ここでは架線集材が主役―― ヴィルフリード プレール,ウィーン
83853平方キロ{838万5300ha}の国土面積しか持たない小国オーストリーは森林国である。国土面積の47%にあたる390万haが森林である。オーストリーはヨーロッパでフィンランド、スウェーデンについで第3位の森林面積を持つ。森林面積の85%が経済林、12%が地形的理由または傷つきやすい生態系などの理由で保護林となっている。残りの3%は林道や作業土場の占める面積である。
もっとも多い樹種は58%を占めるトウヒである。マツが6%、カラマツが4%,モミが2%と続く。広葉樹面積は21%である。ブナ9.3%、ミズナラ1.7%で、カエデ、シナノキ、トネリコなどその他広葉樹が10%を占める。その他の面積は裸地、森林内ギャップ、低木林である。
多くの森林が小面積 オーストリーは歴史が古く全森林面積の53.4%(210万ha)が農用林であり、200ha以下の小面積森林である。 林業経営林では、1000ha以下のものが10.3%(403,000ha)、1000ha以上の規模のものが18.1%{711,000ha}ある。オーストリー国有林は15%に過ぎない。
オーストリーは山国 オーストリーは顕著な山岳地形を持つアルペン国である。全国経済林のうち、傾斜30%(約17°)以下の部分が34%、傾斜30―60%の部分が39%、傾斜60%(約31°)以上が27%である。この事実が平地や丘陵地の伐出技術とは違った特別の伐出技術の発展をもたらした。
ハーベスタ作業に適した林地は僅少
写真1:自然にやさしいフル収穫機械CombiCat 4.3sは作業用ヘッドPan GM 828 ESBとチルト機構を持つ本体アルファ1との組み合わせである。
30%以上の傾斜地での車輪型トラクタの使用は、生態系破壊、作業危険性、経済性の点で問題があるので、車輪型トラクタは全経済林の34%で使われているだけである。この範囲では、1991年以来、ハーベスタ、フォーワーダ、クレーン車などが用いられている。ハーベスタは、オーストリーでは針葉樹林の間伐に限って多く用いられているが、最終更新伐や広葉樹の間伐に用いられることはまれである。請負伐出業者自身で機械を持ち自分で使っているものが多いが、大きな請負伐出業者はオペレータも雇っている。最近、森林経営者協会が(WWF)がハーベスタを購入した。これは小さな森林所有者の集まりで、彼ら自身の小規模の森林および非協会員の所有林でも使用することになっている。この協会のケースは国やヨーロッパ連合の補助を受けているケースである。それゆえにこのケースは費用的に有利であり、地域ぐるみの木材販売によって、大量生産と立木価格の維持をねらいとしている。一般の請負伐出業者の場合には、良く知られたチンバージャック、スコヒスヤン、バルメット、シルバテックなどの大型機を購入しているが、森林経営者協会や小規模請負業者の場合は、初期間伐作業用として国産機を買っている。すでに、1994年にオーストリー、リンツのメヒヒドトロニック社が小型クローラ型エキスかベータをハーベスタに作り変えており、コンビキャット4.3sと言う名称で売り出している。その1年あとに同じリンツのノイソン社がクローラ型ハーベスタ ノイソン 5001 RD を市場に出し、1996年には大型の8002RDを出した。
写真2: オーストリー リンツのノイソン社のハーベスタ Neuson 5001 RD ヘッドのアッセンブリはPAN GM 828 ESB ![]() 写真3:オーストリー レオポルド社のクローラ型ハーベスタ Takeuchi ヘッドアッセンブリ Patu 100 同時にその2年間に、タコイチ社がクローラ型TB 070を発表している。
小規模森林所有者の中には、自分のトラクタのクレーンに、パトゥ社やケトー社のハーベスタヘッドを取り付け、自身の森林や近隣の林で使用しているものもある。これらの機械を含めて、オーストリーの森林所有者は全体として約90台のハーベスタを利用できることになる。虫害や風害などの大規模災害の際には,外国、とくに隣のバイエルンやスカンジナビア諸国からの請負伐出業者がやってきている。完全機械化作業による伐出量は皮なしで250万立方におよび次第に増加の傾向を示している。
