● 耐え難い恥辱のとき


愛する妻の体を他人棒が貫く・・・背徳の行為と知りつつも、体を噴き上げる悦びに、よがりの声を洩らす妻・・・あなたは、そんな妻の姿を密かに思い描くことはありませんか。

決して他人には、そして妻にも打ち明けられない禁断の妄想に思い悩む私、

「妻を貫いた他人棒」のそれからをお届けします。



【悶悩のとき】

何回目かの密かな体験が終わった後も、妻は毎日の生活の中で、主婦として甲斐々しく、家事を切り盛りしてくれます。

レシピ片手に新しい手料理を工夫したり、積まれた洗濯物にアイロンをかけたり・・・まるで、単調で平凡な時の流れの中にこそ、小さな幸せが宿っていると信じているように・・・

そんな妻の姿を眼にすると、彼女が私にとって良き主婦であり、貞淑な妻であることを改めて実感し、連れ添っていることに深い満足と喜びを覚えます。

これから先もずっと、人生を共にする伴侶であってほしい・・その気持ちに変わりはありません。

でも、妻が家庭生活において良妻ぶりを発揮すればする程、その姿が返って、私の心の中にあらぬ妄想を生じさせるのです。

妻に、他の男とセックスしてもらい、性の悦びに震える様を傍でみていたいという、妄想が湧き上がってくるのです。



そして、この黒い欲望は、いつも定期的に襲ってくるものではないのです。

ある時、突然、湧いてくるものですから、その分始末が悪く扱いかねるのです。

もちろん私も、理性と良識で・・

不定期に襲ってくるこの願望に心が支配されそうになる時、自分の姿を客観的に見つめ直して、憑かれたものを取り払おうと懸命に努力をする時があります。

(私のこの歪んだ性癖に、いつ終止符を打つのか? 何を、どう変えれば、この妄想が鎮まるのか?)



もしかして、妻が恥じらいを忘れ、誰とでも寝たがる淫蕩な女に姿を変えてしまったとするならば、私の妄想は確実に消えてしまうでしょう。

また逆に、妻が私の姿の中に、彼女に対する思いやりや愛情、信頼が薄くなっていくのを感じたら、彼女はこのことを拒むか、あるいは私の元を去っていくでしょう。

現在に至るまで、妻を他の男に抱いてもらう体験は数回に及んでいますが、同じような体験を、後何回重ねたらこの醜悪な性癖が消え去るのか、

また仮に、時が過ぎてこのような妄想が影を潜めたとして、妻はそれまでと同じように、私のために献身的に尽くしてくれるのだろうか、

慎ましさと恥じらいを内に包んだ姿のままで、いてくれるのだろうか・・・?



そして困ったことに、私は、この願いが虫のいい独りよがりなものであることも、自分でわかっているのです。妻が羞恥を忘れ、悦びに喘ぐ姿を求めて、このようなことを繰り返しているのですから、何回も練習を重ねれば、慎ましさや恥じらいが消えていくのは当然のことなのです。



どっちみち、このまま進んでいけば、何か怖いことが起きそうという不安が、絶えずついてまわるのです。



そして、禁断の体験を重ねるにつれ、破廉恥極まりないこの行為を、私から求められたときの妻の態度も、心持ち変わってきているように思うのです。

もちろん、初めからすんなり受け入れられることは先ず無いのですが、次第にその拒絶の仕方が緩やかなものになってきて・・その拒絶の様相もその時々によって、複雑になってきているように思えるのです。



これまでの経験からすると、そのことが私の意図的なものであっても、またはたまたま偶発的に起きたことであっても、旅行や遠出をする時は、妻が比較的容易にそのことを受け入れてくれるように思います。

妻の許しを、その都度乞わなければならない夫の側からすれば、「一度、通った道なのに・・」と・・極めて身勝手な考え方ですが、女心を不思議に思うことがあります。



ひょっとして、甲斐々しく働く妻には申し訳ないことですが・・

夫の欲望を何の抵抗も無く受け入れてしまえば、自分に対する夫の愛情が徐々に薄れていくことを意識した打算が働き、その拒絶の程度を意図的に加減しているのではないか?

という疑念さえ抱いてしまいます。



しかし、そんな妻ではないことは、他ならぬ私がよく知っています。

このような体験を積んで段々と分かってきたことは、妻が自らの心に言い聞かせ、得心できる何か、そして妻の自己犠牲に捧げる夫の慈しみがないと、身勝手な欲望は妻に受け入れてもらえないということです。



もしかして、「寝取らせ」とは、・・・

妻が手にする“振り子の錘”が、夫への貞淑・妻としての節操の方へ揺れるのか、それとも他人棒による官能の世界の方へ揺れるのか、それを見て楽しむ危険なゲームなのかもしれません。

夫の方へ揺らげば、安らぎや癒し、信頼といった深い愛情を覚えますし、他人の方へ揺らげば、疑念や猜疑、蔑視、嫉妬といった暗い劣情を覚えます。



このように、自分なりに結論を導き出し、分別をつけたつもりでも、その心のバリケードを乗り越えて、暗い欲情が鎌首をもたげてくるので尚更困ります。



【告白のとき】

私のものとは違う、素性も判らぬ男のもので悦びを与えられ、よがりの声を洩らす妻・・

心の中がそんな妄想に支配されると、絶えず頭のどこかにそのことが付き纏い、何をしても身が入りません。

正直に妻に打ち明けようか、我慢して掻き消そうか、ぐじぐじとした思いが身勝手な苛立ちへと変わり、そして、日々の生活における刺々しさへと形を変えていきました。



「あなた、この頃、どことなくおかしいよ・・」



悶悩の淵から私を救い上げてくれる窓口は、私の告白を待たず、妻の口から差し出されました。

日々の会話の途中で、時々何かを思い詰めるかのように無口になったり、妻にとっては些細に思えることに角を立てたりする私を、妻は訝しく思いその訳を尋ねてきたのです。

胸の奥深くに秘めた、吐き口の無い黒い欲望に苛まれていた私には、この時が訪れてきたことが潮時のように思えました。



(本当のことを言ってしまおう。そうすれば、妻が拒むか受け入れるかは別にして、この悶々とした思いから解放されんだ・・)



