つま恋へ
ついにこの日がやってきた。
歴史的1日が始まる。前夜は興奮してほとんど寝れなかった。
過去を振り返るのか、今を感じるのか、それとも明日へのパワーをもらうのか。
午前7時50分掛川駅に着く。駅前はすでにシャトルバスを待つ行列である。並ぶこと30分、シャトルバスに乗り込んだ古い水夫たちはようやくつま恋に着く。今度はつま恋入場までの長い長い行列なのである。
お茶畑の脇を延々と並んでいる。行列の中に「たくろうフォーエバー」ののぼりを持った人が並んでる。
Yahoo掲示板のしんさんだった。軽く挨拶して最後尾に並ぶ。しんさんとは開演前にお会いする予定になっているのだ。
真夏の炎天下に雄叫びをあげた85年つま恋から21年
校則にしばられて参加する勇気すらもなかった75年から31年
家庭も持った。少しは世間にあてにされるオヤジにもなった。
オヤジたちは再びつま恋へと続くお茶畑の道を並んでいる。
ライブエリアへの道
ゲートでリストバンドをもらっていよいよつま恋のエリアに入る。ライブエリアの開場は午前10時、まだまだ時間はある。ライブエリアへ続く人・人・人。この日のために作ったにちがいない。もしかしたら、中高年のためのカルチャースクールで渋茶を飲みながら作ったかもしれない「たくろう」の文字の入ったTシャツを着た人や、サイコロ二つが描かれたTシャツを着た人たち。「まだ持ってたのか85年つま恋のTシャツ」のオヤジ。いまどき古着屋でも売ってないだろうオーバーオールのジーンズのおばさん。
みんなみんな凄い気合だ!「みんな普段はどんな生活をしてるんだろう。」
しまったなぁ、俺らも畑のトンボか風に揺れるタンポポのTシャツを作ればよかった。
そんなことを考えてる僕も履きなれた白い靴と、85年つま恋の時も背負ってたカリマーの登山用のザック(今回は2000年モデル)を背負っている。そして午前10時、ライブエリア開場を告げる花火があがる!
♪せんこう花火が欲しいんです。
あほう!あれは打ち上げ花火じゃ!
つま恋到着から並ぶこと2時間30分、午前10時45分ライブエリアB1ブロックにやっと到着。
近くにはハゲのオヤジが陣取っている。今回は「長い夜」の松山某がゲストという噂もちらほら、もしも松山某が出てきたら「帰れ!ハゲ!」と叫ぶつもりでいたが、近くにハゲのオヤジが…
とりあえずはビールで乾杯である。野外コンサートにしてはでかすぎるザックにはアイスボックスに缶ビールが8本そしてノースフェースのマグカップ。
♪おいら酒飲みうんと飲めやれ飲め
フードエリアでネットの友人と再会する。「豊かなる一日」ツアー大阪以来の再開だ!ネットを通じていろんな拓郎仲間とも知り合うことが出来た。
今回はYahooの掲示板仲間とも12時に待ち合わせをしている。
目印のノボリのもとにはじめて会う拓郎ファンが揃った。それぞれがHNで自己紹介する。
「帰れハゲ!って叫ぶ予定をしてましたが近くにハゲのおっさんがいるので松山某が出てきても言えそうにありません。」
さぁいよいよ始まるんだ。35000人の宴会が…
ペニーレーンでバーボン
「ようこそつま恋へ、オヤジ生きてるかー!」
南こうせつが叫ぶ。
ついについにつま恋コンサートが始まった。35000人の宴会が始まった。
時がたってしまうことをー、忘れてしまいたい事があるよね、全てのものが何もかも移り変わってはいるものの、なんとなく自分だけ意地を張り通して、逆らって見たくなるときが…
おぉー、いきなり名曲の復活だ!
早くもなみだが止まらない。天を仰ぐそして口ずさむ
みんなみんないいやつばかりだと、お世辞を使うのが億劫になり中には嫌なやつもいるんだよと大声で叫ぶほどの勇気もなし
♪やーるせない思いを胸に、ともだちは去りました。
♪どこへ行こうと勝手だし、何をしようと勝手なんだ。
♪これこそはと信じれるものがこの世にあるだろうか。

♪空を飛ぶのは鳥に羽があるから、ただそれだけのこと
 足があるのに歩かない俺には羽も生えやしない
いろんな時代を共有していた吉田拓郎の歌。
あいつは元気だろうか。彼女はどうしてるだろう。いろんな思いが胸をよぎる。
だけど、今日は同窓会ではない。思い出の葬式でもない。
75年への郷愁、85年の再現。そんなもんどうでもいい。大事なのは今、Ima。
少なくとも俺らには宴会だ!
第1部終了。またもリュックからビール登場!
「おまえのリュックは冷蔵庫か!」「ちょっと麦茶飲ませろや」
旧友再開フォーエバーヤング
ペニーレーンでバーボン
海を泳ぐ男
ひらひら
淋しき街
消えてゆくもの
ともだち
知識
生きていなけりゃ
イメージの詩
好きだった人