プロセッサーが有効 70年代の初めに、オーストリーで最初のプロセッサーが製作・導入された。この機械のおかげで、伐採現場で枝払いと玉切りをする必要がなくなった。枝付きでいわゆる全木集材をして、道端でプロセッサー作業をすればよいのである。当時最も良く知られた機械は、国有林が開発したKP-40プロセッサーで、いまでも使用されている。その後に、その製作権はボルフシステムバウ社に委譲され、KP-50,KP-60(数値は枝払いできる材の太さcm を表す)が追加された。育林業者や小規模の請負伐出業者は1990年にシュタイエルマルク州の育林業者が開発した小型プロセッサー、ヒドラックP 8-32(枝払いできる材の太さ8-32cm )を使っている。
写真4: 小型プロセッサー Hydrac P-8-32 枝払い可能直径32cm このヒドラック社の機械は、北部オーストリーで製作されているものであるが、すでに100台もの機械が稼動している。また、ウッディ50とウッディ60というオーストリー製の機械もあり、50-60cmの大径材の処理に適している。ケルンテン州プライテネッグ、コンラッド社の製作したもので、すでに世界的に評判を得ている。このプロセッサーヘッドの特徴は、材の送り装置の部分と材をつかむ爪の部分とが蝶番でつながれており、送り装置だけを後ろの方に折り曲げて跳ね上げることができる。そのために地面にべったりと横たわった材をつかむのに大変都合が良くなっている。プロセッサーヘッドのわずかばかりの改造、ことに送り装置を後ろに跳ね上げて、爪の部分だけで操作できるようにしたところが大変優れたハーベスタアッセンブリーを現出させた。
ウィンチ集材が主な集材法 オーストリーの生産材の多くの部分―皮なしで約900万立方−がウィンチ集材されている。小規模森林所有者や農用林の所有者−オーストリーで約214000人−は多くは4―6トン引きの農用ウィンチを買っている。この機械は汎用トラクタの3点支持油圧機に簡単に取り付けることができる。大規模森林経営者は8トンクラスの引き力を持つウィンチを取り付けたトラクターや林業専用トラクタ(スキッダー)を集材に使っている。平均42.7立方/haのオーストリーの林では大変良い結果を出している。人間が直立歩行できる林地ならば、林道から約70m、最大100mを地引きまたは引き上げ集材される。このウィンチ集材は、傾斜が大変急で人間の歩行が困難であるような斜面や集材距離が遠すぎる場合には使えない。その場合、索を引き出す作業や材について歩く作業はもはや作業者に要求しうるようなものではなく、経済的でもない。
オーストリーのスペシャリティ、架線集材 オーストリーなどのアルペン地方にとって大変重要な架線を使った集材法をここで紹介しよう。1996年には、およそ220万立方の材が急峻林地から林地を荒らすことなく、この方法によって集材された。架線集材―この名前は張られた固定索上を搬器を走らせて材を運ぶところからきている−はアルペン地方の伝統である。ザクセン州ベルグラート エーベンハルト クラウスタル(以前の東ドイツ)で1835年のころの撚り索の開発以来、1939年にヴィッセン集材機が開発されるまで、いわゆる索道が木材運搬用に用いられた。当時、スイスの伐出技術者ヤコブ・ヴィッセンがはじめてケーブルクレーン用の搬器を開発し、架線のどの位置からでも材の引き寄せができ、木寄せに続いて搬出することができるようにした。これで、大変危険で苦労の多かった材を荷積み台まで集めるという作業が終わりになった。全ての場所で、それまで大変多く使われていた索道や、多くの場所で使用されていた木材運搬用の修羅に、長距離集材架線(古典的架線集材装置)が取って代わった。