(「見当違いだ!」って言ってしまえ。それは、おまえが努力して揉み消さなければならない歪んだ性癖なんだ。あんなに尽くしてくれている妻を巻き込むことはないんだ・・)



私の心の中で、正邪の思いが葛藤しますが、どう考えても黒い欲望の方に正当性があるとは思えません。

妻を寝取ってもらうことによって私が得るものは、醜く歪んだ嫉妬の炎を燃やし、苦悶の悦びに悶える妻を視姦するだけの、自分本位の愉しみでしかないからです。



「ここ数日、何を尋ねてもどことなく上の空だし・・・曖昧な返事しか返ってこないから、変だと思ってたんだ・・・」



その言葉に続いて、突然、私の耳に切り込むように入ってきた次の言葉は、私の心に大きな衝撃と動揺を与えました。



「わかった・・また、私に、あなたの見ている前で、誰か他の男の人とセックスして欲しいんでしょ・・?」



うろたえた私は、密かな願望の全容を悟られないように努めて平静を装い、今まで考えてきた妻への告白の言葉のうち、夫として最も誠実味がある言葉、最も自分の思いを的確に表せる言葉を探しました。

でも、そんな便利で都合がいい言葉は、とっさには見つかるはずがありません。



「この前から、そんなに経っていないんだ。なのにさあ・・」



妻の口から出て当然の言葉が、私の口から出てきました。

それなのにまた・・堪え切れない疼きが湧いてきたことを正直に告げ、私の願いを妻が拒んでもそれを受け入れること、返答が今すぐでなくてもいいことを伝えました。



妻は、しばらくの間、眼を伏せて考え込むようにしていましたが、そのうち私の方にきちっと向き直り、しっかり私の眼を見つめながら言い出したのです。



「こういうことは、時間をかけて話し合えば結論が出るということではないと思うの。」

「わたし、あなたと一緒に過ごせることをとても幸せに思っているわ。

あなたが私に隠し事をしたり、私の眼を避けるように振舞ったりするのは嫌なの。

何だか、あなたがわたしから遠ざかっていくようで・・」



「わたしがあなたに求めた約束の裏には、わたしもあなたが望んでいることに精一杯応えようという、わたし自身に言い聞かせる決意があったわ。

それでないと、あんなこと始めない・・」



妻が言った終わりの方の言葉は、夫から差し出された禁忌の行為について、妻自身もためらい、悩み苦しんだことを表しています。

その重い決断や覚悟のことを深く考えないで、自分の独善的で気まぐれな欲望のままに、妻に更なる陵辱を強いるなんて・・・



「ごめんよ、これまで随分とおまえを苦しめて・・」

「情けないことに、オレのこの欲望は、いつ鎮まるか自分でもわからないんだ。」



「そんなに自分を責めなくてもいいわ。わたしだって、もう、あなたと同犯だもの・・・

あなたの願いを受け入れて、始めてしまったのはわたしなんだから・・

あなたの前で恥ずかしいこともいっぱいしたわ。あなたが私の姿を見て喜んでくれることだけが救いだったの・・」



これまで何回か閨でのことが終わってから、それとなく妻に尋ねてみようと思ったことの答えが、妻の口から自然に出てきたことにホッとします。

夫を傍にして他人と交わった妻の心もちを、いくら秘め事が終わった後とは言え、あからさまな言葉で尋ねることは、夫として余りに恥ずかしいことに思えこれまで控えてきたのです。



「あなた、覚えてる? 初めのうちは、私の傍で手を握っていてくれたわね。

じっと握り返してくれる時が一番嬉しかった・・あなたが興奮しているんだと思うと、わたしもいっぱい感じてしまったわ。」



「そうさせたのは、オレなんだ。でも、そのことが終わってみると、虚しさが襲ってきて、おまえに済まない気持ちでいっぱいになるんだ。

何だか、言ってしまったら心が軽くなったよ。拒んでもいいんだ。・・」



「う〜ん、せっかちね。終わりまで話を聞いて。」



「他の人とのセックスで満たされる喜びは、そのときは舞い上がっていてわかんないんだけど、徐々に小さく萎んできて、ちっぽけなものになっていくの。

だって、これまで二人で歩んできて・・そしてこれからも一緒に過ごす時の長さで計れば、そう思うようになるのは当然だと思うわ。

わたし、時々想像するの。あなたが衰えてきた時、わたしが手を取ってお風呂に入れてあげるんだって・・わたしがそうなった時、あなたも、そうしてくれる・・?」



(よかった・・おしゃべりになってきて・・

妻は、心を裸にして、思いの丈を私に伝えているのだ。そして、耐え難いことでも最終的に受け入れようと、懸命に自分の心を理論づけ、順序立て、変わらぬ愛を私に求めているんだ。何て、可愛いんだ・・)



