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●   『ちょっとサイエンス』  2007/2/9  No.262  
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●    発行者 Fujiken      不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「燃料電池の今−その2−」
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前回のNo.261「燃料電池の今」のあとメールを頂きました。

●「わっちょ」様より

はじめまして、「わっちょ」と申します。量子論や絶対空間などの話は私には
まだ難解すぎるので、もっと勉強しなくてはと改めて思いました。

燃料電池は、ノートパソコン用のものがあったように思います(東芝とNECです)。
市販されているかどうかはわかりませんが、実用化も案外近いのかもしれませんね。
実用上で問題になるのはやはり水素の供給源ですよね。わたしは、ノートパソコン
や携帯機器用は水素吸蔵物質を用いたカートリッジタイプが主流になるのではない
かと思います。巷で噂のカーボンナノチューブも水素吸蔵物質のようですし、
水素吸蔵合金などもあるというのが根拠です。

→Fujikenより

これを読んで、以前 No.138,139「カーボンナノファイバー・ナノチューブ」を

テーマとしてとりあげた時に、お世話になった今でも励ましや新たな情報を送って

下さる「太郎左衛門」様にご意見を頂きました。

●「太郎左衛門」様より

メールを頂きました、個人的な意見を述べさせていただきます。

今後の主流になるかならぬかは、いくつかの要因で決まってくると思い
ます。
1,安全性
2,コスト
3,利便性
この3つが重要と考えます。

水素そのものをカートリッジにするのは安全性の面から問題があるでし
ょう。
カーボンナノチューブですが、確かに水素を吸着します。がしかし、出
さないのです。(カーボンナノチューブの利用法として色々出てきてお
りますが、現段階ですぐに利用できるのは導電性くらいで、当社も電子
線源としての研究はペンディング致しました。)
水素貯蔵合金は、安全性、利便性などに関しては非常に優れていると考
えますが、コストが問題でしょうね。
現段階では、リサイクルさせてたとしても、かなりコストがかかると思
います。

となりますと、水素源はメタノール、エタノールなどになると考えます。
その辺りが第一、第二世代で、貯蔵合金、ナノチューブはその次の世代
と考えております。

当社のナノチューブを使用したプロジェクトは全てペンディングとなり
ました。理由は、(カーボンナノチューブは、非常に高いポテンシャル
を持っているが、工業材料としては問題が多い。)という事です。
同じ形状、性質の物を得る事が困難である、ということが全ての基とな
っております。
という事で、私も去年の初めに部署が替わり、現在、次世代医療に関す
る研究として、がんの早期診断システム開発をしております。
ここ一年のナノチューブに関するニュースは知りえませんので、新しい
事がおきているかもしれません。

以上、個人的な考えを述べました。

これからも面白い記事のご配布を期待いたしております。

→Fujikenより

カーボンナノチューブの研究の先端におられた太郎左衛門様のメールには

納得することが多々ありました。そこでこの太郎左衛門様のメールを「わっちょ」

様に返信し、補足等をお聞きしました。

●「わっちょ」様より

カーボンナノチューブには研究途上であり、様々な問題もあるのは知っています。
色々な応用を考えていく上で物性が安定しない(チューブの直径や導電率などの
同じ数字を得るのが難しい)というのは足かせになっています。また、形状から
アスベストのように人体に対して悪さをするのではないかとも言われています。
応用面では、一部の原子間力顕微鏡の探針に使われています。韓国のSamsungが
フラット・パネル・ディスプレイのバックライトに使用した試作品を発表してい
ます。また、LSIなどの集積回路への応用は富士通と富士通研究所が最も進んで
おり、カーボンナノチューブを用いて配線層を形成するのに成功しています。
これらが実用化されるのはおそらくまだまだ先のことでしょう。

本題の燃料電池に関してですが、太郎左衛門様のおっしゃることももっともであり
その通りだと思います。なぜ私が前回メールであのようなことを述べたのかと言い
ますと、一部個人的な希望も含めそうなるだろうと思ったからです。

