ハルラ山 =(1950メートル) 韓国・済州島 (1999/5)

韓国のハワイといわれる済州島。東シナ海に浮かび対馬海流に洗われる温暖な島。この島の唯一の山で、なおかつこの国の最高峰、ハルラ山(ハンラ山とも発音)=写真右は観音寺コースから見た山頂=がそびえる。火山の死火山で、海岸からせり上がって長い長い優美なスロープを引く姿が美しい。日本での富士山のように国民から親しまれていると聞いた。

四通りの登山コースが一般的だが、現在登れるコースは、城板岳コースと観音寺コースの二つのみ。残りの霊室とオリモクのコースは、自然保護の名目で登山コースが閉鎖中。前者の二コースも、今年3月に解禁になったばかり。これ、現地で確認した最新情報です。それまでの五年間は、土砂崩壊の防止と自然保護のため登山禁止となっていた。韓国では登山お休み制度を各山に順繰りに適用して、山の休養に努めているそうだ。日本でも学ぶべきいい制度と感心。

そこで友人のTさんと現地ガイドの三人で、城板岳から登り、山頂から観音寺へ下る約18キロメートルを歩いた。かの国でも中高年の登山熱が盛んで、登山口についた大型バスからオジサン、オバサンたちが吐き出されてわいわい、がやがや叫んでいる。国立公園なので入山料を徴収されて、いよいよ出発。ここの登山口を午前九時までに通過しなければ入山できない。コースは樹林帯の中をよく整備されていて、ホトトギス、カッコウ、ウグイスなどの鳴き声を聞きながら歩く。足下は火山の溶岩道。登るにつれて黒から赤へ、そしてまた黒へ、溶岩の色と砂礫の大きさが変化していく。

やがて第二避難所前。山頂まであと一時間半かかる地点。ここに「13時までに来なければ山頂に行ってはならない」という看板ならびに監視所。結構、遭難騒ぎがあるらしく、下山を考慮すると、この時間が限界という意味らしい。 モレーンの堆積のようなところに出ると、樹林が一段と低木になり、視界が開けた。あいにく遠方は曇っていて、海は望めないが、山麓の牛や馬の放牧地である斜面から、ずっと先にある町並みまで一望。気持ちのいい展開である。頂上直下の数百メートルは鉄道の枕木=写真左=のようなもので、階段状の木道が作られている。これが足腰にじわりじわりと負荷を掛けてくる。約四時間半で頂上に到着。火山活動が吹き上げた溶岩がドームのように盛り上がっているところだが、面白いことに火口は、水がたまり、大きな湖と化している。


頂上での筆者(右) 美しい火山湖

ペンロクタムという名前がついている。火口の縁は、たくさんの背丈の低いツツジの花が見事に彩っている。黄色や白の小さな花が咲いている。年中、風が強く、雪も深いせいか、山頂の植物は矮小化している。

本土からやってきた大学生や高校生が卒業旅行に登る習慣があるとの事で、山頂は若い人でいっぱい。日本の山では見られない光景である。風に吹かれてランチにしたが、なぜかハエがやたらに多くて、しまいにはハエを逃れて場所を移しながら、かきこむ始末。下山路は約七・四キロメートル続く原生林の中を下降。三度、水がない岩だらけの渓谷を渉った。岩で休んでいた光州からの登山グループが、日本人とみて「この夏は富士山に登りたい」と話しかけてきた。登山者の興味は、どこでも高い山にあるようだ。明るい公園に出た。陸軍の小部隊が迷彩服に銃を担いで訓練中だった。この国の現実に我に還る光景である。ガイドは丁寧で控えめ。お天気にも恵まれて、いい異国の山歩きだった。