● 出張先の妻は
出展元:妻と勃起した男達
投稿者:飯坂さん
僕と妻の亜季が結婚してもう7年がたつ。
現在は僕が34歳で亜季が32歳、お互いもう30歳を過ぎてしまった。
社内では美人で有名だった亜季を僕が射止めて、大恋愛の末結ばれた。
新婚当初は毎日のように愛し合っていたが、最近はその回数もめっきり減ってしまった。
夫婦仲が悪くなったわけではないが、何故だか最近話しをすることもなくなってきている。
今になっても子供ができない僕たちは共働きを続けていた。
結婚後すぐに僕は本社から異動になり都内の営業所に勤務となった。
妻は本社の企画部で相変わらず働いている。
用事があって本社を訪れた時だった。
仕事が終わり、妻の顔でも見て帰ろうかと思い企画部のフロアーに行くと、急に便意を催しトイレに駆け込んだ。便座に座ると、先ほどまでの腹痛が急になくなり排便の気配もなくなった。もうしばらく座っていたらまた排便したくなるだろうと思い、しばらくそこに居ることにした。
外から誰かが入ってくる気配がした。
「なあ、今回のプロジェクト白幡さんと組めたらいいなあ」
妻は社内では結婚後も旧姓を使っており、白幡というのが妻のことを意味しているとすぐにわかった。
「なんで?」
「白幡さんとプロジェクトを組んで、地方でのプレゼンの後にやらせてもらったことがある人が何人かいるらしいぜ」
「うそだろ、あの白幡さんが?誰がそんなこと言ってたの?」
「それは言えないけど、確からしいよ・・」
「お前それ誰かに騙されてんだよ。だって白幡さんなんて飲み会だってあまり出てこないし、それになんつたって人妻だろ。そんなおいしい話あるわけないじゃん」
「普段は絶対にあり得ないけど、地方で白幡さんと二人っきりってシチュエーションだけでも萌えるでしょ」
「確かに白幡さんは30過ぎには見えないくらい魅力的だけど、そんなことってあるかな」
本社企画部の社員であろう男性二人はそう言うとトイレからいなくなり、声が聞こえなくなった。
妻が浮気?僕はショックというより、にわかに信じられない話に心臓の鼓動が激しく脈打つのがわかった。たしかに妻の仕事は地方での地元説明会などのプレゼンで出張に帯同することが年に数回あった。しかし、妻が帯同するようなプレゼンは大低大掛かりなもので、男性社員と二人っきりなんてないと思っていた。僕はそのままトイレの便座に座ったまま動けなかった。同時に自分のペニスの変化にとても不思議な違和感を感じていた。
結局その時は妻の顔を見ずに本社を出た。
頭の中ではさっきトイレで聞いた話がうずを巻くようにこびりついて離れないでいた。
結婚後も仕事を続けているが生活はいたって質素で、こっちは営業職なので付き合いなどから夜遅くなることもしばしばあるが、妻は仕事が終わればまっすぐに帰宅する。休日に僕の知らない行動をとっているなどということもなかったので、妻が不倫をするなどということはこの7年間考えもしなかったことだった。しかし冷静に考えてみたら、確かに妻はまだ充分に若いし美しい。そのような女性社員と二人っきりで出張ともなれば、不道徳にも少なからず一夜限りの不倫を妄想してしまうこともあるかもしれない。
その日営業所には戻らず、有給を使って家に帰ることにした。
普段の妻は5時に仕事を終えて6時には帰宅する。
それまでになんとか証拠を探したいと思った。
しかし証拠となるようなものは一切家にはなかった。
6時になると妻は帰ってきた。
「あら、今日は早かったのね」
「ああ、営業先が近くだったから有給使って直帰したんだ」
「ご飯まだなんでしょ、今から支度するから待ってて」
妻はそういうといつもと同じように食事の支度をしてくれた。
「なあ、この前きみが出張した日っていつだった?」
「えっ、なに?急に?」
食事中におもむろに妻に聞いてると、やはりこころなしか少し狼狽したような受け答えだった。
(やっぱり何かある!)
「いや、別に、なんとなくいつだったろうかと思って・・・」
「もう出張にはいかないつもり・・」
「えっ、どうして?」
「わたしより若い子もだいぶ育ってきたし・・・わざわざ私が行かなくても・・」
「きみのようなベテランの方が何かトラぶった時など対応が上手くいくんじゃ・・」
「今まで一度も私の仕事のことを聞かなかったあなたが、どうしてそんなことを?」
「そ、そんなことはないけど・・」
今度は逆にこっちの心を見透かされたようになり、この話はそこで終わりになった。
その晩、僕は久しぶりに妻を抱いた。
何年ぶりなんだろう、こんなに興奮して激しく妻を抱いたのは。妻の身体は新婚の時と変わりなくとても綺麗だった。
(亜季・・きみは本当に出張中に同僚に抱かれたのか?その時きみはどんな表情をしていたんだ?僕と交わるよりも激しく悶えたのか?どんな風に・・・・)
僕は妻を抱きながら頭の中で繰り返していた。不倫をされた怒り以上にこみ上げてくるこの興奮する思いに違和感を抱きながら。
妻が出張先で同僚と不倫をしたという話は、僕の心を激しくざわつかせたが結局その後は何も言い出すことができなかった。何度か妻に直接聞いてみようかと思ったが、そんなことを聞けば今まで二人で積み上げてきたものがいっきになくなってしまいそうで、とても直接聞くことなど出来なかった。それでは周りの人間に確かめてみようと思い、それとなく本社の友人に電話もしてみたが、どんな風に聞き出したらよいのかわからないまま何日も経過していった。あの晩は妻と交わったが、その後はない。もともと妻はセックスが好きなタイプではない。僕と付き合う前に一人の男性と付き合ったがことがあったようだが、からだの関係はなかったらしい。つまり僕が妻の最初の男性だった。そして最後の男性でもあると信じて疑わなかった。
頭の中から妻の不倫が離れないまま数ヶ月が経過したある日、妻に出張の予定が入った。
(よし、今度こそ決定的な証拠をつかんでやる)
「出張っていったいどこへ行くの?」
「新潟よ」
「何泊?」
「一泊よ、今回はエキシビジョンだから簡単に終わる予定」
「そうなんだ、仕事は何時くらに終わるんだ?」
「なんか、今日はやけに私の出張のことを聞いてくるのね」
「い、いや別に・・ほら、最近あまり話をしなくなったから・・」
(妻の出張に関して勘ぐっているのがバレたか?とにかく証拠をつかむことを優先することにしよう、出張の話題はしばらく避けておこう)
僕はそれから先、出張に関する話は一切しないように努めた。
そして出張の前日になった。
「明日は前にも言ってた出張だから、何か食べて帰ってきて。帰りはあさって土曜日のお昼過ぎになるから」
「あーそーだったんだ、わかった」
僕は平静を装ってそう答えた。
いよいよ出張当日になった。その日は朝から仕事が手につかなかった。妻は昼過ぎの新幹線で新潟に向かうと言っていた。もうそろそろ会社を出たころだろうか。僕は1時過ぎに行動に出た。本社の企画部には知り合いがいないので、僕が昔所属していた総務部へ電話をかけてみた。後輩が出た。
「飯坂だ、久しぶり」
「先輩ですか、営業所でご活躍と聞いていますよ」
「亜季に用事があってさっき企画部に電話したんだけど、今日出張に行ったらしいんだ。あいつ、携帯も忘れていってて連絡がつかなくて困ってるんだ。総務に企画部から出張の申請が出てると思うんだけど、亜季以外に企画部の人で行く人がわかれば教えてくれないか」
「そうですか、わかりました。ちょっと待っててください・・・わかりましたよ、園部大地です」
「園部大地?はじめて聞く名前だな。入社何年目くらいの社員なんだ?」
「えーと、たしか6年目だったかと、調べますか?」
「いや、いいよ。わかった、ありがとう」
入社6年目ということはまだ20代の後半で妻よりも年下になる。本当に妻は今日園部という男に出張先で抱かれるのだろうか。
さて、出張の相手が園部という若い男ということはわかったものの、この先の手を全く考えていなかった。何日も前から興信所に頼んで尾行をしてもらおうかと真剣に考えていたが、結局なにもしないままでいたのだ。
いよいよその日の夜になり家で一人悶々とした時間をすごした。
何度妻の携帯に電話してみようとしたことか。しかし踏みとどまった。
ここで僕から電話があれば、妻は警戒してしまう。まずは証拠をつかむことが先決。そう自分に言い聞かせていた。しかし、不倫をしている妻の姿を想像すると、どうしようもなく身体がうずいてしまう。それを鎮めるように酒をあおるがなかなか酔うことも出来ない。悶々としたままその日は明け方まで深酒をしてしまった。
「ずいぶん昨日は一人で飲んだのね」
次の日、二日酔いのひどい頭痛の中、僕は妻の声で起きた。時計を見てみるとまだ午前の10時だった。
「あれ、まだ10時か、早かったんじゃないか」
「ええ、早く起きたから始発の新幹線で帰ってきたのよ」
「一人でか?」
「そうよ」
「会社の人は?」
「ゆっくりして、今頃新幹線の中じゃないかしら」
(行きは園部という男性社員と一緒に行ったはずなのに、帰りはバラバラで帰ってくるなんて、やはり昨日の夜に何かあったのか?)
僕はひどい頭痛をおして頭の中を高速に回転させていろんなことを考えたが、結局答えを見つけることができず、本能の方が思考能力を上回っていった。
僕がベッド脇に脱ぎ捨てた衣類を拾おうとした妻の手をつかむと、そのままベッドに引きずり込み、激しく唇を奪った。
「い、いやっ・・なにっ・・・お酒くさっ・・」
僕はそのまま妻に覆いかぶさった。
「ちょ、ちょっと・・・待って・・・スーツがしわになっちゃう・・・いやっ・・・」
抵抗する妻のジャケットを脱がすと、その下のブラウスのボタンにも手をかけた。はだけたブラウスから妻の白い刺繍が施されたブラジャーが見えると、妻の抵抗も次第に弱くなっていった。スカートのファスナーを下げてスカートを脱がすと、ストッキング越しに見える白いパンティが普段家にいる妻とは想像もつかないなまめかしい女を認識させる。妻を下着姿にすると再び僕は妻の身体に唇を這わせていった。それまでは妻の下着など意識しなかったが、最近になって妻の下着を意識するようになった。普段妻はベージュなどで飾り気のない比較的シンプルな下着を身に着けていることが多かった。しかし、今日の下着はレースや淡いピンク色の刺繍が施されたセクシーなものだった。
(園部に見せるためにわざわざ出張にこのような下着をもっていったのか?)
僕は妻の身体を愛撫しながら激しく嫉妬した。ブラジャーを取り小粒大の乳首を口の中に入れると妻は軽く吐息をもらすようになっていた。
「はぁぁ・・・・んっ・・・」
(昨日園部にもこうやって乳首を吸われたのか?)
妻の乳房の感触を充分に味わった僕の手は徐々にその下半身へと移動し妻のパンティの中に滑り込んだ。恥毛の感触を味わいながら、指先でクリトリスを刺激すると、はっきりと妻が声を漏らすようになった。
「あっ・・んっ・・・はぁぁ・・」
(昨日の晩も園部に愛撫され、そうやって悶えたのか?)
膣内はすで愛液であふれていた。
(もうこんなに熱くなっているじゃないか。昨日のほてりがまだ冷めていないのか?)
パンティを脱がせて、溢れる愛液を舌ですくってみた。
「あんっ・・・いやっ・・・んっ・・・は、はやく・・・きて・・・」
僕はいきり起ったペニスを妻の膣口にあてがうと、ゆっくりとその中へ沈めていった。
(なんて温かいんだ・・・熱いくらいだ・・・き、気持ちいい・・)
すぐにペニスは妻の温かいひだに包み込まれると、その体温を心地よく感じた。
(昨日園部のペニスもこうやって受け入れたのか?)
