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気温と稲の生育

 最近数年の稲の登熟期(特に早稲品種)における高温が問題にされる。琵琶湖博物館(草津市)における気温データを基に、湖東地域における気温と稲の生育との関係の分析を行った。
 図1は、平年(ここでは1997年から2009年の13年間の平均気温をいう)と2009年・2010年の旬間の平均気温を示した。

図1

 冬から夏へ、夏から冬への移り変わりの不安定さは非常に気にかかる。図3−1と図3−2は、春秋の気温の推移を調べたものだが、10℃から20℃の各気温に最初に達した日がいつかを示している。夏の低温あるいは高温以上にイネの生育に影響を及ぼしているのは、春から夏への気候の不順ではないだろうか。健全な成苗を育てるためには、この不安定な気候を克服する手法が必要である。
 旬間の平均気温には表れない小幅な急変や、年末のような長期の低温のように気象の変動が多様化してきている。地球全体が均一に温暖化するのではなく、ムラが生じている。これが混ざり合うために冷たい空気と暖かい空気が入り乱れている。これが不安定の要因であろう。1年を通じてみると、大きな変化とはならないが、この先数年の様子を見守りたい(表1を参照)。
表1 97年からの平均気温
97年
98年
99年
00年
01年
02年
03年
04年
05年
06年
07年
08年
09年
10年
平均
欠測
あり
16.0℃
欠測
あり
欠測
あり
欠測
あり
15.2℃
14.7℃
15.8℃
15.0℃
14.8℃
15.3℃
15.3℃
15.0℃
15.3℃
15.2℃


 図2は、3月から8月のそれぞれ中旬の平均気温を示している。3月・4月の変動が激しいく、5月の気温が低温化傾向にある。冬から夏への移り変わりは不安定である。ある日突然夏になる、そんな印象をもつ。

図2(2010年)

 冬から夏へ、夏から冬への移り変わりの不安定さは非常に気にかかる。図3−1と図3−2は、春秋の気温の推移を調べたものだが、10℃から20℃の各気温に最初に達した日がいつかを示している。夏の低温あるいは高温以上にイネの生育に影響を及ぼしているのは、春から夏への気候の不順ではないだろうか。健全な成苗を育てるためには、この不安定な気候を克服する手法が必要である。

図3−1

図3−4

図3−2

図3−4
 気温がイネの生育にどれだけ有効かを表す方法に日有効温度がある。ここでは、日平均気温から次式により換算した。
  日有効気温 y = -0.0053x^3+0.2746x^2-2.9276x+9.17 (x:日平均気温 x>7℃〔図4〕)

図4
 この日有効温度を日数分足し合わせた有効積算温度がイネの生育をほぼ決定する(他に日照や湿度など生育を左右する要素はある。)。出芽は7℃以上の温度により始まる。日陰の溜め置きの水がこの当たりの温度になるは4月の上旬であり、育苗の準備が始まる時期である。経験的には、10℃以下の浸種を続け、その水温が8℃を越えるあたりが播種の適期ではないかと考えている。種子がまさに動き出そうとするときである。また、不耕起乾田播種は、水田にいきなり播種し気候の動きにその生育を任せてしまう方法であり、むしろ理にかなっている様に思われる。夏の気候ばかりが取りざたされるが、健苗の生育にこそ神経を使うべきである。一般的な加温・保温を伴う育苗は、ひ弱な稚苗につながり、病気に弱い農薬を必要とする結果となる。自然温度による発芽・生育が理想的であると考える。

図5


図5 降水量