| シネマ日記(☆ひとつ10点、★は20点) | |||
| 2003.12.27 |
上映時間: 97分 制作国: ロシア、フランス 監督: パーヴェル・チュフライ 製作総指揮: セルゲイ・コズロフ 脚本: パーヴェル・チュフライ 撮影: ウラジミール・クリモフ 出演: ミーシャ・フィリプチュク エカテリーナ・レドニコワ ウラジミール・マシコフ アマリヤ・モルドヴィノワ リディヤ・サヴチェンコ アンナ・シツカトゥロワ オルガ・ペシコワ |
スターリン時代のソ連の庶民の貧しさと、そこかしこに漂う戦争の傷跡を、淡々とした描写の中ににじませた秀作。 1952年、若く美しいカーチャは6才の息子サーニャを連れてあてのない旅をしていた。サーニャの父は彼が生まれる前に戦死した。列車の中で精悍な軍人トーリャと知り合ったカーチャはあっという間に恋に落ち、3人は親子として一緒に暮らすようになる。サーニャとトーリャは最初のうちこそカーチャを巡ってライバルとなり、互いを邪険に扱っていたが、やがて心を通わせるようになる。ところがトーリャにはとんでもない秘密があった… 母を巡って父子がライバルになるなんて、フロイトの学説通りでどこか微笑ましくすらあるのだが、実際その「フロイト的展開」がラストに隠されている。 このトーリャがけっこう乱暴な男だったりするので、サーニャが虐待されるのではないかと観客はハラハラしてしまう。サーニャが愛くるしく演技が上手いものだから、完全に感情移入させられてしまうのだ。 トーニャはおそらく情欲と同時にある計算があってカーチャたちと家族の振りをすることにしたのだが、それはそうでも、いつしかほんとうの家族のような気持ちをカーチャ親子に抱き始めていたように見受けられる。だからこそ、彼らの偽りの生活の苦しさや別れのつらさがいたたまれない。いつか破綻するであろうことは目に見えているのに、なにかしら希望があるのではとカーチャとともに観客も期待してしまうのだ。 囚われの身となったトーニャとの再会と別れの場面は胸を締め付けられる。サーニャがいつも見ていた実父の幻影が消えると同時にトーニャとの「男と男の親子の絆」が結ばれる瞬間だ。 男の子の自我形成に占める父親の存在の大きさを表した映画。「男はかくあるべし」と教える逞しい「父」。それは彼にとって憧れであり、限りない愛着の対象でもある。だから、父性存在を否定されるのは絶対に許せないことなのだ。同時に、「母」をも否定した男をサーニャは許せない。 父子の愛という本流のテーマだけではなく、ソビエトの人々の抑圧された生活と、戦争の傷跡、少ない娯楽に心惹かれる庶民の慎ましい生活など、しみじみとした生活感がにじみ出ている点も見逃せない。共同住宅の生活ぶりには「イースト/ウェスト 遙かなる祖国」を思い出した。 悲しすぎる結末は救いがないかのようだ。これからも人生の深淵に横たわる孤独と共にサーニャは生きていくのだ。大人になったサーニャは回想する。「父」とは何であったのか、誰であったのか、と。父と息子は愛と裏切りで結ばれている。その絆は永遠に消えない。わたしはラストシーンをそう読んだ。(★★★☆) メディア:レンタルDVD |
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