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●  『ちょっとサイエンス』  2006/12/30   No.256  
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●    発行者 Fujiken       不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ「エントロピーの考え方−ゴムをのばすと温度があがる?−」
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No.254の追伸で「ゴムを伸ばしたり縮めたりすると温度が上がるのは、分子の

摩擦熱のためである。」という私の記述に対してメールが寄せられました。

●「うめだま」様より

こんにちは,うめだまと申します。
いつも,配信ありがとうございます。楽しく拝読させていただいております。

No.254の■追伸■欄の
「ゴムを伸ばしたり、縮めたりしたら温度はどうなるでしょうか?」
の内容について,どなたかがご指摘されるかと思っていたのですが,
No.255においてまだご指摘がなかったようですので,僭越ではありますが
メールさせていただきました。

ゴムは普通のバネとは違っていて,
伸ばしたときに発熱するのは,伸びる前は高分子の鎖が縮んでいて
乱雑な状態を取っていたものが,伸ばされて規則正しい状態になり,
この状態変化に伴いエントロピーが減少した分のエネルギーを
分子運動のエネルギー(熱エネルギー)に与えた為です。

輪ゴムを唇に当てたまま引っ張ると,少し暖かくなります。
そのまま,伸ばした輪ゴムが唇の温度と同じになるまで待ちます。
次に,伸びた輪ゴムの力を緩めて縮めると,冷たくなるのが分かります。

冷たくなるのは,縮まってエントロピーが増えた分のエネルギーを,
分子運動エネルギーから奪ったためです(分子運動エネルギーが小さくなる
=温度が低くなる)。
もし摩擦熱であるなら,縮めた時にも温度が上昇するはずです。

また,温度とは原子・分子の運動エネルギーの平均値であり,
原子・分子レベルで摩擦が起こったとすると,原子・分子の運動の速度が
小さくなり,温度が下がるという矛盾が起きます(摩擦の考え方は
理解しやすいのでよく誤って使われています。例えば電子レンジは
水分子の摩擦で温度が上がるなど)。
実は私も最近知りました。

くわしくは,
東京化学同人 科学のとびら 47 日本熱測定学会編 
山頂はなぜ涼しいのか  熱・エネルギーの科学 の
Q4 ゴムを伸ばすと温かくなるのはなぜ?に書かれていますので
参考にされていただければと存じます

→Fujikenより

エントロピーは熱力学において重要な概念です。

私は、エントロピー=「乱雑さ」と簡単に理解しているだけでした。

うめだま様の内容を要約させていただくと、

ゴムは伸びると熱くなるのは、ゴムの乱雑な普通の状態から、伸ばして規則

正しい状態になり、エントロピー(乱雑さ)が減少した分のエネルギーを分子

運動のエネルギー(熱エネルギー)に変えたからであり、逆にゴムを縮めると

エントロピーが増える分のエネルギーを分子運動から奪うために温度が下がる

ということだと思います。

「ゴムを伸び縮みさせることによって『摩擦熱』で温度が上がるのではない。」

ということが分かりました。

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■ちょっとコメント■

熱力学は詳しく勉強するととても難しいですが、簡単にまとめてみると、

熱力学第一法則→「エネルギーの保存の法則」

熱力学第二法則→「エントロピー増大の法則」

熱力学第三法則→「絶対零度は実験的には到達できない」

とまとめてみました。(フリー百科事典『ウィキペディア』参照)

エントロピーに関してはこのような記述がありました。

「外部からの仕事を伴わない気体の混合、あるいは拡散のみによってもエントロピー

は増大することから、エントロピーは「乱雑さ」を表す状態量と呼ばれることも

多い。」

要するに、「熱の出入りがなければ、気体はエントロピー増大=乱雑さが大きく

なる方向に状態が変わるので拡散する」と簡単には理解して良いと思います。

うめだま様、ご指摘ありがとうございました。間違った情報を流した事に関して

ここに訂正しお詫び致します。

このように『ちょっとサイエンス』はよくご存知の方からのメールによって

支えられてここまで続けてこれた事を改めて感謝いたします。

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■「読者からのメール」より■

●太郎左衛門様より 「すばらしい!」

太郎左衛門と申します。
いつも楽しく拝見いたしております。

霧箱を作って宇宙線を測定した中学2年生の話が出ておりました。

すばらしい!!。
実際にやってみる、と言うことをしたその子は素晴らしい。
その気持ちを是非大人になるまで持っていてほしいですね。

子供の理科離れが進んでおります。
また、大阪大学に勤める友人に聞くと大学生に関しても、問題意識、問題解決の
意欲は減っているようです。
レポートを出すと、先に答えを聞きに来るらしいのです。

最近、TVで「でんじろう先生」が面白い科学実験を見せております。
このようなこと、子供の興味を引く「なぜだろう、どうしてか?」と思わせるような
ことをすれば、子供は食いついてきます。
「なぜだろう、どうしてか?」を感じること、それを知りたいと感じる心が科学への
第一歩と考えます。

結局、良い先生に習うか否かが、子供を理科好きにするか否かの分かれ道なのでしょう。

これからも楽しい科学実験をお願いいたします。

→Fujikenより

太郎左衛門様、いつもメールありがとうございます。

今回の内容はそのとおりだと思います。

生徒に「なぜだろう?」という疑問や気持ちを持たせて授業や実験をすることに

よって、生徒が理科に興味を持つように心がけたいと思います。

■追伸■

今回が今年最後の発行となりました。

この2年間、仕事が忙しくて『ちょっとサイエンス』の発行が月に1,2回の

配信となっておりますが、読者の方からの励ましや、間違いの指摘などによって

なんとか7年目に入りました。次は300号を目指して頑張りたいと思います

ので、今後ともよろしくお願い致します。

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