妻の話が熱っぽくなっていくに従い、段々と私の心の靄も払拭されていくような気がしました。そして、わだかまりなく、前々から一度聞きたいと思っていたことを尋ねました。



「そのことで聞きたいんだけど、いつもオレに済まないと思いながら他の人に抱かれていたの ?」



「申し訳ない気持ちは、その度にあるわ。でも、徐々にそれが薄れて消えていくのも本当よ。

あなたがそんなわたしを愛してくれているって思うから・・うまく言えないけど、あなたを信じているからこそ、相手の人と喜び合えるの。」



私の問いに対して、妻が、間髪を入れずすぐに答えてくれたことは、妻の揺ぎ無い・・ほとんど信念にも近い胸の内を表しています。

私が理性と妄想の葛藤でもがいていた時、妻も同様に夫に対する情愛と背徳の狭間で苦しんでいたことがわかり、たまらなく妻が愛おしく思えました。



「こんなこと、二人でじっくり話すなんて機会、これまで無かったから・・・、わたしも一つ、あなたに聞きたいことがあるの。

男の人の性欲ってよくわかんないんだけど、もし、あなたの望みがそれで満足できるんだったら・・わたし、あなたの前で自分を慰めてもいいよ、それじゃだめ?」



「・・・ごめんよ、おまえに、そんなこと言わせて。でも、多分・・それじゃ終わらずに、またその先を求めてしまうと思うんだ。」



「そっかぁ〜、やっぱり駄目なんだ・・ でもね、あなたが何かを探るように、こそこそする姿を見るのは嫌なの。だからこれからは、はっきり言って、

わたしに、セックスしてほしいって・・」



「ありがとう。オレのこと、そこまで思ってくれて・・益々、言い辛くなったんだけど、相手の人は、オレに任せていいの・・?」



「うん、 何だか、どなたかお目当ての人がいるって感じね。わたし、あなたを信じているもの・・あなたの選ぶ人に間違いはないわ。

でも、知らない人、素敵な人にしてね。」



「どうして・・? この前までは、『通りすがりの人は嫌よ。』って、言ってたじゃない・・?」



「だって、だんだんわかってきたの。知っている人とするのは、その方への気遣いなんかが足かせになって・・

あなたが求めているような姿にはなれないと思うの・・」



妻は、このようなことを始める前に二人で交わした約束を、私が今後もずっと守っていくことを条件に、再び夫の前で体を開き、他人に抱かれることを受け入れてくれたのです。



【放浪のとき】

妻の同意を得て、幾分胸の焦燥が治まった私は、新たな難題に取り組まなければなりませんでした。

広くWebサイトを使って相手を募ることは、したくありません。

それでいて、私たちと余り親密でない方、そして印象、容姿、知性など、私が願う条件を有している方を探すのは容易ではありません。

しばらく考え倦んでいた私は、ある日の夕方、携帯の「電話帳」のボタンを押しました。

この前、妻のお相手になっていただいた南さんが、「いつでも相談に・・」と言っていたことを思い出したからです。

一度きちんとお礼を・・と思っていましたが、自宅に伺うのも彼の奥様に顔を出されたら困ってしまいます。

そんな訳で、その後南さんには、電話でお礼の言葉を述べるに止めておいたのです。



車で1時間半・・そんなに度々行く訳にはいかないので、その後しばらく遠ざかっていたママの店に着きました。

いつもの指定席にグラスを手にして、私を待っている南さんの姿がありました。「よ〜うっ!」と、手をあげる南さんの姿に、随分と距離が縮まった感じを覚えます。

南さんは、冗談っぽく・・

「小野さん、この前はご丁寧にお電話有難うございました。このまま、奥様と続けさせてもらえませんか?」と、話を切り出しました。



「そんなこと、しそうに見えない人だからお願いしたのですが・・曇っていたのかな?」



「まあっ、そんなに片意地張らないで・・洒落たお店で、訳ありの友達を見つけたと思っているんですから・・壊したくありませんよ。」



それから私たちは、生々しい体験のことは傍に置いて、その後の妻の様子を皮切りに、日常茶飯事の他愛もないことを話し始めました。

そのうち南さんは、話の途中にふっと陰をさす私の異常を敏感に感じ取ったのでしょうか、

「小野さん、何か聞いてもらいたいことがおありなのでしょ? 私を指名してくださったと思っていますので、お力になりますよ。」

と、救いの手を差し伸べてくれたのです。



私は、例えひと時とは言え、妻の体を通り過ぎた男と話しているんだと思うと、妙な親近感を覚え、

恥ずかしいことに、私の脳裏に再び悪魔の誘いが忍び寄っていること、求める新たな相手が見つからないことを白状しました。



「多分、そんなことだろうと思っていました。私も家内とご禁制の『夫婦交換』を楽しんでいる口なんですが・・時々、その思いが強くなってきて、始末に困ることがあるんですよ。」



「私が、お望みの方を紹介してあげましょうか・・?」



「えっ、・・・・」



「貴方の奥さんを抱いてもらう方ですよ。きっとあなたも、あなたの奥様も、気にいるんではと思うのですが・・ほらっ、こいつです。私たちの夫婦交換のお相手さんです。」



南さんの携帯の画面には、彼と肩を並べてクラブを杖にしている男の写真が写っていました。



「ゴルフコンペの時の写真でしてね。小野さんさえよろしければ、この前のお礼と言っては申し訳ないのですが、こいつとの仲介の労をとってさしあげますよ。」



「んぅ・・・・」



「いやっ、こんなことは余り深く考え込まずに、直感的に判断するべきだと思うんです。・・第一印象がダメならそれまでで、もしお気に入ったんでしたら、後は、お二人で話し合えば済むことです。最初の出会いの場所と時間だけは、私が取り持ってもいいですよ。」



その後、南さんは、趣味のゴルフが縁でのその男との馴れ初め、その男が私たちと同じくマニアックな世界を求めていること、何回か夫婦交換をしたことなどを話してくれました。

私は、南さんの言葉を上の空で聴きながら、彼の携帯の画面の男を食い入るように見つめていました。南さんから、聞いてわかったことは・・



寺村 修司  44歳  既婚  皮革製造会社勤務 T市在住

(ゴルフをするのか。スポーツマンタイプだな? この笑顔は、妻好みかもしれない・・)



