アジア・トレッキング

泰山 =玉皇頂(1542m)中国山東省(1999/1)


 古代中国から「五嶽の雄」とされ、現在は世界遺産にも指定されている泰山に登った。ドイツの租界で知られた青島から七百キロメートル離れた奥地、泰安からバスで二十五分の中天門から歩く。本来の登山口は、泰安市内にあるのだが、ここからだと約七千段の石段、五、六時間の行程だが、ショートカットした。

 中天門は、ロープウエー駅があり、標高七百メートルくらいのところ。焼き芋やゆで卵を売るおばさん達の間を縫って歩き始める。第一歩から石段。標高差八百メートルほどを延々と石段が続く。日本の神社仏閣の参道のような石段が三千五百段ほど続くと想像してもらうと、わかりやすい。谷筋に沿って登る。途中、ジュースや石材を売る店が何軒もある。小さな滝は氷結していた。まず目指すのは、尾根筋の鞍部にある南天門=写真右上=


 長めの踊り場があると、息がつけるわけだが、それがないと、ひたすら登る。最低マイナス九度、最高二度という寒気の中、休むと背中の汗がたちまち冷えて気味が悪い。石段の両側に岩がせり出しているところでは、必ず岩壁に文字が刻まれている。文字はたいてい泰山の秀麗さや歴史をたたえるものであるらしいが、今ひとつ読めない。なにより、山の美観上、朱の文字が散見されるのは、こちらの感覚ではとうていなじめないことだ。中国人にとっては、なんの問題もないらしく、頂上にいたるまで、大きな岩があれば、その面を削り、文字が躍っている。額に汗して一歩一歩高度を稼ぐ。季節はずれなのか、ほかの登山者は、あまりいない。年間、四百万人の中国人と、三万人の外国人で賑わうという山も、この日は静かだった。


 中天門から頂上に繋がる尾根の南天門までは、一時間半くらい。最後の急登部分には、手すりとネットが張ってあったが、石段はしっかりあるので、ゆっくり時間を掛ければ誰でも登れる。登山というよりも、ハイクって感じ。南天門からは、まるで大きな寺社の門前市のように旅館や物売りの店が立ち並ぶ。使用料二元(三円くらい)をとる有料公共便所もある。南天門から山頂まで約三十分。穂高山荘前のテラスを思わせる石畳、そしてまた石段。ちょんまげを結った道士がいる道教のお寺もある。この寺は碧霞祠といって道教の総本山にあたるという=写真左=。

山頂直下には、「集票所」があって、四元半の料金を取る。最高点は、道教の祭祀施設に取り囲まれた中庭にあった。したがって山頂=写真右=からの展望は、望みようもない。こんな山頂は珍しい。所変われば品変わるで、かつて秦の始皇帝が封禅の儀を執り行っていらい、歴代の皇帝が天と地に天下統一を報告したという伝統の山、中国きっての大詩人、杜甫や李白が気宇壮大をうたいあげた山は、なんとも拍子抜けするような絶頂で終わった。