ここからは私の個人的な意見ですが、前回と今回のメールで出てきたどの方法も
問題があると思います。水素でもそうですが、メタノール、エタノールをどう供給
するかです。自動車用燃料ではブラジルがバイオエタノールで生産量が世界一です
が、それは甜菜やさとうきびの生産が多いからできることです。バイオエタノール
を作る為に砂糖を作る分をまわしているようです。そしてさらに必要とあれば、
アマゾンの森林を切り開いて畑を広げ栽培しているようで森林破壊も問題になって
おります。しかし、廃材からアルコールを作る関西の工場やホンダが開発した稲わら
からアルコールを作る技術が実用化されればまた状況が変わるかもしれません
(実際のところ、今後どうなるかは誰にもわからないでしょう。もしかしたらバイオ
アルコールではないものを使うかも知れません)。

以上、かなり個人的な意見も多いのですが、太郎左衛門様からのメールに対する意見
も含めて書かせていただきました。

→Fujikenより

今回は「わっちょ」様「太郎左衛門」様からのメールで構成させて頂きました。

お二人には心からお礼申し上げます。

「ちょっとサイエンス」が7年目に入ることができたのも、読者の方からのメール

によって励まされ、支えられてきたからだと感謝しています。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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■ちょっとコメント■

ナノテクノロジーの時代と言われて久しいですが、1ナノメートル(=1nm)は

10のマイナス9乗メートル、つまり1nmは10億分の1メートルとなります。

このナノの大きさが中学生の理科の教科書に載る時代になりました。

ナノの世界はちょうど原子や小さな分子のレベルの大きさで、その大きさの

炭素で出来たチューブがカーボンナノチューブと言われていて、出来た当初は

半導体に生かされてLSIやコンピュータに応用されるのではないかとナノ革命

という期待が寄せられました。

しかし、太郎左衛門様のメールを読んだところ、同じ形状、性質のものを作る

のが困難であるということでそちらの研究は中断されているようです。

そして、今回の燃料電池の水素供給素材としては水素は吸収するが放出しない

ということのようです。

今回、「わっちょ」様からのメールで初めて知ったのが「水素吸蔵合金」です。

水素吸蔵合金とは、水素の吸蔵と放出を両立させるために結晶構造中に水素の

入る空隙があり、その位置で水素がある程度安定に存在することができ、なお

かつその位置から水素が出なければならないという観点から、合金の結晶構造

並びに電子状態を最適化するために比較的空隙の多い結晶構造をもち、なおか

つ触媒作用を持つような元素を含む合金が各種開発されていて、日本は現在世界

でもトップレベルの開発水準を維持しているということです。

(フリー百科事典「ウィキペディア」参照)

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■「読者からのメール」より

●「二児の母」様より 「ブラックホールについて」

早々にお調べいただいてありがとうございました。
今でもブラックホールは存在していたのですね。
でも、その私が子どもと一緒に聴いた講演は、中学生を対象とした講演だった
にもかかわらず、そのような話が全く出てこなかったので、「なぜ?」とふと
疑問に思ったのですが、なぜ話されなかったのでしょうね。
ブラックホールに関しては、今では中学でも教えない内容なのでしょうか?
あまり必要でない、と言えば必要のない話なのかもしれませんが・・・。
興味のある子は、おもしろがって聴くと思うのですけどね・・・。
また、教えてください。ありがとうございました。

→Fujikenより

中学校では教科書にはブラックホールについては載っていません。

中学レベルを越えるからだと思います。

しかし、天体の所を勉強すると必ずと言っていいほど「ブラックホールって何?」

とい質問が出てきます。

その時は私は光の脱出速度について話します。

「地球からロケットが打ち出されて宇宙に行くにはある速度以上にならないと

脱出できないのはわかるよね。地球がロケットを引っ張る力以上の速度を脱出

速度っていうんだ。そこで、地球よりすごく重い天体があって、光というこの

世で一番速い光でさえ脱出できない天体があっても不思議じゃないよね。

その天体は光でさせ脱出できないんだから、光は出てこない、だから周りから

みると黒い穴に見えるんだよ。だからその天体を「ブラックホール」って呼ん

でるんだ。」と私は説明しています。

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