相手が、身近な存在でないこと・・そしてある程度、妻が魅力を感じる男、それが私の思い描く他人の最低条件なのかもしれません。



「何だか、気に入られたようですね。小野さん、詳しいことは、そのうちまた連絡しますよ。

それから、この前の奥様の写真、しばらく私にお貸し願えませんか?携帯でトバすのは、拙いでしょ? また、この店でお返しします。」



こうして、私の黒い欲望は、南さんとの関わりによって現実性を帯びて、執行の階段を駆け上がっていったのです。





それから、しばらく日が経って・・

慌しく客が出入りする店の片隅に、その男はひっそり私を待っていました。

胸ポケットから覗く青のハンカチが、寺村であることを示しています。

涼しい目元に鼻筋が通り、紺のブレザーに包まれた白シャツの襟が清潔感を醸し出しています。

南さんに見せてもらった画面で見るよりは、随分と体が引き締まり、いかにもスポーツマンという感じです。

(この男に、妻を抱いてもらうのか・・?) これから、この男を寺村と呼ぶことにします。



お互い、一通りの初対面のあいさつを交わした後、寺村が切り出しました。



「南さんから見せてもらいましたが、私にはもったいない素敵な奥様ですね。たまたまとは言え、このような機会を差し出して下さった貴方に感謝します。はっきり確かめたいのですが、本当に私でいいのですね・・?」



「お願いします。妻を抱いてほしいのです。」



私は、南さんに打ち明けた時と同じように、心に取り憑いたおぞましい欲望、南さんを介してここに至るまでの経緯を簡単に説明しました。



「それで、小野さん、どのように奥様に打ち明けるか、これからゆっくりと考えられるんでしょ? その間に、小野さんも、自分に納得がいくよう気持ちを整理することができますね。」



「お気を遣っていただいて有難いのですが、実は・・もう妻の同意は、済ませているのです。」



「えっ、と言いますと・・?」



「普通の場合、妻の同意よりも相手の方を探す方が先なのでしょうが・・・」



私は、相手を探し、そして妻の同意を得るまで、悶々とした日々を過ごすことに耐えられなかったこと、

もし、相手を決めた後で妻がその誘いを拒んだ場合、ご迷惑をおかけするようになること、

そして、私が選んだ相手が誰でもよかった訳ではないことを、正直に話しました。



「そうですか。奥様を深く愛していらっしゃるのですね。」



それなのに私は、愛する妻の体を他人に抱かせようとしているのです。

今、寺村と話し合っていることにより、身勝手な欲望が具体的に一歩ずつ実現されていくことに、自分への嫌悪を感じてしまいます。



「小野さんのお気持ちは分かりました。それじゃ、具体的なことを決めたいと思うのですが・・大概こんな場合、細かいことを事前に確認することは、貴方もご存知なのでしょう?」



「例えば、避妊のこと・・それから奥様が、私の行うことを嫌がった場合のことなど・・そのまま続けてもよろしいのですか?」



「・・ゴムでお願いします。それから、妻が嫌がった場合のことは、寺村さん、その時の貴方の眼で判断なさって・・申し訳ないのですが、妻が心底から嫌がっていることは止めていただきたいのです。」



「分かりました。それ以上のことは、実際に奥様を抱かせていただく時に確認すればいいことですから・・



「それから、小野さん、貴方が私たちの行為を眺める場所は、どうされますか?

できれば、奥様と私の枕元に立つことは、ご遠慮願いたいのですが・・・」



「・・・・寺村さんのおっしゃる通りにします・・・」



「それから、こんなこと言わずもがなのことですが、奥様とのベッドの上では、私が奥様のパートナーになるということをお忘れないようにお願いします。」





妻を他の男に寝取ってもらう夫としては、妄想の実現のために、閨での主導権の大半を男に預ける他なかったのです。



【黄昏のとき】

それから、しばらくたったある日、辺りが黄昏ずんできた頃、私たちの車は目的地へと向かいます。

途中、喫茶店で寺村と落ち合ってから、ホテルに入ることになっています。

これからそんなに長くない時間の後に起きることを想像すると、私の心が硬くなっていきます。

妻も同じような心の高まりを鎮めるためでしょうか、二人だけのドライブを楽しんでいる風を装いながら、あれこれ取りとめもないことを話しかけます。



「ねっ、ねえっ、今朝の新聞、読んだ? 『掲示板』に出ていた子猫、かわいかったわ。もらっちゃおうか・・?」



「・・・あなた、知ってる? あのお店、パスタがおいしいのよ。今度、一緒に行ってみる・・?」



私たちは、生々しい話題を避けるかのように、努めてそれとは正反対の方向に話をもっていきます。この後も、小学生が遠足を楽しむような二人の会話が続きましたが、やがて、二人ともそれによって平静が戻るわけではないことに気づくのです。

次第に、目的地のホテルが近づくにつれ、二人とも無口になっていきました。





私たちが、喫茶店のドアを開けると、にっこりと微笑んで私たちを迎える寺村の姿がありました。

妻と寺村は、お互いを紹介し合った後、何の障りもない普通の会話を始めていきました。



「素敵なバッグをお持ちですね。フルラがお気に入りなのですか。」

「カラーとデザインが、素敵でしたので・・」

「奥様みたいな綺麗な方には、エルメスの方がお似合いだと思いますよ。」

「でも、高すぎて・・・」



寺村が、そのことが始まる前に、妻との距離を一歩でも縮めたいと願って、妻の関心を引くような話題を持ち出すのは当然のことなのでしょう。



「バッグの皮革にも、ワニ革から馬や豚革など色々ありましてね、アメリカ産のバッファロー革が手頃なんですよ。」



「まあ〜っ、どうして、そんなことご存知なのですか。」



「いやっ、私の仕事が皮革製造関係でしてね。そこで、皮の染色から彫り、加工まで何でもやっているのです。また今度、お暇な時に一度立ち寄ってみられませんか。見学の後、実際にバッグづくりの工程を体験してみることもできるのですよ。」



