諭鶴羽山(608m  兵庫県・淡路島)


(平成17年4月23日・日経夕刊「ふるさと山紀行」に掲載)

国生みの神 舞い遊ぶ

        紀淡の海原、眼下に

島生み神話が淡路島にある。記紀によると、イザナギ、イザナミの二神が天の浮橋から矛で海原をかき回して、その矛先から滴り落ちた潮が固まってできたのが、「おのころ島」。                                                  
 その島で二神が契りを結び、生んだの淡路島。これぞ日本列島の始まり、始まりという壮大な天地創造の伝承だ。                                
 この神話を踏まえていえば、この島の最高峰、諭鶴羽山は、潮の滴りの最末端が尖ったまま固まったものかもしれない。                                
 島の南東部で、今年1月、4町合併で誕生した南あわじ市にある諭鶴羽ダムサイトに登山口がある。ダムサイトの周回路は見事な桜並木、新緑を映した水面が美しい。初夏にはゲンジボタルが乱舞する名所という。                           

 「歴史と信仰の道、諭鶴羽山古道入口、諭鶴羽神社まで裏参道28町」と言う看板が登山口に立つ。いきなり鉄の階段を登り、杉林の急斜面に入る。すぐに路傍に苔蒸した小さな「廿七丁地蔵}を見る。                                     

 諭鶴羽山というきれいな山名は、先の二神が鶴に乗って舞い遊んだという伝承にちなむらしく、この登山道も諭鶴羽神社や、その途中にあった修験道の行場に通じる参道として開けてものだ。                                          

 やがて尾根筋に出ると、あとはよく踏まれた、あぶなげない山道となる。狭い尾根筋からエメラルドグリーンのダムの水面が眺められる。ほとんど直進状態で進む。      
 この山は島の動植物の宝庫となっているようだ。途中から雑木林が赤みを帯びた樹皮のアカガシの群落に変わる。山道のところどころに野鳥をはじめとした動物、植物相の簡単な説明版がある。途中、出会った地元のお年寄りの登山者は、ニホンザルもいるが、先日はシカと対面したと楽しそうだ。                             

 順番が途切れがちな丁石地蔵を数えながら、歩きはじめて約70分、山道に初めて分岐らしい分岐が現れ、右へ直角に折れると、一等三角点の標石が埋まる山頂はもうすぐだ。                                                 

 けっこう広い頂上の北東部から眼下に紀淡海峡の海原が展望できた。沼島との間に
大小のタンカーがゆっくりと航行している。胸のすくような大きな眺めだ。        

 頂上は昔から「八州展望台」といわれ、淡州、紀州、泉州、摂州、播州、備州、讃州、阿州の国々が遠く近くにぐるりと一望できるはずだが、いまは雑木が伸びて、視界がよくないのが残念。                                          

 山頂直下には、島生み神話の二神を祭る諭鶴羽神社、戦没者を慰霊する平和塔があるが、中・四国、九州への中継に適するのか、巨大なバラボナアンテナの無線塔が目立つ。神話と文明の溶け合う山である。
(文・写真 藤田 健次郎)           

 ガイド 淡路島に渡るにはフェリーやバス便があるが、ここでは大阪・梅田からノバス便を紹介する。阪急高速バス、淡路交通バスが洲本市まで約2時間でつなぐ。全席予約制(4日前までに予約)                          
                              洲本市から淡路交通バス約30分、南あわじ市市(いち)バス停下車。ココから登山口の諭鶴羽ダムまで徒歩約50分、タクシー9分。山頂から表参道を下り、海側に出る縦走路もあるが冬場のスイセンノシーズン以外はバス便が少なく非常に不便。                
  
なお、諭鶴羽山を「譲葉山」「論鶴羽山}とする表記もある。登山情報問い合わせ先
南あわじ市西淡庁舎商工観光課рO799・37・3012