遥かなる想い
黄色い船
アビーロードの街
人生は流行ステップ
夏・この頃
好きだった人
加茂の流れに
置手紙
けれど生きている
湘南・夏
こもれ陽
ペテン師
センセーショナルバンド
マキシーのために
なごり雪
お前が大きくなった時
第2部はかぐや姫の登場。
仲の良かった友人にかぐや姫のフリークはいなかった。
一緒につま恋に来た相方はもちろん拓郎。
好きだったあの子は井上陽水。校舎の屋上でタバコを吸ってたあいつはキャロルの矢沢永吉。聞き流してたかぐや姫だったが、通りすがりの音楽だったはずだったが…
♪好きだった人、ブルージーンをはいていた。
♪好きだった人、白いブーツをはいていた。
♪失恋という言葉は知ってたけれど
♪失恋という言葉は知ってたけれど

なんという不覚。
思い出して泣いてしまった。
彼女はどうしてるだろう。今頃はスーパーで買い物だろうか?
お彼岸で墓参りだろうか? 
「初恋の人を思い出した人手を上げて!ハイビジョン押さえて!」
こうせつおいちゃんも気合充分!
ファイト!
とんとご無沙汰
全部抱きしめて
野の仏
唇をかみしめて
友あり
いくつになってもhappy birthday
シンシア
我が良き友よ
ファイト!
第3部は拓郎の2回目のステージ。相方はトイレに行ったきり戻ってこない。とんとご無沙汰に続いて、PTAの打ち上げで大合唱した「全部抱きしめて」
♪なにかをひとつ失くした時に 人は知らずになにかを手にする
♪きみのためにできることを あれからずっと探してる
♪全部抱きしめて Woo Woo

踊りながら2年前のPTAを思い返している。恋人と一緒に見に行った映画の主題歌「唇をかみしめて」、そして、ムッシュかまやつ登場「シンシア」に続いて「我が良き友よ」
♪あぁーあ恋よ よき友よ 俺は今でもこの町に住んで
 女房子供に手を焼きながらも生きている 

♪ファイト!闘う君の歌を
 闘わない奴らが笑うだろう
 ファイト!冷たい水の中を
 震えながら 歩いてゆけ

中島みゆきのコンサートではみんなが呆然と立ち尽くす名曲を吉田拓郎が弾き語りで熱唱する。つま恋に夕日が沈んでゆく。
おもかげ色の空
僕の胸でおやすみ
赤ちょうちん
おはようおやすみ日曜日
そんな人ちがい
今はちがう季節
きっぷ
じんじろ橋
遠い街
眼をとじて
うちのお父さん
ひとりきり
22才の別れ
雪が降る日に
あの人の手紙
おもかげ色の空
フードエリアでうどんを食べてる間に、かぐや姫の最後のステージが始まった。
遠くで聞こえる「僕の胸でおやすみ」「赤ちょうちん」
♪何もかもが昔 今はちがう季節
 そしてぼくの心も 変わってしまった

大合唱の「うちのお父さん」
「オヤジ声出せ!気持ちは少年だ!」こうせつのパワー全開!
津軽三味線のような伊勢正三のアコギのリードがさえる。「雪が降る日に」
「かぐや姫からみんなレッドツェッペリンに走るんだよね」
(なんとなくわかるような気がする)
♪あの日の君は 笑いさえも浮かべていた
 まるでぼくの後姿に よろしくと言いながら
 想い出として 君はここにおいてゆこう
 部屋のあかり消しながら また会うその日まで
 また会うその日まで

昔はよかったなんて思わない。別れはみっともなかったし、
恋はお笑いぐさだった。
またもや、涙が頬をつたう。またも天を仰ぐ。
また会うその日まで、また会うその日まで、また会うその日まで
つま恋にオヤジたちの歌声が響き渡っている。
今日までそして明日から
最後は吉田拓郎渾身のステージなのだ。
あぁ青春、虹の魚、この指とまれ、そして「サマータイムブルース」
2003年大阪でのハプニングを交えてこの歌への思いを拓郎が語る。
こぶしを振り上げ大声を張り上げる
♪越えてゆけそこをー!越えてゆけそれをー今はまだ人生を、人生を語らず
そして「永遠の嘘をついてくれ」を歌いだす拓郎
演奏にのって幽霊のように白いブラウスをきた女性が登場
中島みゆき降臨である。