「あんっ・・・んっ・・・んっ・・」
「うっ・・」
(そ、それにしても今日はなんて気持ちいいんだ・・・ペニスを出し入れするたびに温かく絡みつくこの感触・・・園部も昨夜この気持ちよさを何度も味わったのか?・・・ひょっとして今朝までしてたんじゃ?・・・そ、そうだ、そうに違いない!・・・だからこんなに早く帰ってきたんだ!・・・一晩中一睡もしないで二人でこの快楽をむさぼっていたのか?・・・・・・あっ・・!)
そう思うと、今までに味わったことのない快感が体中を駆け巡り、僕は妻の中でいっきに果てた。
結局その後も僕は妻の不倫の証拠をつかむことは出来なかった。
ただ一人悶々と妄想をめぐらせている日々が続くだけだった。
これでは何も進展がないと思い、意を決して企画部の園部という男に直接電話をしてみた。
「東京第一営業所の飯坂といいます。園部さんに直接お会いしてお話したいことがあるのですが」
「第一営業所の方が私に?何のご用件でしょうか?」
「第一営業所の飯坂というより、本社企画部白幡の亭主と言った方がわかりやすいかな。君にこの前の出張の件で聞きたいことがあるので会ってもらえないか?」
僕は意識して強い口調でそう言った。
「えっ、し、白幡さんの・・・わかりました・・」
僕が亜季の亭主だと口にすると園部はあっさりと会うことを了承した。
(やはり何かあったのだ!)
その時僕はそう直感した。しかし、何があったのかはわからない。同じ社内のことだ。おおごとにしたら妻や僕の進退問題にもなりかねない。とにかく事は慎重に運ばなければならない。相手の出方によって僕はいくつもの対応を考えた。
営業先の関係もあり、3時に本社から程近い恵比寿の喫茶店に園部を呼び出した。
簡単に挨拶を済ませた後、園部に今回僕と会うことを妻に話したか確認してみたところ、話はしていないと言う。園部が僕と会うことを妻に話していたなら、僕は園部の話を聞いて帰った後に腹をくくって妻に今回の噂の真相を聞いてみる覚悟だった。
「いつも仕事では白幡さんにとてもお世話になっています。また、先日の出張の際には、白幡さんにとても失礼なことを申しまして反省しております。ご本人には次の週に何度もお詫びをしてお許しをいただいています。どうかご主人もお許しください」
園部は僕に頭を下げてそう言ってきた。
(失礼なこと?次の週に許してもらった?いったいどういうことなんだ?俺が知りたいのは、お前が妻を抱いたのかということだけなんだが・・・。人の女房をめとっておきながら、許してもらっただと?)
「別に許すも許さないもない、僕は真実を知りたいだけなんだ。妻からはある程度話は聞いている。くい違いがないかを知りたい。出張の時のことを隠さずに全部話してほしい」
僕はそう言って園部の出方を待った。
「知っているなら仕方がないですね、全部お話しますよ」
「ああ話してくれ。その日の朝から妻とどんな会話をしたのかを」
園部は出張の日の当日のことをすべて話し始めた。
「・・・・それで、仕事がすべて終わったのが夜の8時でした。それまで二人とも何も食べていなかったので、とりあえずホテル近くの居酒屋に行きました。一時間半くらいお酒を飲みながら食事をしました。白幡さんがそろそろ休むと言い出したので、私たちは居酒屋の勘定を済ませてホテルにチェックインしました。当然部屋はフロアー違いの別々の部屋です。・・・・・・で、そのー・・・」
今までとても流暢に話していたのに、急に口ごもりだした。
「で、どうしたんだ」
「僕はもう少し飲みたいと言い、白幡さんを自分の部屋に誘いました」
「部屋に誘った?どういうことだね?」
「えっ、白幡さんから聞いたんじゃ?」
「ああ、聞いているよ。だから単刀直入にどんな風に誘ったかを聞いているんだよ」
僕は一瞬あせったが、再び冷静に戻り園部に問いただした。
「つまり・・僕の部屋でもう少し飲みませんか、と言いました」
「・・・で?」
「白幡さんは疲れたから早く休みたいと言いました」
「・・・で?」
「で、ちょっとだけだからと、無理やり白幡さんを誘いました・・・・・」
「・・・・じれったいな、いちいち話を止めないで全部言ってくれないか?」
「わ、わかりました。僕たちはホテルで缶ビールなどを買って僕の部屋へ行きました。でも30分くらいして白幡さんは自分の部屋に帰りました。本当にそれだけです。何もありませんでした」
「おかしいじゃないか。君は最初に失礼なことをしたと言ったのに、それだけで何が失礼なんだ」
「す、すみません。最初に奥様から話を聞いていると飯坂さんが言ったので、肝心な部分は言いませんでしたが、部屋に入ってから僕は白幡さんを口説きました。酔っていたとはいえ、本当に申し訳ありませんでした」
園部の口からようやく核心部分を聞き出すことができた。
園部は新潟でのプレゼンの後、妻と居酒屋で酒を飲み、そのままホテルの自分の部屋へ連れ込んで関係を迫ったことを自白した。しかし、結果は僕が心配していたものではなく、妻はそれをしっかり断り何事もなく東京へ帰ってきたのであった。
妻から許しはもらっている園部の行為は、僕自身としては決して許せるものではなかったが、なんとなく釈然としないこの思いはいったい何故なのだろう。
(出張先で同僚に口説かれる・・・『一晩だけ思い出を作りたい』と妻に言った園部の言葉は明らかに性交渉を意味している。そのような事がいつの間にか本社ではまかり通るようになっていたのか?妻は何故このことを僕に言わないんだ?・・・・言わないのではなく言えないのか?・・・やはり僕に対して後ろめたい何らかの事情があって?・・・・)
やはりこれで終わりに出来るような問題ではないのだ。
「よし、話はわかった。でも最後に一つだけ質問させてくれ。君はこの前の出張の時、なぜ妻を口説こうと思ったんだ?」
「そ、それは、さっきも言ったように酔ってまして・・・それにご主人の目の前で大変失礼ですが、白幡さんがとても魅力的だったので・・・・つい・・・・すみませんでした・・・」
そう言って園部は僕に頭を下げた。
「それだけか?」
「えっ?それだけって?」
「亜季なら簡単に落とせると思ってたんじゃないのか?」
「そ、そんなことありませんよ。白幡さんは会社でもとても身持ちが堅くて有名ですし、それより人の奥さんですから・・・・でも、何故そんな風に思うのですか?」
僕はこれまで園部という男の声を聴いていて、あの時のトイレに入ってきた男の声と非常によく似ていると感じていた。いちかばちかの賭けに出た。
「数ヶ月前に本社のトイレの中で、君が友人に『白幡さんは出張の時ならやれる』と言っていたのを偶然そのトイレの個室の中で聞いてしまってね」
「えっ・・・・」
みるみる園部の顔色が変わっていった。(ビンゴ!)
「今回の君のセクハラ的行為は、妻も僕も問題にするつもりはない。ただ、あの時の話の真相を僕に話してくれることが条件だが」
「そ、それは・・・・・・・」
園部はそのまま黙り込んでしまった。
「・・・君がそういう態度なら、今回の君のセクハラ的行為を社内のハラスメント調査委員会へ告発する。いいね」
僕はこの時とばかりに強い口調で園部に言い放った。
「わ、わかりました・・・そのかわり、私が言ったということは誰にも言わないでください」
「ああ、約束しよう」
ことの始まりは本社企画部のフロアーにあるトイレの中で聞いた妻の出張先での不貞行為の噂話。僕はその噂話を吹聴した張本人の尻尾をつかむことにやっと成功した。
「あの、すみません。お話する前に聞きたいのですが、その事を知って飯坂さんはどうされるおつもりですか?」
逆に園部から僕に質問してきた。
「そんなことは君の知ったことではないだろう」
「でも、私の言ったことで白幡さんが不幸になるのなら・・・」
(貴様がそんなことを言える立場か!)
そこまで口に出かかった。
「僕が妻から慰謝料をもらって別れたら、君が責任とって結婚してやればいいじゃないか」
考えにもないことをつい口走ってしまった。
「それでもいいですけど・・・白幡さんは私を選んではくれなかった・・」
(当たり前だ!この若造が!誰がお前なんかに亜季を渡すか!)
「心配しなくてもいい。僕は亜季と別れるつもりはない。ただ夫として真実を受け止めておきたいだけなんだ」
僕は自分の心を落ち着かせて園部に言った。
「わかりました。それでは正直にお話しますが、まだ本当かどうかもわからないので、どうか早まった結論をだして白幡さんをおとしいれないでください」
「大丈夫、君に言われなくとも僕は冷静に判断するから」
僕はそう言うと、目の前にあるすっかり冷え切ったコーヒーをすすった。
「飯坂さんが立ち聞きされたトイレの中の話は、その一週間前に企画部の佐々岡さんから聞いたことを、口止めされていたにもかかわらずつい話してしまった時だったと思います」
そう言って園部はことの真相を話し始めた。
話の内容はだいたいこうだ。
妻は少なくとも企画部の男性社員三人と関係があって、そのすべては地方での出張の時だけということ。
複数回関係がある人間もいるそうだが、どういういきさつでそのような関係になったのかは不明。
関係はあくまでも二人の同意によるものということ。
また時期に関してもおそらく3〜4年くらい前からで、それ以前はなかったということ。
最後に東京での妻は決してそのような不貞行為は皆無とのこと。
以上が園部が佐々岡から聞いた内容だったが、佐々岡自身は妻と関係をもっていないらしい。
結局のところ園部自身も単に佐々岡からでまかせを聞かされたという可能性もある。
つまるところ確証もなく、噂話の域を脱していないのだ。
園部はそれでも本当かと思い、今回の出張を期待して出かけたようだったが、妻からの答えはノーだったということだ。
今回関係があったという企画部の3人の名前も園部から聞き出したが、そのうち二人は自分よりもずっと先輩社員であり、もう一人は僕よりも一つ下だった。若い方はたしか去年仙台に転勤になっているはず。しかし、いずれの三人もきちんとした家庭をもっていて、とてもそのような不貞行為に及ぶようには見えない。いいかげんな噂でこれら三人に問いただすわけにもいかず、僕はなんともはがゆい思いで園部と別れた。
結局園部からあの時のトイレの話の真相を聞きだすことができたが、それが真実なのかとうことすらわからないまま数日が経過していった。
妻を見ると嫉妬と興奮が混在したなんとも官能的な感情を抱いていたが、時間が経過するうちに次第にそれらの感情も薄まっていき、また以前の日常が繰り返されるようになっていった。
(あの時の興奮はいったいなんだったのだろう?)
ふとそんな風に思っている時に、園部から連絡が入った。
企画部に大きな仕事が入ったらしい。
大阪で会社のイベントがあり企画部による新製品のプレゼンも予定されていて、本社企画部からは妻を含めて4人の社員が現地入りするとのこと。園部はそのメンバーには入れなかったようだが、企画部リーダーの村井とサブリーダーの酒井(いずれも妻との関係を噂されている人間だ)それに若手で園部と同期入社の笹原と妻がプロジェクトメンバーとのことだ。
園部にはあの時に、今後妻の出張の予定があったらすぐに教えてもらうように頼んでいたのだ。
今回の出張は複数人なので、妻が不貞行為をするということは考えづらいが、メンバーに妻と関係があったと噂される人間がいるのがどうにも気になった。
(妻が出張中に複数の男に抱かれる・・・?)
そう思うと、何故だが急に胸が騒ぎ出した。
さて、妻の出張の予定が2ヵ月後だということがわかった。
前回の出張では結局当日僕は何も行動することはなかった。
今回は妻が不倫をする可能性はかなり低いので、費用をかけて興信所などに調べてもらっても無駄になってしまうかもしれない。
イベントが土日に行われるので、ならば自分が出張先の大阪まで乗り込むか?
