竿の硬さと垂らしの関係
道糸と竿の力学
竿の長さと飛距離
リールについて
竿の硬さと垂らしの関係
ヤッさん的投げの力学的考察(正しいという保証はありません)
1.角度について
角度は投げ用リールを使用している限り物理学の法則通り、45度の仰角で投げる
のが一番遠く飛びます。糸が出る抵抗、空気抵抗等考えても、普通は抵抗は一定と
考えて良いのではと思っています。これらの抵抗は、錘の速度を落とす事になりま
すが水平速度、垂直速度共に落ちますのでやっぱり45度が最も距離が出ます。
2.ガイドについて
ガイドは、竿のしなりを十分利用するための物で、柔らかい竿ほど必要になります。
つまり十分な剛性を持った(全く曲がらない)竿で投げるならトップガイドだけで
十分です。
なぜなら、この場合錘にスピードを与える支(力)点はトップガイドだけですから
その他のガイドは、それこそ単なる糸の暴れを押さえるガイドとなるからです。
故に、ガイドの数は少ない方が抵抗が少なくなると思えます。
(あくまでトラブルの無い限り。)
しかし重量のあるものを釣り上げる時その他(後述)には竿のしなりを必要とする
ため、柔らかい部分に多く取り付けられているのです。
3.竿の硬さと垂らしの長さ
(図で実線は竿、点線は垂らし、矢印は錘の飛ぶ方向で、数字は水平に対しての角度を示す)
一般に竿は、肩に担いでから前方30度(地面からの角度60度)位まで振るものと
思います。鉛直面で振ったとしてこの時竿のしなりと垂らしがが無ければ水平より
30度下方へ錘が飛んで行きます。@
4メートルの竿全体で2メートルのしなりが有るとすると(胴調子、先調子で多少変
わりますが)ほぼ水平方向へ飛びA、
さらに垂らしを2メートル取ったとすれば、
上方約30度の方向へ飛んで行きます。C
角度は、本当のオーバースローであり、実際のスリークゥオーターや、回転投法
には当てはまりませんが、垂らしの長さで仰角の調整や竿の硬さによるタイミング
の調整をする事が可能と思います。またしなりがあるという事はしなりの無い竿より
角速度が落ちるという事であり竿の反発力で飛ばすという事は考えられません。
また早く振ることが初速を上げて遠くへ飛ばせるのは云うまでも有りません。
又垂らしが長いと回転中心からの半径が大きくなり同じ角速度では大きな初速となり
ます。この事から、硬い竿には長目の垂らしが必要であり、その事がより遠くへ飛ばす
事になるのではないでしょうか。
道糸と竿の力学
道糸と竿の受ける力について考えてみます。道糸に最も力の掛かるのは、
一般的には地球との戦いという事になります。どうしても外れない時は、ラインと
竿を一直線にして竿を引っ張ります。この場合ラインの力はほとんど全てリールが
受け止め竿にはほとんど力が掛かりません。しかし竿を立てた場合は、竿は弓なり
になり、竿のガイドを通ってラインはリールに達します。この時竿に何個かついている
ガイドでラインの張力を竿全体で受け止め、ラインはガイドで
ある角度で折れ曲がりをます。この折れ曲がりの内角が小さいところほど竿を曲げる
力が掛かっています。(正確には内角をα、ラインの張力をF0、竿を曲げる力をFとすれば
F=2F0cosα/2)
当然、竿の柔らかい場所(よく曲がるところ)にはたくさんのガイドを取り付けないと
竿がラインの張力に負けて折れてしまうことになります。
静的な力学では上記のような説明で良いと思います。
しかし1ヶ月の間に仲間のサーフリーダーCXとBXが折れると言う事がありました。
何か事故が無い限り竿が折れるのは、根掛りした時とばかり思っていたのですが、
2本とも投げる時に折れたそうです。
これは動的な解析が必要になります、つまり錘を投げる時は、ラインを離す時が最高の角速度
であれば良いのであって、その最高の角速度をどの程度の時間内に出すかによって竿に掛かる力は
変わります。時間が短い(角加速度が大きい)程竿に掛かる力は大きくなります。
(F=mα m:錘も含めた竿の質量、α:加速度)今は検討課題とする事でこの場は
お茶を濁しておきましょう。(私には良く判りません)
竿の長さと飛距離
一般的には、竿が長いと回転半径が大きくなり、同じ角速度で竿を振った場合、錘の速度は速くなり
初速が大きくなるので、飛距離が伸びる。という風に言えます。
ところがここに落とし穴があります。つまり長い竿を同じ角速度で振れるか?という問題です。
たとえ高価な竿で長短の竿が同じ重量であったとしても、錘を振るトルクは大きくなります
(T=LW T:トルク L:竿の長さ W:錘の重量この際竿の重量は無視)し、トルクが大きく
なると必要なパワー(回転運動のエネルギー P=TN P:エネルギー T:トルク N:回転数、
