHは、ガクガクする膝を励ましながらIさんの後ろ姿を見失わないよう、懸命に後を追う。Oさんは時々Hに声をかけながら、しんがりを務める。
 9時55分、中飯場に到着。南竜山荘からここまで休憩なし。ここでようやくザックを下ろし、小休憩を取る。この雨にもかかわらず、下からは登山者が登ってきており、中には小学生の子どももいる。雨足が強まる中、別当出合に10時30分に到着。ここで5分休憩したあと、川のように水が流れる道を下り、駐車場にたどり着く。Iさんの車に乗り込んで、やっと人心地つく。
 ここから、白峰の日帰り温泉「天望の湯」に向かい、この2日間の山行の汗を洗い流し、雨に濡れた身体を暖めて、疲れをほぐす。12時過ぎに、他の下山者で混み合う温泉を後にし、それぞれお土産を購入して大阪へと車を進めることになる。途中、温泉でほぐされた身体で眠気に襲われながらも、Iさんは最後まで運転手を務める。
 13時30分頃、賤ヶ岳サービスエリアで遅い昼食を取り、16時過ぎに石山駅に帰り着く。ここで、今回の山行の無事を喜び、解散となる。

 思わぬ台風の接近で危ぶまれた山行であったが、当初の予定通りに決行され、何事もなく無事に終了。自分は「晴れ男」と信じて疑わないIさん、お互いに「雨男」「雨女」は自分ではないと言い張るOさんとH。帰りに雨に降られたものの、無事にやり遂げたことに皆、満足感を覚える。今回の山行でわかったのは、このメンバーでは、この程度の山行がちょうどいいということ。日ごろの運動不足と仕事の疲れ、もちろん、年齢も合わせて考えると、あまり無理はできないということなのだろう。
 山行を終えて、Oさんは真っ赤な日焼け、Iさんはさらに増した黒さ、Hは太股とふくらはぎの筋肉痛に膝の打ち身と、それぞれに思い出を残しながら、日常生活に戻っている。また、次の山行が皆元気に実現できる日を楽しみに、今回の山行の記録を終える。

(H)

コースタイム
7/12(金)
 別当出合駐車場 8:35 − 別当出合 8:45 − 9:30 中飯場 9:40 − 10:15 別当覗 11:00 − 11:05 甚之助避難小屋 11:25 − 11:45 南竜分岐 11:50 − 12:00 エコーライン分岐(昼食) 12:40 − 14:00 室堂
[池巡り] 室堂 14:35 − 15:15 御前峰 15:30 − 16:40 室堂

7/13(土)
 室堂 7:15 − 8:10 南竜山荘 8:30 − 9:55 中飯場 10:05 − 10:30 別当出合 10:35 − 10:40 別当出合駐車場