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●   『ちょっとサイエンス』   2002/3/14   No.65  
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●    発行者 Fujiken        不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「寺田寅彦」
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「天災は忘れたころにやってくる」という有名な警句を残した寺田寅彦は、地
球物理学や実験物理学などの広い分野にわたり大きく貢献しました。さらに、
夏目漱石に師事し、いわゆる科学随筆とも言える新しい分野を確立しました。

夏目漱石の小説「三四郎」は、熊本出身の東京帝国大学の学生である三四郎が、
東京で経験するいわば、明治時代の青春が描かれています。

この「三四郎」の中に、三四郎の先輩で「光線の圧力」を研究している理学士
の野々宮宗八という人物が登場します。(東京大学には三四郎池と呼ばれる池
があるそうです。)

また、小説「吾輩は猫である」にも猫の主人公である苦沙彌先生のサロンに出
入りする水月寒月という理学士が登場し、「地球の磁気」研究していて「首く
くりの力学」や「どんぐりのスタビリティ(安定性)を論じ合わせて天体の運
行に及ぶ」という演説をしたり、論文を書いています。

この野々宮氏や寒月氏のモデルは漱石のところにたえず出入りしていた物理学
者「寺田寅彦」であったと言われています。

寺田寅彦は、明治29年(1896)熊本の第五高等学校(現在の熊本大学)で、
夏目漱石と出会っています。漱石はこの年に「坊ちゃん」先生として勤めてい
た四国松山の愛媛県立尋常中学校から五校に転勤してきたのです。

寅彦は五校の1年から漱石から教わるばかりでなく、俳句を教わると言って
漱石の家に出入りして、彼から深い精神的影響を受けたのでした。

寅彦がドイツに留学した前後の1905年にアインシュタインが「特殊相対性
理論」を、1912年にはウェゲナーが「大陸移動説」を、1913年には、
ボーアが「原子構造の量子論」を発表しています。

このような物理学および地球物理学における新しい動きに寅彦は大きな刺激を
受けました。

1913年に寅彦はX線を使って結晶のラウエ斑点の写真をとる研究をしてい
ました。これは、結晶内の原子にX線を散乱・干渉してできる斑点であり、結
晶の原子構造を反映しているものです。

寅彦は、日本にはめずらしい仮説提案型の科学者でした。科学における第一級
の仕事は仮説の検証ではなく、科学に飛躍をもたらす実り多い仮説を提案する
ことだと寅彦は考えていたのです。

ウェゲナーの「大陸移動説」やダーウィンの「進化論」がそのよい例なのです。

昭和5年(1930)に、伊豆の伊東の近くで群発地震が起こりました。寅彦は、こ
の地震の日ごとの数の変化とツバキの花の落ち方とが似ていることを指摘しま
した。

大地震のような確率統計的な現象の実用的な予知は不可能であると、寅彦は考
え、それが起こったときの災害を小さくする防災対策に力を注ぐべきであると
彼は主張し、

「天災は忘れた頃にやってくる」

という彼の警句は、このことをよく表していると言えるでしょう。

(ニュートン 世界の科学者100人 参照)

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■ちょっとコメント■

私は学生の頃「坊ちゃん」「三四郎」「吾輩は猫である」などよく読みました。

そこに登場する学者が「寺田寅彦」だったと知って何かうれしいような、びっ
くりしたような気持ちになりました。

寺田寅彦は文筆活動にも力を入れ「科学随筆」といった新しい分野を確立した
といわれています。

彼が作った歌に

「好きな物 イチゴ コーヒー 花 美人 懐(ふところ)でして 宇宙見物」

というのがあり、彼が絶えず美しいものにあこがれていたことがわかります。

No.62の中谷宇吉郎も寅彦と親しくしていたそうです。

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