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●   『ちょっとサイエンス』   2001/12/7   No.58  
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●    発行者 Fujiken       毎週金曜日発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「宇宙の探究」
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人類が直立歩行をはたし、道具を使うようになってから200〜300万年。
人類は幾多の文明を築き上げました。
エジプトでは天体観測から世界で最初の太陽暦をつくり、1年が365日で
あることを知っていました。(B.C.2781)

ギリシャの学問を集大成したアリストテレス(紀元前384〜322)も天界では
地球を中心とする55個の天球が回転しているとしました。円や球は完全な
図形であり、天界にふさわしいと考えられたのでした。

こうして多くの人々に支持された天動説は、2世紀にギリシャのプトレマイ
オスによってみごとな体系にまとめられました。しかし、天動説を実際の星
の動きと対応させるには「周転円」とよばれる多数の円を採用しなければな
らなかったのでした。

「宇宙ははたしてこのように複雑なものだろうか」

との疑問を持ったのが、ポーランドのコペルニクス(1473〜1543)でした。
イタリアに留学したコペルニクスはそこで、

「太陽が地球のまわりを回るのではなく、地球が太陽のまわりを回る」

と述べたギリシャのアリスタルコス(紀元前300年ごろ)の本にふれました。
彼はこの「地動説」を採用すれば、複雑だった宇宙がすっきり整理されること
に気づきました。

「単純明快。それこそが地動説の正しさの証拠ではないか」

しかし、当時の教会の権力を考えると、地動説の公表には慎重にならざるを得
なかったのです。

弟子のすすめで著書『天体の回転について』が出版されたのは彼のなくなった
年でした。

コペルニクスの体系はまだ十分に美しいものではなかったのです。

惑星の動きを円と考えていたため多くの円運動の組み合わせが必要だったのです。

太陽系を美しい秩序と法則の下に復帰させたのは、ドイツのケプラー(1571〜
1630)でした。

デンマークの天文台の助手になったケプラーは、そこで精密な天体観測を行って
いたティコ・ブラーエ(1546〜1601)の膨大なデータをゆずり受けました。

彼はこのデータを使って、当時問題となっていた火星の軌道決定にとりかかりま
した。

軌道を円として計算すると、角度にして8分のずれが出ました。
ブラーエの観測技術を信頼したケプラーは、このずれは軌道を円と仮定したため
ではないかと考えました。
新たな計算の結果、彼が得た火星の軌道は、彼の言葉を借りれば
「ふくれっつらの円」でした。

「惑星はだ円軌道をえがく」という第一法則をはじめ、ケプラーが発見した三つ
法則は宇宙が美しい調和の中にあることの証明でした。

望遠鏡という新しい道具を天文学に導入したのがガリレオ・ガリレイ(1564〜
1642)です。

1609年、彼は発明されたばかりの望遠鏡を宇宙に向け、木星に衛星があること
月にでこぼこの地形があることなどを見つけました。

地球は宇宙の特別な星ではない。地動説を確信し発表した彼は宗教裁判にかけ
られることになりました。地動説を真理として認めないという宣誓文を書かさ
れたあとに

「それでも地球は動く」とつぶやいた話は有名です。

ガリレイが観測手段に新しい道を開いたとすれば、理論の面で天文学の基礎を
つくったのはイギリスのアイザック・ニュートン(1642〜1727)です。

くしくもガリレイの亡くなった年に生まれたニュートンは、地球の周りを回る
月と木から落ちるリンゴには同じ力がはたらいているのではないかと考えまし
た。弱冠24歳のときのことです。

この「万有引力の法則」は、宇宙を支配している法則も地上の法則と変わらな
いことを見いだした物でした。
そして、運動の三法則と万有引力の法則から月や惑星の運動を説明したのです。

ニュートンの理論の正しさは劇的な形で証明されました。
彼が40歳の時、大彗星が地球を訪れました。
ニュートンの理論を使って彗星の軌道を計算したハレー(1656〜1742)は、
この彗星が76年後にふたたび現れるだろうと予言しました。
1758年はたして彗星は地球にやってきたのです。
ハレー彗星は宇宙がニュートンの理論どおりに動いていることを証明したのです。

望遠鏡という新しい道具を手にした天文学者たちは、より遠くの宇宙の構造を
次々と明らかにしていきました。

1784年ドイツのハーシェル(1738〜1822)は当時世界最大だった口径121pの
望遠鏡を使って全天に分布している星の位置と数を調べました。その結果、太陽
を含めた我々のまわりの星が薄いへん平な円盤状に分布していることを見つけま
した。銀河系の発見です。

アメリカのウィルソン山天文台の口径254p望遠鏡を使って、宇宙を観測して
いたハッブル(1889〜1953)は、当時なぞとされていた渦巻き星雲の正体が我々
銀河系の外にある別の銀河であることを発見しました。
銀河系もまた宇宙に無数に存在する銀河の一つにすぎなかったのである。

ハッブルはさらに驚くべき事実を発見した。
1929年彼は遠くにある銀河ほど速いスピードで我々から遠ざかっている事を発見
したのです。膨張宇宙の発見です。

実は1917年ドイツのアルバート・アインシュタイン(1879〜1955)は、完成した
ばかりの「一般相対性理論」を宇宙にあてはめた所、宇宙が膨張するという結果
を得ていました。しかし、膨張宇宙の事実が知られていなかった当時、アイン
シュタインは膨張を相殺する「宇宙項」を式に導入してしまいました。
のちにアインシュタインは「生涯最大のあやまちをおかした」と語ったと言われ
ています。

宇宙が膨張しているという事実は次のようななぞを生みました。
膨張宇宙を過去にさかのぼるとどうなるのか。
この答えは1948年アメリカのガモフ(1904〜1968)があたえました。
彼は一般相対性理論と熱力学の方程式を使って、
宇宙はかつて光とガスの満ちた熱い火の玉だったと結論したのです。
「ビッグバン宇宙論」の提唱です。

宇宙の全体像が明らかになる一方で、星についての理解も進んでいきました。

1938年アメリカのベーテらは星のエネルギーは核融合反応でつくられることを
証明しました。
軽い元素は星の内部で重い元素へとつくり変えられていく。
核融合の燃料を使い切った星はどうなるのか。

1939年アメリカのオッペンハイマーは大質量の星は収縮して中性子だけからなる
「中性子星」になるだろうと述べました。
さらに彼は、それより質量の重い星は自分の重力を支えきれず1点にまで縮んで
いくと考えました。「ブラックホール」の予言です。

ブラックホールはアインシュタインの一般相対性理論から予言されていました。

1967年イギリスで規則的な電波パルスを放射する天体「パルサー」が発見され、
パルサーの正体が中性子星であることが確認され、オッペンハイマーの説の
正しさがわかりました。

1971年NASA(アメリカ航空宇宙局)のX線天文衛星が、激変するX線源を
はくちょう座で見つけました。
現在のところ、この「はくちょう座X−1」は星がつぶれて出来たブラック
ホールにほぼまちがいないと考えられています。

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■ちょっとコメント■

天動説から地動説、ケプラーとニュートンとハレー彗星、

銀河系の発見、膨張宇宙、ビッグバン、

中性子星(パルサー)とブラックホールまで

ざっと「宇宙の探究」の歴史をまとめてみました。

さて次回は、No.59「物質の探究」をお届けします。

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