しかし確実な証拠のないままホテルなどに乗り込んでも、上手くいくわけがない。
しばらくの間どうするか一人悩むだけだった。
「ねえ、聞いてる?」
「何が?」
夕食の時間、一人妄想を膨らませている時に妻が大きな声で僕に尋ねてきた。
「この前の出張の時はいろいろ聞いてきたくせに、今度はぜんぜん興味なしって感じなのね」
「えっ?出張?」
僕は出張という言葉に思わずびっくりして身体を反応させた。
「やっぱり全然聞いてなかったんだ。だからさっき言ったけど、来月の下旬の土日で大阪に出張があるから」
「あっそ・・・」
「もういいわ・・日にちが近くなったらまた言うから」
妻はそういうとさっさと夕食の後片付けをはじめた。
(しめた!今回の出張に関しては、前回と違い今までのように僕は妻の仕事に興味ないと思われたに違いない。幸いまだ僕が園部から妻に関しての連絡をもらっていることも知らないようだ。だとしたら今回の出張で妻は不貞行為におよぶかも・・)
そう思うと、何故だか僕は急にやる気がみなぎってきた。
「なに?思い出し笑いなんかして・・・変なあなた」
妻はキッチンの中で僕の顔を怪訝そうにうかがってそう言った。
「別になんでもないよ」
僕はそう言うと残ったご飯をかきこんだ。
妻の噂を聞いてから二度目の出張。
さて、今回はどのようにして出張の様子を伺うべきか?
いろいろ頭をめぐらせたが、なかなかこれという名案が浮かばないでいた。
そこで出張に同行する園部の同期入社の笹原に妻の監視をお願いできないか園部に頼んでみた。
笹原はあの時トイレで園部から妻の噂に関しては聞いている。
必要以上に噂話を広げたくはないので、その点でも笹原が一番好都合だった。
しかし、その後園部から笹原は監視役などしたくないと言われたと返事が来た。
園部は笹原には僕のことをまだ話をしていないので、この際僕から直接笹原に頼んでみることにした。
「はじめまして、東京第一営業所の飯坂といいます」
「は?」
僕は園部に笹原を飲みに誘い出して欲しいと頼んだ。その席に突然僕が割り込んだのである。
笹原の席の前に僕の名刺を置いて挨拶をしたが、突然の来客にただ戸惑うだけだった。
すぐに僕は企画部白幡の亭主であることを笹原に言うと、笹原は園部をにらみつけた。
「お前が仕組んだんだろ?」
「ごめん笹原、でも飯坂さんの話を聞いてあげてくれ」
僕は今までの経緯を正直に笹原に伝えた。
「別に監視するってわけではないんだ。ただ、妻の行動でおかしいなと思うことがあったら、僕に教えて欲しいんだ」
「飯坂さんもマジでコイツの言うことを信じてるんですか?」
「別に信じてるとか信じていないとかではなく、どうしても妻のことが気になるだけなんだよ。あの時偶然にも君たちの話を聞いてしまってから。他に頼めることも出来ないので、恥を忍んでこうやって君にお願いにきたんだ。頼む」
そう言って僕は年下の笹原に頭を下げた。
「わかりましたよ、飯坂さんがそこまで言うなら。でも本当に白幡さんはそういうタイプじゃないですよ、何もないと思いますけど・・」
「ありがとう。何もなければ、何もなかったと教えてくれればそれでいいんだ」
こうやって僕は、次の出張の時に妻の監視役を一人確保することが出来た。ただ、笹原自身がミイラ取りがミイラになると言う可能性も考えたが、それならばそれでもいいと腹をくくっていた。
いよいよ出張の日の朝になった。
イベントは土日だが、現地入りは金曜日の夜で前泊となる。また最終日の日曜は打ち上げがあるとのことで、結局今回は3泊4日の出張だった。
「じゃあ今日からしばらくいないけど、あまり飲みすぎないでね」
金曜日の朝、妻は出かける支度を終えた後に僕にそう言った。
その日は淡いクリーム色のスーツを着ていた。普段の妻はパンツスタイルで出勤することが多いが、プレゼンなどで社外の人間の前に立つ場合などはスカートを穿く。スカート丈も品を損なわない程度に短く、妻のほっそりとした足が魅力的に見える。夫である僕がそう思うのだから、他の男性たちもたまに見る妻のスカート姿を楽しみにしているに違いないだろう。と僕は思った。
(不貞行為をするなら、移動日で仕事のない今日か?・・・それとも最終日の打ち上げ後か?・・・いや、あやしまれないように土曜の深夜とか・・・・)
僕は妻の姿を見ながらそんなことを考えていた。
その日の夜に笹原からメールで報告があった。
≪お疲れ様です。初日の報告をします。7時にホテルに到着しチェックインしました。部屋は男性陣が5階で白幡さんだけ8階です。ホテル1階の中華レストランで食事をして9時には解散しました。白幡さんにも他の男性陣にもあやしいところはありませんでした!(^^)!≫
メールが来たのが9時12分、まだまだ夜はこれからだ。
≪ありがとう、引き続き何か不思議な行動があれば教えてください≫
とりあえず、引き続き監視をしてもらうように返信をした。
次の日も9時過ぎに笹原からメールが来た。
≪お疲れ様です。今日はイベントの初日です。みんなとても緊張しましたが、なんとかクライアントの評判は得られたと感触があります。また、白幡さんのプレゼンもいつも通り冴えていました。怪しい行動などありませんでした!(^^)!≫
結局最終日も夜の10時前に同じようなメールが笹原から届いた。
(こいつは監視するっていう意味がわかっているのか?)
僕は笹原に監視役を頼んだことをとても後悔した。はじめから自分が行けばよかったと。
(こうしているうちにも妻は二人の男にかわるがわるやられているのでは?)
頭の中から妻と二人の男との情事の姿が離れないでいた。
結局今回の妻の出張も僕は何も出来ず、この休みは家で一人悶々と過ごすだけで終わってしまった。
次の日の月曜日は外回りの営業もなく、僕は朝から営業所で内勤だった。
昼過ぎに妻からメールが来た。
≪今東京に着いた。一度会社に寄ってから今日は帰る≫
土日に仕事があったので、今日は休みなのだ。
(出張連中は今日は移動だけでお休みか・・・はっ・・・やるなら今日これから出来るじゃないか!・・・そ、そうだ、家になど帰らず今からホテルにしけこんでやるつもりなんじゃ!・・・会社に行くふりをしてそのままラブホテルに行ってるんじゃ!・・・)
僕はそう思うと居ても立ってもいられなくなった。とてもデスクに座って仕事などしていられる心境ではなくなった。
僕は気分がすぐれないと言って会社を早退することにした。
(今やってるのか?・・・どこでだ?・・・どこのホテルなんだ!・・・)
頭の中では妻が同僚たちに激しく突かれている。あせっても東京にいくつもあるホテルを探し出すなんて到底不可能だ。僕は妻が本当に家に帰ったのかを確かめるために自宅へ向かった。家に着くと妻はシャワーを浴びた後らしく髪を乾かしていた。
(同僚と寝た痕跡を流すためにこんな時間にシャワーを浴びたのか?)
「あなた・・・どうしたのこんな時間に?・・・仕事は?」
その時の僕の形相にびっくりして妻は尋ねてきた。
「仕事どころじゃないんだよ!!・・・君が出張のたびに同僚に抱かれてると思うと!!」
僕はいつの間にか大きな声でそう叫んでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
妻は絶句してそのまま僕を見つめている。
しばらくの間沈黙が続いた。
「・・・ごめんなさい・・・」
静寂を破るように妻がいきなりそうつぶやいた。
「いや、こっちもごめん・・・えっ?ご、ごめん・・・って?」
「いつかあなた知られるって覚悟してた・・・」
思いがけない妻の言葉に僕は何も考えられなくなっていた。
「出張先で同僚に抱かれてたっていうのは、本当なのか?」
妻は無言のままコクリとうなずいた。
何か言おうかと思って必死に言葉を探したが、何も言葉が出てこない。
再び長い沈黙が続いた。
「ちょっと・・・出てくる・・」
僕は長い沈黙に耐え切れず、妻にそう言っていた。
「ちょ、ちょっと待って。出て行くなら私が出て行く、あなたは家にいて」
「いや、頭を冷やしたいから外に行く」
僕はそう言うと家から出て行ってしまった。
(亜季が出張の時に同僚に抱かれていた・・・やっぱり同僚に抱かれていたんだ・・・出張中に・・・抱かれていた・・・・・本当だったんだ・・・・)
頭の中で繰り返し繰り返し何度もつぶやいていた。
その後僕はあてもなく2時間近く歩き回っていた。
妻からの突然の告白に僕は自分を失って東京の街を徘徊していた。
歩きながら妻がどんな風に抱かれていたのかをずっと想像していた。
ふと気がつくと僕は学生時代に住んでいた街に来ていた。何度も通った定食屋はいつの間にかなくなり、チェーンの焼き鳥屋に変わっていた。開店の準備中だったその店に入ってみると、店主は快く向かいいれてくれた。カウンター席に座り生ビールを注文すると、妻から僕の携帯にメールが届いた。
≪あなた、本当にごめんなさい。今どこにいるの?出て行くなら私が出て行くので、あなたは帰ってきてください≫
≪君は家に居てくれ≫
妻にそうメールを返信すると、僕は出されたビールを一気に飲み干した。
家に帰っても妻が居ない生活は僕には考えられず、とても耐えられるものではなかった。
頭の中では他人に抱かれて悶えている妻を想像していた。
それを打ち消そうとしてもダメだった。時間がたてばたつほど、僕の頭の中で妻は嫌らしく男に抱かれていくのだ。そして、僕の中からは次第に別の興味が沸いてくるのだ。
≪何人の男と寝たんだ?≫
しばらくした後、僕は我慢が出来なくなり妻にメールをしていた。しばらくして返信がかえってきた。
≪5人≫
(妻は僕の知らない間に5人もの男に抱かれていたのか!)
激しい嫉妬心と同時に異常な興奮を感じてきた。
(5人もの男といったいどんなセックスをしていたんだ!)
≪いつから?≫
2杯目のビールを飲み干すころ、僕は妻にメールした。
≪4年前から≫
しばらくするとまた妻から返信があった。
(4年前から5人もの男に抱かれてきたのか・・)
妻と結婚後すぐに僕は本社から畑違いの営業所に移りがむしゃらに働いた。4年前と言えば、ちょうど部下もでき、益々忙しくなっていた時期だ。確かにその頃は妻との関係もほとんどなくなっていた。企画部の3人の名前はもうすでに情報が入っていた。それ以外にも2人もいるのか。だいたい企画部の男性社員なんて10人もいないはず。ならばほとんどの男に抱かれたんじゃないか。
≪だれと?≫
僕はたまらず妻にメールを出した。
返信が来るまでしばらく時間がかかった。
≪会社の人が4人、クライアントの人が1人≫
(社外の男にも抱かれていたのか!それなら枕営業と変わらないじゃないか!)