「え〜っ、 本当ですか。自分でバッグを作れるなんて・・それで、寺村さんも、奥様のためにバッグを作って差し上げたのですか?」



仮に、私が寺村の立場だったとして・・限られた時間の中で、彼女の心の硬さを和らげ関心を自分の方へ向かせるためには、(話題をレデーズバッグにするかどうかは別にして) 同じようなアプローチをするでしょう。



でも、妻が寺村の会話に魅入られたように関心を傾けていく姿を見ると、この前、妻の切なる胸の内を聞かされ、その思いを真実のものとして受け止めたはずなのに・・・



(あのバッグは、オレが選んで、おまえに薦めた物ではなかったのか。)

(妙に、寺村と呼吸を合わせている妻の会話には、やがて始まることへのときめきが混じっているのだろうか・・・)

心が乱され、新たな猜疑と嫉妬の念が湧いてきます。



やがて、私たちは喫茶店を後にし、愛する妻が他人と交わり、男の全てを受け入れる場所に到着します。

ホテルのフロントでチェックを済ませ、三階にある部屋のドアを開けました。

(妻があの男から貫かれ、射精を浴びる場所・・・もうすぐ、あのベッドの上で、今まで思い描いていたことが、実際に起きるんだ・・・)

浴室で、寺村が浴びるシャワーの音を聞きながら、妻が、私の傍に寄ってきて、



「あなた、いいのね。 後悔しないよね。 約束を守るってこと・・忘れないで・・・」



と、確かめるように言いました。

その言葉の奥底には、・・・夫の願う通り見知らぬ男に体を預ける代わりに、その後どんなことが起こっても終生添い遂げることの確約、今まで以上に自分を慈しんでほしいという私への求愛、そして、妻への背信は決して許さないという決意が籠っていることがわかります。



それと同時に、私は、妻のこの言葉が、他の男との交わりを始める前の最後の言葉であること、

そして、悦びを求める女になり切るために、私を遠ざけようとして言った言葉であることも分かりました。



夫の変わらぬ愛を祈りながら、自分の心を戒めて、私から離れていこうとする妻がとても愛おしく思え、抱きすくめて唇を求めようとします。

すると妻は、両手のひらで私を押し返すようにして、諭すように言ったのです。



「だめぇ! お願い、あなたらしくして・・・」



それは、私の情けない未練を慈しみながら・・私の心を整えさせ、覚悟を促そうとする、妻の優しい拒絶だったのです。

二人が交わるベッドの傍にコンドームを置きながら、

(もうすぐ、理香の膣奥深く、他人の精の飛沫がこの中に・・・)

焼けるような想いがもうすぐ叶う興奮と、その裏に宿る言いようのない不安に襲われながら、寺村が戻ってくるのを待つ他ありませんでした。



【交わりのとき】

寺村が、妻を両手で持ち上げ、抱きかかえるようにベッドに運びます。

妻はうっとりとした表情で、彼の首に手を回し、舌を絡み合わせます。

寺村の大きい手がブラの谷間から伸びて、双方の乳房を優しく愛撫し始めた時、

次第に妻の中から私の存在が消えていくのを感じ、私は焦点が定まらない目を宙にとばしていました。





二人は、そのまま崩れ落ちるかのようにベッドに横たわりました。

そして、寺村の手が、器用にブラのホックを外し、ショーツの中へ滑り込んでいきました。

妻の片手が、手指の侵入を拒むかのように寺村の手首を押さえますが、寺村の指腹が、多分数回・・妻の潤みをなぞった時、

妻は、それまで対称形で閉じていた両腿を、何回か交差させていきました。



そのうち寺村は、妻のショーツを剥いで、妻の秘部に顔を沈めていきました。

妻の秘部を這う寺村の舌先は見えなくても、両脚が狂おしげに動いている様子を見れば、淫裂が徐々に開き、秘部が潤みを帯びてきていることがわかります。

小さく洩れる喘ぎとともに、妻の肩から次第に力が抜けていくのが、遠目からも判りました。

固く閉ざされていた両脚も段々と角度を広げ、次第に力みを失っていきます。





(不幸せなことに、これまで良妻として尽くしてきたが故に、別次元の甘美な世界があることも知らなかったんだ・・・)



(あられもない姿を晒す羞恥、官能を表すことへのためらい、夫への背徳・・・

今まで覆い隠してきたもののすべてを脱ぎ捨てればいいんだよ。)





「あぁぁ・・そんな風にすると・・・・」



大きくM字に広げられた両脚の中心を、小刻みになぞる指先・・

その動きが、淫裂の合わせ目から顔を出す肉芽を、ほんのりした肌の色合いとは不釣合いな鮮紅色に染めていきます。



「奥さん、これから始まること、わかっていますよね。

どうしましょうか・・・」



「寺村さんの、好きなようになさって・・・すべて、忘れさせて・・・」



妻が口にした言葉が、私に燃えるような嫉妬、そして胸が締め付けられるような劣情を運んできます。

私は、ベッドの後方から、こぶしを固く握り締めたまま、私の元から遠ざかっていく妻を眺める他ありませんでした。



「奥さん、私のも疼いてきました。あなたの口で、もっと気持ちよくしてくれませんか?」



(まさか・・・でも、もしかして・・・妻がその強張りを口に含み、その唇で男の茎を愛おしそうに包んだら・・・)



寺村のこの言葉に、妻は一瞬青ざめたように彼の顔を見つめ、そして髪を振り乱しながら、顔を激しく左右に振りました。

目を固く閉じ、震えるように首を振る妻の姿は、私が密かに抱いていた不安をかき消してくれるような安堵をもたらしました。



妻は、これまでの私との閨の営みでも、決してその強張りを口にすることは、無かったのです。

私が求めても、「お願い、それだけは・・・!」と受け入れてくれないのです。

私も、このこと以外は十分すぎるほどに睦み合ってくれる妻の性に喜びを覚えていましたし、

「人それぞれ、セックスにも主義や主張があってもいいのでは・・・」

と、余り深く追求せずに、今日にまで至ったのです。



(生まれ育った家庭での躾が、彼女をそうさせたのか・・?)