写真5: 山岳地の尾根越え長距離架線集材 架線の山側の端に設置された橇に乗ったウィンチをもつもので、今日なお利用されている。この装置では、谷に送られた搬器を再度曳索の助けを借りて山側の荷かけ位置まで戻すようになっている。オーストリーの森林整備は,1947年に取り掛かかられ、今もなお終わってはいないが、長距離集材架線の建設は後退した。時代の要求の変化を見て、シュタイエルマルク州のフローンライテンのフランツ・マイヤー・メルンホフ林業会社は60年代の始めにゲッサー ザイルクランという名の最初のタワーヤーダーを開発した。これはショットランド地方で最も良く用いられているタワーヤーダー「シンクロファルケ」と「ツルムファルケ」の前身である。それに続いて、多くの会社がタワーヤーダーを開発しているので、今日では、顧客のこのみに応じて、形式、導入範囲、価格などの点で多彩な機械を選ぶことができる。
タワーヤーダー技術資料 古いタイプのタワーヤーダーにはまだ機械的伝達機構をもつものがあるが、現在では、油圧駆動のものが一般的になっている。その長所は、索送り速度と引っ張り力を無段階に変えることができ、ドラム回転方向、つまり搬器の送り方向の切りかえが簡単であることである。これによって正確な操作が可能になっている。新しい機構としては、ウィンチ群を取り付けたマストが回転台の上に乗っている点である。これによって、索張り方向を適当な方向に振る(約200−250°)ことができ、狭い場所に設置するのに便利になっている。この装置をトラックの荷台に載せると、移動性が高くなるばかりでなく、丸太を選別するためのグラップルクレーンも一緒に搭載することができる。グラップルの代わりにプロセッサーを装備しても良い。そうすれば枝付きで全木集材をして荷はずし後、直ちに枝払い、玉切りし、運材車がとりやすいように並べるという作業をすることができる。オーストリーでは、とくに、小径木の間伐にこのやり方が多くなってきている。今日のタワーヤーダーは、適当な搬器を選ぶことによって、上げ荷、下げ荷、平坦地のいずれの場合でも集材作業ができる全地形対応型である。とくに残存木、幼樹、林床を保護するという意味で、最近タワーヤーダーの自然保全上の有利性が、歩行可能な林地の集材についても、しだいに大きな意味を認められつつある。
搬器のスウィッチ切り替え 始めのころ、荷かけ荷卸の際に、搬器をスカイラインに係留させるために、いわゆるストッパーを使っていた。ストッパーは、搬器をかぎ止めして荷かけフックを引き込んで自動的に開放されるまで保持する装置で、現在でも簡単な機械には用いられている。このストッパーは作業の進行に伴って繰り返し手で位置変えをしなければならなかったので、すでに早い段階で、森林技術者はいろいろな簡単な機構の自動係留装置を開発していた。搬器の走行中に、搬器滑車とチェーンでつながれた油圧ポンプで油圧を発生させて、たいていは2個の蓄圧器にためておき、これを係留器の駆動力として用いる。荷かけ位置では、蓄圧器が機械的に開かれて、係留器に油圧を供給し、搬器をスカイラインに係留させ、荷かけフックの係留をはずす。荷がかかり、荷かけフックが引き上げられると荷かけフックが搬器に係留され、同時に搬器のスカイラインへの係留が外される。コーン型の留め金を用いた確実な係留機構がコラー社によって1960年代にすでに開発されパテントがとられている。 その他の係留機構としてよくもちいられるものに時間スウィッチがある。上述の方法で油圧をためておき、一定時間間隔で係留または開放機構に油圧を作動させる方法であり、その時間間隔(秒数)は調節できる。この二つの機構は、現在でも使われているもので、最近では、ポジショニング機能などが大変良くなっている。無線装置が一般的になって幾ばくも立たないうちに、これらの機構が架線集材装置に導入され、急速に普及した。