吉田拓郎と中島みゆき、大好きなスーパースターがつま恋で共演している。
「中島みゆきー、たくろぉー!」
墓場まで持ってゆく想い出、伝説誕生の瞬間である。
もう何も思い残すことはない。
♪傷ついた獣たちは最後の力で牙をむく
 放っておいてくれと最後の力で嘘をつく 
 嘘をつけ永遠のさよならのかわりに
 やりきれない事実のかわりに

オーディエンスに手を振り、コーラスの坪倉唯子にハイタッチ。一言も発せずに幽霊のようにステージを去る中島みゆき。伝説のつま恋はいよいよ佳境に入ってゆく。
♪女はいつでも2通りさ
 男をしばる強い女と
 男にすがる弱虫と
 君は両方だったよね
♪僕を忘れた頃に君を忘れない
 そんな僕の手紙が着く
 僕が想い出になる頃に 君を想い出に出来ない
 あぁ僕の時計はあのときのまま、風に吹き上げられたほこりの中
 二人の声も消えてしまった あぁあれは春だったね
想い出のしみこんだ歌がこれでもかこれでもかと歌いまくる。
そして
Am→Em→Am→F→G→Am(Capo3)
落陽だぁ!
♪みやげにもらったぁーさいころふたつ
 手の中でふればぁー、また振り出しに戻るたびに日が沈んでゆく!

こだまするオヤジの熱狂、夜空を染める花火
拓郎が嬉しそうに、ほんとに嬉しそうに笑ってる。

最後の曲は「今日までそして明日から」
 けれどそれにしたってどこでどう変わってしまうか
 そうですわからないまま生きてゆく明日からのそんなわたしです
 わたしは今日まで生きてみました
 わたしは今日まで生きてみました
 わたしは今日まで生きてみました
 そして今、わたしは思っています。
 あしたからもこうして生きてゆくだろうと

あふれる涙をぬぐいもせずに何度も何度も歌っている。
つま恋2006、これは同窓会なんかじゃない。もちろん想い出の葬式なんかじゃない。
同じ時代を共有した35000人の宴会が終わろうとしている。
わたしは今日まで生きてみました
携帯から自宅に電話を入れる。もちろん何もいわない。
電話の向こうに家族がいる。同じ道を歩いてきた家族がいる。
時には誰かと手をとりあって
振り返れる想い出を残してくれた友人たちに感謝
振り返れる時間を共有できたみんなに感謝
振り返れる場所に送り出してくれた家族に感謝
あしたからもこうして生きてゆくだろうと
たくさんの元気をくれた吉田拓郎に感謝
どうもありがとう!また会おう!ByeBye!
あぁ青春
虹の魚
この指とまれ
ビートルズが教えてくれた
言葉
サマータイムブルースが聞こえる
人生を語らず
永遠の嘘をついてくれ
外は白い雪の夜
僕たちはそうやって生きてきた
冷たい雨が降っている
春だったね
落陽
a day
今日までそして明日から
聖なる場所に祝福を
アンコール Artist Musicians
神田川
聖なる場所に祝福を
吉田拓郎

かぐや姫 南こうせつ、山田パンダ、伊勢正三

かまやつひろし

石川鷹彦

中島みゆき
Concert Master
Drums
Bass
Guitar
Guitar
Keybord
Keybord
Chorus
Chorus
Chorus
Chorus
Sax
Tromborne
Trumpet
Trumpet
Strinngs
瀬尾一三
島村英二
富倉安生
土方隆行
古川 望
エルトン永田(一郎)
佐藤 準
若子内悦郎
宮下文一
坪倉唯子
比山貴咏史
中村 哲
清岡太郎
西村浩二
鈴木正則
伊能 修
高橋洋子
丸山美里
武藤宏樹
氏川恵美子
牛山玲名
岩永知樹
友納真緒
つま恋は終わった。
中高年・団塊の世代、オヤジ熱狂!
翌日の新聞の見出しが躍っている。
ニュースやワイドショー、週刊誌でも話題になっている。
団塊の世代ではないが、確かに中高年で、確かにオヤジ
たまたま参加したイベントがものすごいイベントで、
吉田拓郎っていう人がどうしようもなくすごいオヤジだったこと。
在来線で浜松、新幹線で名古屋まで、名古屋からまたもや在来線
だんだんとつま恋の密度がうすくなってゆく。

♪ひとりになるのは誰だって怖いから 
 つまづいた夢に罰を与えるけど
 間抜けな事も人生の一部だと
 今日のおろかさを笑い飛ばしたい
 全部抱きしめて 君の近くにいよう
 星になった歌も 過ぎた想い出も
 全部抱きしめて きみの近くにいよう
 きみが黙るなら きみにささやいて

「ただいまー!めっちゃよかったぞ!、めっちゃ泣いたぞ!」
「悪いけど腰揉んでくれ!」
元気でのんきなオヤジの毎日が戻ってくる。
『そんなにしょっちゅう振り返ってると生きてるのが嫌になるけど、たまに振り返るのもありだな』