頭の中では5人の男にまわされている妻が喘いでいた。もう僕は自分の興味を抑えることが出来なくなっていた。
≪どんな風に抱かれたんだ?≫
僕は我慢が出来ずメールしてしまったが妻からの返信はなかった。
ビールを何杯飲んだのかわからないが、全く酔いがまわらない。むしろ頭は冴えてきて、興奮してきていた。開店した店の中もだいぶお客さんが入ってきて騒がしくなってきた。
妻から返信がきた。
≪ごめんなさい、私が出て行きます≫
(妻がいなくなってしまう・・・僕の妻が・・・)
妻を傷つけてしまった後悔と、妻を失ってしまう恐怖心が同時に押し寄せてきて、僕はたまらず焼き鳥屋の勘定を済ませるとタクシーをつかまえて家に向かった。
2時間近く歩いたのに車では20分で家に着いた。しかし、僕にとっては死ぬほど長く感じられる20分だった。家に入ると妻は身支度を整えて家を出て行くところだった。
「出て行かないでくれ、頼む」
僕は頭を下げて妻に嘆願した。
「やめて、あなたが頭を下げるなんて・・・」
妻はあわてて僕の肩を抱いた。
「あなた、私・・・」
「いいんだ・・・と、とにかく、君は何も言わなくて・・・そ、そうだ・・腹減ったな・・ご飯にしよう・・・今日は僕が作るから・・君はそこに座っていればいい・・・えーと、何を作ろうかな?・・おっ、焼きそばがあった・・・よし、焼きそばを作ろう・・・上手いぞ・・・俺の作った焼きそばは・・・」
僕は涙を流す妻をなんとかリビングのソファーに座らせると、必死になってしゃべり続けた。途中手伝おうとする妻を制して、何度も失敗し黒くこげた焼きそばを作り、妻と二人で食べた。その後も僕はしゃべり続けた。とにかく沈黙が怖かった。
「あなたは私を許すことが出来るの?」
さすがに2時間もしゃべり続けると、話すこともなくなり、時々沈黙が出始めた時だった。おもむろに妻が僕へ質問をしてきた。
「許せるかどうかなんてまだわからない。今日はまだ結論を出したくない。それより僕はそれもこれも全部ひっくるめて、亜季のことがより一層愛おしくてたまらないんだ」
そう言うと僕は妻の手を引きベッドルームへ行った。
そして僕は今までたまっていたものを一気に吐き出すかのように、一心不乱に妻を抱いた。
妻もそれにこたえてくれた。
一度目の射精を終えた後、いつもの僕なら妻の身体からすぐに離れてしまうところだが、今日の僕は妻の身体を惜しむように愛撫を続けていた。しばらくすると、妻が思いもしなかった行動に出た。突然僕のペニスを口に含んだのだ。付き合い始めた当初など、僕は妻に無理やりフェラチオを強要したことが何度かあった。しかし、妻はそれをとても嫌がり受け入れてはくれなかった。結婚当初に何度かしてもらったことがあるが、いずれにしても妻は積極的ではなかった。その後は僕自身も妻にそれを強要することはなくなった。しかし、今日は明らかに今までの妻の行動ではなかった。しかもその舌わざは今までに感じたことがないくらい絶妙で、男の性感を知り尽くしているように思えた。僕のペニスはすぐに元気を取り戻した。それと同時に、妻が他の男に抱かれていたことを実感した瞬間だった。
その日三度目の射精を終えてからだった。もう時間は深夜2時を過ぎていた。
「なあ亜季、ひょっとしてこれが僕と最後の夜だと思っているんじゃないか?」
妻ははっとした顔をして僕を見た。
「僕はこんなに素敵な亜季を一生離さないつもりだよ」
「でも、私は・・あなたを裏切った・・・」
「裏切ったのかどうかこれから僕が決めるよ」
「どういうこと?・・・あなた」
妻は不思議そうに僕を見つめてそう言った。
「僕に今までのことを全て話して欲しい」
そして、そう言うと僕はもう一度妻を抱きしめた。
「明日は休みなんだろ?僕も明日は仕事を休むよ。だから今からゆっくり今までのことを聞かせて欲しい」
そう言って僕は妻の髪を撫で付けた。妻は僕の胸の中で泣きながら『ごめんなさい・・・』と何度もつぶやいていた。
「もう泣かなくていいよ。こんなことになったのは僕のせいもあるのかもしれない。だから全部今までのことをありのまま話してくれ」
妻は赤く腫らした目を僕に見せると、「わかったわ・・」と小さく言った。
「それと、僕は君に答えずらい質問もするかもしれないけど、正直に答えて欲しい。今後の僕たちのために」
妻はそれを聞くと小さく頷いた。
しばらくすると妻は最初の男の話を語り始めた。
「一番最初は4年前、甲府に行った時で相手は植村さんだったの・・・」
妻は最初の男の話をそう言って言い出し始めた。植村と言うのは妻より一つ上の社員で僕よりも一つ下だ。一年前に企画立案の能力を買われ、仙台の関連会社に出向となっている。妻は入社以来一番歳の近い先輩社員ということでいろいろと親しかったようだ。親しいと言っても同僚としてということで、それまでは男と女を意識したことは一度もなかったと言う。当時植村はまだ新婚だった。しかし出産を控えた新妻は実家に里帰りしていたらしい。甲府への出張は当日に急慮決まったもので、そもそも日帰りの予定で妻と植村は出発した。現地でのトラブルで以外と仕事が長引き、終わったのが夜の7時を回っていたと言う。甲府駅に着くと植村は突然妻の手をとって言ってきた。
「なあ、明日は休みだし、もう遅いから今日は泊まっていかないか?」
植村と二人で出張というのはそれまでにも何回かあったが、その時の植村の表情が今までのものとは違っていたとすぐに妻は感じ取ったようだった。
「主人に聞いてみないと・・・」
妻はすぐには返答せず植村にそう言ったらしい。その頃僕はちょうど大切な得意様の接待だった。そんな時に妻から電話がかかってきて、『泊まればいい、そんなことでいちいち電話してくるな』とそっけない返答をしたと言うが覚えていない。
妻と植村はその後海鮮料理屋に行き食事を取ったという。約一時間くらいはそれまでの仲の良い先輩と後輩だったが、お酒が進み、ふともらした植村の言葉から方向が変わっていった。
「お前のところはもう結婚して3年たつけど子供はまだなのか?」
「あの人、今仕事が忙しいし・・それどころじゃないみたい・・」
「そっか、俺も嫁さん実家に帰ってるからご無沙汰なんだ。今日は寂しいもの同士で盛り上がるか?」
妻はその時の植村のセリフをそんな風に覚えていた。
その後トイレにたった植村から、目の前のホテルの部屋が空いていたから予約を入れたと聞かされ二人は海鮮料理屋を後にした。
ホテルに行くとロビーで植村がチェックインの手続きをしていて、フロントから渡されたキーが一つだった。何故キーが一つなのかと植村に聞くと、ツインの部屋しか空いていなかったと、植村に告げられたと言う。躊躇しながらも妻は植村と一緒にツインの部屋に入った。その後植村は飲み物を買ってくると言って1階にあるコンビニに一人で出て行った。その時妻は僕にもう一度電話をしたらしい。しかし、接待の二次会に居た僕は妻の着信には全く気がつかなかった。これまでに僕は妻からの着信履歴を無視したことは何度もあった。その時に僕が電話に出ていれば、植村との情事はきっぱりと断っていたと妻は振り返った。
そんな寂しい気持ちのまま妻はその後自分を女として見てくれていた植村に抱かれてしまったと言った。植村はコンビニで避妊具まで購入してきていた。
次の日帰ってきた妻は、僕の顔を見ることが出来なかったと言うが、僕は全然それに気がつかなかった。その後も妻は植村との出張の際には数回身体の関係があったという。ただ植村自身も幸せな家庭を持っており、決して東京で妻を求めることはなかったという。出張の時だけの情事と割り切っていた。初めのセックスはごくノーマルなものだったようだが、回を重ねるごとに植村の要求も増えてきていて、それに答えてしまう自分に歯止めが利かなくなるようで怖くなっていた頃、植村の転勤が決まり妻はほっとしたと言っていた。
僕は妻の身体をやさしく愛撫しながら、植村との一件を冷静に聞くことができた。
「やっぱり君が僕を裏切ったわけじゃないよ・・・僕も悪かったんだ・・・」
僕は話を聞き終わってからそう言うと、妻に口付けをした。
「さあ、二人目の話を聞かせてくれ・・・」
二人目は企画部のサブリーダーである酒井だった。酒井は年齢は40代前半で、小太りで頭髪も薄く見た目にも冴えない男だった。僕は園部から酒井が妻と関係したと聞いて、一番納得がいかない男でもあった。その日は妻と酒井、それに企画部の部長である柳本と三人で仙台にイベントで出張した時だった。柳本は取締役の部長でもあり、本社でも豪腕で有名だ。企画部の社員はみな、柳本に振り回されていることは有名だった。その日小さなトラブルがあり、柳本は酒井を執拗に叱責したらしい。普段会社でも酒井は柳本に幾度となく叱責されているところ見ていて、気の毒だと感じていたようだった。そして仙台にまで来て柳本の叱責を受け、酒井はすっかり肩を落としていたと言う。しかし、夕方に柳本は急な本社での用事のため、イベントを酒井と妻にまかせて東京に戻って行った。その後なんとか二人でイベントを無事終了させて出張先のホテルに着いても、酒井は柳本に叱責されたことを引きずっていた。妻はそんな酒井に元気になってもらおうと、ホテルのエレベーターで別れ際に酒井の頬にキスをしたのだと言う。
「何故酒井さんにキスをしたんだ?」
「前の日にあなたと喧嘩したことが原因だったのかもしれない・・・」
妻は正直にそう話してくれた。
妻がホテルの部屋に入りしばらくすると外からノックが聞こえ、ドアをあけるとそこに酒井が立っていた。
「さっきは突然だったからお礼を言えなかったけど、キスしてくれてどうもありがとう」
酒井はドアの外で妻にそう言ってきた。妻はそれを聞いて思わず吹き出してしまったという。酒井がそのまま自分の部屋に引き返そうとするところを、妻が呼びとめて部屋に招きいれた。
「酒井さん、少し私の部屋で飲みませんか?」
妻にそう言われた時の酒井の幸せそうな顔が、僕にも容易に想像できた。
名前によらず、酒に弱い酒井は350mlのビールで顔を真っ赤にしていたと言う。
「白幡くん、もう一度キスをしてくれないか?」
酔った勢いで酒井は妻にそう何度も迫ったようだが、決して強引ではなかったようだった。
妻も軽い気持ちで、「じゃああと一回だけですよ」と言ったキスが一回が二回、三回としだいにエスカレートしていき、いつの間にか唇と唇を重ねる本格的なキスへと移行していったと言う。キスをしたまま、酒井は妻の手をとり自分の股間にあてがうと、ズボンの上からの堅く怒張したペニスがはっきりとわかり、妻はそのまま力が抜けていったと言う。抵抗ができないまま妻は酒井に洋服を脱がされ、全裸にされてからの愛撫は今までに経験しなかった快感を味わったと言う。また、普段の見た目から想像もできないくらい酒井の精力は強く、その日妻は何度も逝かされたと振り返った。避妊具をもっていなかったので、その日酒井は最終的に膣外へ射精して終わったと言う。
妻の酒井に対する行為は確かに裏切り行為かもしれないが、僕自身本社に居る時から酒井という人間を良く知っているし、決して妻が心までも奪われる人間でもなく、身体だけの関係と割り切れば充分に許せる範囲だった。また、その後も酒井とは何度か出張を同行し関係をもったことも数回あったと言った。しかし臆病な酒井は出張が複数人だったときは決して求めてくるようなことはなかったと言う。今回の出張も酒井とは関係しなかったということだ。
「酒井さんなら僕は嫉妬しないし、許せるよ・・・」
そう妻に言うと、先ほどから襲われている睡魔に勝てず僕は妻の胸の中で深い眠りについた。
次の日の朝8時に目が覚めると、ベッドには妻の姿はなかった。
妻はいつものように綺麗に身なりを整えて僕のために朝食を作っていた。僕はあわてて会社に電話をして休暇をとった。
「本当に休むのね」
「言ったじゃないか、今日は一日ゆっくり休んで君の話を聞くって」
僕はシャツとパンツで頭はボサボサのままダイニングのテーブルについた。
朝食を食べ終えコーヒーをすすっている時に僕は妻に提案してみた。
「悪いけど今日一日だけお願いがあるんだ」
「なに?」
「今日一日僕の前で裸でいてくれないか?」
「えっ、どうして?」
「君の話をより官能的に聞きたいから」
動揺している妻をよそに僕はあさっりとそう言った。
「どうしても裸でなければダメなの?あなたは?」
それでも妻は躊躇していた。普段の妻ならば冗談じゃないときっぱり断るところだが、さすがに昨日の今日で僕に遠慮をしているのがわかる。
