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●   『ちょっとサイエンス』  2006/8/21  No.250  
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●    発行者 Fujiken      不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「量子論へのアインシュタインの反論」
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1900年にプランクが黒体放射の実験を説明するのに、今まで光のエネルギーは

連続であると考えていたものを、とびとびの値をとるという光量子仮説を発表

しました。今では光量子を光子と呼んでいます。

アインシュタインはこの光量子仮説を用いて1905年に光電効果のしくみを説明

する論文を書き、飛び出す電子について理論的な予測を行いました。

後に、ミリカンがこの予測を実験で実証し、アインシュタインが1921年にノー

ベル賞を受ける一因となったのです。(多くの方が知っておられるようにアイ

ンシュタインは相対性理論によってノーベル賞を受けたわけではありません。)

ですから、アインシュタインは量子論の創始者の一人でもあったのですが、

その後の量子論の解釈に対して最後まで反論を続けたのでした。

では、何についてアインシュタインが反論したのかを述べていきます。

ド・ブロイが考案し、シュレディンガーが発展させた物質波という考えは、

ミクロな世界の現象を次々と解明していきました。

しかし、「物質粒子の持つ波の性質とは、何を意味するのか?」という問いに

対して、その頃、コペンハーゲンで活躍していたニールス・ボーアらは「物質

粒子の波は、その粒子の発見確率を表している。という「確率解釈」をとるよ

うになり、この「確率解釈」に加えて「波の収縮」(これに関しては説明を省略

します)を認める量子論の解釈を「コペンハーゲン解釈」と呼び、現在でも標準

的な量子論の解釈になっています。

コペンハーゲン解釈では、物質波を抽象的なものとしてとらえるのに対して、

アインシュタインは物質波を「実体」をもつものだと考えているためにコペン

ハーゲン解釈に猛反発したのです。

コペンハーゲン解釈では、電子がスクリーンのどこに現れるかは予測不可能で、

どこに電子が姿をみせるかを確率的に予測することしかできないと考えます。

これは、サイコロと似ています。サイコロを1回だけ振っても、どの目が出る

かは予測不可能ですが、それぞれの目が6分の1の確率で現れるということは

言えるのです。

しかし、アインシュタインは、電子がスクリーンのどこに現れるかを知り得な

いのは量子論がまだ不完全な理論であるからだと反論したのです。

この時、アインシュタインが言った「神はサイコロを振らない・・・」という

言葉はあまりにも有名です。

(「世界の科学者100人」(教育社)「現代物理学をつくった人びと」(東京図書)
 Newton 2006年 7月号、8月号  参照 )

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■ちょっとコメント■

科学雑誌Newton(ニュートン)では、300号記念として7月号で量子論を取り上げ、

8月号で量子論アインシュタイン「もう一つ」の物語として取り上げています。

このことからもわかるように量子論の創始者であるアインシュタインは量子論

の確率解釈であるコペンハーゲン解釈に対して反論し、その間の論議は量子論

の発展に多いに寄与したと言われています。

アインシュタインは量子論の研究から距離を置き、重力と電磁気学を統一した

新理論の研究へと移っていきます。

1915年に発表された「一般相対性理論」によって重力は説明できていたのです

が、統一理論は完成せず1955年にその夢は果たせず没してしまったのでした。

「神はサイコロは振らない・・・」この言葉を題にしたテレビのドラマがある

ことを新聞のテレビ欄を見て知った時、「えっ!アインシュタインの言葉が

テレビの題になってる!?」と驚きました。

結局、そのドラマは一度も見られなかったのですが、この言葉を単純に解釈

すれば、全知全能の神が運動を予測できないわけがない!という意味だと思

いますが、それだけアインシュタインは神の存在を強く意識していた証拠だ

と言えるでしょう。

次回は「量子論のその後の発展と新解釈」をテーマにする予定です。

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■「読者からのメール」より■

●「不確定性原理について」 まこー様より

> ハイゼンベルクは「不確定性原理」をこのように説明しました。
> たとえば、電子の位置を正確に決めようとして、より強い光を当てると、光は
> 粒子としての性質も持っているので、光量子が電子に当たると、その電子の
> 運動量が大きく変わってしまい、運動量を正確に測ろうとすると、エネルギー
> の小さな光量子を使わなくてはならず、それでは波長が大きくなり、位置が
> 正確に測れなくなるというように説明したのです。

私は長い間、量子力学における「不確定性原理」は上記のように単に測定上の
問題だと思っていたのですが、実はそうではなく本質的なものだということの
ようです。
「不確定性原理」が本質的なものであることを示す例として「ファインマン物理
学を読む」(竹内薫著 講談社)の153頁に次のような記述があります。
『いいかえると、自然界は、これ以上の精度で運動量と位置を正確に決めること
はできないのである。これは、電子や陽子を観測している人間や観測装置の限界
ではなく、自然そのものの限界なのだ』

→Fujikenより

ハイゼンベルクの不確定性原理の説明は操作主義(物理学は測定可能なものだけを

扱う)という面から説明したものであり、その結果である位置の不確かさと運動量

の不確かさの積はプランクの定数より大きくなるという結果からみても、ニュー

トン力学の決定論的な古典的解釈が量子論には通用しないという重要な本質的な

原理だと言えると思います。

まこー様 いつもメールありがとうございます。

●「量子論を取り上げてもらって楽しみに読ませてもらっています。」匿名さんより

私は、科学雑誌をわかる範囲で読んでいまして、
最近の量子暗号(量子テレポーテンション)の
エンタングルメントの現象や
重力と他世界の話や、
カーボンナノチューブが鋼鉄の百倍の強度を持つ
など、わくわくしながら読んでいます。
とても、大変だと思いますが、いつもの通り、
少しでも、わかりやすく発行してもらえると
うれしいです。

−中略−

こんな状況から、ちょっとサイエンスのようなメルマガが、
世の中のためになると思っています。

メルマガが流行った頃から比べると、多くのものが
無くなってしまっています。
つづいてくれることを期待します。

→Fujikenより

気がつかれてる方もいると思いますが、今回が250号になりました。

2000年9月から約6年かかってここまでやってこれたのも、

読者の方のメールに支えられてのことだと感謝しております。

これからも、「ちょっとサイエンス」の内容におかしな点、補足する点など

ありましたらメールをお寄せ下さい。よろしくお願いいたします。

次は300号目指して頑張ります!

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