(彼女の性意識の中で、そのことだけが忌まわしい行為として除かれ、体が生理的に受け付けないのか・・?)

(あるいは、想像してはいけないことですが・・・私との結婚以前に、誰か他の男と誓ったのか・・?)



心の中に、このような疑念や猜疑が生まれることもありましたが、妻の私に対する情愛や献身は、私の心の中で、それが表に出ないよう蓋をしてくれるに十分だったのです。



「わかりました、奥さん、無理しなくていいですよ。

でも、次のお願いだけは聞き入れて下さいね。」



妻は、その言葉に対してコクンと小さく頷きました。

寺村は、その膨れあがった茎を、妻の口で愛撫してもらうことをきっぱり諦めたのです。

そのうち妻は、寺村の言葉に促されて、これから自分を貫くものを確かめるようにゴムの中心を亀頭に宛がい、その薄膜を強張りの根元まで優しく引き下ろしていきました。



(あぁ〜 あの反り返ったものが・・おまえの手で大きくしたものが、もうすぐ入ってしまうんだ・・)



やがて寺村は、妻の両足を大きく開き、その引き締まった下半身を妻の股間に割って入らせました。

そして、掴んだ茎を揺らしながら、その筒先で秘口を弄びます。

膣口を探しているというよりは、わざと時間をかけながら淫孔から溢れる愛液を自分のものに絡み付けるように・・・



そして、その間、寺村がじっと妻の顔を覗きこむように見つめているのは、・・妻の表情の中に、悦びを求める疼きがあるかどうか、確かめているのか。意地悪く、夫への背徳とは裏腹に生じる妻の高ぶりを弄んでいるのか。

あるいは、妻を貫くまでの時間をわざと長くして、傍にいる私を焦らしているのか・・



寺村の視線を外すように、妻がその刹那、私の顔を見つめます。

これまで、この場面、その姿は何回か見てきましたが、その都度、

憂いを秘めた・・縋りつくような・・・暗く沈んだ哀願の眼差しを受けると、胸が押し潰されるような息苦しさを覚え、

夫として、精一杯の誠実さで応えます。



(理香・・・それでいいんだよ・・・)



(ただ、おまえの女として歓ぶ姿・・それだけが見たいんだ・・・)



そのうち寺村は、妻の股間を更に大きく広げ、結合を前に空けておいた空間を狭めるように腰を落とすと、その先を妻の下半身に緩やかに沈めていきました。



「あっ、ああぁぁぁ・・・」



妻のそこが、滑りをもって男根を受け入れ、二人が深く結合したことがわかりました。

そして、寺村は、茎の滑りを緩やかにして、妻の性感を徐々に高ぶらせるための律動を始めていきました。

斜め下に垂れた男根が上下運動を繰返す度に、目いっぱいに埋まった秘口から、潤み溢れる音が聞こえます。

二人の露わな行為に合わせてベッドが軋み、妻の息遣いも喘ぎに変わってきます。

きっと妻は、抑えようとしても体の奥底から止めどなく湧いてくる快感が、徐々に体に染みてくることに、戸惑いを覚えているのでしょう。



(理香、その快感は、私と違う男が与える歓びであっても・・おまえがどう抗おうとしても・・そのことが始まってしまったら否応なしに湧いてくるものなんだ・・我慢なんかしなくていいんだ。)



寺村は、一定のリズムを保ちながら、徐々に激しくビートを刻んでいきます。

男の本能として、突く場所と深さを一定にし、同じ場所を繰り返し刺突し続けることが、女の体に火をつけるということを心得ているのでしょう。

そして、その律動が妻の下腹部で往復されると、妻が悦びの喘ぎを漏らすようになるまで、そんなに時間はかかりませんでした。



「ああぁ〜・・だめえぇ・・・」



見ず知らずの他人と交わるという禁断の世界に入るまでは、私が愛おしんだ妻は、こんな淫らに反応する女ではなかったのです。

(夫婦として契りを交わして以来ずっと、このような淫らさが妻の体の中に潜んでいたのだろうか?

妻が、このような淫らな喘ぎを洩らすのは、女の性がそうさせるのか?

それとも、ごく自然で普通だと思っていた夫婦生活も、私の一人合点で、妻の心底では満たされないものであったのか?)