コンピュータを用いた操作 最近の油圧駆動のタワーヤーダーは電子機器をもちいた有線または無線操作機である。無線操作装置は,エレガントであるが高価である。土場の機械係りが有線操作装置で操作をし、荷かけ手が荷かけ位置から無線で操作をする。この荷かけ手の無線操作によって一回毎に荷かけ作業や木寄せコースに最適の搬器位置をとることができるため自然保全上有利で能率の良い集材作業を確実にすることができる。コンピュータのおかげで、有線と無線のいずれの場合にも、いわゆる事前操作設定が可能になった。ここで事前設定というのは荷かけ位置や荷卸位置の設定、中間吊り手を乗り越えるときの搬器送り速度の調節などを事前にディスプレイで見ながらプログラム設定することである。
強制降下が労働強度を和らげる 集材距離が長いほど、作業索が長くなるためにバランスウエイトが大きくなり、荷かけフックの部分が重くなる。この重量は当然荷かけ手の索引出し作業を困難なものにする。この索引出し作業を楽にするために荷かけフックを自動的に降下させる強制降下装置が作りこまれた。
大抵の搬器では、補助索を用いた強制降下機構を装備している。補助索はマストに別に取り付けられたドラムに巻かれており、そこから搬器へ導かれ、搬器の荷上げ滑車に、荷上げ索とは逆の方向に何回も巻きつけておき、補助ドラムによって補助索を引きこむと強制的に荷上げ索が引きだされる。別の方法としては、搬器に荷上げ索を別に巻き込んでおくためのドラムを取り付けてこれを搬器に内臓させたモーターで駆動するものがある。その他、引き寄せ索と引き戻し索を搬器に取り付けた同じひとつのドラムに逆方向に巻きつけておく方法がある。スカイラインに搬器が係留されると同じドラムの機能が変わって引き寄せ索と引き戻し索の操作によって荷上げ索の上げ下げができる。
小規模林のための短距離用小型軽架線 当地では小規模森林所有者が荷上げ能力1トン程度の簡単な低価格の機械を使っている。太い材は運搬できるように玉切る必要があり、当然能率は落ちるが、自前用としては有意義である。オーストリーのマックスヴァルト社製のそれはトラクタウィンチで駆動するタイプのもので、簡易型搬器を用いて結構良い結果を出している。
写真6:簡易搬器 Maxwald オーストリー マックスヴァルト社製 その機械は23万円で小規模所有者が多く使っている。使いやすく,低価格の搬器として、シュタイエルマルク州ツェルトヴェクのインターフォルスト社のサバルがある。
写真7:オーストリー インターフォルスト社製搬器 Savall ストッパーを用いないマックスヴァルト社の簡易型搬器と違って、山側、谷側の両方にストッパーを用いる正真正銘の搬器である。オーストリーでは、安全のためにトラクターを用いるときには、索引き力を1トンに押さえなければならないので、大体1トンが運搬重量の限界である。サバルを用いると、ウィンチの巻き込み容量にもよるが、約300mまでの集材が可能である。中間吊り手の乗り越えもできる。スカイラインには14―16mmの索の使用が推奨される。インターフォルスト社で同時に手に入れることのできるウィンチ サバルの遮蔽板に別に取り付けられたドラムにこのスカイラインを巻き取る。索の張り上げには緊張器があって、索の両端を手動の油圧ポンプでホースを通して油圧を送り緊張できるようになっている。搬器の係留と開放は自動的に行われるが、この機械は上げ荷専用であるために、15°以上の勾配で張ることが要求される。作業索は少なくとも8mm以上であることが望まれる。この搬器サバルの重量は70kgで、70万円である。
短距離用タワーヤーダー 上に述べたような状況では、簡単なトラクタのウィンチで駆動する架線が年間出材量が少ない場合に用いられているわけであるが、オーストリーでは大規模森林所有者とか小規模請負伐出業者なども簡単なタワーヤーダーを使っている。例として、ここにオーストリーのクーフシュタインのコラー社のK-300を挙げておこう。K-300の場合は、世界的に最も良く買われているオーストリー製のタワーヤーダーなのかも知れない。この機械の販売実績はその簡単な構造、容易な整備性、頑丈さと手ごろな値段と言う点に基づいている。K-300は、上げ荷用に設計されたものであるが、追加ドラムをつけることによって下げ荷にも使用できる。トラクタのウィンチを利用するもの、別のエンジンを持つトレーラー式のものなどが購入できる。