本文へジャンプ          阿部泰隆の経歴

一般廃棄物処理業の新規許可に対する既存業者の勝利

①先に紹介したように、最高裁が、新規業者に与えられた一般廃棄物処理業許可について原告適格を認めました。この判例が役だった事件を担当しましたので、紹介します。

鹿児島県の徳之島の伊仙町では既存業者一社だけで、一般廃棄物(し尿・浄化槽汚泥)処理を行っていたところ、町長が第三者に新規許可を与えたので、小職が既存業者から依頼を受けて、新規許可の取消訴訟を提起しました。原告適格についてはもはや争点にはならず、最初から本案審理をするところです。そして、この町では、法令上必要な一般廃棄物処理計画もない上、業務の増加はなく、新規許可すれば、競争により料金が低下するというよりは、既存業者が破綻して、住民に不可欠なサービスが滞る可能性が高いので、この許可は違法であると主張しました。被告の町は、ほとんどまともな反論もしませんでした。

鹿児島地裁は平成27年2月16日、被告町には新規許可時において一般廃棄物処理計画がなかったことを指摘して、取り消し、同時に、本案判決確定まで許可の効力を停止する決定をしました。取消判決自体は、控訴されれば、効力は生じませんが、執行停止は、第三者に対しても(行訴法32条)、直ちに効力を生じ(民訴法119条)、即時抗告しても効力が失われるものではない(行訴法25条8項)ので、原告事業者は、これ以上の営業不利益を被ることがないこととなりました。

被告の町は、これに対して、即時抗告も控訴もしませんでした。原告事業者の完勝です。

 

②ところが、被告の伊仙町はしょうこりもなく、またまた新規許可を与えました。そこで、小職は代理を依頼されました。今度は、伊仙町は、多数の無管理浄化槽があるので、既存業者では対応できない、新規許可は、既存契約分を省くとしているので、既存業者には影響はないとして、最高裁判決に反しないようなふりをしました。しかし、実際には無管理浄化槽はほとんどなく、新規業者が既存業者の契約を奪っていました。新規業者のチラシでも、既存契約を奪わないような文言はありませんでした。要するに誤魔化しです。

 小職は、これを立証したので、鹿児島地裁平成29年2月28日判決は、原告の全面勝訴・新規許可取消しで、同日許可の執行停止決定もでました。しかし、被告は控訴・即時抗告したので、なお高裁での争いが続きます。

 





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