【恥辱のとき】

絶頂に向かって駆け上がっていく妻の高ぶりを突き放すかのように、寺村は妻の秘口から欲棒を抜き出しました。

そして、妻の背後に回り妻の両腿の下に手を回し、その腕で妻のお尻を持ち上げるように抱きかかえながら、ゆっくりと私の方まで歩いてきたのです。



寺村が、この行為を選んだ理由・・

それは、妻の心を縛る理性と倫理の鎖を完全に断ち切り、愛する女が堕ちていく始終を夫の眼前に晒すことが、私の願望を満足させる最上の方法であると思ったに違いありません。



あらぬ姿勢で抱き上げられ、寺村が次に指示することが、妻にもわかるのでしょう。

妻は私のところに来る手前で、イヤイヤをするように首を振り、何度かそれを拒みました。



「奥さん、この部屋の中では、私が主導権をもたせていただくことを、ご主人は承知されているのですよ。」



「さあ、ご主人が愛しているあなたの一番恥ずかしいところを、ご主人の眼の前で見せてあげてください。あなたの手で大きく開いて・・・」



その言葉を聞いて、妻のうなじがぐったりと沈み、顔があらぬ方に背けられました。

妻は、放心したように虚ろな眼を私に向けながら、羞恥の極みの中で、屈曲させられた両脚をゆっくりと開き・・

両手を、柔らかに膨らんだ草丘の上に這わせ、淫裂の中央にまで届かせました。

そして、三つ指を淫裂に添えながら、その陰唇の門をゆっくりと開いていったのです。



白い照明を斜めに浴びて、薄紅の艶を帯び、淫らな雫に濡れた秘部が浮かび上がりました。

大きな陰唇が楕円に伸びて、その中心は今まで男の欲棒に貫かれていたことを証明するかのように、淫靡な襞に囲まれて、微かな媚孔を形づくっています。

そして、その女の器が、羞恥に耐え切れないように蠢くと、それはまた新たな潤みを滲ませるのです。





それは、妻にとって耐え難い恥辱のときでした。

見ず知らずの男に、脚を開かれ、その象徴を受け入れるだけでも耐え難いのに・・・

その忌まわしい行為を行った自らの手で、交わった痕跡も生々しい膣口を、夫の眼に晒すなんて・・・

今まで、想像すらしなかったことに違いありません。



「さあ、先ほどの約束を果たしてもらう時です。

あなたの手で、私のものを挿れて・・・それが入っていくところを、ご主人に見てもらうように頼んでください。」



寺村は、先ほどの妻の頷きを履行してもらうべく、割れ目の中に寺村の肉茎が呑み込まれていく様子を、私に見て欲しいと妻自身の口で哀願することを彼女に強いたのです。

妻のお尻の下から屹立している寺村の勃起が妻の股間に向けて、挿入を待ち焦がれるかのように妖しく震えています。



(理香、何もそこまでする必要はないんだ! おまえが嫌がりさえすれば、それ以上のことを強いらないっていうのもルールなんだ。)



妻は、両方のひじを狭め、こぶしを震わせながら、寺村の情けにすがり付くように撤回を求めていました。



「奥さん、よく考えてください。ご主人がこれまで大切にしてきたものを、あなたの手で汚すことがご主人への愛なんです。」



切なる願いが聞き届けられないことがわかると、やがて妻は・・・

その肉茎の膨らみを、M字に開かれた自分の膣口に押しつけました。



そして、瞬間的に私の顔を見つめ、始めは消え入りそうな小声で・・終わりの方はほとんど叫ぶように言ったのです。



「・・・あなた、許して・・入っちゃうの・・

見てっ、わたしの中に入っていくところを、見てえぇ・・!」



そして妻は、右手で掴んだ肉茎の先が埋まる位置をそれとなく探り当て、眼を瞑り顔を私に背けながら、自らの手で秘口に導き入れたのです。

勃起した怒張が、何度も貫かれて収縮の柔らかさを失ったかのような秘孔の中に、抵抗無く吸い込まれるように埋もれていきました。

もし、これまで妻の中に、夫に操をたてる貞操が僅かでも残っていたとするならば、その行為は最後の一片まで捨て去るような淫蕩な行為でした。



そのうち寺村が、私の眼の前で・・艶かしい淫穴にすっぽりと埋もれた欲棒を、ゆっくりと上下させ始めました。

一旦、埋もれた肉棒が次に露わになる時、その濡れの艶は更に濃くなり、緩やかな往復が続けられます。

眼前で、寺村のものが妻の秘部に分け入っていく様子を見ていると、それはその奥深くで温めてきた妻との睦みを麻痺させてしまう、毒針の貫きのように思えました。



「あっ、ああぁぁ〜・・・」



ああぁ〜理香、おまえのその喘ぎ・・おまえが行ったことは、

決して自分から望んだ訳ではなく、寺村に強いられ、否応なしに従わざるを得なかったからではなかったのか・・?

夫から理不尽な願望を告げられ、その切なる願いを叶えるためではなかったのか・・?

愛する妻が、私の目の前で、他人棒の抜き刺しで感じてしまう様を眼のあたりにすると、それまで押さえてきた自制と寛容の箍が外れ、狂おしい嫉妬がどっと噴き出してきます。



やがて寺村は、妻を後方から抱きかかえたままの姿勢でベッドに戻り、妻を股間に跨らせ、その腰のくびれに両手を添えました。

そして、ぐったりとしてあらぬ姿を夫に晒している妻に命じたのです。

股間から屹立している茎に向かって腰を沈め、自らの意思で上下の往復を繰り返すことを!

寺村は、それまで妻の体に微かに残っていた理性の縛りが完全に解け、妻が悦びを求める一人の女に変わりきっているのか、確かめたかったのかもしれません。



夫を前に、これ以上の羞恥はないという姿勢で犯されたことにより、妻の覚悟も定まったのでしょうか。

今度は・・・股間をしっかり見下ろしながら、寺村の肉茎の先が埋もれる自分の位置を確かめ、静かに体重を乗せていきました。
そして妻は、もう私に視線を向けようとはせず、羞恥と他見を忘れたかのような態で、自らのものを肉茎に没入させる動きを頻繁に繰り返し始めました。



まるで・・・腰を降ろしさえすれば湧いてくる快感が、数度その動きを繰り返すことによって、体を噴き上げる途方もない快感に変わっていくことに気づき、その悦びを貪るかのように・・・

