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● 『ちょっとサイエンス』 2001/7/13
No.37
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● 発行者 Fujiken 毎週金曜日発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。
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■今日のテーマ 「秦 佐八郎」
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秦佐八郎は明治6年(1873)現在の島根県に生まれ、第三高等学校医学部卒業後、
県立病院に勤め、そのかたわら第三高等学校医学部へ出入りして研究にはげみ
ました。
当時は細菌学の革命時代であり、数多くの伝染病の病原菌やその治療法が発見
されていました。
こういった研究の糸口をつけたのはフランスのルイ・パスツールとドイツの
ロベルト・コッホでした。
パスツールやコッホはすぐれた弟子たちを持っていました。
その中の一人日本の北里柴三郎はコッホの下へ留学し、破傷風菌の純粋培養に
成功し、日本に帰国後大日本衛生会附属伝染病研究所の所長となりました。
佐八郎は秦家の養子であったのにもかかわらず、祖父の理解のもと上京を許さ
れ、この研究所に勤めました。
そこでしばらく研究したのち、明治40年(1907)にベルリンにあるコッホ研究
所に留学するため旅立ちました。
すると、ベルリンでその当時世界の細菌学者のトップにいた人であるパウル・
エールリヒに出会いました。
秦はエールリヒに手紙を書き、なんとエールリヒの研究所に研究室と助手を持
つことが出来たのです。
秦に与えられた仕事は梅毒の化学療法剤の発見でした。
梅毒は、アメリカ大陸を発見したコロンブスの一行によってヨーロッパへもた
らされたとされている性病の一つです。
治療法がまったくなく、水銀を塗る方法だけが試みられ、それもほとんど効果
がなかったのです。
やがて梅毒の病原体が発見され、それはスピロヘータ・バリーダと呼ばれ、ち
ょうどコルク抜きの栓のような形をしていました。
秦はスピロヘータを手に入れ、それに様々な薬品を注射して、その効果を試し
ました。
その一つが、ジオキシ・ジアミド・アルゼノベンゾール、通称606号だった
のです。
実験の結果は奇跡的でした。
ニワトリにスピロヘータを注射し、つづいて606号を打ってみたところ、ニ
ワトリはぴんぴんしていました。
生物に対して606号が無害であることを確かめた上で、最後に人体実験がな
されました。
死ぬのを待つばかりの男に606号が注射されました。1回の注射で彼は立ち
上がり全快しました。
1909年にはエールリヒとの連名で論文が発表されました。
しかし、サルバルサンと呼ばれる606号はいいことばかりでなく、その注射
によって起こるしゃっくり、吐き気、足の硬直、けいれんなどの副作用があり、
これらをなくす研究が続きました。
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■ちょっとコメント■
秦佐八郎氏の発見したサルバルサン、606号は、免疫反応を利用したもので
はなく、化学療法剤、いわゆる薬の発見だったのですね。
ここしばらく細菌学者を取り上げてきました。
なぜか細菌学者は我々の体に直接関係ある分野ですが、中学・高校ではあまり
取り上げていないような気がします。
秦佐八郎にしろ、北里柴三郎にしろ、よい師(先生)に出会うことが大切であ
ることを教えてくれたような気がします。
さて、次回はNo.38「ブリキとトタン」をお届けします。
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