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●   『ちょっとサイエンス』  2007/1/27   No.260  
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●    発行者 Fujiken       不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「相対性理論に影響を与えたマッハ主義とは何か」
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アインシュタインが相対性理論を構築するのにドイツのマッハがニュートン力

学の絶対性というものを排除しマッハ力学というものを完成させていました。

その中のマッハの考え方(=マッハ主義)とはなんでしょうか?

まず、絶対空間、絶対時間、絶対運動という絶対性というものをニュートンは

考えていますが、マッハはそれを認めません。

例えば、絶対空間とは「それ自体の本性によって外部の何ものにも無関係に、

いつも同一のまま静止してる」とニュートンは定義していますが、マッハは

「それは経験の中に決して現れることのない単なる空想の産物であり、ニュー

トンが事実だけを研究するという彼の方針に反した行動だ」と批判しています。

そして「電磁波を伝える物質であるエーテルが経験にかかれば、絶対空間の概念

として価値のあるものになるだろう」と言っています。

その後、マイケルソン・モーレイの実験によってエーテルは観測されず、今でも

絶対空間というものを経験から知る事は出来ないのです。

次に絶対時間とは「絶対的な真の数学的な時間は、その本性に従って一様に外部

の何ものにも無関係にそれ自ら流れていくものである。」というニュートンの説

明に対して、マッハは「それは無用な形而上学的な概念であり、これも事実だけ

を研究するという方針から逸脱している」と批判しています。形而上学的とは、

思惟によるものや直感的なもので探究していこうとする学問のことで、哲学用語

としてよく使われる言葉です。

さらに、絶対運動というものから出てくる遠心力に関しては「ニュートンのバケ

ツの実験」によって説明していますが、マッハは水とバケツまたは地球や宇宙と

の相対運動から水の凹凸や、水の溢れ出す現象を説明するべきだと主張します。

これらのことからマッハ主義とは、経験から定義するという「経験主義」、

操作して測れるものによって定義するという「操作主義」、絶対運動は考えな

いで運動を相対的にとらえるという「相対主義」、経験や操作によって実証さ

れたもので体系化する「実証主義」があげられます。

これらのマッハ主義がどのように相対性理論に影響を与えたかというと、

マイケルソン・モーレイの実験によって「光速度が一定である」という結果を

原理に持って行き、時間を光で操作して定義すると、運動する物体は時間が遅

れるという結果を導きだしたのです。

つまり、実験結果=「光速度一定」を原理にしたという「経験主義」、光の操

作によって時間を定義するという「操作主義」、操作主義において相対運動で

の定義をした「相対主義」、これらの経験・操作において「特殊相対性理論」

を構築したという「実証主義」がすべてアインシュタインには見られるという

わけなのです。

( 「マッハ力学」、「ちょっとサイエンス」No.100「絶対時間。絶対空間」
           No.259「ニュートンのバケツの実験」 参照 )

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■ちょっとコメント■

今回も私の卒業論文の一部を紹介した形になっています。

マイケルソン・モーレイの実験でエーテルは観測されず、静止している物体か

ら出る光も、運動している物体から出る光も速度は一定であるという「光速度

一定」の結果が出たとき、ニュートン力学を守ろうとしたローレンツは運動方

向の短縮を考えたローレンツ変換の式を導き出しました、

一方アインシュタインは「光速度一定」を原理にして時間を光で操作して決め

るという考え方で新しい時間の概念を作り、運動している物体は時間が遅れる

という結果を導き出しました。その際、ローレンツ変換と同じ式が導かれるの

ですが、ローレンツとアインシュタインとは元々の考え方が違うのです。

久しぶりに、大学の時の自分の卒業論文を読んでいると難しいなと思ってしま

います。こんな難しいこと、あの頃は分かってたのだろうかとさえ思ってしま

ったFujikenでした。

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■「読者からのメール」より■

●「茨城県のSさん」より 

毎回楽しく興味を持って拝見しております。
以前、宇宙の端はどうなっているかとの質問をした、茨城のSと申します。
科学系の読み物は大変興味があるため何でもかんでも雑読していますが、
最近、立花隆著『臨死体験』を読んで驚きました。以前はあの世とか、死後の
世界とか、透視とか、予言とかは一切信じないと決めていましたが、この本を
読んでから科学信奉者の私でも、心が少しぐらぐらとなってきました。
まだ信じる段階ではありませんが、以前みたいに全く信じないとか、出鱈目だ
とかは言えなくなって来ました。
どうかこのコーナーでも、あの世に関することを科学的に検証した話とか、
面白いデータなどがありましたら取り上げてみていただけないでしょうか。
どうか宜しくお願いいたします。
科学信奉者の『S』より

→Fujikenより

まだ科学的には証明されていないことって多いですよね。

なにかそんな情報がありましたら、ぜひメールでお寄せ下さい。

蛇足ですが、マッハ主義の中に「数学実証主義」をあげられることがあります。

要するに数学で実証されればよい。解釈は後回しと言うことですが、これは

量子論で粒子性と波動性が問題になった時に、この数学実証主義は役だったと

いうことがあります。

数学実証主義は古い理論から新しい理論の構築には役に立つが解釈が難しくな

るという面を持っています。

何かそこらへんのことが、このSさんの回答に関係あるのかな?と思った

Fujikenでした。

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