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●   『ちょっとサイエンス』   2003/4/29   No.125  
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●    発行者 Fujiken        不定期発行
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毎回、科学に関するテーマをとりあげて、雑学的な知識を送ります。
なるほど!と納得し、知ることの喜びを感じていただけたら幸いです。

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■今日のテーマ  「ハンセン病と人権問題」
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ハンセン病という病名は聞いたことがあると思います。
ハンセン病は、ノルウェーのハンセン医師が発見した「らい菌」という最近に
よる感染症です。

かつては「らい病」と呼ばれ、体の末梢神経が麻痺したり、皮膚がただれたよ
うな状態になるのが特徴で、病気が進むと手足が変形することから患者の人は
差別の対象になりやすかったのです。

この病気にかかった人は仕事が出来なくなり、商家の奥座敷や、農家の離れ小
屋でひっそりと世の中から隠れて暮らしてきたのです。ある患者は家族を心配
し放浪の旅に出る「放浪らい」と呼ばれる人がたくさんいました。

明治になり、諸外国から文明国として患者を放置しているとの避難をあびると
政府は1907年(明治40年)「らい予防に関する件」という法律を制定し、「放浪
らい」の人を療養所へ入所させ、一般社会から隔離してしまいました。

この法律は患者救済を図ろうとするものでしたが、隔離することによって、ハ
ンセン病は伝染力が強いという間違った考えが広まり、偏見を大きくしたとい
われています。

1929年(昭和4年)には、各県が競ってハンセン病患者を見つけだし、強制的に
入所させるという「無らい県運動」が全国的に進められ、さらに、1931年(昭和
6年)には従来の法律を改正し「らい予防法」を成立させ、強制隔離によるハン
セン病絶滅政策という考えのもと、在宅の患者も強制的に療養所に入所させる
ようにしました。

こうして全国に国立療養所を配置し、全ての患者を入所させる体制が作られて
きました。

1998年(平成10年)7月、熊本地裁に「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟が提
訴され、翌年には東京・岡山でも訴訟が提訴されました。2001年(平成13年)
5月11日、熊本地裁で原告(患者・元患者)が勝訴。政府は控訴しませんでし
た。

これをきっかけに、6月には衆参両院で「ハンセン病問題に関する決議」が採
択され、新たに補償を行う法律もできました。

国は患者・元患者の人達に謝罪し、2002年(平成14年)4月には療養所退所後の
福祉増進を目的として、「国立ハンセン病療養所等退所者給与金事業」を開始
し、国民に広く知ってもらう啓発活動を積極的に行うなど、名誉回復のための
対策を進めています。

(わたしたちにできること〜ハンセン病を知り、差別や偏見をなくそう〜)
                      厚生労働者発行 参照

 高松宮記念ハンセン病資料館
 http://www.hensen-dis.or.jp

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■ちょっとコメント■

ハンセン病に関しては昔は何もわかっていなかったのですが、その後の研究で
いろいろなことが分かってきています。

まず、米国で開発された「プロミン」という薬により治療効果があることが、
1943年(昭和18年)に発表され、以後、プロミンなどいくつかの薬剤を組み合わ
せた多剤併用療法(略してMDT)が広く行われて、早期発見と適切な治療で
確実に治ることがわかりました。

今、療養所で生活している人のほとんどはもう治っているのですが、後遺症の
為、身体に障害が残っているのです。

そして、ハンセン病は、
遺伝病ではないこと、
感染力が極めて弱い細菌による病気であること、
(いつも患者と接している国立ハンセン病療養所で働く職員さんで、ハンセン
 病に感染した人は90年間で1人も確認されていません。)
今はプロミンなどのすぐれた治療薬により治ること、
早期に発見すれば、身体に障害が残ることはないこと、
というような様々なことが分かっています。

原因不明、治療薬がわからない時代に「ハンセン病」になった人は隔離され、
偏見・差別の対象になっていったのです。

「わからない」ことが引き起こす過ちは、大きく、人権をうち砕いてきたので
す。

私たちは「ハンセン病」患者・元患者を正しく理解し、偏見で見ず、差別しな
いという態度と心を、後の世代まで受け継いでいかなければならないと思いま
す。

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■「読者からのメール」より■ 前号の「ES細部の遺伝子操作」に関して

●「みー」さんより

はじめまして。
町の薬局に勤めるただの主婦ですが、
毎回楽しく読ませて頂いております。

今回のES細胞については以前から注目してみております。
確かに万能細胞、人類にとって夢の技術に手が届きそうな期待感がありますね。
研究の最先端ではまさにもてはやされ、何処の国で規制されようと
着実に技術は進歩して行くと思います。

技術が進むことにはとてもワクワクします。でもES細胞に関しては
手放しで喜べないのはなぜでしょう。
「受精卵」だからです。
研究材料として「余ってるもの」を使用する分には確かに問題はないかも知れ
ません。

でも患者側の需要が出てきたら?
「拒絶反応のない臓器」の需要は
現在の「不妊」のそれとは比べ物にならないと思ってしまいます。
既に「精子」「卵子」「子宮」までも、
「お金」にかえることが不可能な時代ではありませんよね。

特に「卵子」の数は「精子」とは比較できない程限られている...
それを考えるととても不安を感じてしまうのは私だけなのでしょうか?

→Fujikenより

どのような組織・器官に変わりうるES細胞の研究で、臓器移植が可能になる
という前号に関するもっともなご意見だと思います。

「生命に関する研究に人間の生殖細胞が必要である。」

このことが、どれだけこれらの研究に倫理的に制限されるのか?

完全に否定もできない難しい問題だと思います。

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