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●   『ちょっとサイエンス』   2001/11/16   No.55  
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●    発行者 Fujiken       毎週金曜日発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「狂牛病」
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2001年8月6日、千葉県で狂牛病とみられるウシが1頭報告されました。
このウシの脳のサンプルはイギリスの獣医研究所に送られ、9月21日、
狂牛病であるとの最終診断結果が送られてきました。狂牛病は知らない間に、
日本にも入ってきたのです。

狂牛病は正式には「牛海綿状脳症」といい、神経細胞が破壊されて脳に空胞が
でき、その名の通り脳がスポンジ状になる致死性の病気です。

まず、音に対する異常反応や動作不安、持続的鼻なめ、けいれんなどの症状が
あらわれ、起立時に後ろ足が開き、ふらついて歩くようになります。末期にな
ると興奮して攻撃的になったり、転倒しやすくなり、最後には立っていられな
くなり、発症後2週間から6ヶ月で死に至ります。

狂牛病がイギリスで最初に報告されたのは1986年でした。

1992〜1993年に流行はピークに達し、年間3万頭以上の狂牛病が発生
し、1996年、狂牛病がヒトに感染することが明らかになり、当初は家畜の
伝染病と認識されていた狂牛病は一躍大きな社会問題にまで発展したのです。

感染したヒトもおもに変異型ヤコブ病になり、神経細胞がおかされ、やがて
死に至り、治療法はまだないのです。

狂牛病の原因は、プリオンとよばれるタンパク質です。

プリオン・タンパクは動物やヒトが普通に持っているタンパク質で、これが
異常型プリオン・タンパクにかわり、脳に蓄積すると病気が発生するのです。

狂牛病はヒツジから来たという説が有力です。

西ヨーロッパのヒツジには18世紀からスクレイピー(scrapie)という病気が
みられました。スクレイピーにかかったヒツジは体がかゆくなり、樹木や柱に
体をはげしくこすりつける(scrape)ことから、その名前がつきました。
スクレイピーも狂牛病と同じ様な症状があらわれる致死性の病気です。

ヒツジからウシに感染した原因は、スクレイピーにかかったヒツジの内臓や肉、
骨などを「肉骨粉」としてウシに食べさせたためです。

肉骨粉は家畜の内臓やくず肉、骨をミキサーにかけ、脂肪を抜いた後、乾燥さ
せて細かく砕いたものです。

肉骨粉はタンパク質やカルシウム、ミネラル分などの栄養源となるうえ、家畜
の廃棄部分のリサイクルにもなり、広く用いられてきました。

草食動物であるウシに「共食い」をさせるという、自然界には存在しない、
食物連鎖をちつくりだしたために、狂牛病は発生し、拡大していったのです。

今、私たちが一番知りたいのは、牛肉やウシ由来のその他の食品、あるいは
ウシを原料にした製品がどれだけ安全なのか、ということです。

異常型プリオン・タンパクは脳や脊髄、目、小腸の末端などに集中しているの
で、この部分を食べることは避けなくてはいけません。

モツには危険部位である小腸の末端が含まれる可能性があります。

牛乳や乳製品には異常型プリオン・タンパクは含まれず、安全であることが
確認されています。

医薬品や化粧品などにも、ウシ由来の原料が使われてきました。
たとえば、美白用の化粧品ではウシの胎盤エキスが使われているものもありま
す。
異常型プリオン・タンパクは皮膚から感染することもあるので、各メーカーは
安全性に配慮し、他の原料を使用するなどの対策をとっているようです。

今後は、全てのウシについて、解体の際に狂牛病であるかどうかを検査し、
安全を確認してから出荷する体制がとられます。これが完璧に実施されれば、
これから流通する牛肉は安全と言えるでしょう。

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■ちょっとコメント■

狂牛病が1頭発生したということは、1頭では終わらないのでは?

というのが私たちの素朴な疑問ですが、1頭以外いまだに報告はされていませ
ん。

発症した牛舎で飼われていたウシは処分されたと聞いていますが・・・。

とにかく、狂牛病に過剰に反応するのはよくないですが、危険から身を守る
ために必要なのは、事実を正確に知ることだと思います。

さて次回は、No.56「ヒマラヤ山脈」をお届けします。

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