「男が裸じゃ、あまり絵にならないからな、僕はこのままシャツとパンツでいるよ」
「せめて私にも下着くらい着させて・・」
妻の目を見ると、妻をいたぶりたくないと言う思いから心が締め付けられる。
「わかったよ、じゃあ出張の時に着けていた下着を着けてくれ」
「わかったわ・・・」
妻はそう言うと脱衣所に消えていった。
「あなた、リビングのカーテンを閉めて・・・」
「ここは15階だよ、誰も外から見えやしないよ」
「でも・・・」
「朝からカーテンを引いて暗くしたくないんだ。それに、明るいところで君の肌をきちんと見てみたい」
しばらくすると妻は脱衣所から下着姿で恥ずかしそうに出てきた。薄いピンク色の下着を身に着けた妻はとても綺麗だった。
「出張の時はいつもそんなセクシーな下着を着けていたんだね」
僕は自分の言い方が皮肉っぽくて、我ながら自分の言葉に嫌悪感を覚えた。
「出張の時だからと言うわけではないわ・・・あなたと旅行に行くときとか・・記念日の日とか・・私はそういうときにいつもよそ行きの下着を着けていたのよ・・・」
なるほど、確かにそうだったかもしれない。僕はそんなことにも気がつかないから、5人もの男に妻を寝取られても気がつかなかったのだろうと思った。
「こっちへきて昨日の話の続きを聞かせてくれ」
妻は下着姿のまま僕のとなりにあるソファーに腰をかけると三人目の男との話をしだした。
三人目の男は企画部リーダーの村井だった。村井の歳は40代半ばで、色黒で顔のとがった印象だ。比較的頭がきれるので、次期企画部の部長に一番近い男だと聞いている。村井と妻が初めて関係をもったのは2年半前の松本への出張の時だった。その日妻は朝から風邪で体調が悪く、プレゼンが終わった後は熱がかなり上がってきていた。仕事が終わり、食事でもしようかと村井が誘ってきたが、妻は体調がすぐれないと言ってホテルに戻った。ホテルのベッドで一人横になっていると、村井が薬と栄養剤を持って来てくれたと言う。次の日の朝、すっかり体調が戻り、シャワーを浴びて髪を乾かしている時に村井が心配して部屋にやってきた。
「おかげさまでもう熱も下がりました」
と、ドア越しに妻が答えると、ちょっと顔色だけ見せて欲しいと、村井が言ったという。
しかたなしに妻がドアを開けると、村井は熱が下がったか確認するねと言って自分の額を妻の額に当ててきたと言う。妻は村井の行動に一瞬びっくりしたが、その後の行動は予想がついたと言っていた。村井は妻の予想通りそのまま妻に口付けをしてきた。村井の口付けはとても情熱的で妻はすぐに力を失いなすがままにされてしまったという。ベッドに寝かされると、やさしく愛撫され妻はそのまま大人のセックスの世界へ入って行ったようだった。村井はきちんと避妊具まで用意しており、自分で後始末までして帰ったようだ。それから村井と出張で同行した時は、きまって早朝に妻の部屋に村井が来るようになったと言う。
「じゃあ昨日までの出張は村井さんもいたようだけどどうだったの?」
僕は村井との関係を聞き終わってから妻に質問をしてみた。
「・・・ごめんなさい・・・」
やはり昨日までの出張でも妻は村井に抱かれていたんだ。
「3日間抱かれたのか?」
妻は黙って頷いた。
つい昨日の朝まで妻は村井に抱かれていた。しかも毎朝3日間連続で。普通の亭主であれば怒りで逆上するところだが、しかし何故だが今日の僕は怒りがこみ上げてこない。僕は妻を自分の隣に呼び寄せるとたまらず唇を奪った。あわただしく妻の下着を取るとソファーの上で全身を愛撫した。すでに乳首は堅く尖り、あそこは愛液で溢れていた。
「あなた・・・カーテンを・・」
「いいさ、もし誰かに見られたとしても、もう君は僕だけのものじゃないんだ」
「そんな・・お願い、わかって・・・あなたを一番愛しているの・・・でも、身体が言うことをきかなくなって・・・」
「わかってるさ、僕はこうやってきみと他の男とのことを聞き、そして興奮し、きみを抱く・・・そうやって今回のことを消化しようとしているんだ・・・だから、正直に話してもっと僕を興奮させて欲しい」
僕は今まで妻はセックスがあまり好きではないと勝手に思い込んでいたようだ。不倫によって妻の女としての本能は明らかに開発させられていた。それに、妻が寝取られたということで自分がこんなにも興奮するということも新しい発見だった。
いつの間にかもう昼を過ぎていた。僕たちは二人でシャワーをあびて、無言のまま妻の作った昼食を食べた。僕はなんとなく虚脱感におそわれ、ソファーに座って食事の後片付けをする妻を見ていた。
僕は黙ってキッチンで洗い物をする妻に近づいていった。
「今日は一日裸でいる約束だよ」
そう言って僕はゆっくりと妻の衣類を脱がした。妻はされるまま抵抗しなかった。
妻を全裸にすると、リビングの温度を少し高めに設定して再びソファーに腰をかけた。
「さあ、まだ二人残っているよ・・全部話してくれる約束だろ・・・」
「わかったわ・・これ、全部終わったらそっちへ行くわ・・」
そう言った妻の表情がなんとも悲しそうで僕は心を痛めた。
妻は僕に入れてくれた紅茶をもって来てくれた。
「一年前の2月に北海道に一人で仕事に行ったのを覚えている?その時に二人の人と・・・」
そう言って妻は4・5人目の男との話をし始めた。
去年札幌へ一人でエキシビジョンの仕事で出張した際、その時のクライアントで天野さんという人と偶然に出会ったと言う。
天野さんは妻が新入社員の頃に東京のクライアントで大変お世話になった人らしい。
物腰のやわらかい紳士的な中年だったようだ。定年を控えて天野さんは札幌の支所に単身で赴任していた。
「白幡さんもイベントを一人でこなせるようになったのですね・・いや、失礼、たしかご結婚されたんですよね?」
「ええ、もう6年前に・・・でも仕事中は今でも白幡の名前です」
その時のイベントのクライアントの一人だった天野さんに突然声をかけられてびっくりしたのと同時に、懐かしい気持ちがこみ上げてきたと妻は当時を振り返っていた。
札幌の郊外にある高層ホテルのレストランでの夜会のあと、妻と天野さんは二人でバーへ行き、そのままベッドを共にしたという。窓の外に見える雪の札幌の幻想的な景色が、妻の心に隙間を作ってしまったようだった。
「きみとこんなによい思い出が出来て、最後に札幌に左遷されたかいがあったよ」
天野さんはベッドの中でそんな風に妻に言ったそうだ。
また、その次の日は北海道工場の製作部の人に工場を案内された後、帰りの飛行機までまだだいぶ時間があったので、製作部の人に空港近くを案内してもらったそうだ。
「あの白いレストラン素敵ね」
空港近くの林の中にあった白い建物を見てつい妻がもらした。
「行ってみますか?まだ時間もあるし」
そう言って製作部の人はその白い建物の下に車を走らせると、すぐにそれはレストランなどではないことは妻にもわかったそうだ。
「入ってみます?」
妻の返事を聞かないまま、車はその中に入っていった。
前日に天野さんとの一夜のあとで、まだ身体が欲していたのか、何故断りきれなかったのか不思議だったと妻は振り返っていた。
それまでに妻はすべての誘いに応じていたわけではなかった。断った話も聞かせてもらった。
中でも社内では佐々岡がしつこかったと言う。
佐々岡は出張の時意外、東京でも露骨に妻を誘ってきたという。
また、4ヶ月前に園部に出張で言い寄られた時は、少しぐらついたが、すぐに自制心を取り戻してきちんと断ったと言った。そもそも妻は若い社員とは関係を持たないようにしていたと言う。
若い男の方が変に束縛欲があり、また地位がないことから比較的口が軽いと言っていた。
だから、いずれ佐々岡や園部あたりから僕の耳に入るだろうと妻は恐れていたと言っていた。
結婚前は妻に言い寄ってくる男はいるのかと、目を光らせていた僕も、結婚後何年か経過したのちやがて僕は妻の行動にすら興味がなくなってしまっていた。でも、今僕のとなりにいる妻の身体はまだ充分に魅力的で、この乳房や腰、そしてヘアーの奥には男を満足させるには充分な機能が備わっている。こうして愛撫をすると、妻の身体はすぐに男を受け入れる準備を始めてしまう。これから先も妻はどれだけの男を満足させてしまうのだろうか。そう思うと僕のペニスはまた妻の熱い身体の中に入って行くのだった。
その日結局僕たちは一歩も外には出ず、二人で何度となく情事と楽しんだ。
新婚時代でもこんなことはなかった。自分でもどうしてしまったのかと思うほど精力が沸いてきた。
日中に二度ほど宅配やセールスなどの来客があり、妻を裸のまま対応させようかといじわるな考えを起こしたが、さすがにまだ僕にはそこまでさせる勇気はなく、妻はその時だけ服を着た。
妻が戻ってくると、また妻を裸にしてどんなセックスをしたのかと聞く。
日が暮れてくると僕たちはベッドルームにその場所を移した。少し体力が萎えてくると、妻はその口で僕に元気を与えてくれた。さらには僕の前立腺を直接刺激してくる。植村から教え込まれたと言っていた。
「フェラチオは好きじゃなかったんじゃないか?」
献身的に僕のペニスを口に含む妻に聞いてみた。
「・・・あまり見ないで・・・恥ずかしいから・・・今でも抵抗はあるのよ・・」
「これまでの人にもしてあげたのか?」
妻にとってつらい質問でもきちんと答える約束をしていた。
「・・・望む人だけはね・・・でも、天野さん以外はみんなして欲しいと言ってきたけど・・・」
ということは4人の男のペニスを口に含んだということか。
「・・わたし・・・あなたが最初の人だったでしょ・・・だから、あまりこういうことを知らなくて・・あなたのことを傷つけることを言ってしまったとずっと思っていたのよ・・・・」
そう言うと妻は僕のペニスに再び絶妙な刺激を与えてくれ、僕は活力をみなぎらせていった。
今日の妻は僕の言うことを何でも従ってくれた。前から後ろから、その日僕は何度も妻を絶頂に導くことが出来た。
こんな日々が永遠と続くのか、また数ヶ月もすれば淡白な毎日に戻ってしまうのか今の僕にはわからない。ただ妻には今日の日のようにいつまでも艶のある妖艶な女の香りを残しておいて欲しいと真剣に思った。すでに午前になろうとしていた。
「わたしたちはこの後どうなっていくのかしら?」
もう何時間もベッドの中に僕たちはいた。
「きみはどうしたいんだ?」
「もう、後戻りは出来ないことはわかっているわ・・・私はあなたが決めたことに従います・・・別れたいというなら・・・それでも・・・」
妻は裸のまま僕に寄り添ってそう言う。妻の体温を感じながら『手放せるものか』と心の中で思った。
「最初に言ったろ、僕はきみを愛おしくてたまらないと・・・だから決してきみと別れたりはしないよ」
妻が不思議そうに僕を覗き込む。そんな妻の表情までもが今日は愛おしく感じられる。
「でも、私がしてしまったことは・・・もう消せないわ・・」
「消すことなんてないさ、今のままの亜季が好きなんだよ、これからもずっとそのままでいいのさ」
「どういうこと?」
「今までどおり、きみは年に数回、出張などのときに他の男に抱かれる・・・そして、そのことを僕に話してくれればいい」
「そ、そんなこと・・・もう出来ないわ・・」
「出来ないと言うなら、それでもいいさ・・・きみがしたくないのならしなくていいし、したくなったら我慢しなくてもいい・・・僕たちの夫婦関係はこれから新しく作っていけばいいのさ」
「・・あなた・・・」
これから自分たちがいったい何処に向かっていくのか、僕にも全くわからなかった。これで妻の不倫は終わりを告げるのか、あるいは僕たちの新しい生活の序章に過ぎないのか。ただ、僕の妻、亜季が愛おしくて、かわいくてしかたがない。そんな妻が僕以外の男に抱かれる。僕は嫉妬心で胸が張り裂けそうになるけど、それ以上に妻がどのような表情で悶えるのかを知りたい。そして、もしその場を目の当たりにしてしまったら、僕はどんな風になってしまうのだろう。
そんな思いでその日の長い一日は終わっていった。
第一部 完
妻の告白から二ヶ月が経過した。
あれから僕は毎晩のように妻から話を聞きだし、そして興奮し、妻を何度も抱いた。
5人もの男とどんな体位で寝たんだ?
一番感じた体位は?
一晩でどれだけ逝かされたのか?
セックスの最中どんな会話をしたのか?
実際にどこを愛撫されたのか?
絶頂を迎えた時はどんな声を出したのか?
どんなふうにあそこを触られたのか?
口の中で射精されたときは飲み込んだのか?