トラクタは36kW(50馬力)以下のものでは使えない。トレーラー式の場合の内臓エンジンは45kW(62馬力)である。いずれの形式のものも7mの高さのトラス型マストを持っており、前方に折りたたむことができ、公道を運ぶときには、それを固定することもできる。標準の索張りでは、16mm索300mをスカイラインとして用い、9.5mm索350mを引き寄せ索として、3本の16mm索各30mをマストの控え索として使用する。搬器としては、自動SKA 1が推奨されている。鉤型のものとチョーカー型のどちらでも選べる。K-300は1.5tまでの運搬量であるが、中距離用として、400,500,600のシリーズがより大きな運搬量用に作られている。K-300は550万円である。
中距離用タワーヤーダー「シンクロファルケ」
写真8:トラックに仕分けのためのグラップルクレーンとともに搭載されたタワーヤーダー Syncrofalke 最終更新伐を請負い、年中仕事のある大規模森林経営や請負伐出業者はより大型のタワーヤーダーを使用している。例を示すとならば、ショットランドですでに何台かが完全な状態で満足な働きをしているフランツマイヤメルンホフ林業会社のシンクロファルケを挙げることができる。このタワーヤーダーの特徴は内径が1mのドラム2つに引き寄せ索と引き戻し索が逆方向から巻き込まれていることである。引き寄せ索は直接搬器に導かれ、引き戻し索は先柱の滑車を通して搬器に戻されている。同軸につながっているドラムが同じ方向に回転すると一方の索は引き出され、他方の索は巻き込まれる。それで、引き寄せ索と引き戻し索はほとんど同じ程度の緊張を保持して走る。つまり、索巻き数に関係なく、索張力と索送り速度はほぼ一定値を保つ。スカイラインには18mm索を700m、引き戻し索には11mm索を1400m、引き寄せ索には7.5mm索を1500m使用することを推奨している。この近代的なタワーヤーダーはグラップルクレーンと一緒にトラックの荷台に取り付けられているものが普通であるが、新しく、トレーラー式のものも用意されている。上げ荷、下げ荷いずれにも使用できる。天才的な索巻き込み理論に基づいて短期間にこの索技術を習得することができる。シンクロファルケは3.5tまでの荷物を運搬できるが、内臓エンジンを含んだ基本構造のもので、1800万円である。
自走式搬器「ウッドライナー」 ウッドライナーはいわゆる自走式搬器である。これは内臓ディーゼルエンジン−44.2kW(60馬力)−で搬器に取り付けられた2つのシーブを回転させて、そこに巻きつけられたスカイラインを巻いて動く。エンジンは同様にいまひとつのシーブを駆動して、そこに巻きつけられた荷上げ索を上下させる。これはウッディ50やウッディ60と同じケルンテン州プライテネッグのコンラッド社の製品で、最初のうちは疑問をもたれていたが、やっと世間に認められるようになったようである。疑問というのは、とくに使用索が早く消耗する恐れありということである。注意して使えば、10000立方の集材毎に索交換をしなければならないだろうとプライテネッグは言っている。この機械は中間吊り手を越えることができるが、その使用範囲は400mまでの下げ荷に限られる。ウッドライナーは2tまでの荷物を運搬でき、660万円である。
写真9:自走式搬器 Woodliner オーストリー コンラッド社製
結語 さまざまな集材方法のうちで、架線集材がオーストリーの典型である。架線集材は夏冬を問わず全ての季節にどんなところからでも材を持ってこれる方法なので、山岳林での収穫にはなくてはならない方法なのである。架線集材は残存木、幼樹、土壌および集材木を保護し、しかも困難な山岳地形であっても比較的低コストで集材できる。その上、プロセッサーとの組み合わせで、高度機械化収穫作業が可能になる。クローラ型プロセッサーを用いて、乾燥した良好な地表状態であれば、60%までの傾斜地でも作業はできるが、その後の集材はやはり鋼索を使った集材法を使う場合が多い。自然保護を意識した森林経営が次第に増加しつつあるので、将来的には架線集材法の導入は急峻地形のみに限られたものではなくなる。将来はとくに林地保全に気をつけた集材をしなければならなくなるので、平坦地でも小面積林地の単木間伐や傷つきやすい場所では架線集材法を採用する場合が増加するであろう。
