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●   『ちょっとサイエンス』   2001/9/7   No.45  
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●    発行者 Fujiken      毎週金曜日発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「長岡半太郎」
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明治26年(1893)3月から3年余りを、当時の東京帝国大学理科大学助教授の
長岡半太郎はドイツへ留学しました。

長岡が研究していた物理学は明治の文明開化以来、イギリスやアメリカからの
外国人教師の指導のもとで発展してきた学問でした。

しかし留学直前に「磁歪(磁気ひずみ)」の研究によって長岡が学位を得た頃
には、日本の物理学もようやくひとり立ちができるようになっていました。

長岡の「磁気ひずみ」の研究はやがて後輩の本多光太郎に受け継がれ、磁気学
は日本の物理学の伝統的な研究分野の一つとなっていったのです。

長岡の留学した当時のヨーロッパ、特にドイツでは原子論や分子論はあまり評
判がよくありませんでした。目に見えない原子や分子の存在を仮定して議論を
進めることは、自然科学者のとるべき態度ではないという考え方が支配的だっ
たのです。

このような学界の空気の中で、イギリスのマクスウェルとオーストリアのボル
ツマンは原子や分子の存在を仮定した原子論を主張していました。

彼らは分子を球とみなして、その運動から「気体分子運動論」を確立し、そし
てこの理論に基づいて「ボイル・シャルルの法則」などを説明したのです。
このマクスウェルやボルツマンの考え方に長岡は興味をそそられました。

明治33年(1900)には、パリで開かれた万国物理学会に出席し、そこでフラン
スの大数学者であり、物理学者であったアンリ・ポアンカレが「原子の構造を
研究するには、それぞれの原子に固有なスペクトル線に注目すべきである。」
と述べたことに、研究上のインスピレーションを得ました。

当時すでに「ケルビン卿(ウイリアム・トムソン)の原子模型」と呼ばれるも
のが提案されていました。

ケルビン卿によれば、原子はプラスの電荷をもった球とその中を自由に動き回
る微小粒子の電子からなるというものでした。

それは二つの物質が空間の同一の地点をしめるということであり、「そんなこ
とはとても考えられない。」と思った長岡は、プラスの電荷をもった球のまわ
りの真空中をマイナスの電荷をもった電子が回っている模型を考えつき、明治
36年(1903)12月に東京数学物理学の常会ではじめて提唱しました。

これが「土星型原子模型」と言われるものです。

1911年にラザフォードがプラスの電荷を持つ原子核の存在を明らかにし、
1913年にはニールス・ボーアが量子の考えを取り入れた原子模型を提唱し
ました。

現在はボーアの原子模型を取り入れていますが、長岡半太郎の「土星型原子模
型」は現在の原子模型の先がけとなるものだったのです。

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■ちょっとコメント■

長岡半太郎が「土星型原子模型」を提唱した頃、世界では注目されたのですが、
日本の物理学者はあまり興味を示さなかったのです。

中学レベルでよく原子模型をかきますが、それは長岡半太郎の「土星型原子模
型」によく似たものをかくような気がします。

長岡はまた、「中間子論」の湯川秀樹に期待をかけ、ノーベル賞委員会に早く
から湯川を推薦していました。

大正15年(1926)東大教授を定年退職した長岡は、その後昭和6年(1931)から
9年にかけて大阪帝国大学の初代総長を務めました。

さて次回は、No.46「太陽の寿命」をお届けします。

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