僕は妻とセックスの最中に数え切れないほどの質問をした。
そして、同じ質問も何度もした。
妻は嫌な顔を一つもせずにそれらの質問に答えてくれた。
それによって、僕の嫉妬心から沸きあがってくる怒りはおさまっていくのだった。
二ヶ月以上が経ち、僕の感情がだいぶ落ち着いてきた頃、突然園部から連絡が入った。
「この前の出張が終わってから白幡さんの様子が変わった気がしますけど、何かあったのですか?」
僕が電話に出ると、園部は唐突そう切り出してきた。
「変わった?」
僕は平静を装って園部にそう答えた。
「ええ、どうもそんな気がするんです。その後の出張も、なんか避けてるようですし・・」
「避けてる?」
妻とはその後、仕事のことは話していなかった。
妻の情事の話は繰り返し聞きだしていたが、これからについては何一つ話し合っていなかったのだ。
「いや、避けてるというか・・・何か・・村井さんや酒井さんを避けているような・・・僕の取越し苦労かもしれませんが。笹原は何もなかったと言っていますけど、やっぱり何かあったのかと・・・すみません、僕が気にすることじゃないですよね」
確かにこの二ヶ月間で僕たちの夫婦関係は一変した。普段あまり感情を表に出さない冷静な妻であっても、見ている人にはわかる変化があったのだろう。
「いや、気にしてくれてありがとう。そうだ、園部くん、今晩ひまかい?暇なら飲みにでも行かないか?」
僕はその場で園部にどう言おうか決めかねたので、とりあえず時間を作り、今後妻のことをどうするかじっくり考えてから、園部を利用できるのならそうしようと考えて飲みに誘ってみた。
「えっ、いいですよ。僕も飯坂さんとじっくり話したいと思っていたので」
すぐに園部は誘いに乗ってきた。
「わかった、じゃあ場所は後でメールする」
そう言って僕は電話を切ったが、園部と会って実際何を話そうかずいぶんと迷った。
結局答えは見つからないまま、園部との約束の時間になった。
自分から誘った話だ。
僕は何も考えずに園部と会うことにした。
「おひさしぶりです」
僕はその夜、園部を目黒の居酒屋に誘った。
本社企画部の園部は独身で今年29歳になる。
色黒で背が高く、整った顔つきをしているが、現在は特定の彼女はいないようだ。
以前に聞いたが、園部は妻に対して若干の好意を抱いている。
僕はこの園部が友人の笹原とトイレで妻の噂話をしているのを偶然にも聞いてしまった。
噂話というのは、妻が出張中に同僚と情事を重ねているということだった。
その後僕はこの園部や笹原と共に噂話の真相をつかもうとした。
結局証拠をつかむことは出来なかったが、僕は妻の口から真実を聞き出すことが出来た。
しかし、一番最初に噂話を吹聴した佐々岡(これは僕より一つ上の先輩社員だが)
はともかく、園部と笹原は事の真相をいまだ知らない。
もちろん僕は園部に妻から聞いたことを話す気など少しもない。
ただその後妻の会社での態度について聞いてみたかったので園部を飲みに誘った。
「まあ、堅くならないで、今日は二人でくつろいで飲もう」
園部は僕に弱みを握られているので、僕の前ではいつも緊張した顔つきになる。
「亜季の様子があれから変わったって、どういうことなんだ?」
飲み始めて30分もすると、すっかり二人ともリラックスしてきた。僕はなにげなく妻の仕事の様子を園部に聞いてみた。
「僕の思い過ごしなのかもしれませんが、なんとなくそんな気がして・・・自宅では奥さんの様子は変わりないですか?」
逆に園部の方から妻の様子をうかがってきた。
僕はこれに対してどう答えようかと一瞬迷った。
「いや、特に何も変わらないよ」
平静を装って僕はそう園部に答えた。
その後ぼくたちは居酒屋で飲みながら当たり障りのない会話をした。
「なんとなく、飯坂さん雰囲気が変わりましたね」
「どういうこと?」
「いや、この前まで奥さんのことになると、目の色を変えていたのに、今日の飯坂さんはとても涼しい顔をしている」
「そうかな・・まあ、少し心境の変化はあったかな」
「どんな変化があったんですか?」
すかさず園部が突っ込んだ質問をしてきた。僕は予想の範囲内だったので、ひるむことなく園部に答えた。
「この前までは妻が浮気をしたんじゃないかと、とても気になって自分を見失っていた」
「それは仕方ないですよ」
「でも、考え方を変えたんだ」
「考えを?」
「そう、ぼくは妻を愛している。だから、妻の過去にたとえ何があったとしても、それをすべて受け入れようって」
「つまりそれは、浮気をしていても許すということですか?」
「許すとか許さないとかじゃないんだ。妻も一人の人間で女だから、もしも仮に何かの事情で間違いを犯してしまったとしても、それらをひっくるめて妻を愛そうと思ったのさ」
そう言うと園部は言葉に詰まったようにぼくを見つめていた。
「そう考えを変えると、不思議と夫婦仲までもが良くなってね。涼しい顔をしているというのはそこからきてるのかもしれないな」
ぼくは園部の隣で余裕の表情でそう言うと、ジョッキのおかわりを店員に告げた。
その後ぼくたちは居酒屋で妻の話などをして楽しい時間をすごした。
内容は当然当たり障りのない内容だったが、ぼくの知らない職場での妻のことを聞くのもとても興味深かった。
園部から妻の話を聞いたからか、家に帰ってもぼくの気持ちは高揚していて、すぐにぼくは妻を抱いた。行為が終わって少し落ち着いてからぼくは今日園部に会ったことを妻に話した。
「今日企画部の園部くんに会ってきたよ」
ぼくは今までのことをすべて妻に話していた。そう、園部や笹原たちと面識のあることを。
「えっ・・どうして?」
妻はうろたえたように答えた。
「会社での君の様子があれから変だと心配してぼくに連絡をくれたんだ」
「何を話したの?」
妻は心配そうにぼくに尋ねてきた。
「そう心配するなよ、君から聞いたことは彼には何一つ話していないから」
妻はぼくの言葉を聞いて少し安心した様子だった。
「出張を避けているのかい?」
僕は唐突に妻に質問をしてみた。
「避けているわけではないわ・・・でも・・」
「でも?」
「村井さんや酒井さんと出張になれば、必ず私を求めてくる・・・」
「嫌なのか?」
「こうやってあなたに抱かれるのが一番いいの・・だから、もう他の人とはしたくない・・・」
妻はそう言って僕の胸のなかに顔をうずめた。
思えば僕と妻がベッドの上でこう寄り添うのはここ最近を除いては新婚のとき以来だ。僕は妻の出張先での情事を聞かなければ、夫婦関係はどんどん冷え込んでいったのかも知れない。人間の感情というのは全く皮肉なものだと感じていた。
「時々自分で自分の気持ちがわかならくなることがあるよ」
「えっ、どう言うこと?」
「ぼくはきみのことを一番愛している、決して離したくないと思っている、本当だ・・・けど・・・」
ぼくはあれからずっと心に思っていることを妻に話してみようとこの時思った。
「けど・・きみがまた他の男に抱かれることを心のどこかで期待しているんだ・・」
「そ、そんな・・・」
「ごめん・・・言っていることが矛盾していることはわかっている・・でも、きみが他の男に再び抱かれると思うだけで・・・ぼくの身体はこんなにも元気になってしまうんだ・・・」
そう言ってぼくは妻の手をとり自分のペニスにあてがった。先ほど済ませたばかりだと言うのに硬くなり始めているぼくのペニスを妻の手が握ってくれた。
「まったく男の性というのか、ほんと自分でも情けないよ」
「そんなこと言わないで・・・すべては私がいけないんだから・・・」
妻はそう言うと、ゆっくりとぼくのペニスをその口の中に含んでくれた。
数日後、妻に出張の予定が入った。
妻の出張の連絡は園部から最初に入った。
外回りの営業が終わった時に突然園部から電話が入ったのである。
「飯坂さんですか、園部です。飯坂さんにお伝えしなければならないことができました。実は今週の金曜日に白幡さんと松本に出張することになりました。エキシビジョンなので夕方からのプレゼンで、たぶんその日は泊まりになると思います」
「そっか、わざわざ連絡してくれてありがとう、今出先なんであまり時間がないんだ」
ぼくはそう言うと園部からの電話をあさっり終わらせた。
妻が今週園部と出張する。
しかし、前回の園部との主張とはずいぶんと状況が変わった。
園部にしてみれば、妻は出張先で同僚に抱かれることがあるかもしれないと、まだ多少の疑いと、ともすれば期待もあるかもしれないが、そのことは旦那であるぼくがすでに知ってしまっている。まして、前回の出張の時に妻に関係を迫ったことまでぼくに白状してしまった。そして今回の出張のこともぼくに内緒にするわけにもいかなくなっている。今でも園部は妻と関係を持ちたいと思っているに違いないが、この状況下では前回のように妻に迫ることはとても出来ないだろうと思う。
また、妻にしてみれば、園部とぼくが自分のことで情報交換をしていることをぼくから聞いて知っている。同じ同僚の人間と、自分が出張先で寝たことを園部は佐々岡から聞いて疑っていることも。これだけ複雑な状況下で、二人が出張先の一夜で結ばれるのだろうか?ぼくはいろいろと思案をめぐらせた。
「ひょっとして園部くんから聞いてるかもしれないけど、今週の金曜日に松本に出張することになったの」
その日の夕食の時間に妻はぼくに言ってきた。
「ああ、聞いているよ」
「やっぱり・・」
「気がすすまないのかい?」
「ううん、べつに・・仕事だから・・エキシビジョンなのでもともとは園部くんが一人で行くことになってたんだけど、部長がどうしても私も同行するように言うから・・・でも、園部くんとは前回あんなことがあったから、なんとなく気まずくて・・」
「心配することないさ、きみの事は彼には何も言ってないから・・・それより彼は本当にきみのことを心配しているし、とてもいい奴だよ」
「どういう意味?」
「別に深い意味はないさ、ただ出張中にきみと彼が結ばれたとしても、きみの心さえ奪われなければ、ぼくはいいと思っている」
「あ、あなた・・・そんなこと絶対にないわ・・」
「それならばいいさ、ぼくは無理にきみと彼が結ばれるのを望んでいるわけではない。きみの身体が彼を欲すれば無理に我慢することはないと言っているだけなんだ」
ぼくはそう言うと出張の話をそれで打ち切った。
その日の夜、めずらしく妻の方からぼくを求めてきた。
しかし、ぼくは妻の出張が終わるまでは妻と交わるのはよそうと思い、妻の求めを拒否してみた。
それからぼくらはあまり会話をしなくなった。
いよいよ金曜日の朝になった。
妻は一泊の出張の支度を終えてスーツ姿になっていた。
「じゃあ、あなた、今日は泊まりで明日のお昼すぎに帰ってくるわ」
「ああ・・」
ぼくはそっけない返事をした。妻はずっとこっちを見ている。
結局ぼくはその後妻に声をかけることなく、妻は仕事先へと出て行った。
結局その日は一日仕事にならなかった。
僕は外回りをするといって外出したが、得意先へ行くわけでもなく
ただぼーっと時間をすごしてしまった。
何度か園部に電話をしてみようと思ったが、結局何もしなかった。
僕は家の近くのいきつけの居酒屋で夕食を済ませると、誰もいない家に帰った。
その日の夜は寝付くことが出来なかった。
今頃妻は園部に抱かれているのだろうか。
頭の中では二人が裸で抱き合っている姿をめぐらせていた。
僕にしてくれたように、園部のペニスを口に含む妻の姿。
後ろから園部に激しく突かれる妻の姿。
形の良い妻の乳房は、園部の手によっていくどもその形を変えられていく。
そしてその先端の突起に音を出して吸い付く園部の姿。
僕は一晩中妄想をめぐらせていつの間にか眠りについた。
次の日に目をさますと、もう昼近くだった。
ベッドの隣には妻の姿はない。
僕はベッドを降りると、重くけだるい足をひきずってキッチンまで行き水道水で乾いたのどを潤した。すると玄関の鍵が開く音がした。
妻が出張から帰ってきた。
「おかえり」
僕は低い声で妻にそう言うと、そのまま妻の手を引き寝室へと行った。
立ったまま洋服を脱がせ、僕は丹念に妻の身体を調べた。
昨日の園部との情事の痕跡がないかと。
妻はその間もずっと黙ったままだった。
顔から足先まで妻の身体を丹念に調べたが、結局キスマークなどの痕跡を一つも見つけることは出来なかった。
僕は自分の興奮が抑えられなくなり、妻をベッドに寝かすと前儀もせずに堅く怒張したペニスを妻の子宮に押し込んだ。
ヌルッと抵抗なく妻の身体は僕を受け入れてくれた。
(ああぁぁ・・熱い・・・なんて気持ちいいんだ・・・やっぱり昨日もこうやって園部を受け入れたのか・・・)
僕は気持ちを高ぶらせたままいっきに妻の中で果てた。
その後二人で昼食を済ませてから、妻は掃除や溜まった洗濯物をかたづけ、
普段の休日と同じようにすごした。
夕食の時もあまり会話はなかった。
そして夜になり、僕は再び妻を抱いた。
頭の中で目の前の妻は園部に愛撫されて悶えていた。
その日は妻とは身体は合わせたが、心は向き合わせないまま一日が終わろうとしている時だった。
「どうして出張のことを聞かないの?」
明りの消えた寝室の中で、突然妻が口を開いた。
結局僕は何を怖がっていたのだろうか。
妻が園部に抱かれることを期待しておきながら、半面その事実を知りたくないという自分がいた。
だから、妻が帰ってきてから身体は興奮しておきながら、その事を聞こうとはしなかった。
結局僕は単なる小心者なのか。
妻の背中を自分で押しておきながら、結果を見ようとはしない。
いや違う。僕は亜季の亭主として、これから妻がどのように変化していくのかをじっくり見届ける権利があるんだ。
二人の間の重い空気が妻の一言でいっきに晴れたような気がした。
「昨日園部くんと何かあったのか?」
僕は本当はとても知りたかったことをついに聞く勇気が持てた。
そしてこれから妻が進化していくさまをじっくり鑑賞する楽しみを得たのだ。
「何もなかったわ・・あなたが期待しているようなことは」
妻の返答は僕が期待していたものとは正反対だった。
「なかった? 本当か?」
「本当よ、あなたにウソはつかないわ」
妻は僕が聞きたかったことをいとも簡単に否定してしまった。
(何もなかったって? そ、そんな・・)
僕はその時ベッドの上で今までに味わったことのない虚脱感を感じていたことを覚えている。
次の日の日曜日も僕はなんとなく活力が沸いてこなかった。
その後も妻から出張の話を聞いたが、本当に何もなかったようだ。
出張での仕事が終わった後、クライアントや園部と一緒に振舞われたお弁当を食べ、
そのままホテルで一泊しただけと妻は言った。
もちろん、妻は園部の部屋にも行ってないし、園部が妻の部屋に来たということもなかったとのこと。
そう言われて僕も否定するわけにもいかず、僕の感情は急速に冷めていった。
それから僕はしばらく抜け殻のような状態だった。
家庭でも職場でも心ここにあらずというか、とにかく気力が沸いてこなかった。
自分でもこのままではダメになってしまうとかなりあせった。
けど、どうしても身体に力が入らないでいた.
