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●   『ちょっとサイエンス』   2002/2/28   No.63  
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●    発行者 Fujiken       不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「中谷宇吉郎」
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「雪は天から送られた手紙である」という有名な言葉を残した中谷宇吉郎は、
昭和5年(1930)の4月、新設の北海道大学理学部の助教授として、札幌に赴任
しました。

それまで、2年間のヨーロッパ留学をしていた彼の研究は、放電とX線に関す
るものでした。

これらの研究を通して、宇吉郎は写真技術を十分に身につけていたのです。

彼は雪への親しみの気持ちと写真に対する自分の才能を生かすためには、雪の
顕微鏡写真をとるのが第一であると考え、1932年の冬からその仕事に取りかか
りました。

零下7,8度の戸外に紙に包んだガラス板を置き、すっかり冷えきったところ
で紙を取り出し、降り落ちてくる雪をその上に受けて顕微鏡でのぞく仕事でし
た。

そして、昭和10年までに3000枚にもおよぶ雪の結晶の写真をとりました。

次に、宇吉郎は人工雪の結晶をつくる研究を始めました。

雪は水蒸気が水を飛び越して氷になる現象「昇華」作用によるものです。自然
界では、空気中に浮かぶ小さいちりが芯となってそのまわりに氷の結晶ができ
ます。このような小さなちりを「凝縮核」と呼んでいます。

つまり、人工雪の結晶を作るには「低温実験室」と「凝縮核」を作らなければ
ならないのです。

昭和11年(1936)の2月、北海道大学に低温実験室がつくられ、凝縮核には、
ごく細いウサギの腹毛を使うことによって、自然界に見られる雪や霜の結晶の
ほとんどすべてを作り出すことに成功したのでした。

雪の結晶には、針状、樹枝状、角板、角錐、角柱などのいろいろの形がありま
す。これらの形はどうしてできるのでしょうか。

その形を決めるのは、水蒸気のもととなる水の温度T1と、氷の結晶ができる
場所の温度T2であることがわかり、T1とT2を横軸と縦軸にとって、雪の
結晶ができる範囲を図示したグラフを「中谷ダイヤグラム」とよばれています。

さらに深く調べるには「過飽和の比」とよばれる量Sを使う方が良いことが分
かりました。「過飽和の比」とは、下の温かい場所での水蒸気が上の冷たい場
所での水蒸気に対してどれだけ湿っているかをあらわす量であり、つまり、こ
の値が大きいほど上の冷たい場所で氷の結晶ができやすく、成長しやすいとい
う事なのです。

この実験の過程を逆にたどれば、天から降ってくる雪の結晶の形から、上空の
温度やそこでの水蒸気のしめりぐあいが推定できるのです。

まさしく「雪は天から送られた手紙である」というわけなのです。

そして、その手紙の文句は結晶の形および模様という暗号で書かれています。
この暗号を読みとり、上空の気象状態を推定するための基礎を築いたことが、
宇吉郎の人工雪の研究の重要な意義なのでした。

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■ちょっとコメント■

実は私も大学時代、授業で「雪の結晶」をつくった経験があります。

大きな冷却装置の中に湯気を入れ、凝集核には線香の煙(だったはず?)を
使い、さらに、荷造りのクッションによく使われる空気の入ったエアークッシ
ョン(つぶすとパチパチ音がしておもしろい品物)を、一つ冷却装置の中でつ
ぶすのです。

なぜかというと、つぶしたことによって断熱膨張して瞬間的にさらに温度が下
がるのです。

そして、冷却装置の下にスライドガラスを置いて、落ちてきた雪の結晶をとり、
別室の低温室にすぐ持っていき顕微鏡で観察するのです。

このような方法では、できる雪の結晶も小さく三角形が多く、中に六角形のも
のが少しあった程度でした。

でも、その成長と温度などの条件についてレポートを書いたら、教授にほめら
れた(?)ことを覚えています。

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