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●   『ちょっとサイエンス』  2004/9/28  
No.201   
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●    発行者 Fujiken      毎週火曜日発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。
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■今日のテーマ  「メンデルの法則を再考」
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前回のNo.200「科学史『生命の探究』」の内容について読者の方からメールを
頂きました。
●「野田」様より
「生命の探究」中、以下のくだり
ダーウィンは進化の素材となる変異の原因が説明できないと語っていました。
しかし、その遺伝の法則は1865年にオーストリアのメンデル(1822〜1884)が
発表していたのです。
メンデルは、変異の原因を証明しようとしたのではなく、遺伝には法則性がある、
つまり、変異はない、ということを証明しようとした、のではないですか。
かれは「司祭」ですから、教会の教えに反することを立証しようとは思った
のではない、と考えるべきでしょう。
→Fujikenより
ご指摘の文章は、進化論をメンデルの法則で証明したように
とられてしまう可能性がありますが、ご指摘の通り、そうではありません。
メンデルは「司祭」(修道士)であり、エンドウを8年間育てて、
メンデルの法則を発見し、遺伝の規則性を証明したのです。
しかし、1865年発表時には大きくとらえられず、無念のまま没し
1900年、同時に3名の学者がメンデルの法則を再発見し
「メンデルの法則」と名付けられたのでした。
ですから、メンデルはご指摘の「司祭」ですから、協会の教えに反することを
立証しようと思ったのではない」というところは、そのとおりですが、
私の表現が良くないのであって、進化論とメンデルの法則は発表当時は
関係がなかったと考えるべきだと思います。
「ちょっとサイエンス」バックナンバーNo.6で「メンデルの法則」を
取り上げていますので、ご参考までに。
バックナンバー →  http://www5a.biglobe.ne.jp/~fujiken1/
→野田様より
中村禎里さん(科学史家)から聞いた話
メンデルの実験はあまりにも正確過ぎないか
たとえば対立形質が黄色と緑の場合、なぜ、どちらか判断できない、とするもの
がなかったのか?
7組の対立形質の実験で、すべてこのように3:1に近似する確率は統計学上、
極めて低い。
メンデルは、実験の前に「3:1」という答えを知っていたのではないか
では、なぜ答えを知っていたのか
遺伝にも神の作られた法則があるはずだ、それは数学的な答えのはずだ
それで、たとえば黄金比などではないかと仮説を立て、証明しようとした
その一つが(A+a)の2乗=AA+2Aa+aa という式で
これから3:1が導かれたのではないか、実験結果は理論値に合わせたものだ
(この数式は、メンデルの論文に出てくる)
という説得的な話でした。
残念ながら中村禎里さんは、このことを本には書いていないようです。
ともあれ、それによってメンデルの法則の価値が下がるものではありませんが、
科学の発展の歴史から見ると、興味深いことです。
なお、中村禎里さんは『日本のルイセンコ論争』をはじめ、多数の著書
があります。立正大学の教授でしたが、もう定年になっているかもしれません。
注:ルイセンコ・・1898〜1976 ソ連の生物学者 メンデル・モーガンの
遺伝子説に対立して、ソ連の政策に沿った獲得形質の遺伝説などを唱え、政界
を巻き込んだ世界的な論争を引き起こしたが、スターリン批判に伴って批判を
受け失脚した。(「大辞林」三省堂 参照)
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■ちょっとコメント■
メンデルの法則は、数年エンドウで自家受粉して優性の親(AA)と劣性の親(aa)
をつくり、それをかけ合わせたときの雑種第1代(F1)は、すべて(Aa)の遺伝子を
もち、優性のAのみが形質として現れるというのが「優性の法則」であり、
雑種第1代(F1)=(Aa)どうしをかけ合わせた雑種第2代(F2)は、AA,2Aa,aaの
遺伝子型となり、優性のAと劣性のaの表現型が3:1になるというものです。
メンデルの実験の対立形式とF2の優性と劣性の数と比は以下のようになっています。
形質   優性   劣性   F2の優性/劣性の数  優性と劣性の比
種子の形 丸    しわ   5474/1850       2.96:1
子葉の色 黄    緑    6022/2001       3.01:1
種皮の色 灰    白    705/224        3.15:1
さやの形 ふくれる くびれる 882/299        2.95:1
さやの色 緑    黄    428/152        2.82:1
花の付き方 えき生 頂生   651/207        3.14:1
草たけ  高い   低い   787/277        2.84:1
(チャート式 新生物1 数研出版 参照)
この表を見ても、7つの対立形質がすべて3:1の近似値になっています。
これを、中村禎里さんのように答えが予想されていたからか、それとも
メンデルが実験材料としてエンドウを選んだのがよかったのか、議論の
分かれるところですが、私は後の方だと思います。
皆さんはどう思われますか?
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