妻はそんな僕のことを心配してくれていた。
「あなた・・・どうしても私に他の男性に抱かれて欲しいの?」
「えっ・・」
突然の妻の質問に僕は言葉につまった。
妻は僕の心の中を見透かしているのだろうか。
「私はあなたに愛されない寂しさからつい大きな過ちを犯してしまったと反省していたの・・・だから、もう絶対に過ちを犯したくないと思っていたのだけど・・・」
薄暗い部屋の中で僕は黙って妻をみつめていた。
「部長から酒井さんがしているプロジェクトを手伝うように言われているの・・・でも、私も忙しいので出来ないと断ってた。なによりそのプロジェクトに参加すれば、また酒井さんと一緒に出張になるかもしれない。もちろん酒井さんと一緒に出張したからといって、酒井さんに抱かれるとは限らないけど・・・どう? 私がそのプロジェクトに参加するとしたら・・」
僕の目の前にかかっていた雲が急に晴れていくような気分になった。
(妻に僕の心の中が見透かされていてもいいじゃないか。もう、僕の気持ちは動き出してしまったんだ、このまま止めることなんて出来ない)
「がんばって、酒井さんの仕事を手伝ってみたら・・」
そう言うと僕は妻の身体を求めていた。
「なんか、変なあなた・・」
次の週、園部から連絡があった。
「最近は白幡さん都内でのイベントの仕事ばかりだったのに、急に酒井さんの仕事を手伝うことになったんですよ。酒井さんの仕事は地方での説明会が多いもので、今度また白幡さんと酒井さんが出張することになるかもしれませんよ」
園部は慌てたような口調で僕に伝えてきた。
「そうなんだ」
「白幡さんは家で何か言ってますか?」
「いや、特に何も言ってないけど・・でも、酒井さんってあの酒井さんでしょ? やっぱり亜季とどうにかなるって思えないけど」
我ながらしらじらしい言葉につい笑みがこぼれる。
電話でなければ園部に気がつかれるところだ。
「そうですけど、でも用心したことに越したことはないですよ」
「大丈夫さ、前にも言ったけど僕は妻を愛しているし、妻も僕を愛している。だから、園部くん・・・・」
そう言って僕は言葉につまった。
園部にもう妻の情報を僕にくれなくても良いと言おうとしたが、ここで園部との関係を切る必要もないと考え直した。
「わざわざありがとう」
とりあえず僕はそう言って園部との電話を切った。
数日後、妻は酒井と仙台への出張が決まった。
くしくもそこは妻と酒井が初めて関係をもった地でもあった。
酒井が中心として行っている仕事は地方へのプロジェクト説明会で、プロジェクトリーダーの酒井とアシスタント役の妻が地元住民に向かって直接説明を行う。
当然長引く交渉もあり、しんどい仕事でもあり地方では宿泊となるのだった。
妻と酒井とは過去に性的な関係が数回あった。
しかし、もともと臆病な酒井は積極的に妻を誘ったりはしない。
それと、妻が村井と関係してから酒井とは関係を持たないように決め、
それ以来は酒井とは一切そのような会話をしたことがないと言う。
妻が今回何も行動を起こさなければ、出張中に酒井に抱かれる可能性は低そうである。
ただ、そうなると今企画部にいる人間で妻を抱こうとするのは村井だけである。
出世欲の強い村井は、同僚との不倫で足元をすくわれないように慎重な行動をする。
妻を早朝に抱くのもそのことからなのだろう。
妻との快楽に身を滅ぼすタイプではないので、妻を性的に解放させる相手としては適任とは言えない。
それとは反対に酒井は外見的にもあまりぱっとしない男だ。
妻の心を奪われることなく、ぼくの性欲を満たすことの出来る男はこの酒井が適任だった。
僕は酒井にもっともっと淫らでいやらしく妻を抱いてもらいたいと思うようになっていた。
「あなた、私と酒井さんが一緒に出張することがそんなに嬉しいの?」
休日に夫婦そろっての買い物の後、ショッピングモールにあるコーヒースタンドで一服している僕の表情を見て妻がそう言った。
その日は来週ある出張に着ていく妻の洋服を僕の見立てで買ったのである。
妻はすでに酒井とは過去数回経験がある。
僕はその時の内容を妻から聞いているし、酒井との出張が決まってからはその内容を何度も頭の中で繰り返していた。
最初のきっかけは、ホテルのエレベーターの中で妻が落ち込んでいる酒井にいたずらっぽく頬にキスをしたことからだった。
その後ホテルの妻の部屋で酒井は何度も妻にキスをねだったという。妻も最初はしかたないなと軽い気持ちで付き合っていたのが、次第にエスカレートしていき、男と女の本格的なキスへ以降していった。
酒井に唇を奪われ、進入してくる舌の動きに身体が言うことを利かなくなり、気がつくと酒井に服を脱がされてしまっていた。その後も酒井は器用に動くその舌を妻の身体全体に這わせていった。足の指までも一本一本丁寧に舐め上げられ、その日妻はとうとう酒井に身体を許してしまう。
下着までも取られた妻は、酒井の舌わざでさらに快感を味わい、指で何度も逝かされてしまった。避妊具を持っていなかったので、酒井の挿入こそは拒んだものの、それが初めての酒井との行為だった。
酒井はその日、自分の手を使って三回射精して妻を驚かせたと言う。
次の日、帰るときに妻は酒井に昨日のことは忘れて欲しいと伝え、酒井も了承したと言う。
次の酒井との出張はそれから二ヵ月後だった。酒井はその日はとてもソワソワしているのがよくわかったが、妻は何事もないように振舞ったと言う。
仕事が終わり夜にホテルに着くと、酒井は「白幡くんの部屋に行っていいか?」と聞いてきた。妻は当然「ダメよ、忘れてって言ったでしょ」と酒井をなだめたそうだが、「キスだけでいいから、今日で絶対に忘れるから」という酒井の言葉に押され、再びホテルの自室に酒井を入れてしまう。部屋に入ったとたん酒井は妻に覆いかぶさるように激しく口付けをしてきた。そして、乱暴に身体を触れてくる酒井に妻は抵抗し、「人を呼ぶ」と酒井を叱咤した。すぐに酒井は土下座をして謝罪し部屋を出て行った。
それからしばらくは酒井との関係は悪くなっていたという。
その後も何度か酒井とは出張で一緒になったが気まずい空気がいつも流れるようになって、あるクライアントから指摘を受けた。
プレゼンする側の意見がバラバラだと。
その日の夜、二人の関係回復のためと思い、妻は酒井に「一緒に夕食でも」と誘った。
ホテル近くの小料理屋で夕食をとるうちに次第に二人の関係は回復したという。
酒井は妻との関係がもどったことをとても喜んでいた。
ホテルへ帰り際、酒井は少量のお酒で気分が大きくなったのか、また妻とのキスの感想を話し出したという。
あの時の妻の唇が今でも忘れないと。
妻は「またそういうこと言わないで」とその場は軽くなだめ、二人はそれぞれの部屋に戻った。
しかし、それから30分も経たないうちに酒井は妻の部屋の前に来てドアをノックしてきた。妻はドア越しにどうしたのか聞いたが、明快な返答ながいのでしかたなくドアを開けた。
妻の部屋のドアの前で酒井はただ黙って立っていた。「どうしたんですか?」との妻の問いかけにも返事が出来ないようだったらしい。よく見ると酒井は小刻みに震えていたらしい。
仕方ないと思い、妻はとりあえず酒井を自室に入れた。部屋の中に入っても酒井の態度は変わらず、妻は困ってしまったと言う。
「わたしとまたキスがしたいの?」
妻は思い切って酒井に聞いてみると、震えながら酒井はうなずいたと言う。
「しょうがないですね、キスだけですよ」
妻は仕方なしそう言うと酒井の前で目を閉じた。
ゆっくりと酒井の顔が近づいてきて唇を合わせてきた。
前回は乱暴にしたため妻に突き飛ばされてしまった酒井は、今度はとてもやさしく唇を合わせてきたと言う。ついばむようなキスを繰り返されていくうちに、妻は吐息をもらすようになり、そのまま酒井の舌の進入を許してしまう。初めての時と全く同じように力を失った妻は、また酒井の舌技に酔わされてしまった。お互いが全裸になってから妻は何度も酒井の手と舌で逝かされた。避妊具を用意していなかった酒井は決して挿入してこようとはせずに、以前と同じように自分の手で慰めていたので、妻は酒井のモノをくわえてあげたと言う。
妻はこの時には植村と密度の濃いセックスをしていたので、酒井へのフェラチオはあまり苦にならなかったと言う。ただ、その直後に出された酒井の精子を飲み込むことは出来なかったと言った。
行為の後、本当にこれで最後だと妻は酒井に念を押した。
妻はそれ以降酒井に隙を見せることはなかったし、酒井もこれ以降は妻に言い寄ることはなかった。
「やっぱりちょっと若すぎない?この服」
いよいよ出張の当日にの朝になった。
いつもは事業仕分けをする女性議員のようにキリっとした格好を好む妻だったが、その日は先日僕が見立てた洋服を着ていた。それは見た目にもとてもシンプルでカジュアルな装いだった。ニットのサマーセーターに淡い色合いのスカートでともて上品だった。妻が気にしていたのはそのスカート丈だった。ひざ上10cmのミニスカートの妻はとても人妻には見えないくらいに若々しく、健康的に見えた。
まるで人気女性キャスターのようだと僕は思った。
「そんなことないさ、とても良く似合っているよ」
僕は正直にそう答えた。
「だって、ほら、座るとこんなだよ、見えそうじゃない?」
そう言ってダイニングの椅子をこっちに向けて、ちょこんとすわって見せた。
「どれどれ・・・大丈夫、見えてないから」
僕はそう言って目線を妻の太ももと平行にして、中を覗き込んでみた。タイトなスカートは座ることでその裾が引き上げられ、薄手のストッキングに包まれた妻の太ももの半分以上を露出させてしまう。目線を少し下げるだけで妻のふとももの隙間から、白い下着がストッキング越しにもはっきりと見てとれた。
「うそばっかり・・・・でも、あなたが選んでくれたんだから、今日はこれで行くわ・・・」
そう言って妻が立ち上がると、僕の鼻先は妻の匂いを嗅ぎ取れる距離になった。
僕は今にも妻に口付けをしたい心境にかられたが、我慢した。
そう、今日は妻の身体を酒井に差し出す日だ。
妻が今身につけているであろう、僕も気に入っている純白の下着のように、今日はまだ無垢なままの妻の身体を酒井に差し出すのだ。そして、出張が終わった後に酒井色に染まった妻の身体を僕が味あうのだ。
その日は僕にも大きな仕事があった。
