『人間探求学』とは、人間とは何かを探求する学問、すなわち、人間の本質について考える学問である。その内容は実存哲学が主体だが、学生諸君にとっては、自己探求が特に重要だろう。自己探求とは、自分について深く考えること。「自分とは何か」「自分は何のために生きているか」――もちろんこんなことは考えないでも生きられる。家畜も魚もセミも「生きる意味」など考えてはいないだろう。しかし、人間は「生きる意味」を考えることで、より良く生きることができる。人として主体的・能動的に生きるためには、「肉体の生」ではなく、「精神の生」を得ることが大切だ。

 

人間探求学(考える授業)は、他の授業すなわち、知識を得る授業(覚える授業:学習)と大きく異なる。知識を得る授業では、昨日まで知らなかったことが今日は分かっているのだから、その差は本人にも先生にも明らかである――学習の成果が即座にそして明確に現れる(テストの点数が上がり達成感がある。知識を得たという実感もある)。一方、人間探求学は深く考える思索の時間であり、知識を得るような即効的な教育ではない。しかし、様々な「気づき」をもとに、自分の考えを見直し、正し、成長するための大切な機会である。

 

「知識」はリンゴの木に実っているリンゴに例えられる。一方、自己探求は木(すなわち気骨)の部分である。木が小さく弱弱しいのに、実ばかり多く実らせることはできない。多少の風雨で折れてしまう木ではいけない。リンゴを多く実らせることのできる丈夫な木を作ること、それが人間探求(自己探求)の目的である。大学は、知識(リンゴ)だけを得る場所ではなく、人として健全に成長する場、自己形成をする場である。「人が育つ」を教育理念に掲げる滋賀県立大学は、この点を重視し、人間探求学という授業を設けている。

この講義は、特定の哲学や宗教に偏ることなく、人間とは何かを身近な例をもとに考察します。

 

(注)人間探求学の授業内容は、担当教員によって異なります。

 

 

 

2017年度 人間探求学(杉浦担当分)

第1回 人はなぜ生きるのですか?

第2回 ひめゆり、ガマ講演、喜屋武岬、ほか

第3回 原爆、空襲、はだしのゲン、ほか

第4回 赤紙、特攻遺書を読む、ほか

第5回 吉田松陰、松下幸之助、東日本大震災、ほか

第6回 人生の目的(まとめ)

 

 

 

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