又は、P=(Iω2)/2 I:竿と錘の慣性モーメント ω:角速度)も大きくなります。
つまり、一定のエネルギーであれば、竿が長くなるとトルクが増え、回転数が落ちるということです。
今使っている竿をフルパワーで振っているとすれば今より長い竿を同じフォーム、同じスピードで振ることは
出来ないという事になります。
以上はトータルのエネルギーから考察したもので、時間の項は回転数(角速度)しか有りませんし
等速の状態を示しています。しかし実際に静止している錘をあるスピードで放り出すまでを考えると
(角)加速度を考慮しなければなりません。
前の項に書いたように最高スピードを出すまでの時間を長く取れるとスピードは大きくなります。
(Ft=mαt αt=v)すなわち非力(Fが小さい)でも、時間(t)を掛けると速度(v)が大きく
なります。(但し力を加えるということは錘のスピード以上で竿を振るということです。)
回転投法は、長く力を掛けられるので、初速を上げる事ができると言えます。
結局竿の長さに見合ったフォームでないと、飛距離は極端には伸びません。ただ長いほうが飛距離を
伸ばせる可能性があるということでしょうか。
体力・腕力・フォームと相談して自分に最適な竿を
探さねばならないという結論は、いくらこの考察を読んでも何の役にも立たないという事を現しているのでしょう。(爆、謝)
リールについて
1.構造
ここに古いリールがある。orimpicのmodel91とshimanoのEX2000とどこの釣り具屋さんにもある籠積みの安物である。
名前とか評判などは、よく知らないのだが構造はバラせば判る。これらのリールの構造で共通な事は、スプールの前後
運動(これをオシレーションという)をマスターギアの回転運動をリンク機構により前後運動に変換している事である。
特徴としては、構造が簡単であることで一般的にはハンドル位置とスプールの前後位置が同期している事で判るのだが、
回転運動を直接前後運動に変換しているので、前後運動はサインカーブになり、スプールの中間が
もっともスピードが早くなり、糸を巻くと真中がへこんで見える。(図参照)
また、構造上マスターギアの直径以上の前後ストロークを取れないので、ストロークを大きくしようとすると
マスターギアが大きくなってしまう。
このマスターギアの大きさによる前後ストロークの制限を解決する方法としてクロスギアシャフトとスライダーによる
オシレーションの方法になったのは、いつ頃からであろうか、手元にあるリールではチタノスエアロ5000が
既にクロスギアシャフトが採用されている。このクロスギアシャフトによるオシレーションになったことにより
自由度が飛躍的に上がり、ロングノーズ化や2スピード化などが可能になって、
今では投げ用のリールでは標準になっている。
2.スプールの防食
プラスチックスプールは、安物?
最近の普及品のリールのボディやスプールはプラスチックが主流になっている。プラスチックといってもエンジニアリングプラスチック
(通称エンプラ)で、これはナイロンやポリエステルにガラス繊維等を混ぜた物で、強度は樹脂の強度×樹脂の配合割合+
ガラス繊維の強度×ガラス繊維の配合割合となる。金属より膨張率が大きいので超精密部品には向かないのと、
硬度が低いので傷が付きやすいが腐食が無くて軽く、実用的な強度は十分あると思える。
一方金属は強度が高いが腐食するし重い。重いという問題は軽金属を使用して薄くする事で何とか解決出来る?
しかし問題となるのは腐食である。スプールに付着するのは海水である。海水とは、真水より
電導度が高い。高いとどうなるか?普通の生の金属で有ればまず腐食する。ましてスプールに使用されているのは
一般にはアルミ(Al)であるので防錆をしていないと1回の使用で腐食が始まる。
(腐食点は金属結晶の粒界であったり金属結晶の欠陥点であったりまた合金の不均一析出であったりする
もので、至る所に存在する)
異種金属との接触により電極電位の低い方の金属が腐食するのは、絶縁を考慮した設計である程度回避できる
が、同一金属内に存在する腐食点は酸化皮膜(アルマイト)や塗装でカバーするしかない。しかし塗装やアルマイトは
竿が倒れて波止やテトラにぶつけるなど過酷な使用では剥がれる事がある。一旦剥れると湿潤状態では腐食が始まるので、
釣行後のメンテナンスは必ず必要となる。
一般家庭でこの防錆皮膜を修復するのは容易ではない。米のとぎ汁で炊く、あるいは圧力鍋で蒸す程度の事しか出来ない
が何もしないよりはいいだろう。結局スプールがプラスチックであるというのは、的を得た設計だと私には思える。
腐食しないチタン製のものを作ればいくらになるだろうか?