著者 HR Dipl.-Ing. Wilfried Proell FBVA-Mariabrunn, Institut fuer Waldbau, Abteilung Forsttechnik
英語版Forest Machine Journalからのコピー権について、われらの友人 Mark Andrewsに心から感謝する。
写真1: 新型歩行ハーベスタがバケットアームによって急斜面を移動している。 ベルグビーバーは、カイザー社製の従来の4脚とも駆動できる車輪を装備した歩行型掘削機S2をベースとして、森林作業用のテレスコ式のプロセッサーアームと掘削バケットアームを同じ主アーム(根元のアーム)に取り付けたものである。これは全く新しい発想のものである。
写真2: 車輪付き可動脚を短く収めたところ
作業安全の技術 バケットアームは伐倒作業中のアウトリガー(転倒防止支柱)として用いることができる。バケットアームにより、多少の土工作業ができる。この機能によって、斜面や不整地をフォーワーダが通行できるように整地することができるし、架線のアンカーを埋める作業も簡単になる。また、急斜面の移動もこのバケットアームを利用して行うことができる。
地上高確保 フルタイム4輪駆動方式なので、走行自由度が大きく,安全性も高い。駆動油圧は、最大250バールで180リットル/分の流量である。駆動部の油圧が独立しているためにオーバーヒートなしに高い走行能力を発揮できる。可動脚で大きな地上高を確保できるようになっている。可動脚は、上下方向にも水平方向にも動かすことができるので、高い安定性を確保することができる。後方に4.5メートル、前方に6.5メートル広げることができる。急斜面上で直接作業をする場合には、長く伸ばせるバケットアーム(3.1メートルの2倍伸ばせるテレスコ式)が重要な役割を果たす。
森林作業 主(根元)アームの上に、到達範囲9メートルのテレスコ式プロセッサーアームが装備されており、最大11.5メートルの作業範囲がとれるが、一杯に伸ばした状態で1000キログラムの持ち上げ能力を持つ。油圧ホースは左側に弛みなく取り付けられており安全が確保されている。 ベルグビーバーには、5枚刃で最大直径55センチまでカットできるケトー100型プロセッサーヘッドが使用されており、送り速度は4m/秒で送りバンドが長いために,送り力が強く、太い枝でも問題なく枝払いできる。計測装置は、Epec4/W50である。しかし、キャビンの右側の視界をいま少し改良したいところである。
高い林地走行性 カイザーS2脚式ベースマシーンは、重量12.7トン、122馬力で、60%(30度)までの斜面を自由に動ける。製作者(Knittenfelder)は、平坦地ならばスウェーデン製の機械と同等または以上の能力をもつと考えている。いま10?40cm の木を主に扱っているが、将来はもっと良い機械になるだろうし、何よりもこの方向が正しい方向であると信じていると製作者は言う。ライトニングの近辺のシュタイエルマルク州森林組合と同州の農林局も作業共同体を考えている。シュタイエルマルク森林組合とライトニング木材組合が協力してベルクビーバーを導入し、ライトニング市場で木材を販売するように考えられている。半径50キロメートルの範囲の作業請負業者ならば、この機械を利用して夜には自宅に帰ることができる。いちいち運搬車を回す必要がない。この範囲の森林の47パーセントは30――60パーセントの勾配である。ビーバーにとっては不足のないところである。
写真3: 歩行アームとプロセッサーアームが同じ掘削機ベースに取り付けられているところが全く新しい発想である。
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