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不耕起稲作って? そのB 田植え機・深水栽培

不耕起田植え
 代かきをして、下じきをしいたように平らで、草一本ない田んぼに、整然と苗が植えられている。そんな普通の田んぼの光景を、私たちは毎年見てきました。不耕起の田んぼでは、まだ冬草がかれずに残っています。こんな田んぼに苗を植えても、あまりきれいとは言えません。しかし、この不耕起の田んぼには、生き物が無数にいるのです。除草剤を使って草のない普通の田んぼとくらべてどちらが本当にきれいなのでしょう。
@不耕起田植え機
A不耕起の田植え風景
B冬草がたくさん残っています
@全く耕していない田んぼに苗を植えるのですから、普通の田植え機では歯が立ちません。苗を植える所だけに特殊なカッターが取り付けてあります。滋賀県には30台ほどあるそうです。
A「本当に苗を植えているんですか。」と、聞きたくなりますね。「はい、本当に植えているんです。」
 B見てください。草の中に苗がちゃんと植わっているでしょう。えっ、やっぱり分かりませんか。


深水栽培
 イネには、水稲(すいとう)と陸稲(おかぼ)の2種類があります。私たちがよく知っている水稲は、水のある環境でのびのびと育つのです。不耕起の田んぼでは、イネがよく育つように収穫まで水を入れっぱなしにします。普通の田んぼでは、耕して土の中に入ったワラが腐ってメタンガスを出してしまいます。イネの根には有害なガスですから、水を入れずに乾かすのです。これを、中干しと言っています。この中干しの時期、不耕起の田んぼでは、サヤミドロなどの藻類が田んぼ一面をおおい、生き物たちのパラダイスとなります。収穫の時期を迎えると、不耕起の田んぼのイネは、茎が太く大きな穂を実らせます。穂が重く弓なりに垂れ下がりますが、茎が丈夫で倒れることはありません。まさにイネが野生化します。
不耕起の田んぼ 普通の田んぼ
中干しをしないのでサヤミドロが大繁殖
ひび割れるほどの中干しでオタマジャクシも全滅


代かきと中干しが生き物の環境を破壊する
 地球がまだ氷河期だったころ、日本列島は大陸とつながっていました。海は今より130mほど低く、気温は7℃ほど低かったと言われています。この頃、日本列島には、イネやメダカなど多くの生き物がやって来ました。この生き物たちには、北国出身と南国出身がいたのですが、稲作が始まってからは、田んぼを子育ての場所に選んだのです。北国出身の暑がりの生き物は田植えまでの田んぼで、南国出身の寒がりの生き物は田植えが終わってからの田んぼで、親が卵を産み大人になって田んぼから出て行ったのです。カエルにもこの2種類がいて、4月・5月・6月と種類が違うのです。田んぼのオタマジャクシをよく観察してみてください。
 農業が近代化して、代かき・田植えの時期が早まったり、強烈な中干しをすることで、大人になる前の生き物の多くが死んでしまうのです。益虫も害虫も無差別にです。ここに害虫がやって来たら、イネは全滅してしまうかも知れません。だから、農薬が必要になるのでしょうね。