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  東能勢ファイターズは大阪府北部豊能町の少年軟式野球チーム。
 「野球を通じて少年の健全育成をめざす」のが目的だ。
 スポーツ人気の多様化で一時はメンバーが激減したが、今では人数も
 増え「少しでも多くの子供にスポーツの楽しさを知ってほしい」と、
 地道に 活動を続けている。
  創立は一九八四年。同町は妙見山を境にして西と東に分かれており、
 西地区では昔から少年野球チームが活動していた。しかし東地区には
 なかったため、東側の住民有志が東能勢小学校の児童を対象にした野球
 チームの創立に動いたのがきっかけだった。
  「緑の多い能勢の町でスポーツに親しむ子供を育てたい」がチームの
 理念。そのため、専門家が組み立てた練習メニューも技術向上だけで
 なく、児童の安全を主眼に置いた内容という。指導にも保護者が、
 スタッフとして毎週日曜日の練習に顔を出している。
  指導にあたる大川浩司代表は「まずスポーツを好きになってもらう
 ことが一番。とにかく厳しくしないで、楽しくプレーできることを
 心掛けている」と話す。しかし「時には勝ちにこだわらなければならない
 場合もある」とも考えている。
  三年前、メンバーが十三人にまで減ったことがあった。通常なら
 体力差を考え、学年ごとに作るチームが、全学年合わせても一つしか
 できない。しかし、公式試合では他校の上級生チームと対戦するため、
 負け続けた。その時の子供の様子は完全に覇気がなくなっていたという。
  「子供たちはやはり試合が好き。試合で勝てば楽しくなるし、気持ちも
 盛り上がることが分かった」と大川代表。「だからといって勝つことだけ
 にこだわれば、試合に出場できない子も出てくる。それはうちの本意では
 ない。そのバランスが本当に難しい」と苦笑しきり。
  現在のメンバーは二年生から六年生まで三十四人。学年の体力差に
 合わせて三チームに分け、指導している。下級生チームの中川雅美監督は
 「小さい子にはとにかく野球を楽しむ方法を教えている」と話し、四年生
 チームの宮坂栄司監督は「基本からフォーメーションなど技術面の指導が
 中心」と言う。
  さらに上級生になれば練習内容も本格的になり、「勝つ」ことへの
 こだわりも指導していく。上級生チームの主将、佐々木亮馬君は「練習は
 厳しいけれど、やっぱり野球が一番楽しい。将来はプロ野球の選手に
 なりたい」とにっこり。
  保護者の一人、森理嘉さんは「野球をしているときの子供の表情は、
 家とはぜんぜん違う。子供のいろいろな顔が見れるのが楽しい」と喜ぶ。
 「今はバランスよく指導できている」と、スタッフの声も明るい。
  最近では練習を手伝いにくるOBも出始めた。今度は指導者として
 帰ってきてほしい、とスタッフ全員が願っている。創立から十七年。
 町の人にも東能勢ファイターズの名前が浸透しつつある。
 「今後は少年育成を通して、いかに地域に貢献していくかが課題」と
 大川代表は話している。(運動部・椎葉直)

 ※記事はすべて紙面掲載文のままとしました。