仕事中時々妻を想うこともあったが、なんとか仕事に集中することが出来た。
身体の調子も良く、とても饒舌に得意先と話がすすんだ。
夜の接待でも場を盛り上げることが出来、相手先にもとても良い評判をもらった。
二日間あっという間に時間を過ごすことが出来た。
家に帰ると妻は出張を終えてすでに帰ってきていた。
「おかえり」
そう言って私を迎えてくれた妻の瞳は、どことなく潤んでいるようにも見えた。
「どうだった?」
間髪を入れずに僕は妻に聞いてみた。
「・・・・」
妻は無言のままコクリとうなずいた。
それが何を意味しているかは、お互いに充分わかっていた。
妻がはにかみながら恥ずかしそうにうなずくその姿は、まるでアイドルビデオに出てくるような美少女の恥じらいのしぐさのようにも見えるが、しかしその実情というのは、酒井という同僚で単なる中年の冴えない男と出張先のホテルで性交を行ったということなのだ。
「酒井さんに抱かれたのか?」
僕は帰るなり直接的な質問をした。
「だって・・・あなたがあんなこと言うから・・・」
妻は自分のした破廉恥な行為を恥じているものの、そのこと自体僕が望んでいることを良く知っている。
「別に怒ってないさ・・・どういう状況だったのか始めから詳しく聞かせてくれないか」
そう言って僕はリビングのソファーに妻をすわらせて、冷蔵庫から持ってきた缶ビールをあけてのどに流し込んだ。
妻は出張での仕事について話し出した。
地元の抵抗が強く、プレゼンもなかなか上手くいかずにいてかなり苦戦していたようだった。酒井が一人で根気強く説明していたのだが、なかなか進展がないので部長が妻を指名したのだろう。妻のプレゼンでどうにかこうにか地元の理解を得ることが出来、仕事が一歩進む事になったと喜んでいた。こうなるとこの仕事は妻の所属している企画部からは離れることになる。僕はそんなことより早く酒井との情事について聞きたかったが、妻が話しやすいように努めた。
「それで、仕事が終わってホテルに着いたのがもう夜の11時だったの」
ようやく話が僕の聞きたいところまで来た。
「酒井さんが仕事が上手くいったから私と乾杯がしたかったなって言うから、じゃあどちらかの部屋で簡単に祝杯をあげましょうか?って言ったの」
「ずいぶん大胆なこと言ったね」
「そう言うまで少し迷ったわ。でも、私もめずらしく達成感があったし・・・・それに・・・」
そう言うと妻は含みがあるかのように言葉に詰まった様子だった。
「そっか、難しい仕事だったんだね。で、どっちの部屋に行ったんだい?」
僕は出来るだけ妻が話やすいように相槌をうったり、質問をしたりした。
「一度部屋にチェックインしてから着替えようか迷ったんだけど、そのままの格好で酒井さんの部屋に」
妻は帰り用にラフなパンツも持っていたが、あえて今日穿いていたミニスカートのまま酒井の部屋に行ったそうだ。中に入るとすでに1階のコンビニで用意してきたビールとサンドイッチなどのおつまみがあったという。ホテルの部屋はシングルの狭いビジネス用なので、壁際にドレッサーを兼ねてる備え付けの机と椅子があるだけだった。ベッドの上につまみ類を広げ、酒井はその横に、妻は椅子に座ったという。
「あのスカートのままで酒井さんに身体を向けて椅子に座ったのか?」
僕はそんな格好をしたら、下着が見えてまるで君の方から酒井さんを誘惑しているみたいだよ。と言う意味を遠まわしに聞いてみた。
「エッチねぇ、もちろんこうやってハンカチをひざの上に置いていたわ」
「お疲れ様でした」という乾杯が終わってから、ゆっくりとしたペースで二人はビールを口にしたそうだ。二人の会話の内容は、最初は仕事のことがほとんどだったようだ。とにかく仙台の仕事で今回成果があがったことを酒井は本当に喜んでいたそうだ。ベッドの上に置かれた食べ物を妻は少し手をつけただけだったので、酒井は何度もすすめてきたという。妻はそれほどお腹がすいていたわけでもなく、また自分が座っている位置からは少し離れているので、それら食べ物にはあまり手をつけなかったそうだ。それでも酒井は何度もすすめてきたらしい。「適当なお皿でもあればそっちの机に置けるんだけど」と酒井が言ったのを受け、妻が「じゃあ、このハンカチの上にちょっと取りますね」と言ってしまったらしい。
ハンカチの上にとったつまみ類をまたひざの上に置いても安定感が悪いので、妻はそれを机の上に置いたそうだ。当然妻の太ももは無防備に晒され、すぐに酒井の視線を感じたがなるべく意識しないようにしたと言っていた。
結果的に僕が選んだスカートがその後の酒井の言動に大きな影響を及ぼしたことになった。
「今日の白幡くんの服、とてもいいね」
酒井が女性の服装をほめるなんて考えられない。
よくもまあ顔に似合わないことを言ったもんだと僕は苦笑してしまった。
「それで君はなんて答えたんだ?」
「答えたと言うか、酒井さんがもうやらしい目になってたから、ここ押さえて、今見たでしょ?って言ったわ」
そう言って妻は自分の股の部分を押さえるしぐさをした。そう話している妻は今例のスカートを穿いていたわけではないのだけど、僕は妻のそんなしぐさに心をつかまれるくらいに興奮していた。
「そしたら酒井さんがね、ごめんなさいって、見るつもりじゃなかったんだ、って必死にあやまってくるの」
たぶん酒井は妻の機嫌を損ねることにとても敏感になっていたんだと僕は思った。
それは過去に妻に激しく叱咤されたことがトラウマとなっているのかもしれない。
「あまり何回も誤るもんから、なんかこっちが悪くなっちゃって・・」
妻も同じように思ったのだろう。
「だからいいですよ、って言ってあげたの」
「いいですよ、って?」
少し言葉に詰まってから再び妻が話し出した。
「見てもいいですよってこと・・・酒井さんには二度も私の恥ずかしい部分まで見られているんだから、今さら見られてもいいですよ、って言ってあげたの・・・・」
そう言って妻は頬を赤くした。
これまで妻は自らの行為を僕のために正直に話してくれている。それは妻にとってみれば顔から火が出るくらいに恥ずかしいことなのだ。それもこれも、妻は僕のためにそうしてくれている。僕は妻のそんな表情を見て、興奮するのと同時にとてもうれしく思っていた。
「そっか、それは酒井さん喜んだだろうな」
僕はそんな自分の気持ちを抑えて、さらに妻の話を聞こうとした。
「うん、・・・・そしたらね、自分の方こそ君には恥ずかしい姿をいっぱい見せてるし・・自分が過去二回見た・・秘密の君の姿は恥ずかしい姿じゃなくて美しい姿だったよ・・・って言ってくれたの・・・」
そう言うと妻は頬を赤くしたままうつむいてしまった。
僕はもう我慢が出来ず、そのまま妻を抱き寄せた。
そして寝室へ連れて行くと、すぐに妻を裸にした。
妻の秘部を触ってみると、もう充分に潤っていてしかもすごく熱い。
「早く来て・・・」
すぐに妻は僕を求めてきた。
妻の中に入ると、すぐにひだが僕のペニスに絡みつく。
僕は5分と持たずその日一回目の射精をした。
その日まだ夕食を済ませていなかった僕はその後一人で風呂に入ってから、妻の作ってくれた夕食をとった。
「で、君が見ていいと言ってからその後どうなったの?」
夕食が終わり、妻の家事もひと段落してから僕は再びさっきの話の続きを聞こうとした。
「すぐに何かあったわではないわ、しばらく洋服の話とかしてたかな」
酒井と服の話だなんて、だいたいファッションなんかからは一番遠い人種だと思ってた僕は、以外な話に興味を持った。
「どんな話?」
「いろいろよ・・・そう、酒井さんが、女の人はスカートを穿く時に、下着が見えたりすることを気にするのかって聞いてきたわ」
なんだ、そう言うことか、結局僕がこの前選んだスカートはホント正解だったと思った。
「うん、なんて答えたの?」
「もちろん、気にするって答えたわ。このスカートだって、立っていたらたいして短く見えないのにこうやって座るとミニスカートになるでしょ。そういうことは女の子はわかってるから気をつけてるのよって言ったの」
「そっか」
その後しばらくは当たり障りのない会話が続いたらしい。
その間にも酒井が妻の下着を覗き込んでいることはわかったようだったが、妻は無理に隠そうとはしなかったという。そうすることで、酒井の表情がだんだん変わっていくのが良くわかったと言っていた。
そして話が尽きて、しばらくの沈黙の後に酒井が突然妻に言ってきた。
またキスさせて欲しいと。
最初から覚悟を決めていた妻は、それには答えず「シャワーを浴びさせて欲しい」とだけ答えたそうだ。酒井の部屋のシャワーを借りた妻はバスタオルを巻いたままの格好で部屋に出てきた。
当然ベッドの上に散乱していた食べ物はきれいに片付けられていて、妻はそのまま真新しい白いシーツが敷かれたベッドの上に寝かされた。
顔を近づけてきた酒井に「キスだけはしないで」と伝えたという。バスタオルを取られると時間をかけて酒井に全身を愛撫されたと言う。
行為の流れで、何度か酒井は妻に口づけをしようとしてきたが、今回の妻はそれだけ拒否したそうだ。
それは今回妻が酒井に抱かれるのは僕のためと決めていたからだと思った。酒井はその日コンドームも用意していて、念願の想いを果たした。
僕はベッドの上で妻を抱きながら酒井との行為の一部始終を聞いた。
「酒井さんとのセックスは気持ちよくなかったのか?」
「・・・・もちろん何度も逝かされたわ・・・でも、あなたとのエッチが一番いいの・・」
妻はそう言って僕にしがみついてきた。
「また、酒井さんと出張することになったら、どうする?」
「あなたはどうして欲しいの?」
「さあ・・」
こうして僕たちの新しい夫婦の形がスタートした。
こんな壊れやすい関係がいつまで続くのか僕にはわからない。
他人から見たらありえない、ばかげた夫婦だと思うだろう。
そんなことは充分に僕も妻もわかっている。
けど、走り出した汽車を止めることは難しい。
暴走し脱線するまで加速し続けるのか、あるいは途中で失速してしまうのか、自分の事ながら全く予想が出来ない。
ただ、僕の心の奥にはまだまだ満たされない想いが渦巻いているのも事実である。
僕はもっともっと妻が進化していくのを見ていきたい。
僕は実際にこの目でそしてこの耳で、妻が他人に抱かれる姿を見てみたい、そしてどんな風によがり声を出すか聞いてみたいと思うようになっていた。
第二部 完