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●   『ちょっとサイエンス』   2001/8/10   No.41  
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●    発行者 Fujiken      毎週金曜日発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「牧野富太郎」
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牧野富太郎というとすぐに「牧野日本植物図鑑」思い浮かべるほどです。

この図鑑は昭和15年(1940)に出版されたもので、この本がなければ日本の植
物研究は不可能といわれるほど重要な本です。

日本には約6000種の植物がありますが、このうち牧野が発見して命名した
ものがなんと1000種にもおよんでいます。

牧野は江戸時代末期の文久2年(1862)に土佐国佐川(現在の高知県高岡郡佐川
町)に大きな造り酒屋『岸屋』のあとつぎ息子として生まれました。しかし、
幼くして両親と祖父を失い、祖母だけが残ったのです。

明治7年(1874)に佐川に小学校が出来てからは、そこへ通うようになり、学校
への往復の途中で植物を観察し、それを採集するようになりました。

勉強好きの牧野にとっては、小学校の授業はあまり面白くありませんでした。
ただ一つ、文部省博物局に勤めていた田中芳男(明治前期の指導的植物学者)
のつくった『博物図』という植物図だけが彼の興味をそそりました。

このころの小学校は4年で卒業でした。牧野は明治8年に小学校をやめてしま
いました。つまり正式な学歴はこの小学校の2年間だけでした。

その後もさらに独学をつづけ、祖母は勉強好きの牧野にあらゆるものを与えて
牧野の勉強を奨励しました。

彼は先祖の残してくれた岸屋の遺産のすべてを自分の植物研究にささげ、その
ためについに岸屋は没落してしまいました。

小学校をやめ、野や山を歩き回って植物採集に力を入れ始めた牧野は、同じ佐
川町に住んでいた医者のもっていた『本草綱目啓蒙』という本に興味を持ちま
した。これは江戸後期の植物学者小野蘭山という人が書いた植物の本でした。
全部で20巻ありました。牧野は祖母に頼んでその20巻を大阪からわざわざ
取り寄せてもらったのです。

中国では古くから動植物や鉱物について、その薬としてのききめや使用法を研
究する学問を「本草学」とよんでいました。

牧野の一生にわたった植物分類学の研究はこの本から出発したのです。

明治11年高知師範学校の教授をしていた永沼小一郎に会い、今までの本草学
としての植物学でない、近代科学としての植物学を教えられたのです。すでに
何冊かの英文の植物学の本を翻訳していた永沼はこのうえないよい先生でした。

牧野の植物学に対する欲望はますます強いものになっていき、明治17年(1884)
22才の牧野は大きな望みを心に秘めながら上京したのです。

東京へ着いた牧野は、理科大学の植物学教室を訪れました。矢田部教授は、牧
野の植物学の知識の深さを認め、同教室に出入りし、図書や標本を自由に見る
ことを許しました。

明治21年には『日本植物志図編』の第1巻第1章を出版し、明治23年には
図編の第6集までが出版されました。

そのころ水生の食虫植物であるムジナモを発見し、植物学者としての名をあげ
ました。

明治26年彼が31才の時、東京帝国大学の助手に任命されました。

明治45年に講師となり、昭和14年までその地位にとどまったのです。

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■ちょっとコメント■

牧野が上京したとき、理科大学の教授矢田部に対して

「植物分類学を研究し、日本にある植物を全部調べて日本植物志といったもの
 をつくりたいと思います。」

と答えています。

本当にそのとおりのことをしたわけですからすごい!と思います。

また、昭和3年に妻を亡くし、その死を悲しんだ彼は仙台で発見したササの新
種に妻の名にちなんで和名を「スエコザサ」学名を「ササ・スエコヤナ・マキノ」
と名付け苦労を共にした妻をとむらっています。

私は高知県高知市五台山公園内にある「牧野植物園」に行ったことがあります。
高知への旅は良かったです。

さて次回は、No.42「日射病、熱射病、熱中症」をお届けします。

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