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●   『ちょっとサイエンス』  2006/8/7   No.248  
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●    発行者 Fujiken       不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「ニールス・ボーアの量子仮説を用いた原子模型」
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これまで、この「ちょっとサイエンス」では、難解だという理由で、量子論を

あまり取り上げてきませんでした。しかし、読者の方から量子論について知り

たいというメールが寄せられ、以前、No.223「ラザフォード(原子核の発見と

初期原子モデル)」、No.224「プランク(量子力学の幕を開いた量子仮説)」と

科学史に沿って量子論の説明に入っていったのですが、途中で中断してしま

いました。(バックナンバーは→ http://www.eonet.ne.jp/~fujiken1/ )

そこで、今回からプランクの量子仮説後、どのように量子論が出来上がってい

ったかを取り上げていこうと思います。

まず、プランクの量子仮説とは、原子や電子が粒子であるのとは違って、エネ

ルギーは連続的に移り変わる量であり、エネルギーの粒子性などは考えていな

かったのですが、黒体放射の実験結果を説明するのにプランクは、振動数νの

光のエネルギーは最小単位hνの整数倍になるという考えを打ち出したのです。

現在、hはプランク定数と呼ばれ、自然界における最も基本的な定数となって

います。

話を原子模型に移すと、ラザフォードがα線を金箔にあてる実験から、原子の

中心にプラスの電荷をもった粒子(原子核)が存在し、その周りをマイナスの電

荷をもった電子が回るという原子模型を提唱しました。

しかし、この原子模型では、電子の運動エネルギーが消耗され、次第に電子は

原子核に近づき、最後には原子核と電子が合体して原子が崩壊してしまうとい

う欠点を持っていました。

このラザフォードの原子模型の難点を解決するアイデアがフランスの物理学者

ルイ・ド・ブロイによって発表されました。

ド・ブロイは「電子などの物質粒子には波の性質がある」と主張したのです。

「波と粒子の二面性を持つ電子」という考え、これを「物質波」と呼びます。

「波と粒子の二面性」ということが何を意味するかは量子論の核心となる部分

ですが、この部分は後で取り上げることにします。

同じ頃、ニールス・ボーアは、原子からでる固有なスペクトルの光はどのよう

にして出ているのか、この説明には古典的な物理学では説明できない何かが原子

模型に潜んでいると考えていました。

原子の出す光のスペクトルの研究者にはライマン、バルマー、パッションとい

った人達がいて、水素原子の出すスペクトルにはある規則性があり、原子の出

す光の振動数νがエネルギー[Em−En](m,nは正の整数)に比例しているとい

うものでした。

そこで、ボーアはド・ブロイの物質波の考えを取り入れ、電子は振動数の整数

倍の軌道にしか存在せず、この振動数の整数倍の軌道を「安定軌道」と呼び、

安定軌道上では電子は発光しないと考え、この安定軌道に内側から順に正の整数

1,2,3・・という番号をつけると、水素原子スペクトルの話に出てきたEmおよび

Enはそれぞれ、電子が正の整数 m および n で表される安定軌道上にいるとき

のエネルギーを表し、正の整数がより大きい、つまり外側にある軌道にある電子

ほどエネルギーが大きいことになります。

このとき、m で表わされるより外側の軌道にいた電子が何かのはずみで、n で

表される内側の軌道へ移ったとき、[Em−En]にあたるエネルギーを光量子

の形で放出すると考えると、プランクおよびアインシュタインによれば光量子

のエネルギーは振動数νに比例するので、水素原子スペクトルの実験法則は

このニールス・ボーアの水素原子模型で説明できたのでした。

さらに、水素スペクトルのライマン系列は n=1、バルマー系列は n=2、

パッション系列は n=3の時に相当するものであることも証明できたのでした。

(「世界の科学者100人」(教育社)、
「現代物理学をつくった人びと」(東京図書)、Newton 2006年 7月号 参照 )

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■ちょっとコメント■

私は、科学雑誌Newton(ニュートン)を創刊以来読んでいます。引っ越しの度に

バックナンバーはなくなっていきましたが、私の科学の知識はNewtonによると

ころが多いです。

そのNewtonの2006年7月号に、創刊300号記念として「量子論」が取り上げられ

ました。私はこれを見て、「そうだ、ちょっとサイエンスでは量子論が途中で

終わっている。いつか取り上げなくては・・・」と思っていました。

「波と粒子の二面性」とはなんだろう?

これまで波と考えられてきた光が粒子(量子)の一面を持ち、これまで粒子と考

えられていた電子が波の性質を持つとはどういうことなのか?

私が初めて量子論を学んだときにとても悩みました。

光の実験でヤングは1807年に二重スリットを使った実験で、光のしま模様で

ある干渉縞をつくることに成功していました。干渉は波特有の性質なので、

「光=波」と考えていたのです。その後、プランクの量子仮説から

アインシュタインは光電効果の説明を光の粒子性(光量子)の考えで説明し、

光については「波と粒子の二面性」が理解できたような気がしたのですが、

電子の「波と粒子の二面性」とは何か? これには理解に苦しみました。

その当時の教科書に出てくる「電子雲」のモデルは、そんな形の電子がある

のではなく、原点からの距離が表す、その方向に電子がある存在確率である

と聞いてわかったような複雑な気持ちでした。

この量子論を学んで物理学は数学で表す抽象的概念を理解しないといけない

んだなと思ったものでした。

次回以降は「量子論における不確定性原理」

「アインシュタインの量子論への反論」をテーマにする予定です。

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■「読者からのメール」より■

●「アサガオのつるの巻きかた」について 富山県のHさんより

アサガオは小学校の1年のときに理科の授業で観察日記をみんなでつけていた
記憶があります。それ以来毎年家の窓際で朝顔を植えていました。ちょうど
今頃の時期は暑い日ざしを遮る、ちょうどいい日陰になります。

アサガオのツルの巻き方ですが、全部同じ巻き方(上から見て反時計回り)だった
と思います。1m位であれば反対方向に巻き付けても翌日には戻っていたはずです。

ちなみに支柱が1mしかなくツルがそれより長くなった場合、支柱から先のツルは
次の巻きつく場所を探して投げ縄のように、これまた反時計回りで非常にゆっく
りと旋回します。30-40cm程度であれば重力に負けずに次の所につかまり、成長を
続けます。

→Fujikenより

さっそく、ベランダのアサガオのツルの巻き方を注意して見てみると、上から

見て、反時計回りにまいていないものがあったのですが、10cm位上の方で、

他のツルに絡んで、反時計回りになっているものを2本見つけました。

やはり、Hさんの言うとおり、いつかは反時計回りに巻くようになっている

ようです。問題はそれは何故か?ということですが、生物の成長については

きっと難しい説明がいるような気がしています。

Hさん、メールありがとうございました。

「ちょっとサイエンス」は発行当初から、読者の方からのメールに支えられて

ここまで続けてこれました。久々のメールに感激しています。

私の記事に何かおかしい点、説明不足な点などありましたら、これからも

メールを送って下さいますようお願いいたします。

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