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● 『ちょっとサイエンス』 2007/6/21
No.270
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● 発行者 Fujiken 不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。
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■今日のテーマ 「"京都からの提言"を聴いて−その2−」
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今回は京都大学の研究所及び研究センター主催で行われた"京都からの提言"の
2回目です。
前回は素粒子論に貢献した湯川氏・朝永氏らの活躍や自然界の4つの力を「ゲージ
理論」で説明できるという講演の内容を報告しました。
今回は、原子炉実験所長の代谷誠治氏の「中性子利用が拓く科学技術、核物理から
がん治療まで」という講演の内容です。
京都大学の原子炉ができたのは1963年、大阪であり初代の設置準備委員会委員長は
湯川氏でした。
湯川氏と朝永氏は核兵器の廃絶を訴えました。核の平和利用の1つとして湯川氏
は晩年がんを患い、中間子でのがん治療を夢見ていましたが、現在は中性子での
がん治療を進めています。
原子炉の利用で一番多いのは微量元素の分析です。
イタイイタイ病の原因がカドミウムだと発見したのです。
そもそも原子炉内で核燃料に中性子が当たると核分裂して、熱エネルギーと中性
子を2,3個出します。臨界はこのうちの1個だけが次の核分裂を起こす状態を
示すことで、一定の出力で運転している状態です。出力を上げるには1個より
多くの中性子が次の核分裂を起こす超臨界状態にします。チェルノブイリの事故
はこの超臨界状態で起こったと考えられています。
出力の低い1個未満の中性子しか次の核分裂を起こさない状態を未臨界といいます。
京都大学では未臨界で核分裂の連鎖反応を維持する新たな装置の研究をしています。
がん治療には1,手術 2,化学療法 3,放射線療法などがあります。
京都大学では悪性脳腫瘍に中性子をあてて2005年度には90件もの患者を治療し、
悪性黒色腫も3か月後にはきれいになくなったという事例があります。
現在、肺がん、肝臓がん、中皮腫などに対する適用の拡大を検討しているという
ことでした。
(「読売新聞」参照 )
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■ちょっとコメント■
核反応の平和利用の一つとして、ノーベル化学賞を受賞された白川英樹氏が発
見した電気を通す高分子に、金属が入っていないことを証明するためにも、この
京都大学の原子炉が使われたということを初めて知りました。
やはり一番印象に残ったのは、中性子放射によるがん治療についてです。
ホウ素中性子捕促療法というがん治療は、ホウ素を含んだ薬をがんに集め、
中性子を当てるとホウ素はα線を出し、がんだけが死ぬので、悪性腫瘍の中に
は正常細胞と腫瘍細胞が入り交じって境界がはっきりしないことが多く、通常
の放射線療法ではむずかしいことが、このホウ素中性子捕捉療法を使えば、
がんだけを殺したり、取り去ることができると聴き、素晴らしい療法だと感心
しました。
もうひとつ感心したことは、京都大学の原子炉は学生が学習できる唯一の場所
であり、学生に実際に原子炉を運転させているということです。
とても画期的な原子炉実験所だと思いました。
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