女体の深奥から湧き出た悦びは、津波のような勢いで体を走り、それまで妻の心のどこかに微かに残っていたかもしれない背徳の灰汁を、完全に押し流してしまったのです。



(おまえのその姿・・女の本能のままに、絶頂に向かって、ひたすら腰を振る姿こそ、私が思い焦がれた姿だったんだ。)



「はあぁぁっ・・だめえぇ・・おかしくなるぅ・・・」



妻は、寺村の腰の両脇に、その手を逆手にして上体を支えると、背中を寺村の方へしならせるように崩れていきました。

そのような姿勢を私の位置から眺めると、妻の股間に刺さる男根のすべてが露わになり、これ以上はないという淫らな光景が眼に入ってきます。



【奔走りのとき】

そして寺村は、自分の欲情と妻の高ぶりを合わせるかのように、体位を正常位に戻して、激しく交り始めました。

寺村は妻の上に重なりながら、欲望のままに体の動きを早めます。

寺村に対する必死の訴えで心を消耗させたのでしょうか、あられもない姿を夫の眼に晒したことで欲情したのでしょうか・・・妻の両手は、覆い被さる寺村の背中を這い、より深く抱き締められながらの貫きを欲しがります。



多分、女の性が・・・深い悦びを得るためには、快感をもたらす相手が誰であれ、それを与えてくれる男と完全に一体になる必要があることを知っているのでしょう。

そして、寺村のビートで湧き出る今の快感よりも、次には更に深い快感が押し寄せてくることを期待して・・・

ひたすら、より深い悦びを迎えるためだけに、男を迎え入れます。



「んくうぅぅぅ・・はぁ、はぁっ、もう、だめえぇ・・・」



寺村も、自分の刺突の深度と方向、貫きの激しさの変化によって、女の体が七色の悦びを表すことに、男として満足しているのでしょう。

後ろから見ていると、寺村のお尻が女陰との間に大きな空間をつくり、波打ちながら突き込まれていきます。荒々しい男の勃起の先は、妻の下腹部の奥深くまで行き届き、貫きの深さが格段に増しているのがわかります。



妻の体が絶頂の極みに到達するのも間もなく・・と、感じた寺村は、更に凶悪さを増した肉茎で、妻の腹腔を強烈に貫いていきました。

やや斜め上に開放されている膣洞の中で、寺村の限界にまで強張った肉茎が数限りなく出し入れされると、女の体は自分の意思とは乖離して、めくるめくような悦びを湧き上がらせます。



「ああっ! いいっ!・・いっちゃう・・・」



私の眼前で身悶えする妻・・・その悦びの深さを推し量れるのは、

歓喜の極みで、官能のままに漏れる艶かしい息遣いと淫らな言葉、そして様々な姿に変わる五体の変化を眺めることだけです。



(あぁ〜理香、・・体を突き抜けるその悦びを与えてくれるものだけを、愛おしめばいいんだ。 男の印に、名前なんて刻まれていないんだ。測り知れない女の悦びに身を任せればいいんだ・・・)



寺村は、妻の悦びが沸点めざして駆け上がっていることを察したのでしょうか、重なっている妻との間に長距離の刺突に必要な空間をつくると、欲情をその肉茎に込めて、妻の下腹部を更に激しくビートし始めました。

もう、荒れ狂うスラストの嵐は、妻が頂点に向かって緩やかに上昇していくことを許してくれないようです。



「あっ、ああぁ〜っ、いっ、イクッ・・!もう好きなようにしてえぇ・・」



女の体は、上リつめてしまうと、もう全てがどうでもよくなってくるのでしょうか、妻は全身の力を抜くようにして、寺村の刺突を為すがまま受け入れます。



そして、股間の筋を最大限に強張らせ、茎を受け入れている部分を突き出しながら、背中を弓なりに反らせたのです。

足指の先が、内に向かってピーンと張り詰めていきます。

それでも寺村は、容赦なく貫きを続けます。

妻の体は、「いやぁ!イっているのに・・・」と、寺村にスラストの制止を求めたいはずですが、間断なく続く肉棒の刺突がそれを許してくれません。



「うぅ〜っ・・奥さん、私もそろそろです・・!」



「いってっ、・・・イッてえぇ・・!ああぁっ!そこに出してぇっ!」



妻が、細い腕で寺村の背を思い切り抱きしめ、そして貫きを受けているお尻を浮かせるようにして寺村の腰との距離を縮め、射精を欲しがります。



女の性は、無意識のうちに、理解しているのでしょうか。

セックスの真髄が、自我を忘れ快楽の虜になること、悦びの極みを追求することであることを・・・



(ああっ、もうすぐだ・・・)



(いよいよ妻が、寺村の勃起を収めたその膣奥で、噴き出す精の放射を浴びるんだ・・・)



寺村が、思いっきり腰を落としました。最後の一突を妻の膣奥深く送り込み、その火照った媚肉の奥に、たぎる欲棒の精を注ぎ込んだようです。



(ああ〜っ、今 この瞬間、妻はその熱い奔走りを体の最深部で受け止め、喜悦の終篤を惜しむかのように、男の精を吸い取ろうとしているんだ!)





ぐったりと、崩れ落ちるようにベッドに沈む妻の体・・・



愛液塗れの結合部から、寺村が酷使した肉茎を抜き去ると、妻の息遣いが放心の吐息に変わっていきます。

ゴムの膨らみを見送った妻の膣口は、小さな穴を穿っています。





(私がおまえにしてやれたこと・・それは、寺村がおまえの体に精を送り込んで妊娠させること・・

男として最高の快楽を伴う最終行為を、私が用意した薄膜で防ぎ止めることだけだったんだ・・)



愛液に塗れたその秘孔は、気が遠くなるような悦び、測り知れない恥辱を味わい、そして私の屈曲した欲望のすべてを受け入れてくれた、私への究極の愛の印に見えました。