「トヨタ生産方式」を考える

 

1.トヨタ生産方式の本質−1

■ トヨタ生産方式の「人創り」

  「モノづくりは人が担う」との観点から、プロセスの実行を通じ「自律的な人」・「改善力ある人」を創る。

■ トヨタ生産方式の「改善」

  何事もゼロから見直す努力をすれば、改善の余地はいくらでもあり、 それが進歩につながる。

■ トヨタ生産方式の「知恵」

  人間の「知恵」を信じるだけでなく、いかにして知恵を発揮する機会を現場で働く人に与えるかが重要

■ トヨタ生産方式の「モノの見方・考え方」

  儲けるという意思の入ったモノの見方・考え方である。

 

 

1.トヨタ生産方式の本質−2

   ■ トヨタ生産方式発展の「二つの手法(二つの柱)」

    ジャスト・イン・タイム(just-in-time)自働化(automation with a human touch)という

      二つの手法を基本にして発展した。

     しかし、トヨタ生産方式の本質は手法ではなく、基本の思想に基ずいたモノの見や考え方である。

   ■ トヨタ生産方式の「目指すもの」

    消費者を志向しながら、同時に利益を生み出すモノづくりを目指す。

   ■ トヨタ生産方式の「基本思想」

    「徹底したムダの排除(the absolute elimination of waste)」

      = トヨタ生産方式は技法ではなく、基本の思想に基ずいた「モノの見方や考え方」であり、

                        「出来る人を創る」という考えであると言える= 

 

2.トヨタ生産方式の神髄

  「社員1人ひとりが

   ■ 自分の仕事のやり方について、

   ■  問題点を見つけて解決し、

   ■  改善をしていくチャンスを与えられ、

   ■ 社員が一体となって、

   より優れた企業をつくるために働いている」という点にある

 

 

.「トヨタ生産方式の強み」についての理解のレベル

  ■ 初級者は、在庫が少ないことだと考える。

   ■ 中級者は、問題を顕在化させ、生産性向上品質向上を強制するメカニズムが含まれていることだという。

  ■ 上級者は、問題を顕在化して解決する作業を繰り返すうちに、

    問題がない状況が不安になって、みんなで一所懸命問題を探し始めることだという。

 

   =「何万もの社員が、いわば問題解決中毒になっているような状態。それがトヨタの凄みだ」=

 

 

4.ムダの排除と5S

  ■ トヨタ生産方式の基本思想は、「徹底したムダの排除(the absoluteelimination of waste)」である。

   それもただのムダの排除でなく、注文に応じて生産し、切れ目のない流れによる多品種少量生産の中

      徹底したムダの排除をおこなうのである。

  ■ トヨタは何がムダなのかを明確にした。つまり真の仕事以外の作業はすべてムダと定義した。

    段取りは仕事と考えるのが世間の常識だが、トヨタはこれをムダと定義した。

  ■ 「真の仕事」とは、「直接、利益を生み出す付加価値付与の仕事」と定義

   例)運搬は生産のためには必要ですが、職場内を運搬したことによって付加価値がつくか?  

 

   =ムダとは「付加価値を高めない、いろいろな現象や結果」=

   =ムダは見えなければ・認識されなければ、排除できない。

                            そのために5Sが重視される=

 

 

5.トヨタ生産方式でいう「7つのムダ」

1.  つくりすぎのムダ   (Waste of overproduction)

    手持ちのムダ     (Wasteoftime on hand (waiting))

3.  運搬のムダ      (Waste in transportation)

    加工そのもののムダ  (Waste of processing itself)

5.  在庫のムダ      (Waste of stock on hand (inventory))

6.  動作のムダ      (Waste of movement)

7.  不良をつくるムダ   (Waste of making defective products)

8.

       =徹底したムダの排除をおこなうために、「見える管理」を重視=

 

 

6.ジャスト・イン・タイム誕生の背景

  ■ トヨタ自動車は、第二次世界大戦後に在庫(ムダな在庫)を抱え過ぎ倒産しかかった経験があった。

      この経験によって、最後の後工程を消費者と考え、売れた分だけ生産するというシステムを作り上げた。

  ■ トヨタ自動車はジャスト・イン・タイム方式を、カンバン方式で具体化 しているが

     ジャスト・イン・タイム=カンバン方式 ではない。

      トヨタ生産方式は、消費者を志向しながら、同時に利益を生みすモノづくりを目指す。

    ムダな在庫を持たない、ムダな経費をかけない、ムダな設備を持たないのである。

    キャッシュフロー経営サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)に似た考え方を既に持っていたことになる。

 

 

7.トヨタ生産方式の特徴

  ■ 消費者を志向しながら、同時に利益を生み出すモノづくりを目指す。

   ■ 切れ目なくモノが流れるのを妨害している要因すべてムダである。このムダを

   取って、可能な限り速いペースで滞りなく流す。

  ■ 大量生産とスピードアップによる生産性向上よりも、1個流しや段取り時間の

   短縮によって切れ目なくモノが流れるシステムによる生産性の向上を図る

  ■ ムダの排除というプロセス重視の考え

  ■ プロセスの実行を通じて改善力ある人づくりを行う

  ■ トヨタ生産方式の本質は手法ではなく、基本の思想に基づいたモノの見方や考え方である。

 

