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● 『ちょっとサイエンス』 2007/1/16
No.259
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● 発行者 Fujiken 不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。
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■今日のテーマ 「ニュートンのバケツの実験」
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ニュートンは絶対運動の遠心力の例として下記のような実験をしたといいます。
「バケツの中に水を入れ、バケツをひもでくくって何回か回して、ひもにねじ
れを生じさせて手を離すと、バケツと共に水が回転しだすが、最初バケツと水
の相対運動が最大の時、水の表面は平らだが、水が回転しだして水とバケツが
相対的に静止したとき、水の凹凸が最大になり水が飛び出すこともある。」と
いうのが「ニュートンのバケツの実験」という有名な実験です。
このニュートンの表現に対して、何も疑問を感じない人も多いと思いますが、
アインシュタインの相対性理論に影響を与えたドイツのマッハはニュートン
力学の批判を体系化した「マッハ力学」の中で、この実験の説明に関しても
批判しています。
「バケツの回転の水の運動を絶対運動として説明しているが、絶対運動という
考えから遠心力は回転体がうける見かけの力として出てくるものであって、私
(マッハ)は絶対運動というものはなく、この実験で水がうける力はバケツと水
の間の相対的な運動、または地球いや宇宙との相対的な運動によって生じる力
であると考える。もし、バケツの壁を何kmも厚くしたら水はどうなるかは絶対
運動で説明するのではなく、相対的な運動としてとらえるべきであり、どうな
るかはやってみなければわからない。」とマッハは主張しているのです。
(「マッハ力学」参照 )
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■ちょっとコメント■
私(Fujiken)の大学の卒業論文は「相対性理論に与えたマッハの影響」という
テーマでした。
これまで「ちょっとサイエンス」においても「絶対空間」「絶対時間」の批判
に関してはテーマとして取り上げてきました。
今回、私の卒業論文を見直したときにこの「ニュートンのバケツの実験」に対
するマッハの見解を説明するために、研究室でこの実験を再現したページを見
て今回のテーマにしたわけです。
研究室に天井からロープでくくったバケツをつるし、水との相対運動がわかる
ようにストローの一部を細長く切ったスチロール片を接着剤で壁に垂直になる
ようにつけて水をバケツの半分ほど入れます。
ロープのねじれの回数を決めてバケツを手で回します。そして手を離して回転
が始まってから1秒、2秒、3秒と1秒置きに写真を撮ります。写真を見たと
きに何秒の時か分かるように回転を始めたときからの秒数を紙に書いてスタン
ドにつけてバケツの横に置いて写真の中に入れます。
その写真を見た結果、水が飛び出す瞬間は10秒後で、その時写真ではスチロ
ール片が一番横に傾いている、つまりバケツと水との相対運動が大きい時であ
り、水は渦を巻いていて凹凸はあるものの、それから回転が遅くなっていって
18秒後凹凸は一番大きく、その後22秒後にスチロール片が垂直になって
バケツと水が相対的に静止していた状態で、バケツと水はゆっくりと回転をし
ていたのです。
よってニュートンのいうように回転が速くなってバケツと水が相対的に静止し
た時に水が飛び出すのではなく、バケツと水との相対運動が大きい時に水が飛
び出していて、その時ニュートンは水の凹凸も最も一番差が大きいと言ってい
ますが、実はその後回転が遅くなった時に凹凸は一番大きくなっているのです。
このことから「ニュートンのバケツの実験」の説明には一部間違いがあり、
絶対運動で説明するのではなく、水とバケツとの相対的な運動で解釈すべきだ
というマッハの主張は説明できたのです。
コピーではありますが、私の卒業論文の「ニュートンのバケツの実験」の部分
の写真はこちら→ http://fujiken2.hp.infoseek.co.jp/
あれから二十数年経った今、考えてみると、ニュートン力学はもともと質点の
力学であり、水は流体であるからニュートン力学がそのまま適用されないので
はないか。また、相対性理論の成立にはマッハのニュートン力学批判は役だっ
たかも知れないが、ある範囲ではニュートン力学も成立しているわけで、マッハ
的な考えには限界があるのではないかと思えてなりません。
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