エベレスト街道 =ルクラ(2827メートル)←ー→パンボチェ(4005メートル )、ネ                                      パール (1999/3)



左からヌプチェ(7879m)エベレスト(8848m)ローッェ(8501m)
パンポチェの丘から写す



とうとう待望のエベレストを、自分の目でみることができた。山歩き人間なら、一度は世界最高峰の山を見てみたいという夢がかなえられて大満足のトレッキングでした。

そこでハイライトのいくつかを紹介しましよう。
まずはネパールの首都カトマンズ国際空港に着陸態勢に入るちょっと前に、機内放送が機長からあった。「紳士淑女のみなさん、ただいま、右前方にエベレストを見ることができます」。機内にわかに騒然。ビデオやカメラをもって立ち上がる客たち。但し、小生のような左右に客がいるような不利な席からは、立っていくことができず、残念ながら見送り。それだけ、いよいよヒマラヤの国に入ったことを実感した。

次はカトマンズからトンボのような小型飛行機でトレッキングの基地、ルクラに向かう途中、高度三千七百メートルの機窓から、ついに遠く黒々としたエベレストを垣間みた。感激、感激。機体は風に揺られて安定せず、文字通り一瞬に過ぎなかった。しかし、翼の向こうにとてつもない白く輝く高い峰々が屹立しているヒマラヤ山群のスケールには、感嘆の声を上げるしかなし。それにしても山腹に激突する形で曲芸着陸するにいたっては、手のひらに冷たい汗がじっとり。

いよいよヒマラヤトレッカーとして山谷を延々と歩く。周囲はみな三千、四千メートルを超える山ばかり。「あれっ、槍ヶ岳クラスがあそこに四峰並んでいる」「えっ、あの雪の壁の高い山は、ここでは無名峰なんですか」「日本にもってくれば、百名山のトップになるでしょうな」ーーールクラ飛行場に降り立ったときの、お上りさんの驚きと感激がすぐに色あせるほどの巨大山岳風景の連続、いやはや圧倒的な存在感。

一泊したパクディンからナムチェに向かう。高度感のある谷にかかる吊り橋を渡り、急勾配の山道をえんやこらさ。息切れとの戦いのさなか、ついに不動のエベレストを望見した。松の木のはるか向こうにエべレストが澄明な青い空の下、鎮座していた。ここはコース上では初めてエべレストが゜見えるところ。言うなれば、槍ヶ岳を最初に見る「槍見河原」ふうにならえば、「エベレスト初見台」。青空が潤んで来るほど、うれしく楽しい。少し登ると、今度はローッェと並んで望見できる場所もあった。八千メートル級14座のうち、2座をみることができた。

翌朝、ナムチェの公園管理事務所がある高台から、周辺の高峰を展望。但し、エべレストは雲に隠れていた。タンボチェに向かう。山腹を巻き、谷におり。吊り橋を渡り、また登り返し。難行のすえ着いたタンボチェからは、全展開の山群を堪能した。左からタウチェ=写真右=、ヌプチェ、エベレスト、ローチェ、アマダムラム=写真左=、カンテガ、タムセルクーーー。六千五百メートルから八千メートル級までの巨大な雪峰が並び立つ。朝焼けの、あるいは、沈む夕日をあびて金色に輝き、赤々と燃えるエベレストをじっくりと鑑賞できた。

トレッキングの最終目的地は、定住村の最奥といわれるパンポチェ。下り、川を渡り、登り、はるか谷底を足下に眺めつつ、山腹の崖道を行く。パンポチェの丘(4005メートル)では、アマダムラムの氷河を間近に、ローッェからエベレストへの稜線もくっきりと眺め渡せた。小さな仏舎利塔が建ち並ぶ。日本の登山隊の慰霊碑もある。風の吹く音だけが耳元をかすめ、生き物の気配はなく物音はすべて沈黙。胸に迫る地球上きっての大景観に満足した。

帰途、シェルパの里、クムジュン村をかすめて、小高い丘に回り道して日本人が経営している「ホテル・エベレスト・ビュー」に立ち寄り、そのテラスで久しぶりのコーヒーを飲みながら=写真右下=、先ほどの大景観を、今度はゆっくりと鑑賞した。松林があり、その遙か向こうに訪れてきたパンポチェやタンボチェの村を遠望する事ができる好適地。抜けるような青空という表現が陳腐なほど、透明度の高い青空の下、エベレストの黒々とした南西壁、雪煙があがる東南稜を、いつまでも眺めた。

蛇足を一つ。リーダー含め一行9人。うち女性2人。日程12日間。平均年齢推定、58才(最年少45才、最高齢67才)。最高度宿泊地、タンボチェ3860メートル二泊。一人を除いて全員なんらかの高山病症候群を体験。筆者はふだん、それなりに鍛えていたつもりだが、意外にも歯痛に始まり、偏頭痛、むくみ、食欲不振、吐き気などの高山病症候群にに苦しんだ。4000メートル前後でこの有様だから、カラパタールなり、ゴウキョなりの、エベレスト最接近トレッキングともなれば、高度5000メートルを超すので、一層の障害対策が必要でないかと思った。

 ただ、高度順応については体質的な強弱も、もちろんあるようだ。われわれのリーダーは、歩き始めとともに利尿剤「ダイアモックス」の服用を勧めていたが、小生は、これを症状が現れてからのんだ。結果論だが、事前にのんでおいた方がよかったかな。このクスリについても、予防薬の効用はない、と指摘する書物もあり、素人としては判断に苦しむところだ。