 

8.『かんばん』とは

   ■ 「かんばん」は、後工程引取り方式の利点を持ってジャスト・イン・タイムを実現するための

       管理の道具である。

   ■ かんばんの一番の役割は生産・運搬の指示である。かんばんにとって重要な点は、情報の流れとモノの流れ

      を一致させることである。それも部品補充の情報が、コストをかけずにモノに付随して流れることである。

   ■ 「かんばん」の円滑な運営

   ● 生産の平準化が前提条件となる。

  ● 生産の平準化とは、最終組立ラインが部品を前工程から引き取る際に、各部品の量と種類を平均化して消費するように、

       いろいろな車種を混流生産すること。

    ● ジャスト・イン・タイムを達成し、余分な在庫は完全に排除されること。

 

 

9.後工程引取り方式の利点

  ■ 自動車の組立ラインでは、各工程の組付け作業に必要な部品が、必要な必要な量だけ、

     その工程に到着しなければならないということであり、部品到着が早すぎても、遅すぎてもいけないのである。

  ■ トヨタ生産方式では、後工程が前工程から必要なものを引き取るという後工程引取り方式で実現した。

 

 

10.カンバン方式

   ■ 作り過ぎを防止しながらジャスト・イン・タイムを実現する道具

  「つくりすぎのムダ」は「つくりすぎを押さえる働き」がないことから

  「目で見る管理」や「カンバン」方式に発展していった。

  カンバン方式という技法よりも、「必要数だけしか造ってはいけないというジャスト・イン・タイムこそが重要である。

   ■ カンバン方式を実施するための前提条件

    ● 生産がある程度の量長期的に保証されること。

    ● 生産を平準化すること。

    ● 工程の安定化、合理化すること。

    ● カンバンは微調整の手段に使用すること。

 

 

11.少人化

  ■ 少人化とは、同じ生産をおこなうために必要な作業者の人数を減らすことをいう。 

    計算上0.1人とか0.5人減ったというのは少力化であって小人化ではない。

    工数で考えると間違う。人間の数で考える。

  ■ 少人化を達成するために、設備面では機械の工程別配置U字型の機械レイアウト(セル生産方式

    採用している。

  ■ トヨタ生産方式の本質は「流れをつくる」が基本であり、「多数台持ち」よりも「多工程持ち」の実現に

    努めている。

 

 

12.自働化(ニンベンの付いた「自働化」)

  ■ 「自動化」ではない。ニンベンの付いた「自働化」である。

  ■ 「自働化」は知恵を使って生産するという、日本のものづくりの強さそのものを表している。

     例) 自動織機は、経糸が1本でも切れたり、横糸がなくなったり

     した場合、すぐに機械が止まる仕組みになっている。すなわち、

     「機械に善し悪しの判断をさせる装置」がビルド・インしてある

  ■ 「ニンベンのある自動機械(automation with a human touch)」の意味は、

    「人間の知恵を付加した機械」ということである

   「定位置停止方式」、「フルワーク・システム」、「バカヨケ」、その他「各種安全装置」が知恵として

    付加されている。

 

13.自働化という考え方

  ■ ある手作業ラインで異常が発生した場合、作業者はストップボタンを押してラインを停止させることができる。

    ラインが停止すると『アンドン』と呼ばれる表示板が点灯する。

    この表示板を見て管理者や監督者は異常を確認し原因の対策を

    おこなう。ここで重要なことは、二度と同じ異常が発生しないように真の原因をつかみ、

    徹底的な対策が施されることである

 

   ■ 「自働化」は単に「自動停止装置付き機械」ではなく、源流管理の考え方である。

    糸が切れる時はムダが始まる時、作業者のムダが始まる時ストップボタンを押す。

    源流管理こそがコスト削減のキーポイントである。それゆえに「目で見る管理」が重視される

 

14.「問題の顕在化」なぜなぜ分析

  ■ トヨタ生産方式は目で見て問題がはっきりしない場合に、

  「5回のなぜ」を繰り返して、原因の向こうに隠れている「真因」を突き止める。

  ■ 「問題を顕在化」させたうえで、「5回のなぜ」を繰り返して、真因」を突き止め、

   現場の人間の知恵によって「改善」を施す。


  問題が起きた時こそ、改善のチャンスと捉え改善を行える人を育てながら前向きな取り組みを行っている。

 

 

15.まとめ

  ■ ムダの定義

   切れ目なくモノが流れるのを妨害している要因すべてを「ムダ」とし、

  ■ ムダの排除(トヨタ生産方式の基本思想)

  徹底したムダの排除(the absolute elimination of waste)をし、

  ■ 人創り

  このプロセスの実行により、「自律的な人」・「改善力ある人」を創るため、

  ■ 二つの手法

  「ジャスト・イン・タイム」「自働化」という二つの手法を基本にして、

  ■ 「儲ける」という意思の入った「モノの見方・考え方」のもと、

  ■  消費者を志向しながら、同時に利益を生み出すモノづくりを目指す

 

 

参考: 「生産管理講座」   「トヨタ生産方式」